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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科48巻7号

1993年07月発行

雑誌目次

特集 Up-to-date総胆管結石症治療

内視鏡的乳頭切開術(EST)(1)

著者: 平田信人 ,   竹熊与志 ,   藤田力也

ページ範囲:P.843 - P.850

 1975年11月から1992年までに683例の総胆管結石症例にESTを施行し,639例(93.6%)の治療に成功した.出血,膵炎,穿孔などの合併症は40例(5.9%)であった.合併症のための手術率は1.3%,死亡率は0.4%であった.1986年以降は処置具の開発が行われ,技術の向上もみられたため,合併症率は3.7%,死亡例は0%と安全に治療されている.ESWLの導入によりコンフルエンスストーン,巨大多数結石,肝内結石も効率よく治療できるようになった.長期予後は273例中226例で追跡できた.結石再発率は5.8%であったが,EST後10年以上経過したものでは13%であった.胆嚢炎はすべて胆嚢有石群に認められた.

内視鏡的乳頭切開術(EST)(2)—早期および晩期合併症からみた安全性の再評価

著者: 小川芳明 ,   田中雅夫 ,   池田靖洋 ,   松本伸二 ,   宮崎亮 ,   横畑和紀 ,   木村寛 ,   成富元 ,   銭立武

ページ範囲:P.851 - P.857

 総胆管結石の治療を目的として内視鏡的乳頭切開術(EST)を施行した1,103例を対象とした.早期合併症が前期758例中66例(8.7%)に発生した.後期では,膵炎の危険を伴うプレカットを試作ナイフを用いて極力回避し,胆管ステントを留置して結石嵌頓による胆管炎を予防し,体外式砕石器でバスケット嵌頓を解除した.これらの関連手技により,早期合併症は345例中17例(4.9%)と有意に減少した.EST後10年以上を経過した161例の長期予後では,晩期の胆管結石再発.胆嚢有石例に起こる急性胆嚢炎,無石胆嚢内の結石新生,および肝内結石例における晩期の重篤な胆道感染症に注意を要すると思われた.

経皮的胆管鏡による切石術

著者: 山川達郎

ページ範囲:P.859 - P.865

 本稿では,胆道ファイバースコープ開発以来18年間に経験した遺残胆管結石症例の内視鏡的治療をもとに,T-tube瘻孔を介して行う術後胆管鏡と経皮経肝的胆管鏡の手技を解説すると同時に,各々の総胆管結石に対する臨床的意義について述べた.本法は,経十二指腸的アプローチ不能な遺残総胆管結石や肝内結石の摘出以外にも,胆管良・悪性疾患の診断,治療など多目的に用いうる有用な方法である.胆道外科に従事する外科医が,瘻孔さえ維持されていれば繰り返し施行可能である本法の利点と術中検索法の限界を補うきわめて重要な手技であることを認識し,本法をよりroutine化するならば,胆道結石で過度な手術,無意味な再手術を患者に強いることは少なくなり,その治療成績はさらに向上するものと確信している.

総胆管結石症の外科治療—開腹手術

著者: 木下壽文 ,   中山和道 ,   小須賀健一 ,   宗宏伸 ,   柴田順二 ,   比嘉義輝

ページ範囲:P.867 - P.873

 1971年1月から1992年12月までに当科にて手術を行った総胆管結石症例は382例で,手術術式は胆管切開切石術が279例(73.0%)と最も多かった.手術死亡例は3例(0.8%)で,術後早期合併症は44症例に47件(12.3%)発生し,結石の遺残あるいは再発を認めたものは59例(15.4%)であった.長期遠隔成績では良好82.2%,やや良好10.5%,不良7.0%,遠隔死亡0.3%であった.
 近年,腹腔鏡下手術が頻繁に行われるようになり,総胆管結石症に対しても積極的に腹腔鏡下手術を行っている施設もみられる.しかし,腹腔鏡下手術では適応が制限されるため,現状では開腹手術が主体と考える.総胆管結石症での胆道付加手術は術後愁訴の原因となることから,遺残・再発結石予防のために安易に行うべきでない.

