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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科47巻1号

1992年01月発行

雑誌目次

特集 外科における超音波検査—新しい展開

リニア型超音波内視鏡による噴門癌の口側浸潤診断

著者: 有馬美和子 ,   神津照雄 ,   小出義雄 ,   磯野可一

ページ範囲:P.15 - P.24

 超音波内視鏡(EUS)診断がもたらす術前情報が実際の外科治療法の選択に直結する疾患として,噴門癌の口側浸潤診断について報告した.下部食道から噴門部を同一画面で連続的に描出できるのはリニア型EUSの特性であり,噴門癌の口側への広がりを検索するのに適している.噴門癌の口側形態を5型に分類し,病理組織像と比較検討した.表層浸潤型(D型),びまん浸潤型(E型)は浸潤傾向が強く,食道浸潤例の中では特にE型が食道上皮下進展距離が長く,口側切離線決定において要注意な形態である.また,横隔膜筋脚の口側先端である食道裂孔部(hiatus)は術式選択の規準点として設定でき,癌口側端がhiatusを越える症例では,開胸を付加するべきである.

大腸癌に対する超音波内視鏡診断法—体腔内プローブによる診断も含めて

著者: 畦倉薫 ,   坂谷新 ,   小泉浩一 ,   豊田悟 ,   佐藤幹則 ,   太田博俊 ,   中島聰總 ,   西満正 ,   吉田正一 ,   柳沢昭夫 ,   加藤洋

ページ範囲:P.25 - P.31

 本邦では最近診断技術の進歩・検診の普及で多くの大腸癌が早期に発見されるようになった.そして全国の諸施設で早期の癌であるsm癌,中期の癌であるpm癌に対し深部浸潤の程度からの亜分類が試みられ,各病期に応じた合理的な縮小手術への努力がなされつつある.一方,超音波内視鏡(体腔内プローブによる直腸内超音波検査も含む)はCT・MRIなどに比し大腸癌の詳細な深達度診断に最も高い信頼性を得ている.したがって,大腸sm癌およびpm癌の亜分類を診断すること,または逆に超音波像のほうからSM癌およびPM癌の亜分類を確立することが現在超音波内視鏡に課せられた使命であると考えられる.著者は大腸内エコーのSM像を軽度浸潤(SMs)と高度浸潤(SMe)に,また同じくPM像を軽度浸潤(PMs)・中程度浸潤(PMm)および高度浸潤(SMe)に亜分類し臨床応用を試みつつある.そこで,その結果と臨床的意義について述べた.またリンパ節診断の問題点についても言及した.

胆膵領域の内視鏡的超音波診断法

著者: 船川武俊 ,   木本英三 ,   内藤靖夫 ,   三竹正弘

ページ範囲:P.33 - P.43

 内視鏡的超音波検査は胆膵疾患の診断において以下のごとく意義がある.膵疾患では,死角が少なく,小腫瘤病変が高率に描出でき,膵管癌・膵島細胞腫・炎症性腫瘤の鑑別がほほ可能である.胆嚢疾患では,コレステロールポリープと過形成ポリープ・腺腫・腺癌との鑑別診断,および胆嚢癌の壁深達度診断が可能となった.周辺臓器との関係を詳細に描出することで,膵癌・胆嚢癌・胆管癌・乳頭部癌の進展度診断がより正確に診断できるようになった.リンパ節腫大の鑑別診断にも有用である.

超音波カラードプラ断層法—原理と応用

著者: 植野映 ,   森島勇 ,   東野英利子 ,   田中秀行 ,   川上康 ,   奥田諭吉 ,   海老原玲子 ,   角田博子

ページ範囲:P.45 - P.54

 カラードプラ断層法は低速の血流をも捉えられるようになってから,循環器領域のみならず,他領域にも用いられるところとなった.当初は門脈血流を画像化することは不可能といわれたが,いまでは門脈のみならず腫瘍内の1mm以下の細い血管をも描出することは可能となり,良悪性の質的診断あるいは機能的診断にも利用されるようになった。このカラードプラ断層法を理解するために本論文では,はじめにドプラ効果の原理とパルスドプラ法を解説し,つぎにカラードプラ断層像を描くための移動目標指示装置,自己相関法について述べ,そして折り返し現象などのアーチファクトについても言及した.また,現在,応用されている臨床外科的範囲を紹介した.

