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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科48巻13号

1993年12月発行

雑誌目次

特集 スキルス胃癌の診断と治療

診断医からみたスキルス胃癌の早期像

著者: 西澤護 ,   細井董三 ,   岡田利邦 ,   志賀俊明 ,   大倉康男 ,   北野伸浩 ,   松下郁雄 ,   長浜隆司 ,   仲谷弘明 ,   工藤卓也 ,   大村秀俊 ,   渡辺明

ページ範囲:P.1505 - P.1511

 いわゆるスキルス胃癌,すなわちlinitis plastica型胃癌(以下,LP)の早期発見のためには,つぎの2つに分けて考えたほうがよい.①比較的診断しやすいPre-LPを少しでも多く発見すること.そのためには,胃体部大彎を中心に,ひだの多い胃底腺領域を広く観察することである.X線では,大彎を中心として前後壁を十分に伸展させたバリウムの付着のよい左側臥位の二重造影像を撮ること,軽く圧迫を加えた前壁二重造影像を撮ること,などが有用な方法である.②胃底腺領域の小さな集中像のない,あるいは軽度のIIc病変を探し出すこと.内視鏡で軽度の褪色,うすい白苔,白斑,発赤斑,軽度のひだのやせなど,胃体部を中心とした注意深い観察が必要である.特に大彎後壁よりは,しばしば盲点となる.女性,とくに50歳未満の女性に多いことにも注意.

びまん浸潤性(スキルス)胃癌の病理学的特徴—特にその初期像について

著者: 下田忠和 ,   池上雅博 ,   佐藤慶一 ,   新井弥生 ,   藤崎順子

ページ範囲:P.1513 - P.1521

 早期胃癌の発見頻度は向上しているが,手術される進行胃癌のなかに占めるびまん浸潤癌の頻度は減少していない.また,びまん浸潤癌は胃体部型と幽門型に分けられ,前者には巨大皺襞型と粘膜萎縮型がある.巨大皺襞型はLP癌に相当するもので,10〜20 mm以下のul(—)粘膜内癌が原発巣となり,後者はより大きい粘膜内癌が原発となる可能性がある.また,後者では,粘膜の萎縮あるいは腸上皮化生が高度で,巨大皺襞型とは異なった発生環境を有していると考えられる.幽門型は胃体部,粘膜萎縮型と類似性がある.しかし,この場合でも粘膜内癌が小さく,かつ萎縮境界線近傍に発生するものがある.幽門部の狭窄を来すと同時に,胃体部方向に進展する.

びまん浸潤型胃癌の浸潤と転移—他臓器浸潤例とリンパ行性進展例の治療について

著者: 太田惠一朗 ,   中島聰總 ,   大山繁和 ,   山田博文 ,   石原省 ,   西満正

ページ範囲:P.1523 - P.1528

 梶谷分類の“びまん浸潤型胃癌”のほとんどはスキルス胃癌である.若年女性に多い傾向にあったが,比較的全年齢層に分布し,高齢者では男性に多かった.当科での切除症例1,230例につき各種因子について検討し,びまん浸潤型胃癌の特徴,術式,予後,再発形式などについて述べた.拡大根治術式としての左上腹部内臓全摘術は,他臓器浸潤症例に対しては有効であるが,リンパ行性進展の強い症例では効果を認めず,さらなる集学的治療を求めていかなければならない.

スキルス胃癌におけるリンパ節転移の実態

著者: 鈴木力 ,   田中乙雄 ,   藍沢喜久雄 ,   西巻正 ,   田中陽一 ,   田中申介 ,   藪崎裕 ,   田中典生 ,   畠山勝義 ,   武藤輝一 ,   曽我淳

ページ範囲:P.1529 - P.1535

 スキルス胃癌におけるリンパ節転移の実態を,教室のBorrmann 4型胃癌症例を対象に検討した.開腹例におけるリンパ節転移の肉眼判定では,99.3%の症例がN(+)であり,特にN3,N4症例がそれぞれ18.3%,26.4%の高率であった.相対非治癒切除以上の切除例における組織学的転移率は89.2%と高率で,転移部位も1群リンパ節から大動脈周囲リンパ節まで広範囲に及び,平均転移個数も15.7個と多数であった.転移の程度はn2症例49.5%のほか,n3,n4の高度転移例をそれぞれ10.8%,6.3%と多数認めた.絶対非治癒切除例では,n3,n4の高度転移例がさらに高率であった.以上の結果は,低分化の癌が胃壁内をびまん性,浸潤性に発育し,同時に高度のリンパ行性進展をきたすという,スキルス胃癌の進展様式の特質をよく反映するものであった.

