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臨床研究
肝臓外科におけるAKBRにもとづくRedox Theoryの再検討
著者: 川崎誠治1 幕内雅敏1 松下啓二1
所属機関: 1信州大学医学部第1外科
ページ範囲:P.933 - P.939
文献購入ページに移動1967年Williamsonら1)は,肝ミトコンドリアでのATP産生能と深く関係するredox poten-tial(NAD+/NADII)と肝組織中のacetoace-tate/β-hydroxybutyrate(ketone body ratio;KBR)の値が平衡状態にあることを明らかにしたが,このことは肝組織でのKBRを測定すれば肝ミトコンドリアのredox stateを知りうることを示している.しかし,このKBRの測定は肝組織採取を必要とするために,その臨床応用には限界があった.
近年になり,Ozawaら2-4)は,動脈血中のKBR(AKBR)は肝組織のKBRとほぼ等しく,したがってAKBRを算出することにより,肝組織のKBR を測定せずに肝ミトコンドリアの redoxstateを知りうるという“redox theory”を提唱した.この理論をもとに,AKBRの測定は肝切除の術前の肝障害の程度の評価5),術中の肝に対する侵襲の評価6),肝移植におけるドナー肝の評価7),術後のグラフト肝機能の評価8),あるいは救急医学領域における多臓器不全の病態の評価に有用であるとして,種々の報告がなされてきた.しかし,肝切除例,肝移植例を中心に著者らが検討した範囲では,AKBRの値は病態と解離することも多く,信頼しうる指標とはなりえていない.
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