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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科46巻8号

1991年08月発行

雑誌目次

特集 内視鏡下外科手術

EDITORIAL

著者: 出月康夫

ページ範囲:P.917 - P.918

 内視鏡下外科手術は,欧米では一昨年から,わが国では昨年から急速に普及しつつある手術である.従来から外科手術は,“手術侵襲”という言葉が示すとおり,侵襲的(invasive)な治療法であり,病巣をとり除くためには生体に侵襲が加わることはやむを得ないという前提のもとに成り立ってきた治療法である.したがって,疾病の治療の理想からは程遠いものであり,これまでの外科治療のいわば泣き所であったといえよう.
 内視鏡下外科手術は,できるかぎり侵襲の少ない手術(minimally invasivesurgery)を目指した新しい手術法であるが,“minimally invasive”という点ではなお十分とはいえない.しかし,従来の手術法と比べると多くの利点があり,少なくともminimal access surgeryとしては十分に評価できる.外科手術の究極の目標の1つである“minimally invasive surgery”に向かって一歩踏み出した点で,外科手術の歴史上画期的なものであることは間違いない.

胸腔鏡下の自然気胸の治療—適応と手技

著者: 若林明夫

ページ範囲:P.919 - P.923

 自然気胸は主にブラかブレブの破裂によって起こる.全身麻酔下に二重内腔気管内チューブを使用し,検側肺を虚脱させて後,胸腔鏡を挿入し,空気漏れの原因と場所を確認する.ブレブのみの場合は電気メスにより,またブラの場合は炭酸ガスレーザーを用いて,すべてのブレブまたはブラを熱凝固する.肺の癒着は原則としてすべて剥離することが必要で,破裂性ブレブまたはブラがしばしば癒着の陰に隠されていることがある.老人性肺嚢腫性肺気腫の破裂は例外で,癒着は剥離せず,破裂したブラのみをレーザーで熱処理する.胸腔鏡による自然気胸の根治手術は成功率が極めて高く,かつ患者の術後回復が早く,今後この種の治療の本流になるものと思われる.

胸腔鏡下の自然気胸の治療

著者: 武野良仁

ページ範囲:P.925 - P.933

 自然気胸は一般に,ブレブからの空気漏れによって起こるとされている.したがって,その治療は,その孔を閉じること以外の何ものでもない.開胸によるブレブ切除は,その意味で気胸の根治術であるが,孔そのものが極めて小さいことから考えると,やや過大な侵襲といえる.その点,胸腔鏡下治療は自然気胸に最も適したものと考えられる.ここでは,筆者が,なぜ胸腔鏡下に接着剤や電気凝固を応用するようになったかを述べた.胸腔鏡下治療を始め,最近採用しているミニ開胸を加えて,自然気胸の治療体系は最近急展開しつつある.過去の治療法を振り返りつつ,これからの自然気胸治療について展望した.

腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応

著者: 吉田和彦 ,   河野修三 ,   松田実 ,   三澤健之 ,   小林進 ,   櫻井健司

ページ範囲:P.935 - P.942

 腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)の開発により,胆石症に対する治療体系の抜本的な見直しが必要となった.すでに欧米の多くの外科系施設では全胆石例の80%以上にLCが施行されており,治療法の第一選択となりつつある.さらに,胆嚢ポリープへも適応が拡大している.LCは開腹下胆嚢摘出術と同等の安全性と長期的な効果が期待でき,非手術療法に準ずる術後の軽い疼痛,短い入院期間と回復期間,さらに美容的な効果などか得られる.LCの絶対的非適応は急性胆管炎,急性膵炎,全身麻酔に耐えられない状態,腹膜炎,妊娠,出血傾向などである.LCの開始直後は比較的容易な症例を選択すべきであり,症例を重ねながら慎重に適応を拡大することが望ましい.

腹腔鏡下胆嚢摘出術に必要な機器と手術器械

著者: 下村一之 ,   大友裕美子 ,   石崎陽一 ,   野家環 ,   阿部秀樹 ,   S.Aナイーム ,   万代恭嗣 ,   出月康夫

ページ範囲:P.943 - P.953

 腹腔鏡下胆嚢摘出術は腹腔鏡,ビデオシステムをはじめとして,腹腔鏡下胆嚢摘出術用に開発された様々な機器を必要とする.以下,手術の手順にしたがって,①気腹針・気腹装置,②トラカール針,③腹腔鏡・ビデオカメラ・光源・ビデオモニター,④処置具類(grasper, dissector, scissors),⑤電気メス(へら,フック),⑥レーザー,⑦エンドクリップ・エンドループ,⑧洗浄吸引装置,⑨術中胆道造影用カテーテル,⑩器械類の配置,について解説する.各項目の器械に要求される性能と,機種選定の際の目安になるべき特徴を念頭において述べた.これらの器具を慎重に選ぶことが,腹腔鏡下胆嚢摘出術を安全に施行するために重要な意味を持つことを強調しておきたい.

