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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科49巻12号

1994年11月発行

雑誌目次

特集 ストーマの造設と管理—患者のQOLの視点から

ストーマ医療の進歩と課題

著者: 穴沢貞夫

ページ範囲:P.1373 - P.1378

 わが国のストーマ医療は,この20年間の基礎教育活動を中心とする地道な土台作りと,そこで維持された医師・看護婦のきわめて円滑な協調関係により,全国的にきわめて平均化されたストーマ医療が普及した.ストーマ外科学において長年の解決課題であったコンチネントストーマの開発は残念ながら達成できず,相変わらずインコンチネントストーマが広く行われている.ストーマ管理は,ストーマ装具,特に皮膚保護剤と呼ばれるポリマー製材の開発により,自然排便法の著しい進歩がみられた.これに伴い洗腸法の相対的頻度は低下した.わが国は今や名実ともに,ストーマ医療の先進国の仲間入りをしたといってよい.

標準的消化管ストーマ造設法

著者: 西尾剛毅

ページ範囲:P.1379 - P.1385

 消化管ストーマは患者にとって決して快適なものではない.このことを十分に理解して,手術前のインフォームド・コンセントを行うべきである.ストーマの出来具合いにより術後のストーマケアが決定される.どのようなストーマを造るべきか,患者の状態に応じ,最適な選択をする必要がある.また,永久的なストーマでは,ストーマサイト・マーキングが非常に重要である.手術方法も種々あるが,一般的に行われている手術に,われわれの工夫を加えた手術法を述べてみたい.

標準的尿路ストーマ造設法

著者: 鳶巣賢一

ページ範囲:P.1387 - P.1397

 近年,腹腔内にパウチを形成し,ストーマから間欠的に導尿する方法(continent reser—voir,導尿型)や,温存した尿道から術前と同様に排尿する方法(neobladder,自然排尿型)の代用膀胱形成術が普及しつつある.今後,後者が優勢になる傾向があるのは事実であるが,これらの術式は多くの点で完成の域に達したとはいえない.この意味で,従来から実施されてきた尿管皮膚瘻術や回腸導管造設法の重要性は今も失われていない.より良いストーマの形成は,術式の特徴を理解し,適応を選び,さらに適切な腹腔あるいは後腹膜腔内の操作を行うことで実現される.この観点に立って,具体的なストーマ形成法の実際をまとめた.

ストーマの管理(1)—ストーマ装具による管理

著者: 澤口裕二

ページ範囲:P.1399 - P.1407

 ストーマケアの基本はセルフケアである.近年のストーマ装具の目ざましい発達に伴い,ストーマケアの考え方も変化してきている.また,進歩したストーマケアに適したストーマを作成することも重要である.外科医には,装具によるストーマの補正とその限界を理解することが,術後の良いストーマ管理のために要求される.現在の装具による補正は高さの補正が基本であり,そのためにはフランジの特徴,コンベックス型装具の意義,ベルトによる圧迫の適応を理解することが重要である.

ストーマの管理(2)—洗腸による管理

著者: 新井英樹 ,   田沢賢次 ,   南村哲司 ,   勝山新弥 ,   竹森繁 ,   塚田邦夫 ,   藤巻雅夫

ページ範囲:P.1409 - P.1413

 人工肛門造設を余儀なく施行された患者(オストメイト)にとって,ストーマの管理は切実な問題であり,ケアの1つの方法として古くから洗腸療法が行われてきた.そして現在までに,日本でも大いに普及してきている.しかし最近では,皮膚保護剤の発達により,自然排便法による管理も増えてきているのが現実である.
 ストーマ管理において自然排便法が良いか洗腸法が良いかは,古くて新しい命題であり,それぞれに利点,欠点がある.これまでわれわれは,洗腸療法を積極的に指導してきたが,それを続けていくかどうかの選択は,本人のQOLに応じ,患者自身にまかせるようにしている.

