文献詳細
臨床報告
虫垂重積症の1例
著者: 篠原一彦1 吉野吾朗1 柚本俊一1 佐藤紀1 出月康夫1 名富仁美2
所属機関: 1東京大学医学部第2外科 2東京大学医学部第3内科
ページ範囲:P.629 - P.631
文献概要
虫垂は外科臨床の中で扱われる頻度の多い臓器の一つであるが,そのほとんどは急性虫垂炎とその合併症である.
しかし,稀ながらも他の消化管と同様に腫瘍や重積などの病態が存在する.虫垂重積症も,McKiddにょり1858年に報告されて以来,これまでに200例弱が内外の文献に報告されているにすぎない稀なる疾患である.Collinsの71,000例の虫垂の検索では,良性腫瘍4.61%,悪性腫瘍1.35%であり,それぞれに上皮性,非上皮性,リンパ系,カルチノイドなど,多彩な種類を有している.そして,重積症は0.01%にすぎなかった1〜3).虫垂の腫瘍や重積症はそれぞれが臨床の中で頻度も少なく特徴的な症状や所見に乏しいことから,虫垂が諸検査の及びにくい大腸の最深部に位置するという解剖学的条件も相まって,術前の質的診断が困難であることが多い疾患である.
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