腹腔鏡下手術(1)—経胆嚢管的総胆管結石截石術

著者: 大上正裕 ,   若林剛 ,   北島政樹

ページ範囲:P.875 - P.882

 総胆管結石を合併する胆嚢結石症例に対して,腹腔鏡下で経胆嚢管的に総胆管結石を截石し,引き続き胆嚢摘出術を施行する方法により良好な手術成績を得た.手術法は,腹腔鏡下に胆嚢管を剥離後,バルーン・ダイレーターを挿入し拡張する,胆嚢管より細径の内視鏡を総胆管内に挿入し,バスケット鉗子を用いて総胆管結石を摘出し,胆嚢管断端を閉鎖後,引き続き胆嚢摘出術を施行する.本法は,内視鏡的乳頭切開術と腹腔鏡下胆嚢摘出術の組み合わせと比べても,乳頭機能を完全に温存できる一期的根治術である点で優れると考える.胆嚢管が比較的太く,総胆管の結石が胆嚢よりの落下結石の可能性の高い症例がよい適応と考えられ,これらに対して本法は侵襲の少ない優れた手術法となると考える.

腹腔鏡下手術(2)—総胆管切開,Tチューブ誘導による総胆管結石治療

著者: 木村泰三 ,   桜町俊二 ,   吉田雅行 ,   小林利彦 ,   大石真広 ,   後藤秀樹 ,   吉野篤人 ,   高林直記 ,   原田幸雄

ページ範囲:P.883 - P.888

 胆嚢・総胆管結石症10例に対し,腹腔鏡下胆嚢摘出術+腹腔鏡下総胆管切開+Tチューブ誘導による治療を行った.その方法を述べて成績を報告した.胆道鏡の挿入は容易で,操作性はよく,どのような総胆管結石にも対応できると考えられた.遺残結石を2例に認めたが,ともに術後Tチューブ瘻孔からの切石に成功した.Tチューブ留置に伴う合併症は経験しなかった.Tチューブ抜去は術後3〜4週で施行し,術後平均入院期間は33日であった.本法は低侵襲である上に,適応が広く,また遺残結石への対応も万全であるので,今後,胆嚢・総胆管結石治療の有力な方法の1つになると思われた.

腹腔鏡下手術(3)—経胆嚢管的総胆管結石砕石術—パルスダイレーザーを用いて

著者: 万代恭嗣 ,   大友裕美子 ,   窪田敬一 ,   照屋正則 ,   伊藤精彦 ,   渡辺稔 ,   豊田宏之 ,   出月康夫

ページ範囲:P.889 - P.895

 腹腔鏡下胆嚢摘出術と組み合わせた総胆管結石に対する治療法として,minimallyinvasiveな面を活かして経胆嚢管的総胆管結石砕石術を行っている.細径ファイバーや専用シースの使用,第5番目のトロッカーの挿入などの工夫により,経胆嚢管的総胆管へのアプローチが可能となった.さらに,胆嚢管を通過しにくいような大きさの結石に対しても有効に結石の摘出ができるようパルスダイレーザーを用いている.本レーザーは個体のみを破砕するため,安全なレーザーであり,操作性もよい特徴を有する.これまで5例に本法による砕石術を施行し,4例で有効な砕石が得られた.手技的問題点がいくつか残されているものの,本法は総胆管結石に対する有用な治療法と考えられる.

腹腔鏡下手術(4)—ESWLのEHLへの応用

著者: 林勝男 ,   加藤孝治 ,   森正幹 ,   水野芳樹 ,   近藤豊 ,   早川俊彦 ,   和田昌也

ページ範囲:P.897 - P.901

 最近,総胆管結石に対して様々な治療がなされるようになった.しかし,手術不能総胆管結石例における治療選択は難しい.われわれは,手術不能例には,積極的に胆道鏡下砕石術(電気水圧衝撃波(以下,EHL1,2,3)・マイクロ波・レーザー4,5)など)を行っているが,結石の種類により,時間がかかり,うまく砕石できないこともある.そこで,生体外の胆石破砕実験にて,体外式衝撃波による結石破砕療法(以下,ESWL6))とEHLとの併用が有効であることを確認し,臨床例に応用し成功したので報告する.

