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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科44巻4号

1989年04月発行

雑誌目次

特集 消化器良性疾患の手術適応—最近の考え方

Editorial

著者: 出月康夫

ページ範囲:P.443 - P.444

 消化器良性疾患に対する考え方,治療法はこの10年位の間に大きく変ってきた.これはいろいろな疾患に対していくつかの新しい治療法が登場してきたことが原因である.その結果,これらの疾患では外科治療に対する適応や,手術の術式そのものにも,この数年間に大きな変化がみられている.この特集では,これらの良性疾患のなかで日頃よくみられるものについて,それぞれの領域のエキスパートによって治療に関する最近の考え方がまとめられている.いくつかの論文をゲラ刷りの段階で読ませていただいたが,新しい非観血的治療法の出現によって,手術が大きく変りつつあることをあらためて認識させられる.
 さて,良性疾患は出来るだけ手術をしないで治療することが望ましい.肝硬変や慢性膵炎などのように良性疾患であっても病変が進行して臓器が機能不全に陥り,これが直接に生命をおびやかすことや,出血などの合併により致命的な結果を招くこともあるが,多くの良性疾患の場合には合併症や病変の進行,症状の悪化などが主として治療の対象となる.したがって当然のことながら,治療の時期が問題となる.治療を行う場合にもまず非観血的治療が試みられ,これが有効でない場合にのみ観血的治療が試みられることになる.

食道アカラシア

著者: 平嶋毅

ページ範囲:P.445 - P.451

 過去41年にわたって千葉大学第2外科を訪れた食道アカラシア症例444例の統計と病態を検討したところ,本症は食道X線像や内圧分類などからみて,初期像(食道緊張型)と末期像(食道弛緩型)に大別できた.このうち275例に各種の外科治療を施行したが,104例に行った胃弁移植術が最も良好な成績を得た.治療の指針として,本症は進行性であること,外科治療は初期像ほど改善されること,さらに食道癌の合併をも考慮して早い時期からの手術が望ましく,術式は病態に沿って適応されるべきである.著者らは初期像症例には粘膜外筋切開術か胃弁移植術を,末期像症例には胃弁移植術を適応としている.

逆流性食道炎

著者: 幕内博康 ,   町村貴郎 ,   三富利夫

ページ範囲:P.453 - P.459

 逆流性食道炎は古くから問題となってきた疾患であるが,最近,診断面では色素内視鏡,24時間pH測定などが行われるようになり,治療面ではシメチヂンなどが開発され進歩した.
 逆流性食道炎は元来保存的に治療すべきもので手術適応は極めて少なく,逆流性食道炎症例の0.6〜0.7%にすぎない.治療方針の決定にあたっては上部消化管X線造影,内視鏡,食道内圧pH測定などが行われるが,発生機序を理解し,何を調べるかを知って検査に当らねばならない.手術適応は,保存的治療を6ヵ月以上行っても,びらんや潰瘍,狭窄,出血などが改善しなかったり再発するものである.術式の選択にも注意すべき事項があり,術後の逆流性食道炎にも種々の問題点がある.

食道静脈瘤

著者: 三條健昌 ,   出月康夫

ページ範囲:P.461 - P.470

 門脈圧亢進症は,肝臓を経て下大静脈に流入する血流の途中経路の血管抵抗の増大と,門脈圧の亢進により生じた多数の側副血行路の血管抵抗,さらに門脈系に流入する血流量の増大などが相互に関連して発病する.多数存在する側副血行路の一部が食道静脈瘤を形成するが,食道静脈瘤の破裂は,食道静脈瘤の周囲組織からの支持の脆弱化,壁の菲薄化,口径の拡大,静脈瘤内圧の食道内腔圧との較差の増大が,食道静脈瘤壁とそれを被う食道壁の弾性線維により生ずる張力と食道静脈瘤を内側から広げようとする力との均衡を破綻させるためにおこる.
 外科的治療の成績は,この血行動態からみた術式の合理性,術式のもつ手術侵襲,原疾患の進行度,合併症(肝癌など)の有無により左右されることになる.したがって適応は術式により異なる.経腹的食道離断術では,肝外門脈閑塞症,特発性門脈圧亢進症,肝破変のうちChild分類A,Bを適応とする.

