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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科48巻5号

1993年05月発行

雑誌目次

特集 施設別・消化器癌術後栄養管理の実際

食道癌に対する食道亜全摘術後の栄養管理

著者: 田辺達三 ,   加藤紘之 ,   下沢英二 ,   奥芝俊一 ,   道家充

ページ範囲:P.565 - P.587

北海道大学医学部第2外科
 食道癌患者は高齢者が多く,食道通過障害による慢性の栄養低下を伴うため,従来より術前全身状態の改善が術後の回復や合併症の予防に重要なことが強調されてきた.しかも,最近では頸,胸,腹部の系統的3領域郭清をより拡大した郭清術が積極的に行われる傾向にあり,いっそう術前の十分な栄養管理が大切となっている.術後の栄養管理はあくまでも術前の栄養状態に左右され,術前術後の病態を十分解析した上で,輸液・栄養管理を組み立てる必要がある.

胃癌に対する胃全摘・膵脾合併切除術後の栄養管理

著者: 田辺達三 ,   加藤紘之 ,   下沢英二 ,   奥芝俊一 ,   道家充

ページ範囲:P.589 - P.605

北海道大学医学部第2外科
 胃全摘術は手術器具や材料の進歩,栄養管理の進歩に伴い,比較的安全に施行できる術式となっている.しかし膵脾合併切除を行う場合は,病期の進行例や合併症症例もいまだ少なくない.さらに,膵切除にみられる合併症は重篤化することが多く,症例や経過に即応した術後栄養管理が要求される.

直腸癌に対する低位前方切除術後の栄養管理

著者: 田辺達三 ,   加藤紘之 ,   下沢英二 ,   奥芝俊一 ,   道家充

ページ範囲:P.607 - P.620

北海道大学医学部第2外科
 通常の場合の栄養管理
 患者が腸閉塞状態にない場合は,経口摂取が十分であり栄養管理が問題となる例は少ない.しかし慢性の出血が存在するときはHb, TP, ALB値などが低下し,術後合併症を惹起しやすいので,術前に補正しておくことが必要である.また,栄養管理の面のみではなく,colon preparationの意味から術前より積極的に経静脈栄養を併用しているが,絶食が短期間ですむ場合には高カロリー輸液を施行していない1).具体的には,手術3日前頃より一般食を禁食とし,カナマイシンなどの非吸収性抗菌剤と低残渣食,またはエンシュアリキッド®などの半消化態栄養剤を経口投与し腸内を浄化する.しかし,狭窄高度で腸閉塞状態になりつつある例では禁忌であり,早期より絶食とし高カロリー輸液にて栄養を補給する(後述).
 術後は原則として排ガス,排便を確認したあと(通常は3〜5日後になることが多い)に経口摂取を開始している.上部消化管の術後に比べて摂食量が制限されることは少なく,流動食,3分粥,5分粥,7分粥,全粥,常食と1日ごとに食事内容を増量しているが問題となることはない.静脈栄養のカロリーと水分量は漸減し,7分粥を摂取する頃にIVHカテーテルを抜去している.

胆道癌に対する膵頭十二指腸切除術後の栄養管理

著者: 田辺達三 ,   加藤紘之 ,   下沢英二 ,   奥芝俊一 ,   道家充

ページ範囲:P.623 - P.638

北海道大学医学部第2外科
 膵頭十二指腸切除術(PD)は腹部外科手術のなかでは最も臓器欠損範囲が広く,それに伴う消化吸収不全も顕著なことから,術後の栄養管理は重要な課題である.術後早期の問題点として消化管,胆道,膵臓などの複雑な再建術の良否が挙げられ,時に縫合不全発生時の栄養管理の適否が予後を決定することになる.術後中間期の経口摂取の開始とともに膵液,胆汁をはじめとする消化液分泌量が著明に増加し,また大量臓器欠損からくる臓器相関不全によって栄養摂取のアンバランスを呈することになる.