ストーマの合併症

著者: 磯本浩晴 ,   荒木靖三 ,   白水和雄 ,   赤木由人 ,   掛川暉夫

ページ範囲:P.1415 - P.1420

 ストーマの合併症をわれわれが経験した症例から前期(1974〜1984年)と後期(1984〜1992年)に分け比較検討した結果は,有意の差をもって後期が減少していた.その内容からは社会復帰後の合併症が特に減少しており,なかでも皮膚障害が著しく少なくなっていた.
 これらのことをふまえて,ストーマ造設術に伴う外科的合併症としては,位置不良,陥凹,脱出,ヘルニア,狭窄などがストーマケアにおいても問題を有する合併症であり,再造設の適応が考慮される,また一方では,ストーマ管理の上からも合併症が明らかにされており,その原因に関して考察した.

[座談会]ストーマリハビリテーションをどう進めるか

著者: 進藤勝久 ,   登坂有子 ,   大村裕子 ,   尾崎晴美

ページ範囲:P.1421 - P.1433

 進藤 今日はストーマケアに係わっていらっしゃるベテランの看護婦さんたちにお集まりいただいて,外科医に注文をつけていただき,私も外科医として,言いたいことを言わせていただいて,本当に患者のためになるストーマ医療とは何なのか勉強させていただきたいと思っております.
 まず,登坂さんはこの道一筋に研究と実践を積んでこられ,虎の門病院分院の総婦長を経て現在は癌研病院で統括部長をなさっていますので,そういうお立場から,医師に何を求めるかお教えいただけたらと思っております.
 大村さんは慈恵医大で外科看護に携わったあと,米国のETスクールに行かれて勉強され,帰国してからはETとして癌研病院で活躍されたあと,東京オストミーセンターで開業ETをなさっています.その辺の経緯を踏まえてお聞かせ下さい.
 尾崎さんは,聖マリアンナ医科大学で外科の看護婦をしていて,やはりこの道に関心をもたれ,米国でETの訓練を受けて来られました.日本に帰られてからは,装具を扱っている企業に入られて,ETとして活躍をしていらっしゃいます.どんな動機で看護婦が企業に入ってストーマケアに携わっているのか興味あるところですが,企業からみたアドバイスを下さい

カラーグラフ シリーズ・新しい内視鏡治療・27

腹腔鏡下子宮手術

著者: 長田尚夫 ,   田中均 ,   吉田孝雄 ,   佐藤和雄

ページ範囲:P.1367 - P.1372

 はじめに
 歴史的にみた婦人科での腹腔鏡は古く,1970年代には,急性腹症や不妊症領域で臨床応用が盛んに行われてきた.最近になって,腹腔鏡の目的は診断から治療へと大きく変わり,その適応も拡大されて,卵管性不妊(癒着剥離術,卵管開口術,子宮内膜症など)から子宮外妊娠,卵巣嚢腫,子宮筋腫など悪性腫瘍を除く婦人科良性疾患のほとんどが腹腔鏡治療の対象になっている.また,今年の4月より,癒着剥離術,付属器腫瘍摘出術,卵巣部分切除術,子宮外妊娠手術,子宮内膜症病巣除去術の5つが保険診療の適用となったことから,経済的な面での障害が取り除かれ,本格的な腹腔鏡下手術が始まろうとしている.
 子宮に行う腹腔鏡下手術には,LAVH(laparo-scopy-assisted vaginal hysterectomy),LH(laparoscopic hysterectomy)ならびに筋腫核出術がある.特にLAVHは,膣式子宮摘出術に腹腔鏡下手術を併用する術式で,従来開腹術の適応であった子宮全摘出術の多くが経膣的に摘出できることから腹腔鏡下手術の大きな恩恵を受けることになり,婦人科領域のminimally invasive sur-geryの代表といえる.

綜説—今月の臨床

障害肝切除時の術中・術後管理

著者: 田中明 ,   高田泰次 ,   山本雄造 ,   猪飼伊和夫 ,   森本泰介 ,   山岡義生

ページ範囲:P.1435 - P.1441

 肝切除の際に障害肝として問題となるのは,①肝硬変,②閉塞性黄疽,③活動性慢性肝炎などである.一方,肝切除の術中,術後管理の問題点としては,①手術手技に関するものと,②管理に関するものとに分類できるが,それらについて、その病態と対策について言及する.教室では生体部分肝移植を手掛けており,小児と成人の違い,末期肝疾患に対し新しい肝臓を移植することと機能の低下した肝臓を限界まで切除することの違い,移植後の抗凝固療法,免疫抑制療法,ウイルス感染症の有無による違いはあるものの、肝移植の術中・術後管理は障害肝の肝切除には参考になるところが多いので,その点についても言及する.

