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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科45巻4号

1990年04月発行

雑誌目次

特集 今日のストーマ

永久的ストーマ造設と管理

著者: 今充 ,   山中祐治 ,   森田隆幸 ,   羽田隆吉

ページ範囲:P.417 - P.421

 著者らの永久的ストーマ造設の概要と造設後の管理のポイントにつき記した.患者個々人にフィットするストーマを造設するには術前の良く検討されたストーママーキングが必要不可欠である.造設には大きからず腸管の太さにあった適当なサイズと高さを有するストーマが,術後管理上極めて重要なポイントとなる.腹直筋前葉は大きく開かず,腹膜外トンネルを通すことは術後ヘルニア発生予防の一助となる.一期的に開口した腸管は皮膚と粘膜には針を通さず,真皮と腸管漿膜筋層を縫合固定することも大事である.フィンガーブジーを無益有害とする人が多いようだが,その根拠を理解し得ず,ストーマ受けいれのプロセスとしても有意義と考えている.

一時的ストーマ造設と閉鎖

著者: 寺本龍生 ,   小平進

ページ範囲:P.423 - P.428

 一時的ストーマにはループ式,分離式,Hartmann法などがあり,とくにループ式が日常多く行われている.一時的ストーマは大腸イレウス,穿孔などの減圧のため緊急に造設されたり,炎症,出血,縫合不全などで病変部を空置し,病変部の安静,治癒を促すために準緊急的に造設されるものである.
 したがって,患者の全身状態が不良な場合に造設されることが多いため,造設手技が平易かつ安全であり,術後の管理が容易であることに加えて,目的を達したら比較的容易に閉鎖することのできる術式を選択すべきである.

ダブルストーマの管理

著者: 大村裕子 ,   穴沢貞夫

ページ範囲:P.429 - P.434

 消化器と尿路のストーマが同時に造設されるダブルストーマ患者の管理は,それぞれのストーマが互いに異なった管理面での特徴をもっているために困難性が高い.それだけに術前から計画的なケアが要求される.その中で特に留意すべき点は以下のごとくである.
 ①ダブルストーマのストーマサイトマーキングでは尿路ストーマのマーキングを優先し,両ストーマ間に十分な距離をとる.②ストーマ管理面では消化器,尿路それぞれのストーマの特質を理解して行う.③装具交換については尿路ストーマ優先を原則とする.④正中創は感染,離開などの合併症が起きないように注意する.

ストーマとコンチネンス

著者: 磯本浩晴 ,   白水和雄 ,   緒方裕 ,   荒木靖三 ,   林譲司 ,   山下裕一 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.435 - P.441

 かつて消化器ストーマを造設した場合には,腸内容を保持する能力がなく,余儀なく内容物の体外収納という形を取らざるを得なかった.それ故に近年ストーマに関する装具の進歩,向上がもたらされたものと思う.ところがquality of lifeの面からみると,コンチネンスを具備した術式あるいは装具が望ましいわけである.今回はこれらストーマに対するコンチネンスの歴史的背景をみながら,臨床的のみならず,実験的ではあるが,コンチネンスを考慮した術式について概観した.

消化器ストーマ管理法とその問題点

著者: 穴沢貞夫 ,   片山隆市 ,   石田秀世 ,   桜井健司

ページ範囲:P.443 - P.448

 近年の消化器ストーマ管理は,ストーマ装着具の改良・開発により著しい進歩をとげたが,その中心は皮膚保護剤の開発により自然排便法が飛躍的に向上したことによる.すなわち保護剤の登場により,①回腸ストーマも結腸ストーマと同じように管理できるようになった,②術直後の管理が安全に行われるようになった,③皮膚管理が飛躍的に向上し,急性の皮膚障害はほぼ解決可能になった,④今まで短期的視点でしか行われなかった皮膚管理が長期的視点で管理可能になった.そしてこの自然排便法の質的向上は洗腸法との相対的な関係に影響し,左結腸ストーマ管理で自然排便法を行う者が増加している.しかし,保護剤による長期管理成績をみると,保護剤自体に皮膚障害性があることが判明し,ストーマ管理における皮膚管理は現在も未解決の問題であることが明らかになっている.

