icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科45巻2号

1990年02月発行

雑誌目次

特集 Endoscopic Surgery—適応と手技

食道静脈瘤

著者: 川崎誠治 ,   三條健昌 ,   出月康夫

ページ範囲:P.161 - P.166

 食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法は,最近10年間欧米や本邦で急速に普及してきている.本稿では,緊急出血例,待期・予防例にわけて,硬化療法の現況と適応,対策を述べた.さらに,実際の手技,施行前後の患者管理を具体的に示し,起こり得る種々の合併症について報告例をもとに静脈瘤周囲注入法と静脈瘤内注入法にわけて考察を加えた.

食道領域におけるEndoscopic Surgery

著者: 小泉博義 ,   小澤幸弘 ,   有福孝徳 ,   深野史靖 ,   逢坂由昭 ,   玉井拙夫 ,   多羅尾和郎 ,   熊本吉一 ,   青山法夫 ,   赤池信 ,   南出純二 ,   徳永誠 ,   松本昭彦

ページ範囲:P.167 - P.175

 1977年以来,食道領域におけるendoscopic surgeryを行ってきた.①吻合部狭窄に対する内視鏡的切開開大術を42症例,延べ106回施行した.狭窄の長さが2cm未満の場合は有効な治療手段であるが,それ以上長い狭窄になると,辛抱強い食道ブジーが原則である.②食道ブジー挿管術を行い,5カ月後に抜去し狭窄解除となった症例も提示した.③食道粘膜下腫瘍17症例に内視鏡的核出術を施行した.食道壁は薄いが,筋層と固有層の間が疎で非常に良く動く特徴があるので,3cm未満の良く動く腫瘍は核出できる.④このほか,食道web切除,食道癌検索のための粘膜剥離切除にも言及した.

胃癌・出血性潰瘍

著者: 比企能樹 ,   嶋尾仁 ,   小林伸行 ,   榊原譲 ,   田辺聡 ,   横山靖

ページ範囲:P.177 - P.185

 胃癌の内視鏡治療には,根治を目的とした治療と姑息的な治療とがある.欧米においては後者が盛んに行われているが,本邦においては早期胃癌の内視鏡的治療が検討され,縮小手術の極限の形として,その適応が問題にされてきた.当初は合併疾患のある手術不能例にのみ行われていたが,最近では症例を厳密に選んで,minute cancerに対する根治術が行われつつある.外科医が納得できる適応とはどんなものか,またその手技はどのように行われるかについて述べる.
 次に,消化性潰瘍の出血に対するendoscopic surgeryについては今やエタノール局注法が普及しているが,成績としてもこれを上回る,持ち歩き自由なヒートプローブ法について,その手技と成績を紹介した.

胆石症

著者: 山川達郎 ,   本田拓

ページ範囲:P.189 - P.195

 手術が治療の中心であった胆石症も,近年の内視鏡の進歩と開発により多様化しつつある.内視鏡的胆石治療法は経十二指腸的切石法と経皮経肝的切石法の2つに分類され,前者はESTに,後者はPTCSに代表される.ESTは経皮経肝的な胆管穿刺を必要としないため,比較的合併症が少なく,また速効的であることに利点がある.また総胆管結石症などに有効であるが,肝内結石症に対してはその効果は期待できない.一方,PTCSはPTBDを先がけて行う必要があり,穿刺から切石までに時間を要するという難点があるものの,肝内結石症に対しては極めて有効な手段である.両者の利点,欠点をふまえた手技の選択が,各症例の病態に応じてなされなければならない.
 さらに,ESWLや直接溶解療法の登場により,ESTやPTCSを併用した治療法も開発され,その発展が期待されている.

大腸ポリープ

著者: 畠山勝義 ,   下田聡 ,   井上雄一朗 ,   酒井靖夫 ,   須田武保 ,   鹿嶋雄治 ,   武藤輝一

ページ範囲:P.197 - P.202

 大腸ポリープはすべて内視鏡的ポリープ摘除(endoscopic polypectomy)の適応があり,しかる後に十分な病理組織学的検索を行い,以後の治療方針を決定する必要がある.最近は平坦・陥凹型病変に対してもstrip biopsyが行われるようになり,この役割の重要性はますます増加している.また大腸早期癌,とりわけ粘膜下浸潤癌に対する腸追加切除の必要性の判定基準がもう少し具体的になるような研究成果が期待される.

気管支鏡

著者: 於保健吉 ,   中村治彦

ページ範囲:P.203 - P.210

 気管支ファイバースコープによるendoscopic surgeryには,①レーザー,②高周波,③生検鉗子を使用する方法がある.内視鏡的Nd-YAGレーザー治療は,主として気道を狭窄・閉塞する種々の病変に対して,気道の開大・再疎通を目的として行われる.症例ごとに適応を吟味することが大切であり,特に本法が禁忌となる条件には注意を払う必要がある.われわれの経験した症例では84%(167/199)の奏効率が得られた.気道異物は幼児ではピーナッツ類が多く,全麻下に摘出されるが,各種異物鉗子,Fogartyカテーテルの利用が効果的である.また,可視範囲外の末梢気管支の異物には,TBLBの手技が応用される.

