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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科47巻7号

1992年07月発行

雑誌目次

特集 肛門疾患診療の実際—私の方法と根拠 設問

Ⅰ.肛門診察について

著者: 衣笠昭 ,   竹馬浩 ,   升森茂樹 ,   高野正博 ,   住江正治 ,   隅越幸男 ,   岩垂純一

ページ範囲:P.845 - P.859

診察時に注意すべきこと
 肛門部は特殊な部位,つまり恥ずかしい部位であり,また痛みに極めて敏感な部位であるため,診察に際して特有な配慮が必要とされる.

Ⅱ.外来治療について

著者: 衣笠昭 ,   竹馬浩 ,   升森茂樹 ,   高野正博 ,   住江正治 ,   隅越幸男 ,   岩垂純一

ページ範囲:P.860 - P.873

 保存療法
 肛門疾患に対する治療の基本は保存療法であり,保存療法で効果の認められない場合に,外来処置,手術を予定するのが通常である.そして,保存療法の基本は生活指導であり,出血,脱出,疼痛などの症状に対して坐薬,軟膏の外用薬の使用や内服薬投与などの薬物療法を行う(表2).
 外用薬は成分の効能から,ステロイド含有のものと,ビスマス系のもの,その他のものとに分けることができ,形状からは坐薬,軟膏に分けることができる.また,内服薬には,緩下剤,痔核急性期の消炎酵素剤,そして膿瘍,痔瘻に対する抗生物質,さらに痔核に対する内服薬などがある.

Ⅲ.痔核手術について

著者: 衣笠昭 ,   竹馬浩 ,   升森茂樹 ,   高野正博 ,   住江正治 ,   隅越幸男 ,   岩垂純一

ページ範囲:P.874 - P.887

痔核手術を行う際の考え
 痔核とはどのような病態かについは,元来,肛門の閉鎖に役立ってクッションの用をなす正常,生理的なものであったものが,便秘などによる肛門部への負担などから出血を生じたり脱出するようになり,病態として認識されるようになったとの考えや,痔核は直腸肛門部の静脈叢の静脈瘤ないしは動静脈瘤であるとの考えが代表的なものといえる.
 そして,手術に際しては完全な痔核組織の除去を目指し小さな痔核組織もなるべく切除しておくべきであり,根治のためには根部血管を可及的に高位で結紮すべきとの考えや,完全な侵襲を加えるよりも,少しは痔核組織を残しても術後の機能を温存するように軟らかい肛門となるように留意すべきとの考えが代表的なものであろう.

Ⅳ.痔瘻手術について

著者: 衣笠昭 ,   竹馬浩 ,   升森茂樹 ,   高野正博 ,   住江正治 ,   隅越幸男 ,   岩垂純一

ページ範囲:P.888 - P.902

 痔瘻は歯状線の肛門陰窩から細菌が侵入し,それに続く肛門腺に感染が生じて発生する.つまり内外括約筋間に初発感染巣が生じ,この感染巣を中心として様々な方向に炎症が波及し,膿瘍が形成される.そして,膿瘍が自壊するか切開されるかして排膿され,生じた肛門管と交通のある管が痔瘻である.
 痔瘻が形成されると,細菌の侵入した肛門陰窩は原発口として存続し,汚物の侵入口となる.筋間に生じた肛門腺の感染巣は筋間に膿瘍腔を形成して細菌の培地の用をなし(原発巣),それに枝である瘻管が続き,出口が二次口となる.

Ⅴ.裂肛手術について

著者: 衣笠昭 ,   竹馬浩 ,   升森茂樹 ,   高野正博 ,   住江正治 ,   隅越幸男 ,   岩垂純一

ページ範囲:P.903 - P.916

 肛門部の外傷といえる裂肛には,急性期の初期の裂創底部に縦走線維の走行が見えるようなものから,慢性化し,深く潰瘍状になり,潰瘍底部には横走する内括約筋が露出して見え,肛門狭窄が強度になり,潰瘍の口側には肛門ポリープ,肛門側には皮膚痔などの合併病変を伴うようになったものまで,様々なものがある.このような裂肛の治療には,保存療法,用指的に肛門拡張を行う肛門拡張法,狭窄やspasmsを取り除くために内括約筋を側方で切開する内括約筋側方皮下切開術,そして皮膚弁移動術などがある.
 単に肛門を用手拡張する肛門拡張法も,拡張の加減は難しいものがある.内括約筋側方切開術は程度の軽い裂肛に盛んに行われるようになった方法で,外来で局麻下でも行われている.皮膚弁移動術Sliding Skin Graft(SSG)法は,狭窄を生じている瘢痕部分や,肛門ポリープ,皮膚痔などの合併病変部を切除し,十分に肛門を拡張,そして,切除創において粘膜皮膚縫合を行い,その縫合部外側に減張切開を加えて皮膚弁を移動させる術式である.どちらかというと,最近では進行した裂肛に行われる.

カラーグラフ Practice of Endoscopy 大腸内視鏡シリーズ・ⅩⅠ

アメーバ性腸炎

著者: 酒井義浩

ページ範囲:P.839 - P.842

 アメーバ性腸炎は赤痢アメーバ(Entoameba his-tolytica)に代表されるアメーバの感染によって生じる腸炎である.赤痢アメーバ以外には大腸アメーバ,ヨードアメーバ,二核アメーバなどが知られている.

外科系当直医のためのDos & Don'ts・19

消化管出血

著者: 大倉哲朗 ,   梅谷薫 ,   鈴木篤 ,   露木静夫

ページ範囲:P.919 - P.923

 本稿では,外科系当直医の消化管出血の基本処置および,緊急時の内視鏡的処置について述べる.

