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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科46巻9号

1991年09月発行

雑誌目次

特集 胃癌の治療update

Strip biopsyによる早期胃癌の治療

著者: 多田正弘 ,   佐貫むつみ ,   白石裕美 ,   村上敦司 ,   苅田幹夫 ,   柳井秀雄 ,   沖田極

ページ範囲:P.1053 - P.1059

 早期胃癌に対する内視鏡的治療は,外科手術に代わる根治的治療になりうるか検討されてきた.その結果,リンパ節などの遠隔転移がないと推定される2cm以下の潰瘍を有さない深達度mの高分化型腺癌であれば,内視鏡的治療で根治できることが明らかとなった.

胃癌のレーザー療法

著者: 比企能樹 ,   嶋尾仁 ,   小林伸行

ページ範囲:P.1061 - P.1066

 胃癌の非観血的治療は,最近注目されるようになった.非開腹で,最小侵襲のもとに胃癌を治療するための条件は何か? そのための対象となる早期胃癌とはどのようなタイプのものであればよいか? 治療の方法にはどのような種類のものがあって,どのような成績であるか? 更に現在,早期胃癌の手術成績は,その術後遠隔成績の面でも,すばらしく良好な成績をおさめている.このような優秀な外科手術法にとって代るためには,どのような治療技術をもって,どのような症例を対象としたらよいかなどの問題について,われわれの施設で外科手術を行った単発早期胃癌631例の経験と,内視鏡治療を行った87例の成績をもとに述べる.

胃癌の合理的リンパ節郭清

著者: 山田眞一 ,   岡島邦雄

ページ範囲:P.1067 - P.1074

 胃癌のリンパ節郭清の合理化が可能か否かを検討する目的で,過去11年間に大阪医科大学一般・消化器外科にてR2以上の郭清を施行した胃切除症例中,占居部位が1領域以内に止まる原発胃癌731例を対象とし,臨床病理学的に検討した.占居部位,深達度,肉眼形態,長径別のリンパ節転移率を検討した結果,早期胃癌のうち合理化の可能な症例に対する手術方針は表1のことく考えられた.この適応で郭清を施行したとすれば,過去においてわれわれが経験した2.0cm未満の進行癌を含めた単発原発胃癌154例は99.4%が治癒切除となる.また,進行癌においては,第2群リンパ節転移例に対しては,第3群リンパ節郭清に加え,腹部大動脈周囲リンパ節郭清を施行することが必要と考える.

腹部大動脈周囲リンパ節郭清の適応と成績

著者: 愛甲孝 ,   帆北修一 ,   才原哲史 ,   島田麻里緒 ,   夏越祥次 ,   吉中平次 ,   高尾尊身 ,   島津久明

ページ範囲:P.1075 - P.1082

 腹部大動脈周囲リンパ節(No⑯)転移64例の自験例を中心に,適応・成績を含め,その問題点を検討した.No⑯転移例の郭清群の累積5年率は14%であり,長期生在例の多くは予防的に郭清した症例,No⑯の微小転移症例,転移個数が1〜2個の症例などであった.No⑯の予防的郭清の適応は,①他に非治癒因子がなく,No⑯に転移が疑われる場合,②第2・3群リンパ節転移陽性例(胃上部癌,噴門部癌では第1群リンパ節転移陽性例も含む)における拡大郭清の対象症例,③S1以上の症例(胃上部癌,噴門部癌ではS0を含む)における重点的郭清の対象症例,などである.治療的郭清の適応は,リンパ節転移が単発か,複数でも3個以内の片側のもので,相対的非治癒切除が期待される症例である.今後は同じ適応のもとでrandomized studyによる臨床効果を検討する必要があろう.

進行胃癌に対する左上腹部内臓全摘術の適応と遠隔成績

著者: 中島聰總 ,   太田恵一朗 ,   石原省 ,   西満正

ページ範囲:P.1083 - P.1088

 1980〜1988年の間に進行胃癌症例に対して左上腹部内臓全摘術(LUAE)を141例施行した.本法は同年代の症例の5.4%に施行された.これは胃全摘,膵脾合併切除,横行結腸切除を基本的な組み合わせとする合併切除で,胃原発巣と網嚢内の潜在的腹膜播種巣を一括切除することを意図した方法である.対照群と背景要因を併せて予後を比較したところ,S2-3,P1,症例において,LUAEの予後が良好であった(5生率9.6%).以上よりLUAEは少数の顕在性の腹膜播種(P1)を有する症例の延命に有効な術式と考えられた.

