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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科45巻1号

1990年01月発行

雑誌目次

特集 肺癌の診断と治療 '90

肺癌のX線像—鑑別診断を含めて

著者: 河野通雄 ,   楠本昌彦 ,   足立秀治 ,   田中浩司 ,   酒井英郎

ページ範囲:P.17 - P.23

 肺癌は発生部位により,肺門部肺癌と末梢部肺癌に分けられる.末梢部肺癌は,その増殖形態により圧排増殖型,浸潤収縮型,浸潤置換型の3型に分類され,各々特徴的なX線像を呈する.腫瘤影の辺縁の性状および気管支,血管,胸膜など既存構造との関連性につき読影する必要がある.
 肺門部肺癌のX線像は,腫瘤影そのものの陰影をみることよりも,無気肺,肺炎,肺気腫などの腫瘍による二次変化像をみることが多く,中枢側気管支の狭窄,閉塞などを読影する必要がある.

CTおよびMRIによる肺癌進展度診断

著者: 鈴木正行 ,   高島力 ,   上村良一 ,   角谷真澄 ,   小林健 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.25 - P.29

 CTでは胸壁・縦隔と腫瘍との間の脂肪層が不明瞭な時,浸潤の評価が困難である.胸壁腫瘤形成,肋骨破壊や血管不整狭窄は浸潤陽性を示唆する.MRIは肺尖部肺癌で冠状・矢状断が得られ浸潤の評価が容易であり,心大血管と腫瘍との位置関係の把握も容易である.肺門リンパ節の描出はMRIが優れているが,偽陰性の多くは小転移で,MRIで描出可能としても転移との確診は難しい.縦隔リンパ節ではCTがより有効である.大動脈肺動脈窓や気管分岐部リンパ節の評価にはMRIが有用であるが,大きさを基準とする限りCT以上の質的な情報は得られないといえる.肺内転移をCTで疑っても結核腫や過誤腫などの良性病変との鑑別は難しいことがある.

肺癌診断における気管支鏡検査・肺生検

著者: 新妻雅行 ,   於保健吉

ページ範囲:P.31 - P.36

 肺癌診断における気管支鏡検査および肺生検についての最新の機器および検査技術を紹介する.気管支鏡検査の目的は観察と確定診断である.観察にはBF−6C20,生検などの確定診断にはBF−20が適している.また,肺癌の種々の増殖形態に対応した生検法の違いを述べ,さらに末梢型肺癌に対する気管支鏡検査の応用について解説する.目的に合った気管支鏡と適切な鉗子を使用することによって肺癌の組織型の決定,病巣の広がりを診断することができる.肺生検法としては経気管支的,経皮的および開胸肺生検の方法を述べる.気管支鏡検査および肺生検は最新の機器と検査技術を駆使し,安全にかつ確実に施行しなければならない.

肺癌に対する縦隔鏡検査の適応と評価

著者: 神頭徹 ,   人見滋樹

ページ範囲:P.37 - P.40

 近年,新しい治療法が肺癌に対してもいくつか試みられつつあるが,治療法が多様になるに従い,その適応のより厳格な選択が必要となり,縦隔のより正確な評価が不可欠となってきている.CTの発展はこの点に多大な寄与をもたらしたが,あくまでも画像診断であり,縦隔鏡の果たす役割は重要である.われわれの縦隔鏡を併用した治療体系を併せて紹介した.

肺癌診断における腫瘍マーカーの臨床的意義

著者: 池田貞雄 ,   塩田哲広 ,   松原義人

ページ範囲:P.41 - P.44

 多数のマーカーがある中で5種類を取り上げ,prospectiveに同時に測定したデータをもとに感度,特異度,診断効率の点から検討した.原発性肺癌244例と非癌肺疾患267例について検討した.感度,特異度と診断効率は,CEAでは38%,88%,33%,TPAでは56%,69%,39%,SCCでは25%,85%,21%,NSEでは17%,95%,16%,NCC-ST−439では25%,90%,22%であった.CEAあるいはTPAに,SCCとNCC-ST−439の二者,更にNSEを加えた三者での診断効率を比較するとほとんど差異がなく,初診時にはCEA,SCC,NCC-ST−439の三者を用い,特に高値を示すものがあれば,それで経過観察を行うのが合理的と考えられる.