小児外科医の独白・19

先天性食道閉鎖(手術成績)

著者: 角田昭夫

ページ範囲:P.924 - P.925

 Waterstoneの分類1)先天性食道閉鎖のリスク分類として,われわれの間では長い間使われていたものである.1962年LondonはGreat Ormond Streetの外科医D.J.Waterstoneが,同施設で手術した218人の先天性食道閉鎖症のちょうど半分に当たる109人を救命したと報告する.序論に歴史的事項も書かれ,英国での最初の手術成功者は,1947年 HammersmithHospitalのR.H.Franklinだったという.
 Waterstoneは救命率に関係する因子として,①生下時体重,②合併奇形,③肺炎を挙げ,有名な分類を提案する.すなわちAは成熟児で合併奇形も肺炎もないグループ,Bは軽度の未熟児(体重1,800g以上)か,成熟児で奇形も肺炎も軽症のもの,Cは体重がそれ以下か重症合併奇形,重症肺炎の新生児である.最近5年間のWaterstoneシリーズの救命率は,A:100%,B:79%,C:6%であった.

前立ちからみた消化器外科手術・15

肝胆膵疾患での血管合併切除,再建における前立ちの基本操作(2)

著者: 早川直和 ,   二村雄次

ページ範囲:P.927 - P.932

 今回は肝門部胆管癌を中心に,胆道癌手術の際の門脈合併切除と血行再建術式,肝胆膵疾患での下大静脈,腎静脈の合併切除,再建術式における前立ちの基本操作について述べる.

臨床研究

腹腔内洗浄液中のcarcinoembryonic antigen(CEA)測定による胃癌再発,予後判定の試み

著者: 西山正彦 ,   田中卓 ,   吉田和弘 ,   頼島敬 ,   峠哲哉

ページ範囲:P.935 - P.939

 はじめに
 癌症例個々に適した治療法を確立することを目的とし,さまざまな試みが行われている.腫瘍特性,身体・精神的特性を把握し,それに対応する治療法が選択できれば質をも含めた癌治療成績の向上が期待できよう.当科においても分子細胞学レベルでの予後規定因子の同定1,2),感受性試験3,4)や耐性・作用機序5,6,7)の解明に基づいた抗癌剤の有効活用,各種の免疫療法8,9),quality of life(QOL)を考慮した効果的術式の選択等の基礎・臨床研究を行ってきた.
 ここではそれらのなかから,胃癌の予後規定因子としての有用性が示唆された腹腔内洗浄液中のcarcinoembryonic antigen(腹腔内CEA)測定10,11)について報告する.

成人腸重積症7例の検討

著者: 土田敬 ,   舩木芳則 ,   永里敦 ,   生垣茂 ,   大村健二 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.941 - P.944

 はじめに
 成人腸重積症は比較的まれな疾患で,小児を含めた全腸重積症に占める割合は5〜10%とされている1).また好発年齢は広く分布し,性差は特にみられないようである2).原因は小児では約95%が特発性であるのに対し,成人では約80%が悪性腫瘍などの器質的疾患によることが報告されている3)
 当院では,過去8年間に7例の成人腸重積症を経験した.ここでは成人腸重積症の小腸型と大腸型との違いを中心に考察を加えて報告する.

臨床報告

小腸T細胞性悪性リンパ腫の1例

著者: 泉信行 ,   吉田和喜 ,   伊藤恵一 ,   大橋一悌 ,   大橋一郎 ,   岡部英俊

ページ範囲:P.945 - P.949

 はじめに
 消化管の悪性リンパ腫は比較的頻度の低い疾患であり,しかもその多くはB細胞性である.今回,われわれは小腸病変で発症した,まれなT細胞性リンパ腫の1例を経験したので報告する.

脾部分切除術を行った脾過誤腫の1例

著者: 梶山林太郎 ,   永渕幸寿 ,   藤本圭一 ,   石川幹真 ,   岡崎啓介 ,   大里敬一

ページ範囲:P.951 - P.955

 はじめに
 脾の原発性腫瘍は稀であり,特に脾過誤腫は極めて稀とされている.今回われわれは,術前に血管腫または過誤腫を疑って脾部分切除術を施行し,切除標本の組織学的検索によって脾過誤腫と診断した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

再発・再手術を繰り返した横隔膜原発悪性線維性組織球腫の術後長期生存の1例

著者: 神保雅幸 ,   岡崎肇 ,   三浦一章 ,   佐藤孝臣 ,   大橋洋一 ,   菊地廣行

ページ範囲:P.957 - P.960

 はじめに
 悪性線維性組織球腫(malignant fibrous his-tiocytoma;MFH)は中高年齢者の軟部組織由来の最も一般的な肉腫であるが,横隔膜原発の報告は少なく,予後不良であり術後長期生存例の報告もない.著者らは,腹腔内発育を呈した横隔膜原発MFHの術後長期生存中の1例を経験したので報告する.

術中の保存血輸血により発症したGVHDの1例

著者: 末吉晋 ,   山名秀明 ,   藤田博正 ,   島一郎 ,   疋田茂樹 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.961 - P.963

 Graft-versus-host disease(GVHD)は,生血や新鮮血輸血で発症することが知られている1).心臓血管外科領域では開心術約700例に1例の割合で発症していることが明らかになり2),その対策として無血手術や放射線照射輸血の使用を実施している施設も認められる3).しかし,生血や新鮮血輸血を行う機会の少ない一般外科医にはこの疾患に対する認識は必ずしも十分ではない.今回われわれは,食道癌根治手術時に輸血した保存血が原因と考えられるGVHDを経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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