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文献詳細

雑誌文献

臨床外科45巻11号

1990年10月発行

文献概要

特集 保存的治療の適応と限界—外科から,内科から 前立腺肥大症

内科から

著者: 山中英寿1 今井強一1 鈴木和浩1

所属機関: 1群馬大学医学部泌尿器科

ページ範囲:P.1684 - P.1688

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前立腺肥大症の発生
 前立腺は男性副性器のひとつであり,主にテストステロンによって,その生理機能および形態は維持されている.加齢に伴い血中テストステロン濃度が低下するにつれて前立腺は萎縮していく.ヒトにおいては本来の前立腺が萎縮しはじめる中年になると尿道内腔に接した特定部位より前立腺肥大結節の増殖が始まる.この部位をMcNealはtransition zone(TZ)と名付けている.transition zoneは前立腺腺性部分の約5%を占めている1)(図1).早い人では40歳台後半よりこのtransition zoneに前立腺肥大結節の増殖の兆しが出現し,加齢とともにその頻度を増していく.
 われわれは1981年より群馬県内市町村にて前立腺検診を施行しているが,表は1981年より1985年までに行われた16市町村の検診の結果である.5年間に検診を受けた者は5,770名であった.そのうち39.4%に前立腺肥大の所見が認められている.このうち,鶏卵大以上の肥大結節を触知し,排尿困難も高度であり,ただちに治療を必要とする者が全受診の6.2%にみられた.この結果は60歳以上の男性高齢者の3人のうち1人に前立腺肥大結節がみられることを示しており,前立腺肥大とは男性の生理的老化現象の一つであり,前立腺肥大結節があることのみで本人に侵襲のかかる積極的治療を選択してはならないことを示している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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