肺癌の集団検診

著者: 馬場国昭 ,   島津久明 ,   川井田孝 ,   下高原哲朗 ,   三谷惟章 ,   田中俊正

ページ範囲:P.45 - P.49

 近年,わが国において増加の傾向が著しい肺癌の集団検診について,その実施状況と成果,発見肺癌の治療成績,意義と問題点などについて述べた.この方面の先駆的な業績として評価されている米国のMayo Lung Projectの報告は,胸部X線写真撮影と喀痰細胞診による肺癌検診を大きな規模で推進することを積極的に支持する結果を示さなかったが,これも決して肺癌集検の意義を全面的に否定するものではない.今後,多方面からの検討により有効な肺癌検診法の確立とそれによる肺癌治療成績の向上が望まれている現状を紹介した.

肺癌手術の治療成績とその現況

著者: 山口豊 ,   木村秀樹 ,   馬場雅行 ,   川野裕 ,   小高恵美子 ,   鈴木実

ページ範囲:P.51 - P.55

 原発性肺癌例に対する切除率はおよそ40%で,切除例全体の5年生存率は26%前後である.本稿では肺癌のうち小細胞癌,拡大合併切除を除く,標準術式の肺葉切除,肺摘除の行われた非小細胞癌切除例の外科治療の現況について述べた.最近10年間の切除例の遠隔成績は,自験例では5生率40%,他の報告では55〜59%と明らかに上昇してきている.成績向上の要因はstage Ⅰといった早期癌の占める頻度が近年では約40%とstage Ⅲのそれとは完全に逆転して増加してきていること,気管支形成術などの術式や周手術管理などの進歩が大きな役割を果たしていることが大きい.また集学的治療もその一因を担っているように考える.

肺癌の拡大手術の適応と評価

著者: 富田正雄 ,   綾部公懿 ,   川原克信

ページ範囲:P.57 - P.61

 肺癌に対する拡大手術の適応を中心に検討した.組織型では,扁平上皮癌で限局する病変がよい適応となるが,心膜・胸膜・胸壁・横隔膜・左房・副腎合併切除例に長期生存例があった.一方,食道大動脈合併切除およびn2,n3症例の予後は悪く,切除に強力な化学療法を中心とする合併療法により成績の向上をはかる必要がある.

高齢者肺癌の手術適応と治療成績

著者: 斎藤泰紀 ,   佐川元保 ,   藤村重文

ページ範囲:P.63 - P.67

 当施設における高齢者肺癌の外科手術成績を検討した結果,70〜74歳までの152例は全切除例の12%を占め,0・1期が39%あり,その5生率は79%であった.75歳以上の61例は全切除例の4.7%を占め,0・1期が43%あり,その5生率は77%であった.この結果は,69歳以下と比較し遜色がなかった.しかし,術死率は,69歳以下2.8%,70〜74歳で4.6%,75歳以上で8.2%で,年齢とともに増加した。高齢者においては,特に術前の機能的適応の厳密な評価と,術後に発生する様々な合併症に対する万全の対策が重要である.1980年以降の術死率は,70〜74歳で2.2%,75歳以上で6.0%と良好な結果を得ている.

肺小細胞癌の治療

著者: 土屋了介

ページ範囲:P.69 - P.75

 肺小細胞癌は発見時既に全身化しており,手術の適応はないものと長い間考えられてきた.しかしながら,化学療法と放射線併用による強力な治療によって局所の治療効果は奏効率として70〜90%という顕著な進歩を示したにもかかわらず,その後の局所の再発率の高いこと,しかも致命的なものであること,また,奏効率の上昇にもかかわらず生存期間の延長が限界に達したこと,さらにはこれらの症例の一部に局所の再発だけで遠隔転移の認められない症例のあることから,最近では再び胸腔内の原発巣に対する根治的な治療として切除が試みられるようになってきた.すなわち,固形癌の中でも最も集学的治療が期待されている分野の一つといえる.