カラーグラフ シリーズ・新しい内視鏡治療・11

腹腔鏡下胃楔状切除術

著者: 村井隆三 ,   伊坪喜八郎

ページ範囲:P.835 - P.841

 はじめに
 われわれは1990年11月から腹腔鏡下胆嚢摘出術の臨床応用を始め,良好な成績を得ているが,手技的に安定し,各種の新しい鉗子類,持針器なども入手できるようになった1992年から腹腔鏡下手術の適応の拡大を図っている1),本稿では,胃粘膜下腫瘍に対する自動縫合器を用いた腹腔鏡下胃楔状切除術について,その手術手技を中心に詳述する.

綜説—今月の臨床

甲状腺機能亢進症の外科

著者: 三村孝 ,   田島知郎

ページ範囲:P.903 - P.912

 Ⅰ.はじめに
 甲状腺機能亢進を呈する疾患には,自己免疫疾患であるバセドウ病の他に,甲状腺に発生した腫瘤から甲状腺ホルモンを過剰に分泌する機能性甲状腺結節(autonomously functioning thyroidnodule, AFTN),中毒性多結節性甲状腺腫(toxicmultinodular goiter, TMNG)がある.欧米では甲状腺機能亢進症の手術として,この両者を一緒に論じているものもある.しかしわが国では,バセドウ病以外の甲状腺機能亢進症は比較的まれであるし,病因論的にも異なる疾患であるので,ここではバセドウ病の外科治療について述べる.

臨床外科トピックス がん遺伝子の基礎と臨床・4

遺伝子異常と肝臓癌

著者: 上田政和 ,   守瀬善一 ,   西脇真 ,   都築俊治

ページ範囲:P.913 - P.916

 はじめに
 分子生物学をはじめとした基礎研究の進歩により,癌の発生・進展には多くの遺伝子が関連し,癌は本質的に遺伝子異常の結果生じることが明らかになってきた.これらの事実から,ヒト癌においても,その生物学的特性と異常が生じている遺伝子とのあいだには一定の関連があると予想することは当然の帰結であると考えられる.このような考え方に基づいて,われわれは1984年から食道癌,胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌,肝細胞癌の臨床腫瘍学的特性と癌遺伝子異常との関連を追求してきた.その結果,癌遺伝子異常がある種のヒト癌の臨床腫瘍学的特性を表現するのにきわめて有用なマーカーであることが明らかにされてきた1,2,3).「臨床外科」にこのようなシリーズが組まれるようなことになったのも,以上のような流れと無縁なものではないと考えている.
 本シリーズの他の項目では,その表題は癌遺伝子と各種癌組織ということになっているが,本稿では他の論文と異なって,その表題を癌遺伝子ではなく,単なる遺伝子とした.その理由は,肝細胞癌では他臓器癌とはまったく異なって,その発生・進展において,ヒトに本来存在する癌抑制遺伝子や癌遺伝子のみでなく,ウイルス遺伝子であるB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスがきわめて重要な意味を有しているからである.

一般外科医のための医療材料カタログ・4

気管内チューブと気管切開チューブ

著者: 立山俊朗 ,   野崎藤章 ,   尾崎正彦

ページ範囲:P.917 - P.919

 はじめに
 手術時の気道確保のための気管内チューブと気管切開患者のための気管切開チューブは,国内外十数社より製造販売されておりその種類はかなりの数となる.すべてを紹介するには自ずと限界があるので,それぞれのチューブの分類について表1に,また,代表的なチューブの一覧を表2,3に示すとともに,以下にその概略について記す.

病院めぐり

いわき市立総合磐城共立病院外科/山口県立中央病院外科

著者: 新井元順

ページ範囲:P.920 - P.921

 磐城共立病院は,昭和25年11月,常磐地域石炭産業の福祉厚生を目的に組合立病院として設立されました.内科,外科,産婦人科の3科,医師5名,病床50床で開院しましたが,その後,診療科が増設され,昭和41年,市町村合併によるいわき市の誕生に伴い市立に移管されました.
 現在,診療科目17,結核病床50を含む病床数は1,028床,医師数は120名を数え,臨床研修指定病院,各種学会認定病院,第3次救急病院の指定を受けた基幹総合病院として活動しています.