急性出血性胃病変

著者: 島津久明

ページ範囲:P.471 - P.476

 近年,上部消化管出血に対する保存的止血法の進歩には目覚ましいものがあり,急性出血性胃病変の止血にも大きく貢献している.しかし,その止血成績は慢性消化性潰瘍の場合ほど良好ではない.通常,大量出血を起こす急性胃病変の多くは種々のストレスを背景とするが,一般にストレスが重症な場合ほど止血成績は不良である.これは外科治療についても同様で,重症のストレスを背景とする重篤な患者の成績は同様にきわめて不良である.したがって,急性出血性胃病変に対する手術適応の判定に際しては,出血状況と同時に,各種のストレス負荷によってもたらされた全身状態を正当に評価することが重要であることを強調した.

消化性潰瘍

著者: 青木照明 ,   柏木秀幸 ,   秋元博

ページ範囲:P.477 - P.485

 今日,H2—受容体拮抗剤(以下H2—RA)が消化性潰瘍の保存的治療の中心となってきている.その高い治癒率により,全国アンケート調査によるH2—RA導入前後5年間の比較では,手術症例は前期49,132例より後期27,390例と44.3%の減少が認められた.しかし,合併症潰瘍症例は前期22,962例より後期19,826例と13.7%の減少であり,手術例の減少は,主として難治性潰瘍としての相対的手術適応症例の減少によるものであった.
 H2—RAによる消化性潰瘍治癒率は,胃潰瘍で69.3〜84.4%(内服8週後),十二指腸潰瘍で68.1〜82.2%(内服6週後)であるが,胃潰瘍の25〜27%,十二指腸潰瘍の10〜15%がH2—RA抵抗性潰瘍となる.より完全な酸分泌の抑制により潰瘍治癒率は向上するが,治療中止後の再発率は6ヵ月で胃潰瘍17〜70%,十二指腸潰瘍50〜90%と高く,症例により,間歇療法または維持療法の選択が必要である.維持療法の適応症例で,長期にわたる服薬が困難な症例が外科治療の適応であり,永久的維持療法にふさわしい術式の選択が必要となる.反面,重篤併存疾患を有する高齢者では手術そのものの適応がなく,維持療法の継続が心要である.
 合併症潰瘍に対する外科治療の適応は,原則的には変化がない.出血性潰瘍については,内視鏡的止血法などにより,緊急手術を避けることが望ましいが,手術のタイミングを逸することがないように注意が必要である.

十二指腸憩室

著者: 高橋渉 ,   藤谷恒明 ,   伊藤契 ,   佐藤寿雄 ,   田所慶一 ,   伊勢忠男

ページ範囲:P.487 - P.494

 十二指腸憩室の大部分は臨床的意義がないとされているが,そのなかで,旁乳頭憩室は胆道・膵疾患の誘発因子として早くから注目されてきた.旁乳頭憩室を臨床像および十二指腸内圧負荷による胆道内圧の面から検討すると,旁乳頭憩室の胆道に対する影響は3群に分類できるものと考えている.ここでは,それぞれに対する手術適応および手術術式の選択に関する著者らの考え方とその問題点について述べた.さらに,最近の考え方とその変遷についても言及した.

癒着性イレウス

著者: 三重野寛治 ,   武田義次 ,   四方淳一

ページ範囲:P.495 - P.499

 癒着性イレウスの手術適応となる症例は以前に比較して減少してきている.胃管を挿入して4〜5日経過した後,腹部X線で小腸ガスが消失していなければ手術適応という時代は過去となった.教室では改良を重ねてきたlong tubeを使用し,治療とともに手術適応を決定すべく積極的に小腸造影を行っている.大部分の癒着性イレウスはこのlong tubeで寛解をみるが,明らかに手術適応という客観的画像診断を得る症例がある.また癒着性イレウスの中に絞扼性イレウスがあり,特にその軽症型は手術適応が難しい.USに熟達することも大切である.