進行肺癌に対するneoadjuvant therapy

著者: 渡辺洋宇 ,   龍沢泰彦 ,   清水淳三 ,   岩喬

ページ範囲:P.77 - P.84

 肺癌に対するneoadjuvant therapy(NAT)の目的は,進行肺癌の切除率の向上と,その生存率の改善にある.CDDPを主体とする多剤化学療法を術前に2〜3コース施行し,手術に持ち込むものであるが,最近では化学療法と放射線療法を併用したNATの報告が多くなっている.現在までの報告は,いずれも試行の段階であるが,NATによってX線像上70%内外の寛解が得られ,完全切除率は向上し,切除材料での腫瘍細胞の完全消失例もかなりの頻度でみられている.また,その予後も従来の進行肺癌の治療成績に比べて,中間生存期間の延長,生存率の向上などをみた報告もある.進行肺癌に対するNATの現況,その問題点,今後の検討課題などについて述べる.

非小細胞性肺癌切除例に対する免疫化学療法の現況

著者: 大田満夫

ページ範囲:P.85 - P.89

 非小細胞性肺癌に対する術後補助療法の現況を述べた.術後免疫療法は,Ⅰ期や治癒切除例に有効との成績がみられるが,全体としては無効の報告が多い.ただ癌性胸膜炎に対するBRM胸腔内注入は有効である.N-CWS免疫療法が術後平均3年間施行されたが,二次癌の発生は対照群との間に差を認めなかった.術後化学療法もrandomized trialではまだ明らかな有効性を示していない.有効無効種々であるが,Ⅱ・Ⅲ期例や非治癒切除例にCAP化学療法6コースで有効との報告は今後に期待をもたせる.補助化学療法は,より強力なレジメンで4〜6コース必要かも知れないし,またⅢ期例に有意差が出やすいことも考えられる.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 食道内視鏡シリーズ・ⅩⅥ

食道静脈瘤

著者: 幕内博康 ,   町村貴郎 ,   杉原隆 ,   三富利夫 ,   大森泰 ,   重田廣昌 ,   山崎栄龍 ,   熊谷義也

ページ範囲:P.11 - P.13

はじめに
 食道静脈瘤は出血により死亡する危険性も高く,また,救命しえてもその処置が遅れれば肝予備力の減少を来たし,予後不良の原因ともなる.内視鏡による食道静脈瘤の詳細な観察,速やかな止血術が欠くことのできない日常診療技術の1つとなってきている.そこで,食道静脈瘤出血時の観察法と止血術につき内視鏡像を呈示して解説する.

一般外科医のための形成外科手技・13

大網を用いた再建術

著者: 波利井清紀

ページ範囲:P.91 - P.95

はじめに
 大網は血管とリンパ管を豊富に含んだ脂肪性の臓器であり,感染に対する抵抗力があるので知られている.大網を使った外科領域の再建術には,肝硬変に由来する腹水の治療として行われたDrummond手術や虚血心筋に対するcardio-omentopexyなどが古くより報告されており,血管やリンパ管の再生に対する大網の特殊な性質が認められていた.
 1960年代よりはGoldsmithらが有茎大網移行術による慢性リンパ浮腫の治療,人工血管の保護,胸腔内食道吻合部の保護などを,Castenらが下腿血行再建を相次いで報告1〜3),Vinebergが遊離大網移植による虚血心筋の血行改善を認めている4).しかし,大網をいわゆる形成外科的な再建術に用いたのはKiricutaらで,放射線壊死部の治療,難治性瘻孔の閉鎖,頸部食道再建,乳房再建など多方面に行われている5).また,マイクロサージャリー導入後は,大網を血管柄付遊離移植として自由に移植するようになり,皮弁の代用としてのほか,陥凹部の修正,慢性骨髄炎の治療などにも用いられている6,7).大網は腹部一般外科医が常日頃親しんでいるものであるが,比較的軽んじられるためかその血行形態にもあまり注意が払われていないようである.しかし,大網をうまく利用すれば困難な再建手術も簡単に行えることがあり,大網を使った再建術を知っておくと便利である.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson17 胃全摘術(Total Gastrectomy)

著者: 小越章平

ページ範囲:P.97 - P.101

 Dr.Oです。1987年6月号から16カ月の間,「一般外科手術手技のポイント」と題して連載を続け,その後「手術記録の書き方」も12カ月となりましたが,昨年暮に「イラスト外科セミナー」として一冊にまとめました。全国からいろいろとご意見をいただき感謝してます。要望に応じて今月よりアドバンスド・コースとして,再び手術のポイントの連載を続けたいと思います。はじめは胃全摘術ですが,これも施設により方法はまちまちです。摘出の方は,前のLesson 11,12などを参考にして行なって下さい。ここでは再建術のみについて記載していきます。