びまん浸潤型(スキルス)胃癌の腹膜播種性転移と腹腔内洗浄細胞診

著者: 加藤保之 ,   曽和融生

ページ範囲:P.1537 - P.1543

 最近21年間に教室で経験した,びまん浸潤型胃癌218例(8.7%)の腹膜播種性転移と腹腔内洗浄細胞診を行った42例について検討し,以下の結果が得られた.腹膜播種性転移陽性率は50.5%と高率であった.切除例153例の治癒切除率は38.6%と低率であった.びまん浸潤型胃癌218例の遠隔成績は,5年生存率が6.7%,治癒切除例18.8%,非治癒切除例4.1%と不良であった.細胞診を施行した42例のうち,P0で細胞診陽性例が5例(25%)あり,5年生存率は,P0で細胞診陰性例は22.7%,陽性例は0%,P陽性で細胞診陰性例は11.1%,陽性例は9.2%と,細胞診陽性例の遠隔成績は不良であった.以上,びまん浸潤型胃癌は腹膜播種性転移が高率かつ高度であり,切除率ならびに治癒切除率が低率で,腹腔内洗浄細胞診陽性例の遠隔成績は不良であった.

Appleby併用左上腹内臓全摘術

著者: 古河洋 ,   平塚正弘 ,   岩永剛 ,   今岡真義 ,   石川治 ,   甲利幸 ,   佐々木洋 ,   亀山雅男 ,   大東弘明 ,   中森正二

ページ範囲:P.1545 - P.1549

 治療成績が不良であるスキルス胃癌の生物学的特性を考え,1983年より拡大手術=左上腹内臓全摘(+Appleby)術[LUAE(+ApI)]の試みを開始した.その結果から,この拡大手術法の適応とさらに有効な治療法の可能性を考えた.5生率では,stage Ⅲ・スキルス(24例・40%)は対照群(20例・15%)より有意に良好であったが(P<0.05),stage Ⅳ・スキルス(42例・8%)は対照群(11例・0%)よりわずかによいのみであった.3型胃癌では5生率はstageⅢ,Ⅳにおいて対照と変わらず,適応については再考を要する.さらに治療成績を改善するために,播種性腹膜再発,肝再発に対する新しい併用療法が必要である.

スキルス胃癌に対する腹部大動脈周囲リンパ節郭清の意義について

著者: 山田眞一 ,   岡島邦雄 ,   磯崎博司

ページ範囲:P.1551 - P.1556

 臨床的慣用語としてのスキルス胃癌は,広義のスキルス胃癌とし,第12版『胃癌取扱い規約』の胃癌形態の肉眼分類中の4型と同義語として,スキルス胃癌の腹部大動脈周囲リンパ節郭清につき検討した.スキルス胃癌の特徴の1つに,腹膜播種性転移率の高さが挙げられるが,同時に腹部大動脈周囲リンパ節への転移率も高率である.現在,腹部大動脈周囲リンパ節郭清の適応を「根治切除A,B群で手術的第2群リンパ節転移陽性例またはNo.2リンパ節転移陽性例」としているが,今回の検討結果から,スキルス胃癌の場合,適応限界として漿膜面浸潤面積の広さを考慮に入れる必要性を認めた.すなわち,漿膜面浸潤面積が25cm2未満群や25cm2から100cm2未満群では,D3郭清群よりD4郭清群の遠隔成績が良好であったのに対し,漿膜面浸潤面積が100cm2以上群では逆にD4郭清群はD3郭清群より不良となり,D4郭清の効果は認められなかった.

