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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科44巻7号

1989年07月発行

雑誌目次

特集 食道癌の手術

頸部食道癌根治手術—切除と郭清

著者: 山名秀明 ,   掛川暉夫 ,   藤田博正 ,   白水玄山 ,   南泰三

ページ範囲:P.879 - P.884

 頸部食道癌は,解剖学的位置関係からみて隣接臓器に浸潤しやすいが,これらの臓器の大半は,容易に合併切除が可能である.また,頸部食道癌のリンパ節転移形式をみると,胸部食道癌と異なって頸部にとどまっているものが多く,われわれの検索では胸部および腹部リンパ節の転移率はそれぞれ11%と3%で,胸部に転移を認めたリンパ節は,胸部上部傍食道リンパ節であった.このように頸部食道癌の切除郭清術は胸部食道癌に比べると比較的容易で,術後の遠隔生存率も良好である.しかし,食道癌特有の性質を有していることには変わりはなく,癌多発や粘膜内浸潤,壁内転移などを24%前後に認めている.これらの点を考慮し,われわれが行っている頸部食道癌の標準的切除郭清術について紹介した.

頸部食道癌根治手術—腸管遊離移植による食道再建

著者: 加藤抱一 ,   日月裕治 ,   渡辺寛 ,   小野勇 ,   海老原敏 ,   中塚貴志 ,   波利井清紀

ページ範囲:P.885 - P.889

 頸部食道の再建法として,40例の腸管遊離移植の経験から,その手技上のポイントを示し,有用性を強調した.腸管遊離移植に重要なことは,優れた微小血管外科医と,その他の外科医のチームワークであり,具体的ポイントは,移植床血管の的確な処理,適切な腸管の採取,移植床における腸管と血管の適切な配置である.移植腸管はヘパリン化や冷却なしに室温にて阻血3時間までは生着に問題がない.合併症の大部分は口側消化管の縫合不全であったが,腸管遊離移植に関して,致命的となる合併症はなく,他の頸部食道再建法に比べても,より安全で確実な方法であり,食物の経口摂取も日常生活に差し支えない程度に十分可能である.

頸胸境界部食道癌根治手術

著者: 鶴丸昌彦 ,   宇田川晴司 ,   小野由雅 ,   渡辺五朗 ,   鈴木正敏 ,   佐藤滋 ,   松田正道 ,   竹内晴彦 ,   梶山美晴 ,   秋山洋

ページ範囲:P.891 - P.897

 頸胸境界部食道癌は症例も少なく進行したものが多い.頸部食道と胸部上部食道にまたがるためこれら両者の特徴を兼ね備えている.すなわち,リンパ節郭清の範囲は頸部上部から腹部まで広汎に行う必要があり,またアプローチとしても胸部上部食道癌の3領域郭清術式にさらに胸骨縦切開を追加した方法が望まれる.喉頭合併切除が行われる場合は,術後の腕頭動脈からの大出血を念頭において,大胸筋などの筋弁を腕頭動脈と気管の間に挿入する必要がある.本稿では筆者が現在行っている頸胸境界部食道癌に対する標準術式について述べた.

胸部食道癌切除郭清術式

著者: 松原敏樹

ページ範囲:P.899 - P.904

 胸部食道癌の転移好発リンパ節は頸胸境界部から上腹部まで広汎に分布している.特に頸胸境界部,左側縦隔,食道裂孔周囲は確実な郭清が必要な部位であるが,視野の展開が不良となりやすい.また,上中部食道は気管系と支配動脈や支配神経を共有しており,この部の拡大郭清は気道系の合併症を生じやすい.胸部食道癌の郭清術式においては,適切な剥離層を選択して郭清効果の期待されるリンパ節群を確実に郭清すると同時に,気道系の脈管や神経の温存にも細心の注意を払う必要がある.われわれは頸部郭清および腹部郭清を先行することによって領域リンパ節の確実な郭清を心がけている.本稿ではわれわれの行っている標準的切除郭清術式の要点をシェーマに基づいて述べる.