心の行脚・4

畏敬すべき先達

著者: 井口潔

ページ範囲:P.102 - P.103

 最近「回想の明治維新」という題の岩波文庫本を読んだ.昭和62年初版の最近の訳書である.その内容もさることながら,著者そのひとの生涯が強烈に私の心を把えた.著者はレフ・イリイッチ・メーチニコフ(1838〜1888)というペテルスブルグ生れのロシア人で,腸内細菌叢と乳酸菌製剤に関連して不老長寿論を唱え,1908年にノーベル賞をとったイリヤ・メーチニコフの実兄に当る,また,トルストイの小説「イワン・イリッチの死」の主人公はこの著者の長兄である.このような血筋の著者の50年の生涯は小説よりも奇なる波瀾に富むもので,明治7〜8年にわたり語学教師てして来日している.そのときの回想記がこの本である.
 本人は不羅奔放な反骨精神の持主で,ペテルスブルグ医科大学を含めて関係の学校はすべて一年そこらで放校となり,亡命を続けるうち,ヨーロッパ各地で勃発する革命運動に参加し,特異の語学の才と思索のひらめきで革命指導者に知遇を得,独自の思想を精力的に400余編の論文に書き残したが,あまり後世に伝えられることはなかった.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・4

胆道再建術の要点と肝内結石症の手術

著者: 加藤紘之 ,   下沢英二 ,   児嶋哲文 ,   田辺達三

ページ範囲:P.105 - P.107

はじめに
 肝内結石症の成因をめぐる議論は多いが,発症の時点ではすでに多数の結石を肝内に含有する例が多く,いかに機能温存下に完全除去できるかについて,種々の工夫が加えられている.本稿ではまず胆道再建術の要点について述べ,次に肝内結石症の治療法をも取り上げてみた.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・5

上部胆管癌に対する肝門部切除術

著者: 加藤紘之 ,   下沢英二 ,   児嶋哲文 ,   田辺達三

ページ範囲:P.108 - P.111

はじめに
 上部胆管癌は黄疸を初発症状とするため発見が早く,また比較的緩徐な発育様式をとることが多いので,適切な治療により根治性を高め得る1〜4).しかし,左右肝管分岐部からさらに肝内へ浸潤している例もあり,PTCDによる減黄を順調に行うことがまず治療の第一歩となる5).これによって肝予備機能の向上,胆管炎対策などを行いつつ,最も根治性が得られ,また耐術する術式は何かを検討することになる.手術術式は病変の拡がり,個々の症例の予備力などを細かく調べた上で選択されるべきものであるが,本稿ではまず肝門部切除術について述べる.
 肝門部切除術は肝切除を行わず,肝門部より左右胆管をできるだけ肝臓側で切除し,再建する方法であり,肝予備機能不良例や高齢者に適応される.肝門部腫瘍の拡がりは肝側への非連続性進展例が多いことから,左右分岐部に腫瘍上限が及ぶような例では推奨されない.また,やや窮屈な術野の中で,肝動脈・門脈を温存しつつ,胆管が5〜6本に分岐するまで剥離切除をすすめることになる.

海外トピックス

中国における食道癌治療の現況—中国第2回全国食管癌会議に参加して

著者: 松原敏樹

ページ範囲:P.112 - P.113

 河北省石家庄市において,1989年10月10日より3日間,第2回全国食管癌学術会議が開催された.私は,会長の河北医学院第四医院張毓徳教授のお招きによりこの会議に参加し,また同医院における食道癌治療の現況を参観する機会を得た.
 中国の食道癌死亡率は16.7/10万で,胃癌に次いで高率である.食道癌発生率は地域差が著しく,邯鄲(食道癌死亡303/10万),陽城(169/10万),磁県(142/10万),林県(131/10万)等の超好発地域が太行山脈を囲んで河北省,河南省,山西省に分布している1)(図1).