カラーグラフ シリーズ・新しい内視鏡治療・9

食道胃静脈瘤に対する腹腔鏡下血行廓清術

著者: 北野正剛 ,   橋爪誠 ,   太田正之 ,   富川盛雅 ,   上野毅一郎 ,   杉町圭蔵

ページ範囲:P.557 - P.562

 はじめに
 食道胃静脈瘤の治療法として硬化療法が広く行われるようになったが,副血行路として大きな静脈瘤でいわゆる巨木型のものや,胃静脈瘤症例に対しては,その成績も良好とはいい難い現状である1)
 当科では,これらの症例に対しては経皮経肝的塞栓術や外科手術療法を施行し,ほぼ満足できる成績が得られている.一方でわれわれは,1990年より腹腔鏡下手術などのminimal access sur-gery2)を開始し,同様の観点から食道胃静脈瘤の血行廓清術3)に応用しているので,その手術手技につき解説する.

一般外科医のための医療材料カタログ・2

局所止血剤

著者: 尾崎正彦

ページ範囲:P.640 - P.641

 はじめに
 近年,肝切除などの実質臓器に対する手術も積極的に行われるようになってきたが,それに従い,手術の成否を左右する一因である出血のコントロールの重要性もより大きくなってきた.一般に止血法は,①電気メス,マイクロウェーブ,レーザーなどの加熱止血法,②圧迫・結紮・クリップなど最も外科的な方法である機械的止血法,③実質臓器からのいわゆるoozingに対して局所止血剤を適用する化学止血法に大別される.局所止血剤は,各種の材料からの製品が開発されているが,その使用および適応については,それぞれ専門分野により多少異なっているようである.今回は,一般外科,特に消化器外科領域からみた各種の局所止血剤について考えてみたい.

病院めぐり

八潮中央総合病院外科/高槻赤十字病院呼吸器外科

著者: 小関和士

ページ範囲:P.642 - P.643

 当院の所在地,埼玉県八潮市は,県の東南端に位置し,足立区に接しています.人口は7万2千,都内に距離的には近いものの鉄道がないためか,まだ田舎の雰囲気が残る街です.当院は,昭和48年に80床で開設され,以来20年になる法人病院です.平成1年,総合病院認可となり,現在275床の小病院ですが,地域の患者さんに信頼される病院になるべく努力を続けています.
 外科は,開院以来の江里口院長(金沢大出身)のもと、小関(東北大2外出身),小野寺(秋田大2外出身)に,関連の秋田大2外,山形大2外より若手の長期出張をいただき,5名で担当しています.平成4年1年間の手術件数は,全麻手術164,腰(硬)麻手術122,局麻手術など226の計512件ほどですが,症例はきわめて多彩で,臨時手術が30%以上を占めています.また大学医局などと違い,一般状態の芳しくない患者さんも多く,例えば食道静脈瘤硬化療法症例でも,昨年の14例中半数はChild—ウルトラCとでも分類したくなるような症例で,最近4年間の50例中にChild-Aは皆無でした.それもこれも市中一般病院の宿命かと心得てはいますが,必然的に超多忙状態が続くことになります.

Medical Essay メスと絵筆とカンバスと・5

美術の旅—そのあと

著者: 若林利重

ページ範囲:P.646 - P.647

40日間のヨーロッパ美術の旅を終えた一行はパリーに着いて解散した.しかし殆どの人がそのあともパリーにとどまった.パリーの美術館をみることやパリーで絵を画くことはこの旅のスケジュールには入っていなかったからである
 リヨンへ行く前に私もモンパルナスに近いサン・ジェルマン・デプレの安ホテルに10日ほど泊まって単独行動をした.今の10日はすぐ経ってしまうが当時の10日は実に長かった.1日1日が変化に富み充実していたためだろう.