胸部食道癌根治手術—胃による食道再建

著者: 田中乙雄 ,   武藤輝一 ,   佐々木公一

ページ範囲:P.905 - P.908

 胸部食道癌根治手術における胃による食道再建は手術手技が比較的容易であることよりもっとも標準的に行われている術式である.胃による食道再建で注意すべきことは,リンパ節転移頻度の高い噴門リンパ節,小彎リンパ節の郭清を徹底させることと,頸部までの十分な長さと良好な血流を保持した胃管を作成することである.われわれの術式の特徴点としては,①胃管による食道再建を行った後,右開胸により癌腫の摘除を行う,②胃管形成に際して教室で開発した胃管形成鉗子を用いていることである.本稿では胃管による食道再建の実際について述べる.

胸部食道癌根治手術—結腸による食道再建

著者: 吉野邦英 ,   遠藤光夫

ページ範囲:P.909 - P.913

 結腸による食道再建で手技上最も大切なことは,血行がよく十分長さに余裕のある結腸を,いかに安全に頸部へ挙上するかということである.このためには結腸全体を周囲より授動して,transilluminationによって血管系を十分によく観察することが必要である.とくに回盲部,左右結腸曲付近の辺縁動脈に,断絶や狭小化などがないかどうかをよく確かめる.右側結腸か左側結腸の選択は,辺縁動脈の状態の良い方にする.左側の場合は左結腸動脈を,右側の場合は中結腸動脈を栄養血管とする有茎結腸を作成し,いずれも順蠕動性に挙上する.挙上に際しては,辺縁血管に沿って挙上に必要な長さを測り,十分余裕をもたせて結腸の切離部位を決定すべきである.

胸部食道癌根治手術—小腸による食道再建

著者: 赤石隆 ,   西平哲郎

ページ範囲:P.915 - P.919

 空腸による胸部食道の再建術式は近年増えつつある胃切除後の症例にも適用し得る汎用性の高い手技である.そのポイントは,挙上のための血管処理と血行改善のための腸管の処理とに要約される.前者は近位側の2〜4本の空腸動脈の切離を行い,血管弓を茎として用いることにより達成され,後者は肛門側吻合部より肛門側の空腸を犠牲として切除することによって達成される.胃を用いた再建術式より時間がかかるが,術後の愁訴や栄養状態の評価の面では秀れている.

左開胸・開腹連続切開による下部食道噴門部癌根治手術

著者: 安藤暢敏 ,   篠沢洋太郎 ,   大森泰 ,   阿部令彦

ページ範囲:P.921 - P.925

 下部食道噴門部癌に対する術式として,左開胸・開腹連続切開によるアプローチは,胸腹移行部の連続した術野を直視下に確保でき,開胸開腹とはいえ呼吸循環に及ぼす侵襲が少なくその応用価値は高い.大動脈,横隔膜への浸潤癒着傾向が高度でなければ,まず腹部操作を先行させ上行性に郭清を進め,噴門部操作に移る時点で開胸操作を開始し,最後に食道を切離する.横隔膜切開は肋骨弓切離部より,心嚢の横隔膜付着部と左横隔神経の横隔膜への到達点との間を,横隔神経をよけながら食道裂孔へ向けて進める.左横隔神経の胸骨枝の一部は切離されるが,前外側枝および後外側枝は温存されるので,横隔膜機能は損なわれない.

胸骨縦切開・開腹による下部食道噴門部癌根治手術

著者: 小西敏郎 ,   森潔 ,   吉田純司 ,   平田泰 ,   三山健司 ,   真船健一 ,   平石守 ,   出月康夫

ページ範囲:P.927 - P.932

 下部食道噴門部癌に対して,下部食道の十分な切除および食道裂孔周囲や下部縦隔の徹底的な郭清が非開胸的に行える方法として,上腹部正中切開による開腹に胸骨正中切開を加えたアプローチがある.教室では1976年より本法により下部食道噴門部癌を積極的に切除してきたが,この方法による手術の対象となった症例はほとんどが食道への浸潤を伴った胃癌であり,食道癌には本術式の適応は多くないものと思われる.しかし,本術式により切除された食道癌例を経験しており,食道癌でも時には本術式の適応になりうることも考えられるので,本術式の手技と教室におけるこれまでの成績をまとめ,下部食道噴門部癌の手術治療に対する現在の方針を述べた.

