icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科44巻2号

1989年02月発行

雑誌目次

特集 80歳以上高齢者の手術

EDITORIAL

著者: 出月康夫

ページ範囲:P.159 - P.160

 昭和62年簡易生命表によると,日本人男性の平均寿命は75.61年,女性の平均寿命は81.39年に達し初めて81歳を超えるに到った.また10万人の出生のうち65歳まで生存する者の割合は,男性では82.0%,女性では90.8%であり,80歳まで生存する者の割合は男性で45.8%,女性では66.2%であるという.さらに特定年齢の生存数を時系列でみると,40歳まで生存する者の割合はすでにプラトーに達しているのに対し,65歳まで生存する者の割合は,1955年の男性61.8%,女性70.6%から1987年までの32年間に男女とも20ポイント増加しており,80歳まで生存する者の割合は過去32年間に2倍以上となっている.平均寿命を諸外国と比較しても,わが国は遂にアイスランドを抜いて世界一の長寿国となったことが明らかにされている.80歳以上まで生きる者が少しも珍らしくなくなった昨今,本号の「80歳以上高齢者の手術」という特集の必然性が生ずる訳である.
 人口の高齢化はまた死因にも変化をもたらしている.死因別死亡確率(人はいずれかの時期に,何らかの傷病(死因)で死亡するが,生命表上のある年齢の者が将来特定の死因で死亡すると思われる確率)をみると,0歳の男子は悪性新生物による死亡確率が最も高く25.49%,ついで心疾患19.56%,脳血管疾患15.98%であり,0歳の女子では心疾患23.13%,脳血管疾患20.20%,悪性新生物16.94%の順となっている.

加齢と免疫

著者: 根来茂 ,   原英記 ,   出口安裕 ,   西尾真一

ページ範囲:P.161 - P.168

 老化に伴う免疫異常には,外来性特異抗原に対する免疫応答能の低下,自己成分に対する抗体(自己抗体)の陽性率や力価の上昇という二つの特徴が認められる.前者は老人の易感染性や感染症の重篤化,難治化の原因となる.後者は老化に伴う変性疾患の進行を促進する.外科的侵襲は老化に伴う免疫異常をさらに促進する可能性があり注意を要する.老化に伴う免疫異常の防止や改善をめざす試みの現状についても述べた.

術前検査のポイント

著者: 桜井健司 ,   河野修三 ,   巷野道雄

ページ範囲:P.169 - P.174

 高齢だけで手術リスクが増すと言い切るのは難しいが,加齢とともに手術リスクを増加させるいろいろな疾患を合併するようになる.80歳以上になればほとんどがなんらかの疾患を合併している.また暦上の年齢と生理的機能はかなり乖離し,個人差が著しい.高齢者では各臓器の機能的予備力が低下し,clinical threshold以下の病変が進行していることが少なくなく,術前準備が不十分な高齢者の救急手術は待期手術に比較すると合併症率,死亡率が極端に高い.したがって,高齢者特有の病態生理を既往症,全身的身体所見および検査所見から把握,理解して対処すべきである.

麻酔法の選択と術中管理

著者: 大村昭人 ,   小沢みどり

ページ範囲:P.175 - P.181

 高齢者では,生理的機能の変化に加えて,種々の合併疾患を有する頻度が高くなり,麻酔,手術などのストレスに対する代償反応が起きにくくなり,術中・術後の合併症,死亡率が増加する.しかし,高齢になる程,その生理的機能の変化の程度や,合併症の有無などに関して,個体間の差が大きくなって来る.高齢であっても,合併疾患を持たない者の手術死亡率は,若い患者と変わらないことがわかっており,また合併疾患を持つ患者でも,その病態生理をよく理解して,麻酔管理,術前・術後管理を行えば,周手術期の合併症を最小限に留めることも可能になって来ている.これは,高齢であるという理由だけで,適応のある手術を避ける理由がなくなって来たことを示している.