スキルス胃癌に対する姑息的切除の意義—生存期間と在宅期間からみた姑息的治療の評価

著者: 笹子三津留 ,   佐野武 ,   片井均 ,   岡島一雄 ,   丸山圭一 ,   木下平 ,   福田治彦 ,   久須美貴哉 ,   白尾国昭 ,   斉藤大三 ,   近藤仁 ,   島田安博 ,   吉田茂昭

ページ範囲:P.1557 - P.1561

 スキルス胃癌に対する姑息的切除例の予後を,試験開腹例および内科化学療法例と比較検討した.背景因子に差があり解釈が難しいが,50%生存期間は切除群で228日,非切除例と内科化学療法群はともに171日で,切除群の数値は他の2群との間で有意差を認めた.切除群,非切除群間での差はT3症例ではさらに大きいが,T4例では2群の生存曲線に差はなかった.また,在宅生存期間が3か月未満の症例の比率は,切除群で35%,非切除群で63%,内科化学療法群で80%と.切除群の姑息的治療としての意義は十分にうかがわれた,T3症例では,姑息的切除後にMTX+5—FUなど,外来でできる化学療法もしくは経過観察が現時点での推奨できる治療である.T4症例では,切除しないで外来で化学療法を行うのがよいのか,切除してから化学療法を行うのがよいのか,QOLと生存期間の2つをエンドポイントにした臨床試験が必要である.

スキルス胃癌に対する持続温熱腹膜灌流療法

著者: 池口正英 ,   前田迪郎 ,   貝原信明

ページ範囲:P.1563 - P.1568

 組織学的にse,sei,siであった切除胃癌530例をスキルス胃癌,非スキルス胃癌に大別し,それぞれ持続温熱腹膜灌流療法(CHPP)施行群と非施行群に分け,5生率,腹膜播種再発率,再発死亡までの期間を検討し,以下の結果を得た.①治癒切除例では,スキルス胃癌の5年生存率はCHPP施行群33.8%,非施行群20.6%で有意にCHPP群が良好であったが,非スキルス胃癌では両群間で5生率に差はなかった.②スキルス胃癌,非スキルス胃癌ともCHPPは腹膜播種再発率を抑制し再発死亡までの期間を延長させたが,スキルス胃癌でその効果は大であった.以上より,CHPPはスキルス胃癌の予後の改善に有用であると考えられた.

スキルス胃癌の腹膜転移に対する活性炭吸着マイトマイシンCの術中腹腔内投与

著者: 萩原明於 ,   高橋俊雄 ,   榊原次夫

ページ範囲:P.1569 - P.1573

 スキルス胃癌切除例の腹膜転移に対し,マイトマイシンCとして50mgの活性炭吸着マイトマイシンC(MMC-CH)を術中腹腔内に投与し,延命効果をretrospective randomizedcontrolled studyにより検討した.開腹時に胃癌取扱規約でH0,S2-3の症例における延命効果を検討した結果,MMC-CH投与群41例の2年生存率は40%で,非投与群32例のそれの17%に比較して有意に大であった(P<0.05).また,H0,S2-3,P0症例における腹膜転移再発の予防効果の検討では,MMC-CH投与群19例の3年生存率は63%で,非投与群16例のそれの29%に比較して非常に大であったが,症例数が少なく有意差は認められなかった.

スキルス胃癌に対する術前化学療法

著者: 藤本敏博 ,   磨伊正義 ,   高橋豊

ページ範囲:P.1575 - P.1580

 スキルス胃癌は高度に進行した状態で発見されることが多く,治療成績は不良である.術前化学療法(neoadjuvant chemotherapy)は,①癌細胞のviabilityを低下させ,②化学療法に感受性のある癌細胞集団を減少させ,③down stagingにより手術不能例を手術可能とする,などを目的としており,癌性腹膜炎およびリンパ節転移を主な転移再発型式とするスキルス胃癌の高度進行例はその適応となる.筆者らは,MTX/5—Fu療法を中心とする術前化学療法を行い,手術先行群と比較して有意の術後成績の向上をみた.これは,遠隔転移をコントロールすることで生存期間の延長が得られたものであり,臨床的意義確立のためのrandomized studyが今後必要である.