胸部下部食道癌における胸部食道亜全摘右胸腔内高位食道胃吻合術

著者: 高木巌 ,   篠田雅幸

ページ範囲:P.933 - P.939

 胸部下部食道癌に対するわれわれの標準術式はNo105-112の広汎なリンパ節郭清を伴う胸部食道亜全摘右胸腔内高位食道胃吻合術である.頸部リンパ節郭清は主病巣切除時には行わず,術後のfollow—upを厳重にして,後発する頸部転移の早期発見,早期郭清を心掛けた.本術式の採用頻度は全Ei食道癌切除例54例中44例(81.5%)であった.結果は全Ei食道癌切除例に直死例はなく,5年生存率は32.8%であった.うち胸腔内高位吻合例では,全症例の5生率は32.4%,COを除けば37.9%であり,術後のquality of lifeは良好であった.
 以上の成績は著者らの主張する術式が胸部下部食道癌根治術式として,一般に採用可能な術式であることを示したものと言えよう.

Blunt Dissection(Transhiatal Resection)

著者: 唐木芳昭 ,   藤巻雅夫 ,   加藤博 ,   島崎邦彦 ,   中村潔 ,   穂苅市郎 ,   山田明 ,   小田切治世 ,   坂本隆

ページ範囲:P.941 - P.945

 胸部食道の非開胸抜去法には用指的抜去法とvein stripperなどを用いる飜転抜去法がある.教室では手術は頸部チームと腹部チームに分かれて同時に行っている.頸部食道から胸部上部食道にかけての抜去操作は食道を頭側に,経食道裂孔からの操作は肛側に食道を十分に牽引させて行うことと,用指的に食道を周囲組織から剥離するときには,手指は常に食道に触れていて,食道が手の内にあることを確認していることが重要である.用指的方法では症例に応じて頸部側あるいは腹部側に抜去している.飜転抜去法では腹部側に抜去している.

食道癌に対する結腸を用いたバイパス手術

著者: 甲利幸 ,   今岡真義 ,   古河洋 ,   福田一郎 ,   石川治 ,   佐々木洋 ,   小山博記 ,   岩永剛

ページ範囲:P.947 - P.951

 切除不能食道癌に対する有茎結腸を用いたバイパス手術手技について述べた.本術式において,最も重要なことは,用いる結腸の血管茎の選択である.全結腸を後腹膜より遊離し,血管茎を慎重に観察,選択する必要がある.利用する結腸は可能な限り回盲部を含めた右半結腸を用い,食道回腸吻合を行うことが好ましい.この場合,Bauhin弁機能により術後逆流性食道炎の防止に役立つ.
 最近の進行食道癌に対する治療の進歩,および経口摂取を目的としての内視鏡的挿管術がよく行われる現在,食道バイパス手術の手術適応については,より慎重な配慮が必要である.

食道挿管法—食道ブジー挿管術について

著者: 小泉博義 ,   小澤幸弘 ,   有福孝徳 ,   玉井拙夫 ,   熊本吉一 ,   青山法夫 ,   赤池信 ,   南出純二 ,   松本昭彦 ,   西島護 ,   柴田稔

ページ範囲:P.953 - P.958

 1983年,新しい考えの押し込み法による食道挿管法を開発した.その理論は,食道狭窄屈曲が著しい場合,何が同部を通過させやすいのかにある.その結果,食道ブジーに人工食道とプッシャー・チューブを抱かせ,食道ブジーの要領で押し込む食道ブジー挿管術に至った.
 今までに39症例に施行し,挿管後の生存日数(平均日数)は次のごとくである.切除不能食道癌9例:3〜150(73)日,食道癌の気道系瘻孔13例:6〜226(74)日,切除不能胃癌6例:11〜241(80)日,胃全摘術後再発6例:34〜454(192)日,その他5例である.
 本法は,非観血的意識下挿管であり,翌日から全粥摂取可能となるので有用である.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 食道内視鏡シリーズ・Ⅹ

内視鏡超音波検査—リニア型(その2)

著者: 神津照雄

ページ範囲:P.872 - P.875

Ⅲ.食道癌の診断(つづき)
 リンパ節転移の診断に関しては,現在CT, MRIよりも小さい3〜4mm大のものから描出できるEUSの方が有利である.とくに食道癌ではリンパ節は食道壁に接しており,リンパ節内の内部エコーを近接して観察することができる.
 図13の症例は,術中写真でも分かるように縦隔内の最上部に食道に接してみられたNo.105の球形の転移リンパ節である.教室では転移リンパ節の診断基準を作成し,数字的に客観的判断ができるようにしている.