臨床研究

線溶療法併用PTAによる下肢動脈閉塞症の治療経験

著者: 堀口裕司 ,   岸本充 ,   二瓶和喜 ,   浅野晋

ページ範囲:P.115 - P.118

はじめに
 Percutaneous transluminal angioplasty(以下PTAと略す)は,1974年にGrüntzig1)が特殊なバルーンカテーテルを開発して以来,慢性動脈閉寒症の治療法として急速に普及した.しかし,動脈が完全に閉塞してガイドワイヤーが閉塞部を通過しない場合には,本法を施行できず,PTAの限界と考えられていた.また閉塞部にガイドワイヤーを無理に通過させることによって合併症の頻度も増加する.このような症例にウロキナーゼを動注して血栓を溶解したのちPTAを施行することは,合併症の頻度を低下させ,成功率を高めるものと考えられる.当科でも7例の慢性下肢動脈閉塞症に対してウロキナーゼ動注を行ったのち5例にPTAを施行し得たので,若干の文献的考察を含め報告する.

臨床報告

耳下腺浅葉に発生したSchwannomaの1例

著者: 小沼博 ,   横沢保 ,   高橋千治 ,   中藤晴義 ,   中山淳

ページ範囲:P.119 - P.122

はじめに
 耳下腺腫瘍はよく経験される腫瘍であるが,その大部分は腺組織由来のものであり,神経組織由来の腫瘍は稀である.最近,われわれは耳下腺浅葉に発生したSchwannomaの1例を経験したので報告する.

広範な同時性肝転移を伴った早期胃癌の1例

著者: 菅沢章 ,   山根祥晃 ,   河野菊弘 ,   万木英一 ,   阿部重郎 ,   上田雄麓

ページ範囲:P.123 - P.127

はじめに
 胃癌の診断技術の進歩と検診の普及により胃切除症例に占める早期胃癌の割合は年々上昇し,最近ではその比率は30%前後であるとされている1,2).一般に早期胃癌の手術成績は良好であり満足できるものといえるが,早期胃癌といえども手術時の転移や術後再発が認められることも稀ではない.手術時のリンパ節転移は粘膜内癌では2.6%〜6.6%1,3),粘膜下層まで癌浸潤がある場合は18.8%〜23.9%1,2)と報告されている.一方,肝転移は全胃癌手術例に対して5.7〜14.5%1,4〜7)とされているが,早期胃癌の肝転移については本邦では自験例を含めて18例の報告が認められるのみで,きわめて稀である.
 われわれは胃前庭部の隆起型早期胃癌で,手術時既に広範な肝転移を伴った症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胃癌手術後に発生した続発性びまん浸潤型大腸癌の2例

著者: 工藤通明 ,   中屋光雄 ,   秋山典夫 ,   大野治俊 ,   中野眼一 ,   長町幸雄

ページ範囲:P.129 - P.134

はじめに
 びまん浸潤型大腸癌は稀な疾患であり,1931年Coe1)により初めて紹介されて以来,全大腸癌の0.09〜0.57%を占めると報告されている2,3).原発性と続発性に分類されるが,後者は主に胃からの転移によるものである.今回われわれは,胃癌治癒切除後8年経過して直腸およびS状結腸に転移を来した2症例を経験したので報告する。

急性骨髄性白血病経過中に多発小腸穿孔を来した1例

著者: 塩見正哉 ,   蜂須賀喜多男 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   松下昌裕 ,   小田高司 ,   久世真悟 ,   真弓俊彦 ,   村上文彦 ,   近藤真治 ,   新美教弘

ページ範囲:P.135 - P.138

はじめに
 化学療法の進歩により急性骨髄性白血病(acutemyelocytic leukemia;AMLと略す)の予後は改善されつつあるが,その寿命の延長とともに薬剤による副作用以外にも様々な合併症が出現するようになってきている.AMLに合併する消化管障害としては出血,感染,潰瘍形成および穿孔などがあるが,消化管穿孔を来した場合には致命的となりうるため適切な対応が必要とされる.今回われわれはAML経過中に多発小腸穿孔を来し,これを救命しえた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

大網に原発した平滑筋芽細胞腫の1例

著者: 池田正仁 ,   小野正幸 ,   家永睿 ,   加藤哲男 ,   平田秀紀 ,   恵良昭一

ページ範囲:P.139 - P.142

はじめに
 大網に原発する腫瘍は極めて稀で,なかでも平滑筋芽細胞腫は本邦では現在まで3例の報告1〜3)をみるにすぎない.
 最近,われわれは術前の選択的腹腔動脈造影などにて大網腫瘍と診断し外科手術により摘出した大網原発の平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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