スキルス胃癌に対する抗癌化学療法の検討

著者: 才川義朗 ,   久保田哲朗 ,   大谷吉秀 ,   熊井浩一郎 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1581 - P.1585

 1986年1月より1992年7月までに,当教室にて手術,免疫化学療法などの治療を施行した胃癌症例1,024例中,スキルス胃癌は69例(6.7%)であり,本稿ではこの69例を対象に抗癌化学療法の意義について検討した.MTT法によるin vitro抗癌剤感受性試験の検討では,スキルス胃癌20例は,非スキルス胃癌55例と比較してより高い抗癌剤感受性をもっていることが示された.一方,MMCおよびFU製剤を原発巣切除後投与した21例と化学療法非施行症例10例の遠隔成績の検討では,両群の成績に有意な差は認められなかった(P=0.488).近年,新しい併用化学療法として,スキルス胃癌に対しEAP療法(3例),MTX/5—FU時間差投与療法(2例),FP療法(1例)を施行したが,特にMTX/5—FU時間差投与療法やFP療法が良好な成績を示した.今後,効果的なregimenを選択することにより,スキルス胃癌の治療成績の向上が期待される.

カラーグラフ シリーズ・新しい内視鏡治療・16

胸腔鏡下肺部分切除術

著者: 成毛韶夫

ページ範囲:P.1497 - P.1502

 はじめに
 胸腔鏡の歴史は古く,すでに1910年,スウェーデンの医師Jacobaeus1)により診断に用いられ,ついで結核の治療にも応用されていたが,その後あまり利用されていなかった.1989年から急速に広まった内視鏡下胆嚢摘出術に続いて,この手技が胸部外科領域にも及び,光学ビデオシステムおよび手術器具の進歩,特に自動縫合器の開発により,1991年,肺部分切除が行われるようになり,わが国では1992年から自動縫合器を使った胸腔鏡手術が始まった2-12)
 本稿では,われわれが施行している胸腔鏡を用いた肺部分切除の実際を紹介する.

一般外科医のための医療材料カタログ・9

皮膚被覆・保護材料

著者: 丸山尚嗣 ,   尾崎正彦 ,   向井秀樹

ページ範囲:P.1587 - P.1589

 はじめに
 第一線で働く臨床外科医にとって,治療の対象となるのは内臓疾患ばかりでなく,熱傷,外傷,褥瘡などによる皮膚欠損に対して,これを被覆し速やかな治癒を図らねばならない機会は多い.しかし,皮膚を専門領域とする皮膚科あるいは形成外科医に比べ,一般外科医は必ずしもこの領域に精通しておらず,慣例に従って処置していることも少なくない.今回は,多種にわたる皮膚被覆・保護材料について,その特徴をまとめてみたい.

病院めぐり

国立福岡中央病院外科/徳島県立中央病院外科

著者: 朔元則

ページ範囲:P.1590 - P.1591

 国立福岡中央病院は,厚生省第一次基幹病院整備計画(昭和26年)に基づき,既設の国立福岡病院,国立筑紫病院を統合,合併して,新しく九州地区に基幹病院を建設しようという構想から誕生した.福岡市の中心,旧黒田藩舞鶴城内に8階建550床のモダンな綜合病院がオープンしたのが,30年前の昭和38年2月のことである.
 初代院長に国立筑紫病院長であった古賀秀夫先生(元九州大学友田外科助教授)が就任されたことから,外科のスタッフは国立筑紫病院外科から転入してきた医師と,新しく九大から赴任してきた医師とで構成され,消化器・一般外科と心臓血管外科を中心にしてスタートした.特に昭和41年からは,九大井口外科の助教授であった池尻泰二先生(第2代院長)を外科部長に迎え,九大第2外科教室(井口潔前教授,杉町圭蔵現教授)の全面的バックアップもあつて,さらに発展し今日を迎えている.