術後管理のポイント

著者: 石川功

ページ範囲:P.183 - P.189

 高齢者手術例の術後管理において留意すべきポイントについて,実地臨床の実践的経験と成績をもとにまとめてみた.十分な術前管理と安全・確実な手術の実施を必要条件とし,常に先を予測して後手を引かない「転ばぬ先の杖」的きめ細かな術後管理による「術後合併症の予防」の成否が最大のキーポイントであることを強調した.具体的には,①栄養・輸液管理,②呼吸管理,③循環器管理,④腎機能管理,⑤貧血,低蛋白血症および血清電解質異常の予防と早期補正,⑥各種ビタミン剤や腸蠕動促進剤の十分な投与,⑦化学療法などによる術後感染症予防,および⑧術後精神障害に起因するトラブルの予防と対策,の8項目を取り上げ,各項目においてとくに留意すべきポイントについて概説した.

手術後の精神障害とその対策

著者: 黒澤尚 ,   𠮷河達祐

ページ範囲:P.191 - P.196

 老人の手術後にみられる精神症状について,特にせん妄,痴呆を中心として,その精神医学的位置付け,症状の正確な把握と対応について述べた.特に対応については,老人は精神面でも老化しているという事実を正しく認識し,まず,症状発症の予防に重きを置くことが大切である.このため,術前に精神機能評価を行い,術後に症状発生の可能性が高いと判断された患者に対しては,特に強力に「心のこもったケア」を行い,発症を水際で最小限にくいとめる努力が必要である.また,不幸にして発症した患者に対しては,精神面でのケアとともに,迅速かつ適切な薬物療法が行われなくてはならない.

術後リハビリテーションの実際

著者: 山本信行 ,   小沼正臣 ,   久保晃 ,   千野根勝行 ,   古名丈人 ,   木虎麻理子 ,   林泰史 ,   山城守也

ページ範囲:P.197 - P.202

 外科手術前後のリハビリテーション対象患者のうち,80歳以上の32症例と79歳以下の49症例とを比較することにより,80歳以上手術患者の特徴として1)開腹手術が中心で,胃腸疾患が全体の61%を占め,併存症は全症例にみられた.2)痴呆は80歳以上の症例に多くみられた.3)移動能力は手術によって低下することはなく,逆に寝たきり患者に改善がみられたものもあった.4)呼吸機能検査では拘束性病変が多く,術後5日目の呼吸器合併症は無気肺が多いことがわかった.
 以上により,80歳以上の患者については外科手術前後のリハビリテーションが必要であることが示唆された.

肺癌肺切除術

著者: 木下巖 ,   松原敏樹 ,   中川健 ,   西満正

ページ範囲:P.203 - P.207

 1970〜1986年までわれわれの施設で行った肺癌肺切除例593例を対象として,80歳以上の高齢者肺癌に対する検討を行った.高齢者肺癌は12例で,男性8例,女性4例,最高年齢は86歳女性であった.術式として,肺葉切除が10例ともっとも多かった.リンパ節郭清(R)はR04,R14,R24であった.術後肺合併症が非高齢者に比べて多く,3例を肺炎で失った.予後は累積生存率で22.3%の5年生存率を示したが,術後合併症を少なくすることにより,予後の向上が期待できる.全身状態を含めて手術適応を選び根治的肺葉切除が可能なら,80歳以上でも年齢にこだわることなく肺切除を行ってよい.とくに術後管理には気を配り,合併症を起こさぬよう,またやむを得ず起こった場合には積極的な対応が必要である.

食道の手術

著者: 田中乙雄 ,   武藤輝一 ,   佐々木公一 ,   鈴木力 ,   宮下薫 ,   藍沢喜久雄 ,   長谷川正樹

ページ範囲:P.209 - P.212

 1959〜1987年末までに教室で切除した胸部食道癌405例のうち80歳以上の6例を中心に高齢者胸部食道癌の手術の実際について検討した.対象6例は術前の機能検査では全例に何らかの異常を認め,4例は高度障害を有していた.手術術式としては切除のみが1例,一期的切除再建2例,二期分割手術2例,食道抜去術2例であった.術後合併症は3例に発生し,その内容は肺炎2例,腎不全2例であったがいずれも回復した.遠隔成績は最長3年6ヵ月を含め3例が2年以上生存中である.以上の結果より,80歳以上の胸部食道癌症例に対する治療は個々の症例により術式を選択し,術前,術後のきめ細かな管理を行えば十分手術適応はあると考えられた.