ストーマ合併症と対策

著者: 倉本秋 ,   伊原治

ページ範囲:P.449 - P.455

 消化器ストーマの合併症の多くは,①術前にストーマサイトマーキングを行うこと,②マーキングした位置を念頭において手術操作を行い,③その位置に血行のよい腸管を緊張なく,かつ余分なストーマ脚を残さず引き出して,④一次開口で,腸管を翻転させて造設することで予防される.
 早期合併症を適切に診断,管理するために術直後は軟らかな皮膚保護剤と透明なパウチを用い,ストーマの壊死や感染が全身的な合併症に移行することを予防する.外来診療ではいつもストーマを観察し,対症的に処置できない晩期合併症に対しては積極的に外科治療を行い,オストメイトのquality of lifeを高める配慮が必要である.

ストーマ・リハビリテーションの現況—その問題点と進むべき道

著者: 進藤勝久 ,   安富正幸

ページ範囲:P.457 - P.463

 最近はストーマの分野も脚光を浴びるようになってきたが,その中で取り残されている問題をとりあげ,その方向性を示した.①性機能障害では外科医の関わり方が重要で,心理的指導や性交体位の研究も行われるべきであろう.②ETなど専門家の養成制度では専門職として専任できるようなストーマ外来の確立や,看護部制度の改革が先決問題であろう.③学会・研究会組織では医師の積極的な参加が急務であり,断片的な個人の研究発表をこえた委員会形式の集団的研究が必要であろう.④患者会組織では厚生省のいいなりになった協会組織よりは,入会金を出さなくても自動的に加入できる真の全国組織が完成され,その上で各地区,各施設の自主的な活動が奨励されるべきである.⑤オストメイトの社会保障ではまず外科医自身がそれを熟知した上で,必要装具の健保負担を実現させたい.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 胃・十二指腸内視鏡シリーズ・Ⅰ

超音波内視鏡による胃癌の診断

著者: 安田秀光 ,   城島嘉昭 ,   上西紀夫 ,   大原毅

ページ範囲:P.411 - P.414

 超音波内視鏡は,癌や潰瘍の深達度,粘膜下の浸潤範囲,周囲リンパ節の腫脹,隣接臓器への浸潤などを診断するのに,大変有効な検査法である.

イラストレイテッドセミナー 一般外科手術手技のポイント

Lesson20 胃による食道再建術(Gastric Replacement after Esophagectomy)

著者: 小越章平

ページ範囲:P.465 - P.469

 食道切除後の再建術は,再建に使用する臓器ならびに再建経路別に,次のように分けることが出来る。図の上段と下段の組合せで,9通りの方法が考えられるが,実際には各施設で慣れた方法がいくつか行われているのが現状である。

心の行脚・7

もう一つの教育

著者: 井口潔

ページ範囲:P.470 - P.471

 3ヵ月程前のある日曜日の夕方,何気なくテレビをつけると,「塾」が社団法人の認可を受けたらしくその祝賀会がテレビに映り,通産大臣が祝辞を述べている.曰く「今や,塾は立派に産業として成長した.ここに通産省として祝辞を述べることは欣快の極み……」とのことである.
 私は一瞬,わが耳を疑った.塾とはいわゆる受験塾のことである.それに通産省が法人許可を与えたというが,そもそも教育は文部省の管轄ではなかったのか.一体,教育は産業と馴染むものなのか?