Crohn病

著者: 亀山仁一 ,   星川匡 ,   三條敏邦 ,   田中丈二 ,   矢作祐一 ,   石田一 ,   森野一真 ,   塚本長

ページ範囲:P.501 - P.507

 Crohn病は良性疾患であることから,本来は内科的保存的療法で治療するのが望ましい.しかし,内科的療法を行ったとしても,結局は外科的に手術を行わなければならなくなる症例が多い.その手術適応としては小腸型では狭窄,大腸型では難治例が多く,主病変の部位により,若干手術適応は異なっている.狭窄や難治以外には,瘻孔,膿瘍,toxic megacolon,成長障害,穿孔,癌化あるいは癌の合併,肛門部病変などが手術適応としてあげられている.
 今回はこの他に,特殊な部位に発生した場合や,小児,高齢者のCrohn病などについても内外の若干の報告を紹介し,私見を述べた.

潰瘍性大腸炎

著者: 福島恒男 ,   諏訪寛 ,   石黒直樹 ,   杉田昭 ,   久保章 ,   相田芳夫 ,   竹村浩 ,   土屋周二

ページ範囲:P.509 - P.514

 本邦の潰瘍性大腸炎症例の約15%が手術を受けており,手術適応となる潰瘍性大腸炎は全大腸炎型の症例である.緊急手術は大出血,中毒性結腸拡張,穿孔などの際に行われるが,実際にはこれらの数は少ない.待機的手術の適応としては癌合併,発育障害,腸管外合併症など明らかなものもあるが,これらの適応で手術となるものも少ない.臨床的には難治という適応で手術になることが多いが,最近は難治性潰瘍性大腸炎が規定され,それに当てはまる症例は手術を受けた方が良いと考えられている.
 難治性とは,①慢性持続型,②再燃後の6ヵ月以上なお活動期にある,③頻回の再燃を繰り返す症例である.

肝良性腫瘍

著者: 内野純一 ,   中島保明 ,   宇根良衛 ,   佐藤直樹 ,   柿田章 ,   佐々木文章

ページ範囲:P.515 - P.523

 最近の画像診断の進歩,普及に伴い,肝の良性腫瘍は以前より高頻度で発見されるようになってきた.このため,これらの疾患に対する手術適応も変化してきている.
 過去10年間に当科で経験した肝良性腫瘍は101例で,内訳は肝海綿状血管腫54例,肝嚢胞41例,FNH3例,LCA,胆管嚢胞腺腫,骨髄脂肪腫各1例であった.このうち,手術は59例(58.4%)に対し行った.
 これらの自験例に検討を加え,肝良性腫瘍の手術適応に対する最近の考え方について考察した.

無症状胆石症

著者: 松峯敬夫 ,   梅北信孝 ,   丸山嘉一 ,   嘉和知靖之

ページ範囲:P.525 - P.531

 近年,胆石保有者の増加や診断率の向上とともに無症状胆石症も急増し,その治療法の確立が大きな課題となっているが,いまだ明確な結論は得られていない.そこで本稿では,自験例を中心に,臨床・病理の両面から無症状胆石症の特徴を示し,①無症状とはいえ,摘除胆嚢はいずれも何らかの慢性炎症性変化を示し,基本的に有症状例と異ならないこと,②発癌の可能性が少ないとはいえ,微小(あるいは早期)胆嚢癌の存在を確実に否定し得ず,また発癌の予測を立て難いこと,を主たる根拠として,原則的に早期手術を行うべきことを述べた.

慢性膵炎

著者: 宮崎直之 ,   山本正博 ,   斎藤洋一

ページ範囲:P.533 - P.538

 慢性膵炎手術症例69例の治療経験にもとづいて,慢性膵炎の手術適応について検討した.教室では手術適応を,①疼痛が著しく内科的治療の無効なもの,②膵嚢胞,膵膿瘍,膵瘻の合併するもの,③胆道狭窄や胆道疾患を合併するもの,④膵癌の疑いのあるもの,⑤その他,としている.自覚症状が軽度で合併症も認めない膵石症例はただちに手術とは考えておらず,ただ膵癌を合併する頻度が少なくないという点も考慮し厳重なfollow upを行う方針をとっている.
 最近,厚生省特定疾患・難治性膵疾患調査研究班により,慢性膵炎の治療指針の改訂,手術適応,術式の選択を含めた外科的治療指針の作成も試みられており,今後はこれらの指針に準じた治療をすすめていきたい.
 術後の疼痛に対する効果は,消失もしくは軽減したものが87.5%にみられ,ほぼ満足すべき成績が得られたが,耐糖能の変化では不変例・悪化例がほとんどであった.
 慢性膵炎の病期や病態はきわめて複雑であるため,膵病変の実態や本症に随伴する合併症を十分に把握し,さらに症例個々の社会的背景,quality of lifeを考慮して手術適応を的確に判断することが重要であり,退院後も十分な生活指導が必要である.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 食道内視鏡シリーズ・Ⅶ