80歳以上高齢者胃癌の手術方針と成績

著者: 田中乙雄 ,   武藤輝一 ,   鈴木力 ,   藍沢喜久雄 ,   西巻正 ,   片柳憲雄 ,   田中陽一

ページ範囲:P.1089 - P.1094

 1961〜1990年までに教室で切除した80歳以上の胃癌症例42例を対象として手術方針と成績について検討した.術後合併症は9例(21%)に発生し,そのうち3例(7%)が手術直接死亡となった.術前合併症と術後合併症の発生には相関は認められなかった.胃全摘例での術後合併症の発生は幽門側切除例と比較し高率であった.郭清度別ではR0例での合併症発生率はR1,R2と比較し低率であった.治癒切除例の5年生存率は46%であり,R2例では60.8%であった,相対非治癒切除例での5年生存率は23.8%,R0例で40%であった.
 80歳以上の胃癌症例に対する治療は個々の症例により手術術式を選択し,適切な術前・術後管理を行えば十分手術適応はあると考える.

進行胃癌の術前化学療法

著者: 谷口弘毅 ,   伊藤彰芳 ,   高橋俊雄

ページ範囲:P.1095 - P.1100

 術前化学療法は大きく2種に分類される.1つは手術不可能または手術困難であるために,癌腫の肉眼的な縮小を図って術前に行う化学療法(Neoadjuvant chemotherapy)である.もう1つは,術中の癌細胞撒布によるものや,術中に取り残してしまう可能性のある肉眼的には見えない癌病巣に対して行う術前補助化学療法である.いずれの場合も,制癌剤の到達路である血管やリンパ管が手術によって遮断されていない時期に行うという点で術後の化学療法より有利であり,また,化学療法に用いた抗癌剤に対する腫瘍の感受性が手術により判定できるという点で有意義である.しかし,術前化学療法には多くのpitfallが存在することも事実である.

進行胃がん術後補助化学療法

著者: 西山正彦 ,   峠哲哉

ページ範囲:P.1101 - P.1109

 進行胃がん術後補助化学療法はいまだ検討の段階にある.当科における検討では,現在汎用されているMMC+フッ化ピリミジン療法は血行性転移抑制効果があり,また数種の免疫賦活剤との併用が有効であることが確認された.しかしながら,動注療法,局所投与の有用性は証明し得ず,抗がん剤感受性試験の臨床応用にも数多くの問題点が示された.現況において治療成績を向上させるには,腹膜再発を標的とし,画期的奏効率が報告されているEAP,FAMTX療法の組み入れやCDDPの腹腔内投与などを検討するとともに,胃がんの特性,薬剤の作用機序の解析に基づいた術後補助化学療法についての研究を進める必要があると考えられた.

Borrmann 4型胃癌の集学的治療

著者: 磨伊正義 ,   藤本敏博 ,   高橋豊 ,   源利成 ,   木田百合

ページ範囲:P.1111 - P.1119

 Borrmann 4型胃癌は,特異な発育・進展様式を示すため,初診時,既に著明なリンパ節転移や癌性腹膜炎を伴っていることも決して少なくない.そこで遠隔転移を伴った高度進行癌(P2〜,N4,胸・腹水)24例に対し,FAM,Sequential MTX・5-FUを用いて術前化学療法を施行したところ,胸・腹水の消失77.8%,遠隔リンパ節転移の縮小50%,腫瘍マーカーの下降が86.6%にみられた.術前に化学療法が施行された24例中15例(68.2%)に胃切除が可能となり,術後平均生存期間は14ヵ月と延長した.一方,Borrmann 4型胃癌の再発時必発とされる癌性腹膜炎に対し術中MMC・OK 432の大量腹腔内投与を施行したところ,治癒切除群およびP0P1胃癌では有意に良好な術後生存期間の延長が確認された.また,術後長期にわたるOK 432の皮内投与は大量のマクロファージおよびTNFの腹腔内誘導を臨床上確認しており,胃癌の腹膜播種予防に有用と考えられる.