胃の手術

著者: 平塚正弘 ,   古河洋 ,   岩永剛 ,   小山博記 ,   福田一郎 ,   甲利幸 ,   大東弘明 ,   亀山雅男 ,   今岡真義

ページ範囲:P.213 - P.217

 80歳以上の胃癌手術27例の治癒切除率は70%であった.手術直接死亡例はなく,切除25例のうち24%に術後合併症が発生した.術前検査成績と術後合併症の発生とは相関がなかった.術中出血量が1,000ml以上の2例に重篤な術後合併症が発生し,そのうち絶対非治癒切除例は入院死亡した.胃全摘例は部分切除例に比べて術後合併症発生が高率であった.郭清度別では合併症発生例はすべてR1郭清で,R2郭清に術後合併症はなかった.根治手術20例の5生率は83%で,このうち胃全摘6例の5生率は100%であった.絶対非治癒切除の場合は最小限の手術にとどめるべきであるが,根治手術可能例ではR2郭清あるいは胃全摘術も必要ならば行う.

大腸の手術

著者: 友田博次 ,   古澤元之助

ページ範囲:P.219 - P.223

 80歳以上の高齢者大腸癌手術患者29例を49歳以下の若壮年者132例と比較検討し,手術の実際や注意すべき点について述べた.80歳以上では,術前に,心,肺,肝,腎などに異常を有するものが多く,また,イレウスなどの緊急手術が13.8%と多く,切除率は86.2%で低い傾向にあった.手術直接死亡率は3.4%で,直接死亡は緊急手術では1例にみられたが,待機手術では直接死亡や重篤な合併症は経験していない.普通に生活しているものに対する待機手術では,手術の適応決定や術式の選択に際して,それなりの配慮をすれば,あまり消極的になる必要はないと思われる.

肝・胆道・膵の手術

著者: 原田昇 ,   内村正幸 ,   脇愼治 ,   木田栄郎 ,   深堀知宏 ,   浦川聡史 ,   池松禎人 ,   梶山勇二 ,   持永信夫 ,   土屋凉一

ページ範囲:P.225 - P.230

 高齢者における肝胆膵外科の現状を膵癌149例,胆嚢癌85例,胆管癌120例,肝癌137例の教室例を用いて検討した.これらの悪性腫瘍では年代の推移とともに70歳以上の高齢者手術患者の占める割合は増加し,かつ,その手術侵襲の程度は根治性を期待した拡大手術の傾向がみられ,切除率も中壮年者と比較し同等かそれ以上の切除率を示した.しかし,80歳以上の超高齢者の9例では3例のみが切除例であった.合併症は同期間の壮年者患者と比較してほぼ同程度であり,栄養管理をはじめ細心の管理を行えば壮年者と大差ない根治性の高い手術に十分に耐えうるものと判断された.

血管外科手術

著者: 多田祐輔 ,   高木淳彦

ページ範囲:P.231 - P.237

 80歳以上の血管外科手術症例は20例(大動脈瘤9,閉塞性疾患9,その他2)で最近増加傾向にある.大動脈瘤のうち4例は緊急例(切迫破裂2,破裂2),閉塞性疾患の3例は急性動脈閉塞である.直死は2例,切迫破裂例と腹部大動脈急性血栓症である.急性動脈閉塞症は遠隔も含めて予後不良であるが,他はほぼ満足すべき長期生存と手術効果の持続が得られている.適応の選択には病変の状況のみでなく,精神的活力の評価が重視され,実際の手術に際しては大動脈遮断対策,粥腫塞栓の防止,剥離面を最小にする配慮が強調される.慢性動脈閉塞には,早期の歩行練習を重視し,術式としては,F-Fバイパス,BiograftによるF-Pバイパスが解剖学的バイパスや自家静脈バイパスより適切である.

外傷

著者: 北野光秀 ,   山本修三 ,   茂木正寿 ,   吉井宏 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.239 - P.243

 当院救急センターに搬入された外傷患者35,856名のうち80歳以上の患者は309名(0.86%)であり,外傷部位をみると309例中整形外科領域の外傷176例,頭部外傷110例,胸部外傷,腹部外傷はそれぞれ21例,2例と著しく少ない.70歳以上の高齢者腹部外傷は歩行中の事故が多く,損傷臓器は骨盤骨折を合併した後腹膜血腫などの後腹膜臓器損傷が多い.また,ショック発生率および出血による死亡率が高いことから,骨盤骨折による内腸骨動脈領域の出血に対してembolizationによる止血を行う.高齢者の脾破裂では脾機能が低下していることから脾全摘による完全止血を行う.大腸破裂に関しては,一時閉鎖を行わず人工肛門造設を行う方が安全であろう.出血性ショック時の大量輸液の際Swan Ganzカテーテルを挿入し,心拍出量,肺動脈楔入圧をモニターしつつ輸液投与を行い,肺間質浮腫に対してはPEEPを併用した人工呼吸療法を行う.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 食道内視鏡シリーズ・Ⅴ