外科研修医実践講座・2

皮膚切開・縫合とその準備

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.923 - P.927

 はじめに
 今から約20年前,卒業を間近に控えた臨床講義で,外科の教授から「一般の人が他人を切りつければ傷害罪に問われる.人間をメスで切開したり,縫合することを許されているのは,国から免許を交付された医師のみである.それゆえ,医師にはそれ相応の責任が要求される.その責任のなかには,最新の医学知識や厳しい研修はいうに及ばず,倫理的,道徳的な研鑽も含まれる」と教えられ,何か神聖な気持ちにさせられたことが,昨日のことのように思い出される.初心忘るべからず.
 外科研修医実践講座の連載を始めるにあたって,われわれ一同,お読みいただく学生諸君や研修医諸氏に,後々まで心に留め置いていただけるような内容を心掛けるつもりである.その代わり,内容がややもすれば独善的になるやも知れず,それをチェックする意味で,他の執筆陣による「私はこうしている」というコーナーを設けた.第1回の今回は,外科の基本である切開と縫合およびそれに関連した諸々を取り上げることにした.

Medical Essay メスと絵筆とカンバスと・7

リヨン回想(2)

著者: 若林利重

ページ範囲:P.928 - P.929

 リヨンの1ケ月は比較的のんびりと生活した.それでもいろんなことを見聞することができ結構充実した日々でもあった.街の中を動くときは専ら足を使った.歩きながら景色をたのしみモチーフを探してはスケッチした.地図を頼りに1回に4キロメートル以上歩いたこともある.ローヌ河畔,金頭公園などリヨンには景色のよいところが多い.とくにソーヌ河の右岸,フルヴィエールの丘の古い家並みは風格があって画因に富む.何百年も経た古色蒼然たる石の家には今も人が生活している.住人は何代もかわり,家には人々の歴史が刻みこまれている.無心に遊んでいる子供たちにも,洗濯物を干している老婆にも何となくゆかしさが感じられる.
 期待していたマレー・ギー教授の手術だけでなく,サン・ジョセフ病院のマリオン教授の手術も見学することができた.マレー・ギーは多少気むずかしいところがあり手術にもそれが感じられたがマリオンの方は対照的にみえた.私がみせてもらったのは超低体温麻酔下での僧坊弁閉鎖不全の弁縫縮術であった.綾取りのように沢山の縫合糸をかけてから,まとめて手際よく結紮していった.手術室には緊張感もなく,むしろ和やかな空気が漂っていた.麻酔を担当していた若い女性は麻酔医ではなく,検査技師のように資格をもった麻酔師である.当時日本では麻酔医の数が少なかったのでこういう麻酔師の制度があったらよいだろうと思った.

臨床研究

肝臓外科におけるAKBRにもとづくRedox Theoryの再検討

著者: 川崎誠治 ,   幕内雅敏 ,   松下啓二

ページ範囲:P.933 - P.939

 はじめに
 1967年Williamsonら1)は,肝ミトコンドリアでのATP産生能と深く関係するredox poten-tial(NAD/NADII)と肝組織中のacetoace-tate/β-hydroxybutyrate(ketone body ratio;KBR)の値が平衡状態にあることを明らかにしたが,このことは肝組織でのKBRを測定すれば肝ミトコンドリアのredox stateを知りうることを示している.しかし,このKBRの測定は肝組織採取を必要とするために,その臨床応用には限界があった.
 近年になり,Ozawaら2-4)は,動脈血中のKBR(AKBR)は肝組織のKBRとほぼ等しく,したがってAKBRを算出することにより,肝組織のKBR を測定せずに肝ミトコンドリアの redoxstateを知りうるという“redox theory”を提唱した.この理論をもとに,AKBRの測定は肝切除の術前の肝障害の程度の評価5),術中の肝に対する侵襲の評価6),肝移植におけるドナー肝の評価7),術後のグラフト肝機能の評価8),あるいは救急医学領域における多臓器不全の病態の評価に有用であるとして,種々の報告がなされてきた.しかし,肝切除例,肝移植例を中心に著者らが検討した範囲では,AKBRの値は病態と解離することも多く,信頼しうる指標とはなりえていない.