Medical Essay メスと絵筆とカンバスと・12

手術術式の図

著者: 若林利重

ページ範囲:P.1594 - P.1595

 第54回日本外科学会総会(1954年)の膵臓に関する宿題報告の担当者は吉岡一(膵切除),本庄一夫(膵全切除の臨床と実際),大野良雄(膵切除—脂肝を中心として)の3先生であった.当時の宿題報告のテーマと担当者は前年度の総会で決定された.私は結核療養所へ勤務したばかりのときだったので,吉岡先生の宿題報告には自分1人でできる仕事を分担することにした.
 その頃の膵切除(主に膵頭十二指腸切除)の成績は惨憺たるものであった.あるとき塩沢院長がこの手術を見に手術室へ入ってきた.患者が院長の親戚の人だったからだ.院長が「助かるかね.」と言ったのに対して吉岡先生は「fifty-fiftyです.」と答えた.不幸にしてこの患者は手術台のうえで亡くなった.私は吉岡先生の手術を手伝っていて,死亡の主な原因は手術適応の範囲の広げすぎと術中の大出血だと感じていた.術前に適応の選択を厳しくすることは当時としては無理だった.ERCPや血管造影が出てくる遙か昔のことだからだ.術中の大出血も適応範囲の逸脱によることが少なくなかった.しかしそうでなくても予期しない大出血に遭遇し収拾のつかなくなることもしばしばあった.

臨床報告

Meckel憩室が先進部となった成人の腸重積症の1例

著者: 青木克哲 ,   西井博 ,   小笠原邦夫 ,   近藤肇彦 ,   坂東義教 ,   笹下薫

ページ範囲:P.1597 - P.1600

 はじめに
 Meckel憩室の合併症として主なものは,腸閉塞,出血,憩室炎の3つである.そのなかでも頻度の低い,Meckel憩室が先進部となった成人の腸重積症を経験したので,成人腸重積症の原因,症状,診断,治療について,文献的考察を加えて報告する.

注腸造影時,人工肛門近傍の憩室が穿孔したと思われる1例

著者: 真田正雄 ,   鈴木秀 ,   塚本剛 ,   志村賢範 ,   由佐俊和

ページ範囲:P.1601 - P.1604

 はじめに
 近年,大腸疾患の増加に伴い1,2),人工肛門を造設する症例も多くなり,術後の経過観察のため人工肛門からの注腸造影施行時に合併症がおこることが多くなると考えられる.今回われわれは,人工肛門からの注腸造影施行時に,人工肛門近傍の憩室が穿孔し皮下膿瘍を形成した1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

脾原発血管肉腫の1例

著者: 加藤明之 ,   平野誠 ,   村上望 ,   常塚宣男 ,   橘川弘勝 ,   増田信二

ページ範囲:P.1607 - P.1610

 はじめに
 脾臓に発生する腫瘍は,良・悪性を問わず比較的少なく,なかでも脾原発性血管肉腫の報告例は少ない.血管肉腫は急速に発育,増大し,かなり進行した状態で発見されることが多い1),今回われわれは,腹腔内出血にて発見された脾原発血管肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

粘膜内に異型腺管群を有したMenetrier病の1例

著者: 壬生保博 ,   奥村恭久 ,   勝守高士 ,   牧野泰博 ,   塩月裕範 ,   林透

ページ範囲:P.1611 - P.1614

 はじめに
 Menetrier病は,胃の巨大皺襞と低蛋白血症を呈する比較的稀な良性の疾患である.われわれは,著明な低蛋白血症を呈し,粘膜内に異型腺管群を有した腺性肥厚性胃炎の像を呈するMenetrier病の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

TAE後に発症した急性気腫性胆嚢炎の1例

著者: 瀧川利幸 ,   一志毅 ,   根岸京田 ,   山本英司 ,   高岡和彦 ,   赤星良

ページ範囲:P.1615 - P.1618

 はじめに
 急性気腫性胆嚢炎は,胆嚢内,胆嚢壁内,胆嚢周囲組織内にガスが認められる特異的な急性胆嚢炎である.従来,比較的まれな疾患と考えられていたが,近年報告例が増加しており,藤岡ら1)は本邦報告95例の検討を行っている.しかし,肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization,以下TAE)施行後に発症した本疾患の報告は少なく,検索し得た範囲での本邦報告例は,自験例を含めて3例に過ぎない2,3)
 今回われわれは,TAE後に発症し,胆嚢外瘻造設術を行うも治癒せず,最終的に胆嚢摘出術にて治癒した急性気腫性胆嚢炎の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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