文献抄録

乳癌の発生に対するカロリー源栄養素の影響について

著者: 正村滋 ,   藤原潔

ページ範囲:P.884 - P.884

 動物実験において脂肪,蛋白,カロリーを多量に摂取することが乳癌の増殖に影響を与えることが判明しつつある.食餌の影響は国際間,あるいは国内においても食餌習慣の違う地域によって,乳癌発生率が異なることからも推し測れる.これまで4つのcohortstudyが報告されたが,このうち3つは高脂肪摂取が乳癌発生のriskを高めるという結論を導くには不十分であったが,1つの報告は総脂肪,飽和脂肪の消費量が増加すると乳癌のriskが高くなることを示している.その他にも肉,脂肪と乳癌のriskとの弱い相関が報告されたり,またこれらの間で相関を認めなかったという報告が散見される.著者らはイタリアにおいて乳癌における食餌の影響を調査するためcase-con-trol studyを行い,脂肪や動物蛋白との疫学的関係について報告している.
 250人の乳癌女性を対象とし,コントロールは層別無差別に499人の一般女性を選んだ.食餌歴の質問により総脂肪,飽和脂肪,動物蛋白や他の主な栄養素量を推定した.多変量解析の結果,乳癌相対危険度の最も高いものは飽和脂肪,3.0(95%信頼区間,1.9〜4.7)と動物蛋白消費の2.9(95%信頼区間,1.8〜4.6)であった.脂肪摂取によるカロリーが28%未満の者は36%以上の者に比べriskは減少した.同様に,飽和脂肪摂取によるカロリーが9.6%以下かあるいは動物蛋白が5.9%以下の場合にriskが減少した.

表紙の心・19

—南フランスの医学の都—モンペリエのシンボル

著者: 大村敏郎

ページ範囲:P.914 - P.914

 聖ルイ王(Saint Louis,1212〜1270)や外科医の元祖ジャン・ピタール(Jean Pitard, 1228〜1315)が活躍したのは13世紀である.この同じ世紀に生れたものとしては医学部がある.フランスで最古のものはモンペリエ大学であった.
 モンペリエは古くから香辛料の商人たちが集散した町であった.中近東との交流があり,薬草の効力を知り,医学を研究する気運の高い町であったから,医学部が生れるのに応わしい土壌であった.1220年医学大学として発足し,これまであったいくつかの医学校の教育制度を統一し,試験を定めて全世界に通用する医師の資格を制定した.

研修医セミナー 一般外科手術記録の書き方

Lesson9 食道切除術(Ⅰ)(Esophagectomy)

著者: 小越章平

ページ範囲:P.959 - P.963

Ⅰ.記載のポイント
 1.麻酔,手術体位(右開胸,左開胸)。 2.開胸操作,胸部食道摘出,リンパ腺郭清,閉胸。 3.開腹操作,リンパ腺郭清,代用食道作成と経路の作成。 4.頸部操作,リンパ腺郭清,頸部食道・胃管または腸吻合術。 5.栄養瘻作成,閉腹,皮膚縫合ならびにドレーン。 6.患者の状態。

老医空談・10

医は人なり

著者: 斉藤淏

ページ範囲:P.964 - P.965

 医学会の会長は,同郷の誼しみからでしょうか,私に,遠くから参会された学者達のために歓迎の挨拶をするようにと命じられた.昨年の日本消化器外科学会(32回)の招宴の席であった.そこで私は,百万石城下の古都の美しい見どころはもちろん,金沢市民に染みついている伝統芸術の紹介につとめ,新々医学に精進している先生方には縁遠いようにも思われる芸術への橋渡しには恰好なところであると申し添えたのでした.
 このとき述べたことを中心に,まず,11年前同市で開催された日本外科学会の会長招宴の思い出から始めましょう.開会を待っていた一寸の間のこと,由緒ある大広間の照明が静かに消えて薄明りから真っ暗に移ろうとする時,笛の音がどこからともなく聞こえてきた.静寂,心身一如の境地へと誘い込まれる.数百人の外科医は,一人残らず術中の心境になっていたにちがいない.心憎い演出.昨年のテーブルでも,招かれた老外科医の中にはこの思い出を語り,あの時の老伶人の存命を聞いて喜ぶものがあったのでした.