血管内視鏡

著者: 中島伸之 ,   安達盛次

ページ範囲:P.211 - P.216

 Flexible fiberscopeを用いた血管内視法は決して新しいものではなく,既に20年以上も前から試みられている.しかし,それが実用段階にまで成熟したのはここ10年以内のことである.その過程にはimage fiberの解像力,内視鏡の細径化,写真,テレビ技術の進歩が不可欠であった.さらにこれらに,視野内の血液排除の方法の開発を加えて,本法は実用可能となった.現在,末梢血管や冠動脈病変の観察,血栓溶解療法,血栓除去手術,balloon angioplastyの効果や血管の変化の観察等に威力を発揮している.さらに最近では,内視鏡下にLASER光線を用いて,遠隔的に血管形成を行うことにも利用されるようになった.しかし,血管内視法の適用範囲と限界,およびそれを使って何ができるかについては,現在まだ模索中の段階である.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 食道内視鏡シリーズ・ⅩⅦ

粘膜下腫瘍

著者: 熊谷義也 ,   幕内博康 ,   林真也 ,   鈴木雅雄

ページ範囲:P.155 - P.157

 X線造影で食道の内腔に隆起性病変が発見された場合は,頻度的にみても,進行の速さからみても,まず扁平上皮癌を疑って,早く内視鏡検査に廻すべきであり,内視鏡下では一見して区別しうる.食道扁平上皮癌は悪性上皮性腫瘍であるから,通常のものは表層に癌が裸出しており,粗糙な上皮,びらん面などがみられる.ルゴール散布を行うと,明瞭な不染帯が得られ,生検で確診しうる.
 粘膜下腫瘍とくに平滑筋腫は,ほとんどの例で正常に近い健常にみえる上皮に被われており,粘膜固有層にあって透見しうる樹枝状の血管像もきれいに観察されることが多い.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson18 開胸・閉胸(Thoracotomy and Closing)

著者: 小越章平

ページ範囲:P.217 - P.221

 開胸に先立ち,改めて肋骨の位置と形を頭に入れておく。
 いわゆる肋骨弓をはずすとV以下が前面全部はずれる。

心の行脚・5

モーツァルトに潜在美を思う

著者: 井口潔

ページ範囲:P.222 - P.223

 私は子どものときにピアノを母から習わされた.小学校3年から中学2年頃までであったろうか.九州久留米,第12師団司令部所在地で,男の子がピアノを習うなど,とても考えられなかったときのことである.それからぱったり止めてしまっていたが,59歳のときに,きっちりやり直してみようと一心発起した.
 その動機はモーツァルトである.

一般外科医のための形成外科手技・14

褥創および陳旧性潰瘍の治療

著者: 梁井皎

ページ範囲:P.225 - P.232

はじめに
 褥創および陳旧性潰瘍の治療には,保存的療法および手術的療法があり,保存的療法で効を奏さなかったものに対して手術的療法が行われる.褥創にしても,陳旧性潰瘍にしても,病巣部およびその周辺において血行に問題のあることがほとんどで,その手術に際しては,形成外科的配慮を要することが多い.
 褥創が最も頻繁にみられる部位は,臀部特に仙骨部,大転子部,坐骨結節部である.また,長期臥床の患者では,その他に背部正中,肩関節部などの皮下組織の少ない部分に褥創を形成する.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・6

上部胆管癌に対する肝門部肝切除術

著者: 加藤紘之 ,   下沢英二 ,   児嶋哲文 ,   田辺達三

ページ範囲:P.233 - P.235

はじめに
 肝門部肝切除術は肝門部切除術をやや拡大して,左葉内側下区域(S4b)および右葉前下区域(S5)の大部分を切除する方法である.適応は肝葉切除に耐えられないと判断される肝予備機能不良例,高齢者で左右肝管に浸潤が及ぶ例などであるが,肝葉切除に比べて再建が2カ所になり,その術野もやや悪い.この手術の最大の利点は尾状葉を切除して根治性を高め得ることと,肝内浸潤に対処できる点である1〜5).No.8a,8b,13aおよび肝十二指腸間膜内の郭清・処理は肝門部切除術と同様であるが,中肝動脈は結紮切離する.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・7

