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鴨川便り・1
メディカル・ディレクター
著者: 牧野永城1
所属機関: 1亀田総合病院
ページ範囲:P.114 - P.115
文献購入ページに移動 鴨川便りという題は編集部のヒントだったが,そうなるとまず鴨川の説明から入らねばなるまい.実は私は今,千葉県房総半島の小さな町,鴨川にある亀田総合病院というところで仕事をしているのである.わずか人口3万あまりの海辺の小さな町なのだが,病院は許可病床760という大きなものである.医師150人を含め,1,400人の職員を抱え,年間180例近い開心術や150例程の開頭術,その他ほとんどあらゆる種類の3次医療が行われ,房総全域の患者はもとより遠く東京の患者まで集めているという,鄙にはまったく珍しい病院なのである.外房で太平洋の白波砕ける浜辺の小さな町にどうしてこんな病院がと思わず捻る.病棟の窓からも,私のオフィスの窓からも一望に広がるのは実に見事な太平洋の海原である.
すでに定年を大分過ぎた齢になる.現職で激職の渦中にあった生活から,時間が完全に自分の自由になったとき,いろいろな束縛から解放された喜びは格別であった.食べ物の味まで変わったのは,ゆっくり味わう余裕ができたためであろう.平凡なものが実にうまいのである.そしてありきたりの食べ物がうまいことに幸せさえ感ずる.早朝に訪れてくるさまざまな野鳥の声,朝夕一斉に聞こえるひぐらしの合唱,そして日々その姿を変えて行く庭や前の山の一木一草,梢を渉る清涼な空気,踏みしめる落ち葉の感触など,感動の源は無限にあった.
すでに定年を大分過ぎた齢になる.現職で激職の渦中にあった生活から,時間が完全に自分の自由になったとき,いろいろな束縛から解放された喜びは格別であった.食べ物の味まで変わったのは,ゆっくり味わう余裕ができたためであろう.平凡なものが実にうまいのである.そしてありきたりの食べ物がうまいことに幸せさえ感ずる.早朝に訪れてくるさまざまな野鳥の声,朝夕一斉に聞こえるひぐらしの合唱,そして日々その姿を変えて行く庭や前の山の一木一草,梢を渉る清涼な空気,踏みしめる落ち葉の感触など,感動の源は無限にあった.
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