イラストレイテッドセミナー・8

はじめての右半結腸切除術・LESSON2/「右半結腸切除術」に対するコメント

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.1443 - P.1453

 12.横行結腸を頭側に翻して間膜を広げ,その漿膜にメッツェンバウム剪刀で切開を加える,回結腸動脈の左縁を上行して上腸間膜動脈本幹の前面に達し,さらに中直腸動脈の右縁(ぎりぎりでなく少し余裕をもって)に沿って横行結腸に至るルートをとる.

外科研修医実践講座・17

イレウスへの実践的対応

著者: 堀孝吏 ,   徳原真 ,   坂本昌義

ページ範囲:P.1455 - P.1459

 病態生理と治療方針
 イレウスの病態生理で問題となるのは,腸管の通過障害による大量の水・電解質のthird spaceへの喪失と,口側腸管内圧上昇,血流障害,細菌の異常増殖の結果もたらされるbacteria, endo-toxin translocationである(図1).したがって,イレウスの診断がつき次第,水・電解質の補正と腸管内貯留液のドレナージを開始し,それと平行して腸管の通過障害の原因の究明を急ぐ.腸管内貯留液が保存的にドレナージできないような原因(例えば,絞扼性イレウス)がある場合には外科的な処置が必要となる.口側腸管のドレナージが可能である場合には,待機的に通過障害の部位と原因の究明を心掛ける.部位と原因がはっきりした場合にはそれぞれの病態に応じた手術を行う.癒着性単純性イレウスの場合でも保存的治療の限界は1〜2週間と考えている(図2).

鴨川便り・11

良い病院には良い図書室が

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.1460 - P.1461

 筆者は3年半程前から「医療の質に関する研究会」のメンバーとして参画し,近年は全国各地の病院を訪問,評価項目について調査(サーベイ)して歩いている.その内容は多岐にわたり,興味深いことが多いが,その1つとして私の目に顕著に写ることに,不採算部門の貧弱さがある.図書室,診療録管理部門,組織病理部門などがその例である.医療保険の支払制度の下でいつも日陰におかれている部門で,病院にとって投資のし甲斐がない,もしくはこの病院の財政苦難の時代にそれどころではないということになるのだろうか.
 図書室も興味があって,外国の病院を歩くとき,よく見学してきたが,欧米先進国の図書室と比べるとその落差になんとも言い様のない寂しさを感ずる.筆者のいた聖路加病院は橋本先生がまだ院長としてお元気だった頃メイヨークリニックとは特殊な縁があった.そのため私も何度かメイヨーを訪れる機会があって,いつも心暖まる歓迎を受けたのだが,図書館長のトーマス・キース氏はとりわけよく面倒を見てくれた.燦々と陽の当たる素晴しいサニーロープの彼の家でのシェリーパーティー,ホテルケーラーで私のために開いてくれたスタッフ達を招待してのパーティー.そのとき集まったメイヨーのスタッフの豪華な顔触れ,世界的な名前が何人もそこに並んでいるのに興奮したっけ.そこでもらった招待客署名入のメイヨー箴言集の一冊は感激だった.

私の工夫—手術・処置・手順・3

胃全摘術後における食道空腸器械吻合施行例の術後吻合部狭窄予防対策—バルーン付きゾンデの使用

著者: 村上望 ,   平野誠 ,   橘川弘勝

ページ範囲:P.1462 - P.1462

 胃全摘術において,食道空腸の器械吻合施行例における術後狭窄は比較的多く認められる合併症の1つであり,術後の回復やQOLに多大な影響を及ぼす.この合併症を回避するために,術後吻合部のステープルの輪状構造を保持し,その内腔を確保するために,術中にバルーン付きのゾンデを経鼻的に挿入し,肉芽の過形成と粘膜相互の癒着によって発生する吻合部狭窄の予防を行った.
 方法は,手術が終了し,閉腹前にバルーンゾンデ(クリエートメディック社製)(図1)を挿入し,吻合部よりバルーン下端が約4〜5cm下方の位置になるよう留置する.そして長さ12cm,外径2cmのバルーン内にウロビゾン®と生理食塩水を等分にした液を30ml注入し充満させる.バルーン内圧は測定していないが,バルーン内に30mlの液を入れた状態では強い陽圧とはならず,EEAによる食道・空腸吻合部の形状を保持する程度のものである.術後はX線撮影にて位置を確認し(図2),吻合部の上皮化の支障にならないように術後2日目に抜去している.1992年4月から始めて34例の症例に行ったが,吻合部の内視鏡的拡張術を必要とした症例はなく,術後の吻合部狭窄症例を経験していない.