上部胆管癌に対する拡大肝右葉切除術

著者: 加藤紘之 ,   下沢英二 ,   児嶋哲文 ,   田辺達三

ページ範囲:P.236 - P.240

はじめに
 拡大肝右葉切除術は上部胆管癌に対する根治的手術術式として標準化され得る術式であるが,肝予備機能低下,左門脈の閉塞,腫瘍浸潤の左肝管への片寄りなどがある場合には施行できない.一方,腫瘍浸潤が右肝管側に深く入り込んでいても左門脈幹の閉塞がなく,また拡大肝右葉切除に耐え得る予備機能をもつ例では良い適応となる1〜5).右肝管前後区域枝が腫瘍浸潤によって分断されようとしている例などでは,間もなく高度黄疸の持続,胆管炎を引き起こし,その予後は極めて不良であることから,減黄が得られれば少々予備力が数値上,低下していても思い切って病巣を切除することが救命への道であると考えられる.

臨床研究

乳がんの診断における接触型サーモグラフィーの使用経験

著者: 戸井雅和 ,   和田務 ,   山田裕典 ,   大崎昭彦 ,   山本篤志 ,   峠哲哉 ,   新本稔

ページ範囲:P.241 - P.244

はじめに
 サーモグラフィーはマンモグラフィー,エコーグラフィーとともに相補する乳がんの補助診断法の1つであるが,腫瘍の生物学的特性を利用するという点において後2者に比較しユニークである.その方法としては,人体より発生する赤外線を感知する赤外線サーモグラフィーと,直接皮膚温を測定する接触型サーモグラフィーに大別される.従来の主流は赤外線サーモグラフィーであり,われわれも10年来にわたって赤外線サーモグラフィーを用いてきたが1,2),赤外線サーモグラフィーは測定感度には問題はないものの機器自体が比較的高価であるという難点を有していた.接触型サーモグラフィーは従来,測定感度が劣るとされほとんど普及していない状況にあったが,最近になり液晶技術等の進歩により感度の向上した優秀な機器を用いることが可能になってきた.今回,われわれは,コレステロール結晶を用いてrigid typeの接触型サーモグラフィーを使用する機会を得たので,従来の赤外線サーモグラフィー,あるいは他の補助診断法であるマンモグラフィー,エコーグラフィーの成績と比較しながらその結果を報告する.

下肢血管外傷の検討

著者: 和泉裕一 ,   笹嶋唯博 ,   小窪正樹 ,   堀尾昌司 ,   森本典雄 ,   久保良彦

ページ範囲:P.245 - P.248

はじめに
 近年,交通事故,労働災害に起因する四肢外傷の増加に伴い,血管外傷に遭遇する機会が増えている.血管外傷では,血行再建にかかわる問題のみならず受傷創および合併損傷に対する処置など,いくつかの重要なポイントがある.今回,教室で経験した下肢血管外傷について検討したので報告する.

臨床報告

イレウス症状を呈した虫垂粘液嚢腺腫の1例

著者: 津崎貴春 ,   光野正人 ,   川崎祐徳 ,   吉岡一由 ,   伊藤慈秀 ,   伊澤寛

ページ範囲:P.249 - P.252

はじめに
 虫垂の粘液嚢腺腫は比較的稀な疾患であり,術前に診断されることは少ない.多くの場合,組織学的検索によって診断されるが,それでも良,悪性の鑑別が困難なことが少なくない.
 今回,われわれはイレウス症状を来した虫垂粘液嚢腺腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

小腸腸間膜血管腫の1例

著者: 小島善詞 ,   松井陽一 ,   川西洋 ,   平松義文 ,   高田秀穂 ,   日置紘士郎

ページ範囲:P.253 - P.256

はじめに
 腸間膜に原発する血管腫はきわめて稀な疾患である.文献的には,小腸腸間膜血管腫の本邦報告例は15例であった1,2).今回われわれは,興味深い臨床経過をとった1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

S状結腸憩室炎の後腹膜穿孔の1例

著者: 八木真悟 ,   橋本琢生 ,   牧野哲也 ,   木原鴻洋 ,   中泉治雄 ,   宮永盛朗

ページ範囲:P.257 - P.260

はじめに
 大腸穿孔は,急性腹症における重要な病態の1つである.今回,腹部X線単純写真上の異常ガス陰影が発見の契機となり,術前診断の可能であったS状結腸憩室の後腹膜穿孔例を経験したので報告する.

迷切兼バイパス術を施行した胃・十二指腸Crohn病の1例

著者: 福島浩平 ,   佐々木巌 ,   舟山裕士 ,   松野正紀 ,   樋渡信夫 ,   白根昭男

ページ範囲:P.261 - P.264

はじめに
 教室では1989年4月までに50例のCrohn病手術症例を経験しているが,うち2例が胃・十二指腸Crohn病であった.幽門側胃切除術を施行した1例は既に報告しているが1),ここでは胃空腸吻合兼選択的迷走神経切離術を施行した症例について報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?