超音波カラードプラ断層法—大血管領域

著者: 安達秀雄

ページ範囲:P.55 - P.63

 カラードプラ断層法の開発と経食道エコー法(TEE)の導入により,心臓血管外科の診断方法は大きく変化しつつある,従来は侵襲的な血管造影法が信頼できる重要な術前検査と考えられていたが,超音波検査法の進歩により,血管造影検査を必要とせずに手術を実施することも可能となった.カラードプラ法は心臓血管疾患に関する多くの新しい知見を与え,有力な診断方法となった.本稿ではカラードプラ法の導入のあゆみについて簡単に触れ,ついで大血管領域におけるカラードプラ法の有用性について自験例を中心に述べる.

超音波カラードプラ断層法—消化器領域

著者: 川内章裕

ページ範囲:P.65 - P.74

 カラードプラ断層法の適応は,1)臓器血行動態分析=機能評価,2)腫瘍血行動態分析=良悪性判定であり,体腔内,外走査を用い以下の点で既に臨床応用がなされている.①びまん性肝疾患の病態評価,②ElSの効果判定,③肝癌TAE後の効果判定,④肝臓外科手術後の機能評価,⑤肝限局性病変の質的診断,⑥胃限局性病変の良・悪性鑑別診断,⑦大腸癌術前遠隔転移の判定.以上の他にも,上記の適応から,機器の改善と症例を積み重ねることにより,より一層臨床応用の拡大と,意義の重要性が高まるものと考えられている.

超音波ガイド下穿刺術—治療への応用を中心に

著者: 済陽高穂 ,   秋本伸 ,   小林誠一郎 ,   羽生富士夫

ページ範囲:P.75 - P.82

 超音波ガイド下穿刺術は従来の盲目的臓器穿刺に比べ,手技が安全,確実であること,またCTガイドなどより簡便に施行しうることから日常診療の場でさかんに行われ,その効用は極めて大きく消化器領域では不可欠の技術となっている.単に穿刺造影や生検診断のみならず,今日では治療の分野にまで広く応用されており,特に高リスク症例での経皮胆管ドレナージの適応拡大や,その治療成績を格段に向上させた肝膿瘍ドレナージ,あるいは肝予備能の欠落による切除不能肝癌症例での肝工タノール局注などの発達は刮目に価する.
 本稿では主としてこれらの各種ドレナージ,経皮的門脈塞栓術,経皮エタノール注入療法などに焦点を絞り,その実際的手技,適応,臨床的効用について述べ,その意義や問題点についても触れる.

術中超音波検査—肝・胆・膵を中心とした治療への応用

著者: 万代恭嗣 ,   出月康夫

ページ範囲:P.83 - P.90

 1960年代に始められた術中超音波検査は,その後の装置の改良や肝臓外科の発展とともに,現在では多くの施設で行われるようになっている.術中超音波検査の役割は,術中に得られる新たな情報に基づいて不必要な手術操作を省くとともに生体に対する侵襲を軽減したり,手術操作を補助することにある.また,骨や腸管内ガスに妨げられないので死角がなく,高周波数の探触子を用いた分解能の良い画像が得られる利点をもつ.本検査法は,肝切除術における娘結節の診断や手術のガイド,遺残結石の診断,胆嚢癌や膵癌の進展度診断,インスリノーマの局在診断などに応用されており,またカラードプラ装置の術中応用も可能となっている.今後も装置の改良により,術中超音波検査のより一層の普及が期待される.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 大腸内視鏡シリーズⅤ

虚血性大腸炎

著者: 仁瓶善郎 ,   岩田正一朗 ,   三島好雄

ページ範囲:P.9 - P.13

 はじめに
 人口の高齢化,生活様式の変化に伴い動脈硬化性疾患は増加し,消化管領域においても血行障害に起因する病変が近年注目されてきている.特に高齢者において,急激に発症する腹痛,下血,下痢を特徴とした虚血性大腸炎もその疾患概念の普及とともに関心が寄せられ,報告例の集積とともに解析が進められている.本症は虚血によって発症したと考えられる疾患単位であるが,臨床的に虚血を証明することは不可能なことが多く,発症早期に注腸造影,内視鏡検査を施行し特徴的な所見をとらえることが重要である.特に発症早期には病状の推移が早いため,これらの検査が施行されなかった症例では診断は困難となる.
 本稿では,虚血性腸炎のフルオレスセインによる観察を含めた内視鏡所見を中心に述べる.

前立ちからみた消化器外科手術・9

肝切除術における前立ちの基本操作(2)

著者: 早川直和 ,   二村雄次

ページ範囲:P.91 - P.96

 今回は肝切除動作のうちで肝静脈の処理,肝切離,肝断端での結紮,肝実質内での肝静脈の処理,グリソン鞘一括処理における前立ちの基本操作について述べる.