急性虫垂炎における血清鉄値の診断的有用性について

著者: 千福貞博 ,   岡島邦雄 ,   山田眞一 ,   網岡勝見 ,   平松昌子 ,   李喬遠

ページ範囲:P.941 - P.944

 はじめに
 鉄欠乏性疾患,慢性関節リウマチ,悪性疾患などの慢性消耗性疾患において血清鉄が低下することはよく知られている.しかし,これら以外に急性炎症性疾患,特に感染症において血清鉄が低下することも報告されている1,2).近年のサイトカインに関する新知見により,この急性炎症による血清鉄の低下の原因はインターロイキン1などの炎症性サイトカインの作用によると考えられている3).しかし現在,日常臨床においてサイトカイン,特に血中インターロイキン1を測定することは,ELISA法を用いても感度以下になるなどのため容易ではない.これに対して,従来から行われている血液生化学検査における鉄の測定はきわめて簡便で,実地臨床上の意義が大きい.そこで,急性炎症性外科疾患の代表として急性虫垂炎を研究対象として取り上げ,その術前の血清鉄を測定し,診断的有用性を検討したので報告する.

臨床報告

Whitehead手術後の瘢痕狭窄が誘因となった直腸mucosal prolapse syndromeの1例

著者: 木村昌弘 ,   春日井貴雄 ,   小林学 ,   堀田哲夫

ページ範囲:P.945 - P.947

 はじめに
 直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syn-drome,以下MPS)は特徴的な臨床像および組織像を呈する疾患であるが,本邦においては,最近になって広く認識されはじめ,報告も散見されるようになっている1).今回われわれは,内痔核に対するWhitehead手術後の瘢痕狭窄が誘因となって発生したMPSの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

肺内停留針の2例

著者: 辻本優 ,   杉山茂樹 ,   中島邦樹 ,   津田基晴 ,   池谷朋彦 ,   山本恵一

ページ範囲:P.949 - P.952

 はじめに
 肺内異物の治療は異物の摘出が原則とされ,気管支内の異物に対しては内視鏡的摘出も試みられるが,開胸による摘出を余儀なくされることもある.今回,当科で経験した肺内停留針の2例を呈示し,治療上の問題点を中心に文献的考察を加えて報告する.

肝嚢胞内陳旧性血腫の1切除例

著者: 高畠一郎 ,   宮谷信行 ,   大村健二 ,   小林健 ,   赤祖父美和 ,   伊藤廣

ページ範囲:P.953 - P.956

 はじめに
 各種画像診断の進歩とともに肝臓の嚢胞性疾患がしばしば経験されるようになった.しかし,嚢胞内に出血,感染,壊死などを起こした場合,画像診断上,種々の所見を呈するため質的診断が困難になり,特に嚢胞腺癌との鑑別が必要となる.われわれは,術前診断で腫瘍性嚢胞との鑑別が問題となった肝嚢胞内陳旧性血腫の1切除例を経験したので報告する.

左側腹部痛で発症した原発性大網捻転症の1例

著者: 生田肇 ,   内藤伸三 ,   藤田博文 ,   河村貴 ,   黒郷文雄 ,   明松智俊

ページ範囲:P.957 - P.960

 はじめに
 大網捻転症は比較的まれな疾患で,1991年に勝木ら1)は本邦報告71例を集計している.急性腹症として取り扱われ,右側に多いことから急性虫垂炎と診断され開腹されることが多い1,2)が,今回,われわれは臍左側に限局性腹膜炎として発症した大網捻転症を経験したので報告する.
 大網捻転症は一般的に原発性と続発性とに分類され3),本症例は腹腔内にその原因となる器質的疾患,癒着などがなかったので原発性大網捻転症と考えられた.また,術前診断には至らなかったが,CT検査にて,壊死に陥った大網が腹腔内の結合織炎の様相を呈していたので,その所見も合わせて報告する.

追悼

島津 久明教授

著者: 三島好雄 ,   出月康夫

ページ範囲:P.963 - P.965

 鹿児島大学第一外科島津久明教授の突然の御逝去に接し,日本外科学会会員一同心から哀惜の念に堪えません.
 故島津教授は昭和37年に日本外科学会に入会され,以後今日まで永年にわたり次々と貴重な御研究の成果を発表され,私ども会員に稗益するところ誠に大でありました.また,学術集会においても司会あるいは座長としてその運営に多大の貢献をいただきました.さらに昭利63年以降は評議員として直接会務の執行にも参画され,編集委員・九州地区認定医試験委員長として学会の発展にも大きく寄与されました.昭和61年に鹿児島大学へ第一外科教授として赴任されてから卓拔した研究・指導力,完壁な手術,それにもまして円満なお人柄に惹かれて,教室員のみならず同門の先生方も深く信頼し,心から敬愛しておられたと伺っております.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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