胃癌肝転移の治療法と成績

著者: 喜多村陽一 ,   鈴木博孝 ,   笹川剛 ,   山本清孝 ,   小熊英俊 ,   山瀬由美子 ,   吉田裕 ,   手塚秀夫 ,   平塚卓 ,   井上達夫

ページ範囲:P.1121 - P.1128

 肝転移胃癌の予後は,肝転移巣での癌増殖の統御にかかっている.そこで,肝転移胃癌の病理学的特徴,手術法,化学塞栓療法について検討を行った.病理学的特徴は,深達度S2 se以上,腫瘍最大径6cm以上,隆起型,組織型pap,リンパ節転移陽性群が肝転移high-risk群と考えられた.術後生存率よりみて,肝転移胃癌に対する効果的手術法は,主病巣の摘出とH1における2群リンパ節郭清であった.肝合併切除やリンパ節拡大郭清は治療効果を認め得なかった.われわれが新たに作製した肝動注化学塞栓療法薬剤Lecithin配合ADR Iipiodol emulsionは副作用が少なく,抗腫瘍効果に優れていた.本療法により肝転移巣の統御が十分可能になれば,肝合併切除やリンパ節拡大郭清などの外科的処置の効果も期待できると考えた.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 大腸内視鏡シリーズ・Ⅰ

ポリペクトミー—villous tumorの取扱い

著者: 工藤進英 ,   藤井隆広 ,   日下尚志 ,   木俣博之 ,   三浦宏二 ,   高野征雄

ページ範囲:P.1045 - P.1050

はじめに
 villous tumorは癌化率が高く,欧米に多いが,本邦では稀な疾患として捉えられてきた.しかし,近年診断能の向上に伴い,本邦でも比較的多く認められるようになってきた1).villous tumorは肉眼的な名称であり,組織学的な名称であるvillous adenomaと共通するところもあるが同義ではない.
 本稿ではvillous tumorの定義,内視鏡所見の特徴,良悪性の鑑別,治療方針などについて言及する.

海外だより ボストン留学記・1

ハーバードメディカルスクールへの留学

著者: 小西敏郎

ページ範囲:P.1129 - P.1131

 ニューイングランド・ディコネス病院 私は1990年9月から文部省長期在外研究員として8ヵ月間にわたり,アメリカ合衆国マサチューセッツ州ポストン市のハーバードメディカルスクールの主要病院のひとつであるニューイングランド・ディコネス(New England Deaconess)病院へ留学する機会を与えられた.ニューイングランド・ディコネス病院の外科主任教授G.D.Steele, Jr.教授に招かれ,同病院外科で食道癌・胃癌・大腸癌を中心とした消化器癌の治療について,手術見学・クリニカルカンファランス出席・講演などを行いながら,アメリカでの消化器悪性腫瘍の最新の治療について見聞を広めることができた.また,同病院外科および放射線科の研究室で,私たちが現在日本で進めているbiochemical modula-tionを応用した消化器癌の化学療法について基礎実験を行った。そして留学期間中の1991年3月25〜27日にフロリダ州オーランド市で開かれたSociety ofSurgical Oncology(SSO)のシンポジウムで,ピリミジン合成阻害による胃癌の新しい化学療法について講演する機会に恵まれた.また,1990年11月および1991年4月の二度にわたりニューヨーク市のメモリアル・スローンケタリング病院を訪れ,手術見学と日本の胃癌治療についての講演を行い,今後の消化器癌の治療向上や研究の発展に関して意見を交換することができた.

外科系当直医のためのDos & Don'ts・9

頸部・胸部の外傷

著者: 露木靜夫 ,   野水眞 ,   鈴木篤 ,   高重義

ページ範囲:P.1133 - P.1137

胸部の外傷
 外科系当直医がよく遭遇し,必ず対処できなければいけない緊張性気胸,血気胸について述べる.肋骨骨折については429ページ(4号)を参照.

小児外科医の独白・9

神経芽細胞腫

著者: 角田昭夫

ページ範囲:P.1138 - P.1139

 小児外科医と神経芽(細胞)腫 神経芽腫は,小児の固形悪性腫瘍のうち最も数が多く,かつ予後不良である.このがんの克服は我々の夢の1つである.
 たちの悪いがんのためか,文学作品にあまり現れて来ない.拙著『小児疾患と文学』にも,第11章の「急性骨髄性白血病」(ロビン・クック:『コーマ』)や,第26章「非ホジキン性リンパ腫」(ジョナサン・ケラーマン:『歪んだ果実』)などのがんはあるが,神経芽腫はない.