綜説—今月の臨床

生体部分肝移植

著者: 松波英寿 ,   橋倉泰彦 ,   池上俊彦 ,   千須和寿直 ,   河西秀 ,   北原修一郎 ,   寺田克 ,   嘉数徹 ,   西牧敬二 ,   杉山敦 ,   宮川眞一 ,   百瀬芳隆 ,   石曽根新八 ,   川崎誠治 ,   幕内雅敏 ,   河原崎秀雄 ,   岩中督 ,   高山忠利 ,   鎌田直司 ,   土肥雪彦

ページ範囲:P.649 - P.657

 Ⅰ.はじめに
 脳死ドナーからの肝移植が未だに開始できない現在,生体部分肝移植は国内で行える末期肝不全に対する唯一の有効な治療法であり,その良好な成績から,生体部分肝移植は本邦で確固たる地位を築きつつある1,2)
 本稿では,自験例を紹介するとともに,生体部分肝移植の問題点と今後の展望に関して述べる.

臨床外科トピックス がん遺伝子の基礎と臨床・3

胃癌における遺伝子異常とその臨床応用

著者: 米村豊 ,   伏田幸夫 ,   津川浩一郎 ,   二宮致 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.659 - P.670

はじめに
 近年,遺伝子工学の発展・普及により,ある種の癌ではその癌に特異的な遺伝子異常があることが明らかとなった.家族性大腸ポリポーシス,網膜芽細胞腫などの遺伝性悪性腫瘍では,遺伝子診断はおろか遺伝子治療までも行われつつある.
 胃癌における遺伝子異常も本邦の研究者により徐々に解明されてきた.本稿では胃癌の遺伝子異常と外科臨床における応用について,われわれの成績を中心に述べる.

臨床研究

胃切除後の経鼻胃管留置の是非

著者: 山村義孝 ,   坂本純一 ,   紀藤毅 ,   中里博昭

ページ範囲:P.673 - P.677

 はじめに
 一般に,開腹手術後の数日間,①消化管内の減圧,②吻合部出血の有無を知る,③術後イレウスの鑑別診断などの目的で,経鼻胃管(以下,胃管)を挿入留置することが広く行われている.しかし,この胃管の留置が患者にとって精神的・肉体的に大きな苦痛となっていることは否めない事実である.
 筆者は1987年10月以降の手術患者に対して,術後数時間以内に胃管を抜去するようにしているが,未だに大きなトラブルを経験していない.そこで,開腹手術後に胃管を留置することの是非を知る目的で,1987年10月以前の症例とそれ以降の症例を比較検討した.

臨床報告

遺残虫垂S状結腸瘻の1例

著者: 小野寺健一 ,   飯田潤一

ページ範囲:P.679 - P.682

 はじめに
 虫垂S状結腸瘻はまれな疾患であり,その報告例もきわめて少ない.今回われわれは,遺残虫垂S状結腸瘻の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

胸腹部大動脈瘤の胸腔内破裂の1治験例

著者: 杉本貴樹 ,   小川恭一 ,   麻田達郎 ,   向原伸彦 ,   西脇正美 ,   樋上哲哉

ページ範囲:P.683 - P.687

 胸腹部大動脈瘤は大動脈瘤の2〜3%を占める比較的まれな疾患であり,破裂例はそのうちの4%である1).破裂例の救命手段は手術以外にないが,その予後は不良である.
 今回われわれは両側胸腔内破裂をきたした胸腹部大動脈瘤例に対し,部分体外循環を補助手段として緊急手術を行い良好な結果を得たので,破裂例の本邦報告例の検討を加え報告する.

先天性十二指腸閉鎖症に合併した先天性膵嚢胞の1例

著者: 長田裕典 ,   藤村治彦 ,   武田功 ,   土岐彰 ,   笹岡和雄 ,   徳岡裕文

ページ範囲:P.689 - P.692

 はじめに
 膵嚢胞はしばしば経験する疾患であるが,小児の真性膵嚢胞はきわめてまれである.また,十二指腸閉鎖症は先天性腸閉塞症のなかでも発生頻度が高く,合併奇形や低出生体重児が多い.さらに,膵胆管開口部に近いという解剖学的特殊性から,診断・治療を困難にする場合がある.今回,われわれは,完全離断型十二指腸閉鎖症を合併した先天性真性膵嚢胞の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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