腹腔鏡下胆嚢摘出術の手技

著者: 木村泰三 ,   吉田雅行 ,   梅原靖彦 ,   桜町俊二 ,   松田寿夫 ,   高林直記 ,   原田幸雄

ページ範囲:P.955 - P.961

 腹腔鏡下胆嚢摘出術を安全に行うためには,良好な視野を保ち続けることが肝要である.トラカールの挿入部位,手術の手順,手術の各段階においてどの位置からどの方向に胆嚢や肝を牽引するかが,良い視野をつくるためのポイントとなる.本稿においては,シェーマを用いて,視野の展開を中心として,腹腔鏡下胆嚢摘出術の手技を述べる.

Flexible電子腹腔鏡を用いた腹腔鏡下胆嚢摘出術—その手技とわれわれの工夫

著者: 大上正裕 ,   有沢淑人 ,   深川裕明 ,   若林剛 ,   納賀克彦

ページ範囲:P.963 - P.974

 1990年7月より,胆嚢結石症72例に対し,先端がflexibleな電子腹腔鏡を用いて腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な手術成績を得た.術中胆道造影として,胆嚢管よりのカニュレーション法や総胆管穿刺造影法を施行し,総胆管遺残結石と術中胆道損傷がないことを確認した.電子腹腔鏡使用の利点は,①様々な角度からの手術視野が得られ,②先端面の洗浄機能により出血などの状況下でも視野の確保ができ,⑥鉗子孔より処置具の導入が可能である,などがあけられる.本法は今後,胆嚢結石症に対する手術の第一選択になってくるものと考えられ,さらにESTなどとの組み合わせにより総胆管結石症の治療への応用も期待される.

腹腔鏡下胆嚢摘出術の周術期管理

著者: 山川達郎 ,   石川泰郎 ,   謝宗安

ページ範囲:P.975 - P.980

 腹腔鏡下胆嚢摘出術は外科的侵襲が少ないとされる術式であるが,安全性の面からは,手技的に一定の限界があること,また,気腹に伴う合併症,術中の偶発症や合併症などが問題であり,これらの点を考慮に入れた周術期管理が必要てある.術前検査,処置などはおおむね開腹による胆嚢摘出術に準ずるが,術前,適応については特に慎重に検討すべきであり,開腹術への切り替えの準備も十分行っておく必要がある.術中は偶発症や合併症に対する注意と,緊急開腹を含めた迅速な対応,術後も合併症に対する注意が必要である,一方,本法の利点を生かし,積極的に患者の日常生活への早期の復帰をおし進めるべきである.

座談会・腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応と手技

著者: 木村泰三 ,   大上正裕 ,   石川泰郎 ,   出月康夫

ページ範囲:P.981 - P.991

 出月(司会) 今日はお忙しいところをお集まりいただきありがとうございました.
 本日の座談会は,特集企画の1つとして,「腹腔鏡下胆嚢摘出術の手技と適応」というテーマでお願いいたします,特集論文でも,これらについて先生方に書いていただいていますので,ここではそれをざっとおさらいしながら,そこに書いてないようなことまで少し踏み込んでお話をいただければと考えております.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 胃・十二指腸内視鏡シリーズ・ⅩⅦ

胃内計測法—レーザー法

著者: 岡崎幸紀 ,   山口昌之 ,   柳井秀雄

ページ範囲:P.911 - P.914

 胃内病変を内視鏡的に計測する方法は,内視鏡直視下にメジャーやマーカーを直接に接触させて測る方法と,内視鏡の焦点調節機構や視差を応用して計測する非接触的な方法が試みられてきた.
 われわれは,町田製作所の協力のもとに,後者の方法のひとつとして,アルゴンレーザーの回折光の配列パターンを胃内病変上に投射し,その配列のパターンを画像解析し,病変の大きさ,高さ,深さを計測する方法を検討してきた.

外科系当直医のためのDos & Don'ts・8

顔面外傷(2)—口腔・歯・上下顎領域

著者: 吉田万三 ,   鈴木篤 ,   露木靜夫 ,   高重義 ,   野水眞

ページ範囲:P.997 - P.1001

 外科系当直医は,日頃扱い慣れていない歯科領域も含め,口腔外傷・上下顎骨骨折・歯の外傷などの顔面外傷にも一次救急対応しなければならない.また,歯科・口腔外科救急に対応できる救急医療機関は限られており,一晩をもたせる初期治療技術も大切となる.