前立ちからみた消化器外科手術・5

直腸癌根治術における前立ちの基本操作

著者: 早川直和 ,   二村雄次

ページ範囲:P.1141 - P.1147

 直腸癌根治術は癌の占居部位,進行度によって拡大手術から自律神経温存術式に至るまで様々な術式があるが,ここでは標準的な郭清を行う低位前方切除とMiles手術を中心に,S状結腸の遊離,下腸間膜血管の処理,直腸後方切離,直腸前方切離,直腸側方切離,側方郭清における前立ちの基本操作について述べる.
 この場合,患者は截石位とし,患者の両肩を支えてできるだけ頭低位,骨盤高位とする.術者は患者の左に立ち,前立ちは患者の右に立ち,鉤引きは患者の股間に位置する.

臨床報告

十二指腸下行脚に瘻孔を形成した限局性腹膜悪性中皮腫の1例

著者: 近藤秀則 ,   河田憲幸 ,   近藤正美 ,   合地明 ,   折田薫三

ページ範囲:P.1149 - P.1153

はじめに
 腹膜悪性中皮腫は腹膜上皮より発生する稀な腫瘍で,早期発見,術前診断が困難で,かつ予後不良な疾患である.今回,著者らは腹膜悪性中皮腫の1例を経験したので報告する.

回盲部捻転による特発性気腹症の1例

著者: 河内護 ,   吉岡一夫 ,   森岡敬介 ,   仁木寛治

ページ範囲:P.1155 - P.1158

はじめに
 明らかな気腹症(pneumoperitoneum)を呈したが腹膜炎は認められなかった症例に対して保存的治療を行った.しかしながら,最終的には繰り返す腸閉塞症状のため開腹することになった.気腹症の原因は回盲部捻転による腸管の過拡張と考られた.以上のような症例を経験したので報告する.

子宮溜膿腫の穿孔による汎発性腹膜炎の1例

著者: 末廣和長 ,   大住省三 ,   鎌田昌平

ページ範囲:P.1159 - P.1162

はじめに
 子宮溜膿腫は高齢者に起こる比較的稀な疾患であり,その腹腔内穿孔例の報告は限られている.
 最近,著者らは,高齢者に発生した子宮溜膿腫の穿孔による汎発性腹膜炎を経験した.若干の文献的考察とともに報告する.

上腸間膜動脈動静脈奇形の1治験例

著者: 久保俊彰 ,   前川善水 ,   山本時彦 ,   山本東美雄 ,   樽本岳士 ,   梅山馨

ページ範囲:P.1163 - P.1166

緒言
 消化管出血の原因は多岐にわたるが,稀な原因のひとつとして動静脈奇形がある,近年,血管造影が広く行われるようになり,報告例も増加してきているが,いまだ腸間膜動脈系の動静脈奇形の報告は稀である.
 今回,われわれは右心不全を合併した上腸間膜動脈動静脈奇形の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

Meckel憩室結石の1例

著者: 飯田有二 ,   三田三郎 ,   米山文彦 ,   前田光信 ,   秋山三郎

ページ範囲:P.1167 - P.1169

はじめに
 Meckel憩室は一般に胎生期の卵黄腸管の遺残による小腸憩室と定義され,人口の1〜3%に存在するといわれているが1),結石を伴ったMeckel憩室は極めて稀で,過去に30数例の報告をみるのみである.われわれは結石を伴ったMeckel憩室が,穿孔性腹膜炎を招来した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

PTP(Press Through Package)包装誤飲により発生したS状結腸穿孔の1例

著者: 牧野哲也 ,   林外史英 ,   奥田肇 ,   菊地誠

ページ範囲:P.1171 - P.1173

はじめに
 下部消化管穿孔は急性腹症の代表的な疾患の1つであり,その原因についてもいろいろあげられている.
 今回われわれは,PTP(Press Through Package)包装誤飲という非常に稀な原因により発症した下部消化管穿孔症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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