噴門癌の早期診断

著者: 竹下公矢 ,   羽生丕 ,   遠藤光夫

ページ範囲:P.153 - P.156

はじめに
 食道胃粘膜接合部近傍に発生するいわゆる噴門部癌は,いまだに早期癌の頻度が低く,したがって外科治療成績も不良である1).元来,この部位の癌の出現頻度は他の食道癌,胃癌に比較して低いものの,画像診断上とくに意識して観察しなければ見逃される場所として指摘されてきた.ところが近年になり,前方直視型のパンエンドスコープや電子スコープの普及により,上部消化管検査の際の通り路という概念2)から,この部位の病変にも大いに目が向けられるようになった.
 本稿では以上のような観点から,与えられた主題に基づき,食道胃粘膜接合部より2cm以内に存在する胃癌の早期診断の実態ならびに内視鏡的手技について,自験例を中心に述べてみたい.

表紙の心・14

外科の臨床教育家デソーの像

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.212 - P.212

 1789年フランス革命が起こった.今年の7月でちょうど200年になる.絶対王制が崩壊し,新しい社会の仕組みが築かれていった.
 医学の世界でも,パリの医学部とサン・コーム(St.Côme)の外科医学校が廃止され,1795年に新しく健康学校(Ecole de Santé)という名で復活した時には,内科も外科も同じ施設で教育が受けられるように変わっていた.

研修医セミナー 一般外科手術記録の書き方

Lesson4 痔核切除術(Open Hemorrhoidectomy)

著者: 小越章平

ページ範囲:P.247 - P.249

Ⅰ.記載のポイント
 1.体位と麻酔の方法,局所麻酔の追加。 2.痔核の状態。正確な位置と大きさ。 3.皮膚切開。 4.手術方法。 5.術後処置,出血,止血。 6.全身麻酔なら覚醒の状態。

老医空談・6

用語心傷

著者: 斉藤淏

ページ範囲:P.250 - P.251

 外科臨床の場に限ったことではないが,この頃は日常用語の使い方で心を傷める場合が少なくない.科学的診療と保険医療の普及している現代だから,無視・不知ではすまされないように思う.臨床は人権主張と風俗習慣の交錯するところでの仕事であるから,とくに心傷ケースは多いのだと思う.その中からまず周辺の2,3の例を取りあげ,最後に年来気にしている「投薬」を引き合いに出すことにします.
 専門用語.日独英混用が普通である.最近はカタカナや略語が混入し,それに新敬語調が加味される.国語の乱れは専門家でなくとも気にかかる.それにしても,バイオエシックスの問われている最中に軽々しく専門用語が挿入されては,いよいよ混乱を招くおそれがある.

文献抄録

原発性胃リンパ腫—病期判定と治療の問題点

著者: 深瀬達 ,   石引久弥

ページ範囲:P.252 - P.252

 原発性胃リンパ腫は胃に発生する全悪性腫瘍のうち1〜3%を占めるに過ぎない稀な疾患である.1965〜1980年の15年間にバージニア大学医学センターで扱った本症28例(男15例,女13例,年齢21〜83,中央値63.5歳)について術中診断,病期判定,補助療法を検討した.
 臨床症状は胃癌あるいは消化性潰瘍に類似し,心窩部痛は56%と最も多かった.術前診断でも14例(50%)が胃癌,5例(18%)が潰瘍と診断されており,リンパ腫の疑いをもたれたのは胃内視鏡による生検を施行した8例のうちの3例(11%)のみであった.全例に開腹術が施行され,原発性胃リンパ腫と診断された.病理組織学的所見では,Rappaport分類のび漫性組織球型が最も多く89%を占め,他の11%はび漫性混合型であった.リンパ節転移に関して十分な試料のえられた21例中,原発巣の近位傍胃リンパ節転移陽性が6例(21%),遠位リンパ節転移陽性が3例(11%),リンパ節転移陰性は12例(43%)であった.