内視鏡超音波検査—ラジアル式(その1)

著者: 村田洋子 ,   井手博子 ,   鈴木茂

ページ範囲:P.437 - P.439

はじめに
 食道癌の正確な進行度診断は,治療法すなわち,非観血的治療,術前の合併療法,手術術式の選択決定に必要である.内視鏡超音波検査(endoscopic ultra-sonography, EUS)は,食道癌の進行度診断のうち重要な,深達度診断,リンパ節転移の判定に有用であった.そこで本稿では,食道癌診断におけるEUSの手技,オリエンテーションを中心に述べる.

表紙の心・16

外科医の草分けジャン・ピタール

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.523 - P.523

 グザヴィエ・ビシャー(Xavier Bichat,1771〜1802)の像が立っているのは旧医学部館の前である.その建物の正面の高い所には5人の横顔のレリーフがついていることは既に紹介した.左の2人が右を向き,右の3人が左を向いている.いずれも外科医で,この建物が外科医の力で造られたものであることを後世に伝えている.
 一番右ジャン・ルイ・プティ(Jean Louis Petit,1674〜1750)は1988年の3号に登場した王立外科アカデミーの初代会長である.一番左にあるのが今月の写真ジャン・ピタール(Jean Pitard,1228〜1315)である.ピタールは後に聖ルイと呼ばれるようになるルイ9世(Louis IX,1214〜1270)の侍医であった.1260年頃彼が外科医組合の結成を呼びかけたのである.ヒポクラテス(Hippocrates,BC460?〜375?)の時代以前から外科という言葉も外科の技もあったのに,外科医という職種が生れたのはこの13世紀の後半である.

Spot

北里柴三郎飛躍の基盤—破傷風菌純培養100年

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.539 - P.540

 1889年4月27日のことである.ベルリンの第18回ドイツ外科学会において北里柴三郎(1852〜1931)が破傷風菌の純培養に成功したことを報告している.今年がちょうど100年目に当るので注目していただきたい.
 発表の場が細菌や衛生領域の学会でなく,外科学会であるところが面白いし,本誌に載せたい理由である.破傷風は外傷に関連して起こる特異な症状を呈する外科的疾患として大きな地位を占め,恐れられていたのであった.

文献抄録

モノクローナル抗体を用いたradioimmunoguided surgery

著者: 葛岡真彦

ページ範囲:P.541 - P.541

 Radioimmunoguided surgery(RIGS)は術中に癌組織の存在を検出できる新しい技術である.術前に放射性同位元素でラベルされたモノクローナル抗体を担癌患者の静脈内に投与すると,抗体が腫瘍細胞膜あるいはその近傍に存在する抗原を認識し結合する.そこで,腫瘍組織に集積した放射能すなわちガンマ線量を,軽便なガンマ検知器により手術中に測定することができる.
 今回,マウスIgGモノクローナル抗体B72.3を125Iでラベルしたものを使用したが,B72.3は消化器癌,卵巣癌,乳癌に対して高い抗原性を有することが知られている.本ガンマ検知器は放射線源からのガンマ線を検知し,単位時間あたりのカウント数と音声に変換し,カウントの増加に従って音程が上昇する.モノクローナル抗体B72.3の腫瘍集積性はin vivoで以下のごとく検討した.ヒト結腸癌株CX−1を移植したヌードマウスに,125IでラベルしたB72.3を腹腔内投与し,投与後21日間にわたり腫瘍,正常組織,血液中のガンマ線量を測定した.腫瘍・正常組織比,腫瘍・血液比は時間の経過とともに増加し,抗体投与21日後に各々50:1,13:1と最高値を示した.