小児外科医の独白・8

続々・鎖肛(根治手術術式)

著者: 角田昭夫

ページ範囲:P.1002 - P.1003

 昔話1 こども医療センター開設後間もない頃,新生児の新患が,腹部膨満を主訴に来院した.外来の小児科医はまずH病を考えX線撮影を指示,終わって診察となり,おむつを取ったら,肛門が無かった!あわてて外科に連絡,転科,手術となった.
 しかし私は,肛門をとにかく診察しようとしたこのNeonatologistを,未だに尊敬している.どういう訳か,小児科医達は「肛門の病気は外科」と決めてかかっているらしい.そうだとしても肛門の視診や指診は,診察の基本として手を抜かれては困るのである.

前立ちからみた消化器外科手術・4

結腸癌根治術における前立ちの基本操作

著者: 早川直和 ,   二村雄次

ページ範囲:P.1005 - P.1011

 結腸癌はその占居部位によって切除術式や郭清範囲が異なるが,手術の原則は結腸の血管支配の基本構造をよく理解して,腫瘍占居部位の支配血管根部を周囲組織を含めて確実に切除できるように視野を展開することが重要である,結腸の授動,支配動静脈の結紮、血管根部の郭清,結腸の切離,結腸結腸吻合について述べる.

臨床研究

Biopty-Gunを用いた超音波ガイド下臓器生検

著者: 猶本良夫 ,   阪上賢一 ,   塩崎滋弘 ,   岡林孝弘 ,   合地明 ,   折田薫三

ページ範囲:P.1013 - P.1016

はじめに
 各種疾患の診断において,組織生検は欠くことのできないものである.われわれは,Biopty-Gunを用いた組織生検を各種臓器に対して行い,極めて有用な方法であるとの結論を得たので報告する.

臨床報告

食道悪性黒色腫の1例と本邦報告例の予後に関する考察

著者: 田中正喜 ,   篠藤満亮 ,   山本弘幸 ,   日野直樹 ,   門田康正

ページ範囲:P.1017 - P.1022

はじめに
 食道原発の悪性黒色腫は比較的稀な疾患とされているが,本邦においては最近,その報告例も徐々に増え,自験例も含め76症例が報告されている.しかし,食道悪性黒色腫の予後は他の悪性腫瘍と比較して著しく悪く,現在のところ有効な治療法も確立されるに至っていない.
 最近,われわれは食道原発の悪性黒色腫の1例を経験したので報告するとともに,本邦報告例の予後に関して考察を行った.

脾に発生した類表皮嚢腫epidermoid cystの1例

著者: 福田和馬 ,   三竿貴彦 ,   小野田裕士 ,   林繁樹 ,   錦織和正 ,   福屋崇

ページ範囲:P.1023 - P.1025

はじめに
 脾嚢腫は稀な疾患であり,そのなかでも類表皮嚢腫epidermoid cystの頻度は低い.われわれは,脾原発の類表皮嚢腫の1予術症例を経験したので報告する.

下肢伸長促進目的で作成された大腿動静脈瘻による難治性下腿潰瘍の1例

著者: 森義顕 ,   葉玉哲生 ,   内田雄三 ,   澁谷博美 ,   倉田荘太郎 ,   高安進

ページ範囲:P.1027 - P.1030

はじめに
 ポリオ後遺症の右下肢短縮に対する伸長促進目的で12歳のときに作成された大腿動静脈瘻に起因する,うっ血性下腿潰瘍を形成した34歳男性の1症例を経験した.動静脈瘻の切離により潰瘍は治癒傾向を示し,さらに培養外毛根鞘細胞シートの移植によって治癒が促進された,本例では,初回手術の当初の目的であった下肢伸長は達成されたが,動静脈瘻閉鎖が行われず潰瘍形成を来した.文献的考察を加えて報告する.

長期血液透析患者に合併した壊死型虚血性腸炎の3例

著者: 内藤英明 ,   奥平恭之 ,   広重欣也 ,   穴井博史 ,   大谷晃 ,   高橋尚

ページ範囲:P.1031 - P.1034

はじめに
 近年,慢性透析患者における長期透析例の増加に伴い,長期透析に関連してもたらされる一般外科的疾患として,二次性副甲状腺機能亢進症,消化器癌,さらには虚血性腸疾患の増加が指摘されている1)
 今回,われわれは長期血液透析患者にみられた壊死型虚血性腸炎の3例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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