外科系当直医のためのDos & Don'ts・13

熱傷の治療

著者: 露木靜夫 ,   庄司道子 ,   鈴木篤 ,   高重義 ,   野水眞

ページ範囲:P.97 - P.101

 熱傷患者の初療
 1)重症度の判定 2%以下のⅢ度熱傷,15%以下のⅡ度熱傷,合併症のないⅠ度熱傷が処置後帰宅可能の目安である.それ以上では入院を必要とする.さらに重症では専門施設へ転送する(表1,図1,2).
 2)重症例では輸液を開始 乳酸加リンゲル液を急速に落とす.

小児外科医の独白・13

小児がんの包括医療(2)

著者: 角田昭夫

ページ範囲:P.102 - P.103

 引き続き「小児がん国際シンポジウム」より 『がんのこどものトータル・ケア』と題するフィラデルフィア小児病院エヴァンス女史のもう一つの話1)

臨床報告

腺管絨毛腺腫が癌化したと思われるⅠ型早期胃癌の1例

著者: 船戸崇史 ,   阪本研一 ,   市橋正嘉 ,   多羅尾信 ,   後藤明彦 ,   乾博史

ページ範囲:P.105 - P.109

 はじめに
 消化管の絨毛性腫瘍は主に大腸に発生し,胃に発生することは稀である.今回われわれは,胃の腺管絨毛腺腫が癌化したと思われるI型早期胃癌の1例を経験したので報告する.

自然治癒過程を追えた外傷性十二指腸壁内血腫の1例

著者: 小関和士 ,   田村充 ,   小野寺敬 ,   押切直 ,   江里口敏雄

ページ範囲:P.111 - P.115

 はじめに 十二指腸壁内血腫は稀な疾患で,本邦では1964年小野寺らの報告1)以来,これまでの報告例は50例程度で,外傷に起因したものが多い.その治療法について,往時は胃空腸吻合,血腫吸引などの外科的治療を選択した報告が多かったものの,最近は保存的治療を奨める報告が多い.
 われわれは保存的治療により十二指腸の閉塞症状改善までに22日間を要し,かつ5ヵ月後の他疾患手術時に損傷部の局所所見を観察し得た1例を経験したので,治療法に関する考察を加えて報告する.

S状結腸癌の精査中発見された虫垂直腸瘻の1例

著者: 松井昭彦 ,   後藤研三 ,   村上茂樹 ,   仁木正己 ,   伊達幸生 ,   岡島邦雄

ページ範囲:P.117 - P.121

 はじめに
 腫瘍以外の疾患によって虫垂と他の腸管が瘻孔を形成することはきわめて稀であり,これまでに本邦においてわずか6例の報告をみるにすぎない1〜6)
 著者らは,S状結腸癌患者に術前精査目的で注腸検査を行ったところ,直腸から盲腸への造影剤漏出を認め,術中所見にて虫垂直腸瘻と診断した1例を経験したので報告し,併せて本邦報告例とともに考察を加える.

嚢胞内乳腺扁平上皮癌の1例

著者: 小倉修 ,   前田昭三郎 ,   金子洋一 ,   清水健 ,   島津久明

ページ範囲:P.123 - P.126

 はじめに
 近年,乳癌は明らかな増加傾向を示しているが,その病理組織型のなかで嚢胞内癌と扁平上皮癌はいずれもきわめて稀である.
 今回,われわれは嚢胞内乳腺扁平上皮癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

男性嚢胞内乳癌の1例と本邦嚢胞内乳癌報告例の検討

著者: 中上美樹夫 ,   三好賢一 ,   光吉明 ,   浮草実 ,   西嶋義信 ,   島田全康

ページ範囲:P.127 - P.130

 はじめに
 男性乳癌は稀な疾患で,その発生頻度は全乳癌の約1%といわれている.嚢胞内乳癌は特に珍しく,本邦では今までに8例の報告があるのみである.
 今回われわれは,男性嚢胞内乳癌の1例を経験したので,これまでの本邦における男女の報告をまとめ,若干の文献的考察を加えてみた.

外科医の工夫

肛門上皮とCushionを可及的に温存した閉鎖式痔核根治術

著者: 高野正博

ページ範囲:P.131 - P.134

 はじめに
 わが国における痔核手術としては,英国より結紮切除術式(ligation&excision method)が導入され,それを改良した高位結紮法が普及している1).しかし,この術式にも痔核を十分に取ると残りの肛門上皮が少なくなる,また痔核周囲の軟部組織(cushion)2)を喪失するという欠点がある.そこで私は,痔核組織は十分取り,肛門上皮と軟部組織を可及的に残存し創を閉鎖する術式を工夫した.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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