一般外科医のための形成外科手技・2

形成外科的縫合法と外科手術創の美容的配慮

著者: 梁井皎

ページ範囲:P.255 - P.261

はじめに
 一般外科手術に応用できる形成外科的手技は少なくないが,一般外科手術に形成外科的手技を応用する際に最も手近な手技は形成外科的縫合法である.
 近年の形成外科手術の普及もあって形成外科的縫合法は一般外科医の間にかなり浸透してきてはいるが,一般外科医の縫合を時々目にする限りでは必ずしも適切な形成外科的縫合法がなされているとは限らないようである.

最近の話題

新しい吸収性補強材料—PGA-meshの基礎的研究と臨床応用

著者: 田辺達三 ,   岡安健至 ,   菱山眞 ,   熱田友義 ,   菱山豊平 ,   伊藤紀之 ,   子野日政昭

ページ範囲:P.263 - P.267

はじめに
 外科手術において被覆,補強の目的で,古くから大網などの自家組織が応用されてきた.しかし外科の進歩とともに積極的な合併手術,拡大手術が広く行われる傾向にある今日では,切除面や縫合部にみられる出血,体液漏出,縫合不全などを防止できる被覆材料,および剥離面や切離面にみられる癒着,死腔形成,組織の抗張力減弱などを防止できる補強材料,さらに組織欠損部に対して機能をも補助できる補填材料の必要性は増大してきている.
 この目的でダクロン布,PTFE布,マーレックスなどが主として用いられているが,領域別にみると表1のごとく要約できる.一般に医用材料に求められる条件として表2のごとき諸点があげられているが,被覆,補強の目的で用いられる場合には,とくに異物反応を増大させない,感染を誘発しない,異常な瘢痕を形成しないなど,副作用を生じないことも重要である1)

臨床研究

消化器外科におけるMethicillin-resistant Staphylococcus aureus感染とその流行

著者: 添田耕司 ,   小野田昌一 ,   吉田正美 ,   磯野可一 ,   菅野治重 ,   渡辺正治

ページ範囲:P.269 - P.273

はじめに
 近年,耐性ブドウ球菌としてMethicillin-resistantStaphylococcus aureus(MRSA)感染が問題になってきており1),千葉大学附属病院では外科領域でのMRSAの増加が指摘されている2).当科の消化器外科症例においてもMRSA感染例が増加しており,その発生状況と細菌学的検査,さらにMRSA感染対策について検討を加えたので報告する.

臨床報告

von Recklinghausen病に合併した胸腔内髄膜瘤の1例

著者: 松本三明 ,   仁熊健文 ,   折田洋二郎 ,   原藤和泉 ,   笠原潤二 ,   岡田多喜雄

ページ範囲:P.275 - P.277

はじめに
 髄膜瘤は椎骨の欠損,椎間孔の拡大により髄膜が嚢状に突出したもので,通常仙骨部に多発するとされ,胸腔内髄膜瘤は稀であり,von Recklinghausen病(以下vonR病と略す)に多く合併することが知られている.われわれはNanson1)のtriasと呼ばれる「側彎症,胸腔内髄膜瘤,vonR病」を伴った症例を経験したので報告する.

重複胆嚢の1例

著者: 榊原年宏 ,   麓耕平 ,   中野護 ,   唐木芳昭 ,   藤巻雅夫

ページ範囲:P.279 - P.282

はじめに
 重複胆嚢は胆嚢形態異常の一つで,人では比較的稀である.最近われわれは,結石を合併した重複胆嚢の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告するとともに,本邦報告例を集計し検討した.

上皮小体嚢胞の2例

著者: 渡辺幹夫 ,   堀口裕司 ,   二瓶和喜 ,   浅野晋 ,   鈴木知勝

ページ範囲:P.283 - P.286

はじめに
 上皮小体嚢胞は比較的稀な疾患とされ,最近では非機能性嚢胞と,上皮小体機能亢進症に伴う腺腫の嚢胞化したものとに分類されている.本腫瘍は術前診断が難しく,多くは甲状腺嚢胞として手術されている.今回,われわれも同様の術前診断をした非機能性上皮小体嚢胞2例を経験したので,1938年に石田らが発表した本邦例の集計46例1)とその後文献的に検索し得た31例,本報告例を合わせた計79例の臨床病理学的検討と,画像および嚢胞の穿刺による術前診断の可能性について考察を加えたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?