一般外科医のための形成外科手技・16

マイクロサージャリーの一般外科への応用—腸管移植を中心に

著者: 波利井清紀

ページ範囲:P.473 - P.480

はじめに
 マイクロサージャリーの発達とともに,多くの外科領域において手術手技が飛躍的に進歩した.これに対し,一般外科におけるマイクロサージャリーの導入は他領域に比べかなり遅れているのが現状で,末梢血管外科を専門にする人でさえ,裸眼による手縫い縫合や血管吻合器による方法を好む傾向にある.これは顕微鏡下の手術を特殊視するあまり,食わず嫌いになっているためとも思われる.少し意欲を出して練習する人にとっては,マイクロサージャリーは新らしい分野への第一歩となろう.特に,現在,形成外科領域で日常的に行われているマイクロサージャリーによる遊離組織移植は,一般外科領域においても新らしい可能性をもつものである1)
 本稿では近年盛んに行われている遊離腸管移植を中心に,一般外科領域におけるマイクロサージャリーの臨床応用への可能性について述べる.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・10

中下部胆管癌に対する胆道切除術

著者: 加藤紘之 ,   下沢英二 ,   奥芝俊一 ,   中島公博 ,   田辺達三

ページ範囲:P.481 - P.483

はじめに
 中下部胆管癌の根治手術は膵頭十二指腸切除術が基本であり,膵癌と同様の郭清が必要である.しかし膵癌とはやや癌浸潤の方向性に違いがある.肝十二指腸間膜内神経叢あるいはリンパ節への浸潤・転移がより高率であり,その再発様式も肝門部の局所再発で始まる場合が多い1〜5).したがって,とくに中部胆管癌では肝門部切除術と同等の切除範囲を肝臓側に求め,なおかつ膵頭十二指腸切除術によって十二指腸側の浸潤・転移に対処する必要がある.しかし,すべての例に適応することはできず,年齢,肝予備機能,腫瘍の性質,拡がりによって以下に述べる各術式が適時選択される.

胆道手術の要点—血管処理からみた術式の展開・11

中下部胆管癌に対する膵頭十二指腸切除術—特に膵腸吻合法について

著者: 加藤紘之 ,   下沢英二 ,   奥芝俊一 ,   中島公博 ,   田辺達三

ページ範囲:P.484 - P.487

はじめに
 膵頭十二指腸切除術の詳細は本シリーズの後半の膵癌の項で詳しく述べるが,中下部胆管癌の転移型式は神経叢浸潤,リンパ節転移ともNo.14, No.17,時にはNo.16にも認められることから膵頭十二指腸切除が標準手術といえる.しかし門脈合併切除を要する例は少ない.一方,肝門部については膵癌よりさらに肝臓側にまで切除郭清範囲を拡げるべきであり,胆道再建は左右肝管分岐部で行われることになる.再建術の中でもっとも注意を要するのは拡張のない正常分泌力をもつ残存膵と空腸の吻合なので,ここでは膵腸吻合について述べることにする.

スポット

乳房再建術はQuality of Lifeを高めたか

著者: 金丸仁

ページ範囲:P.489 - P.490

 癌治療全般において,単に病気を治すことのみに主眼が置かれる時代は終わり,最近はquality of life(QOL)を考慮すべきであるという議論が盛んに行われるようになった.
 乳癌治療においても,手術術式が次第に縮小化の傾向にあるのはこの表われである.一方,手術の縮小化とは意味が異なるが,乳房切除後の乳房再建術(以下再建術)もQOLと密接に関連する治療の一つである.

臨床研究

開心術における輸血後肝炎の予防対策

著者: 青木啓一 ,   小浜正博 ,   高梨秀一郎 ,   古田昭一 ,   大塚徹

ページ範囲:P.493 - P.496

はじめに
 心臓・血管手術における輸血後肝炎の発生率は決して低くないという中島ら1)の報告や,劇症肝炎で心房中隔欠損症手術症例を失ったという坂本ら2)の報告にもあるように,開心術における輸血については末だ問題がある3)
 本院では,輸血後肝炎予防を目的として,1986年12月外科開設以来,1989年3月まで,開心術全例に術中回収血輸血,同種成分輸血(原則として400ml採血分を使用)を行ってきた.1987年10月より同種輸血症例に免疫グロブリン製剤の投与(輸血当日よりヴェノグロブリン-Ⅰ®を3日連続で5g/日,静注)を開始,1988年3月より術後回収血輸血,同年6月より術前自己血採血も開始した.今回,1987年9月までを前期,10月以降を後期として輸血後肝炎について検討したので報告する.