研修医セミナー 一般外科手術記録の書き方

Lesson6 胆嚢切除術(Cholecystectomy)

著者: 小越章平

ページ範囲:P.542 - P.545

Ⅰ.記載のポイント
 1.麻酔の方法(普通は全麻)。 2.皮膚切開の方法(2,3あり)。 3.腹腔内の所見。 4.胆嚢ならびに周辺の所見。 5.胆嚢切除術(順行性,逆行性)。 6.胆嚢床の処理。 7.総胆管ならびに局所ドレナージの有無。 8.皮膚縫合。 9.患者の状態と結び。

老医空談・8

臨床外科医の"恕"思

著者: 斉藤淏

ページ範囲:P.546 - P.547

 私は,年の暮になると,特定の漢字を選んで翌年の愛用に備えることにしている.一昨年は"敬"であった.昨年は"恕"を用いた.これはさる大会社の若いB社長が,高名作家のすすめによって決めてくれたのであった.
 恕の字は論語にある有名な字である.論語(金谷 治訳注)によると,「子貢が孔子にたずねていった,ひとことだけで一生行っていけるということがありましょうか,と.子曰,其恕乎,己所不欲,勿施於人也.自分の望まないことは人にはしむけないことだ.」自分を思うのと同じように相手を思いやる,恕思の心である.自分に引き比べてみて他人を同情し寛大にゆるす,寛恕の心である.

一般外科医のための形成外科手技・4

外傷創の扱い方—顔面外傷を中心に

著者: 山田敦

ページ範囲:P.549 - P.554

はじめに
 顔面は個人を表す代表的部位であるので,顔面に機能障害や変形を残すと,精神的苦痛は大きく社会生活にも支障を来すことになる.したがって,顔面外傷ではできるだけこれらを軽減するように努力せねばならない.
 顔面外傷では,他の部位の損傷以上に初期治療の適否によってその予後が決定される.

手術手技

乳房欠損に対するTissue expander法の応用

著者: 岩平佳子 ,   丸山優

ページ範囲:P.555 - P.559

はじめに
 乳房欠損に対する再建手術については,近年,初期乳癌に対して非定型的乳房切断術が普及し,これをうけた患者の乳房再建の増加が目立っている.
 乳房再建術は,①皮弁等の自家組織移植による方法,②プロテーゼ等の人工物により補充する方法,③①,②両者を併用する方法の三者に大別される.これらの選択は残存する組織量によりなされるものであるが,出来る限り少ない手術侵襲で再建を行うことが望まれる.

臨床報告

バルーンカテーテル挿入が有効であった総腸骨動脈瘤破裂の1救命例

著者: 山下広高 ,   明比俊 ,   窪園隆 ,   井上博人 ,   坂東康生 ,   萬家俊博 ,   渡辺謙一朗 ,   藤田博 ,   曾我部仁史

ページ範囲:P.561 - P.564

はじめに
 近年非破裂性動脈瘤の手術死亡率が5%以下に低下したにもかかわらず,破裂性動脈瘤の死亡率は50%以上1,2)と依然高率である.この違いは術前後の出血性ショックによる全身状態の悪化を克服することが困難なことによる.また他疾患と誤診され診断が遅れがちになる場合が少なくないことも無視できない.今回われわれは回盲部痛を主訴として来院し,手術前にショック状態となったが,大腿動脈からバルーン付きカテーテルを挿入して大動脈を遮断し,Y字型人工血管置換術により救命しえた総腸骨動脈瘤破裂の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胸腺脂肪腫の治療経験と文献的考察

著者: 谷口英樹 ,   仲宗根朝紀 ,   綾部公懿 ,   川原克信 ,   赤間史隆 ,   富田正雄

ページ範囲:P.565 - P.568

はじめに
 胸腺脂肪腫は非常に稀な胸腺由来の良性腫瘍である.その報告はいまだ数少なく,欧米で60余例,本邦では10数例を数えるにすぎない.著者らは検診にて縦隔異常陰影を指摘され,胸部CTにて診断しえた胸腺脂肪腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

内視鏡的食道静脈瘤硬化療法後に発生した急性心膜炎症例の経験

著者: 出口浩之 ,   末広厚夫

ページ範囲:P.569 - P.571

はじめに
 今回,著者らは内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(以下硬化療法)後の合併症として極めて稀であると考えられる1,2)急性心膜炎を発生した症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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