一般外科医のための形成外科手技・7

植皮術の基本—1.遊離植皮

著者: 鳥居修平

ページ範囲:P.967 - P.973

はじめに
 皮膚欠損の治療の原則は早期に創閉鎖することである.その方法としてまず縫合を考えるが,欠損が大きい場合は皮膚移植(植皮)が必要となる.植皮は遊離植皮,有茎植皮(有茎皮弁移植),マイクロサージャリーを利用した遊離皮弁移植に分けられる.本論文では植皮のなかでも適応範囲の広い遊離植皮の基本手技について述べる.

外科医の工夫

フィブリン接着剤と血液凝固第ⅩⅢ因子製剤の併用により治癒せしめた難治性膵液瘻の1例

著者: 内野良仁 ,   滝野史労 ,   安永正浩 ,   平岡武久 ,   田代征記 ,   宮内好正

ページ範囲:P.975 - P.977

はじめに
 膵頭十二指腸切除術後の早期合併症である膵空腸縫合不全は,膿瘍や膵液瘻を形成するだけでなく,播種性血管内凝固症候群(DIC)や腹腔内出血などの致命的な合併症を来すことがある.とくに難治性膵液瘻は,患者の社会復帰を遅延させるだけでなく,その治療には苦慮することが多い.最近フィブリン接着剤を瘻孔内に充填し,瘻孔を閉鎖する方法が報告されている1〜3).われわれは難治性膵液瘻に対して,創傷治癒の促進を目的に血液凝固第ⅩⅢ因子製剤を全身的に投与し,フィブリン接着剤を瘻孔内に注入することにより瘻孔の完全閉鎖ができた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告

下咽頭梨状窩瘻を伴った急性化膿性甲状腺炎の1例

著者: 古川勝啓 ,   櫛田俊明 ,   土廣典之 ,   正宗克浩 ,   川人幹也 ,   牧野谷卓宏 ,   安藤道夫 ,   三宮建治 ,   佐木川光

ページ範囲:P.979 - P.982

はじめに
 小児期に繰り返す急性化膿性甲状腺炎は,その大部分が下咽頭梨状窩瘻によるとされている.高井,宮内らが多くの症例で,この先天性の瘻孔が感染経路であることを認めて以来,急性化膿性甲状腺炎の基礎疾患として知られるようになった.しかし,初回の発症で診断することは困難であり,既往に数回の炎症症状を認めるものがほとんどである.今回われわれは,幸運にも初回の発症で瘻孔を証明し,根治手術を行うことができたので報告する.

仮性腰動脈瘤破裂に対する塞栓術の経験

著者: 田中雄一 ,   花岡農夫 ,   瀬戸泰士 ,   鈴木敏文

ページ範囲:P.983 - P.985

はじめに
 仮性腰動脈瘤の報告は欧米では散見されるが1〜4),本邦では外傷性出血に対する腰動脈塞栓術の報告のみで5〜7),腰動脈瘤および塞栓術の報告は調べ得た限りではみられない.今回,われわれは仮性腰動脈瘤破裂と考えられる症例に対して経カテーテル的腰動脈塞栓術により止血し得たので若干の考察を加え報告する.

腹部大動脈瘤術後に発生したサイトメガロウイルス感染による下部消化管出血の2例

著者: 佐藤成 ,   佐々木久雄 ,   前山俊秀 ,   大熊恒郎 ,   諸星保憲 ,   森昌造

ページ範囲:P.987 - P.990

はじめに
 サイトメガロウイルス(cytomegalovirus,以下CMV)感染症は,別名巨細胞性封入体症とも呼ばれ,新生児,乳幼児にしばしばみられる疾患であるが,成人には稀とされている.われわれは,腹部大動脈瘤術後にCMV感染によると考えられる消化管出血の2例を経験し,剖検によって全身性CMV感染症と判明した.CMV感染に至る背景,消化管出血との関係などについて若干の検討を加え報告する.

腸重積症を来した回腸悪性リンパ腫の1例

著者: 河内康博 ,   衛藤泉 ,   山下勝之 ,   中村克衛

ページ範囲:P.991 - P.994

はじめに
 小腸原発の悪性リンパ腫は比較的稀な疾患である.最近われわれは,腸重積症を来した回腸悪性リンパ腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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