乳癌術後創部における知覚回復過程の経時的観察

著者: 長家尚 ,   立石春雄 ,   谷浦博之 ,   田原英樹 ,   大森敬仁 ,   皆川清三

ページ範囲:P.497 - P.499

はじめに
 乳癌術後の患者を観察していると,はじめは鎧をかぶったような一種独特の感覚麻痺が存在しているが,それが徐々に軽快してゆくことに気付かされる.しかし文献的には,外国,国内を通じてこれらに関する報告はほとんど見受けられない.そこで,今回われわれは乳癌術後患者を対象に神経学的にretrospectivestudyを行い,感覚回復の経時的変化,性状,部位による差異等を検討考察した.

臨床報告

髄液中のCA19-9が高値を呈した胃癌原発のびまん性髄膜癌腫症の1例

著者: 泉谷良 ,   松本博城 ,   寺田益士 ,   野口淳 ,   白羽誠 ,   久山健

ページ範囲:P.501 - P.504

はじめに
 癌腫が脳軟膜,くも膜下腔へびまん性に転移浸潤したびまん性髄膜癌腫症は,中枢神経系への特殊な転移形式である.最近著者らは胃癌原発の本症を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

血性胸腹水を伴つた大網原発巨大神経鞘腫の1例

著者: 木挽貢慈 ,   高橋峰夫 ,   田村勉 ,   岩崎賢一 ,   春日義生

ページ範囲:P.505 - P.507

はじめに
 大網原発充実性腫瘍は稀であり,大網腫瘍の大部分は炎症性腫瘤か転移性悪性腫瘍である.今回われわれは,血性胸腹水を伴った極めて稀な大網原発の巨大神経鞘腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

外傷性食道破裂の1治験例

著者: 大槻鉄郎 ,   福谷明直 ,   柴田純祐 ,   小玉正智 ,   青木裕彦 ,   水野光邦

ページ範囲:P.509 - P.512

はじめに
 食道損傷の中でも外傷性食道破裂は稀な外傷であり,異物誤飲や内視鏡検査による医原性損傷を除くと本邦においては調べ得た限りでは13例が報告されているに過ぎない.われわれは,自動二輪車での交通事故による外傷性食道破裂症例に胸部食道切除術を施行し,術後約1ヵ月後に心タンポナーデを併発したが無事救命し得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

左梨状窩瘻が感染経路と考えられる急性化膿性甲状腺炎の1例

著者: 浜田邦美 ,   長野貴 ,   林郁郎

ページ範囲:P.513 - P.516

はじめに
 急性化膿性甲状腺炎は比較的稀な疾患で,その原因には不明な点が多かったが,最近これらの症例が先天性梨状窩瘻を感染経路とすることが明らかにされ,新しい疾患概念として注目されている.
 今回われわれは,左梨状窩瘻を感染経路として急性化膿性甲状腺炎を発症し,瘻管を摘除することにより良好な経過をもたらした1例を経験したので報告する.

膵腫瘍と鑑別困難であった腎癌術後18年の後腹膜転移の1例

著者: 佐野正幸 ,   堀見忠司 ,   武田功 ,   今井鋼 ,   森田荘二郎 ,   横田哲夫 ,   近藤慶二

ページ範囲:P.517 - P.520

はじめに
 腎癌摘出術後の10年生存率は18〜23%と報告されているが1,2),中には10年以上の長期間を経て再発する症例も認められる3).最近われわれは膵腫瘍と鑑別困難であった腎癌摘出術18年後の後腹膜転移と思われる症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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