臨床外科トピックス 消化器外科領域におけるサイトカインとその周辺・8

臓器移植とサイトカイン

著者: 若林剛 ,   島津元秀 ,   白杉望 ,   市東昌也 ,   河地茂之 ,   隈元雄介 ,   吉田昌 ,   唐橋強 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1463 - P.1469

 はじめに
 臓器移植における重要な生体反応として,免疫反応と炎症反応が挙げられる.前者は移植片拒絶反応の主要な部分として,また後者は,拒絶反応の最終段階や primary graft nonfunctioning(PGN)における虚血—再灌流障害の発生機序として,無視することのできない重要な生体反応である.この両者はいずれもが,主に細胞間の情報伝達をつかさどるサイトカインと呼ばれる可溶性因子によって調節されている.
 一般的にサイトカインは分子量数kDaから数10kDaの糖蛋白であり,その作用発現は受容体との結合を介して行われる.リコンビナント蛋白を用いた研究から明らかになったこれらのサイトカインの特徴は,その機能の多様性と重複性である.すなわち,1つのサイトカインは種々の異なった細胞を標的として広範な生物活性を発現しうるし,いくつもの異なったサイトカインが1つの標的細胞に対して非常に類似の作用を発揮することができる.したがって,1つのサイトカインは,他のサイトカインと協調的に,あるいは相反的に関与しながら,いわゆるサイトカイン・ネットワークを形成し,その作用を発現している.

病院めぐり

千葉労災病院外科/公立豊岡病院外科

著者: 鈴木秀

ページ範囲:P.1470 - P.1471

 千葉労災病院は,昭和40年に千葉県市原市辰巳台に開設され,当初は10診療科,300床でスタートしました.その後,次第に拡充され,現在は16診療科,400床を有する,労災医療,勤労者医療,リハビリテーション医療,救急医療などを使命とする地域の基幹病院に成長しました.
 外科は開設時の河合院長から始まり,以来,千葉大学肺外科の関連施設として,肺癌を中心とした肺疾患を大きなテーマとし,かつ消化器外科を盛んに行ってきました.昭和61年に人事異動があり,千葉大学第1外科から鈴木,塚本が赴任し,消化器外科,一般外科がメインになりました.このときは,平田副院長以下4名でしたが,次第に増員されてきました.

臨床研究

直腸脱に対する手術例の検討—Gant-三輪法・Thiersch法併用術式について

著者: 板野聡 ,   寺田紀彦 ,   橋本修 ,   松川啓義

ページ範囲:P.1473 - P.1476

 はじめに
 直腸脱は良性疾患ではあるが,患者の苦痛は大きく、安全かつ確実な治療方法の選択が重要となる.今回われわれは,直腸脱の8例に対しGant-三輪法・Thiersch法を施行したので,症例の分析と本法の有用性,さらに,Thiersch法として肛門輪縫縮を行う際に川いる材料について検討し報告する.

手術手技

ラパロリフトを用いた吊り上げ法による腹腔鏡下胆嚢摘出術の経験

著者: 片山寛次 ,   新本修一 ,   関弘明 ,   中川原儀三 ,   片山外一

ページ範囲:P.1479 - P.1483

 はじめに
 現在行われている腹腔鏡下胆嚢摘出術のほとんどは,二酸化炭素による気腹法を用いている.しかし,気腹による合併症として,皮下そのほかの気腫,ガス塞栓,高炭酸ガス血症などが報告されている1).また,気腹による腹腔内圧上昇は,下大動脈からの血液還流を減少させ,心拍出量の低下,低血圧をもたらし,時には肺塞栓の原因ともなる2).したがって,循環器や呼吸器に障害をもった症例では,気腹圧をかけることに注意を要するといわれる.気腹装置,高価なトロッカーや専用の鉗子類,エンドクリップなどは気腹法では不可欠であるが,腹壁吊り上げ法を用いた平圧下における内視鏡手術では必ずしも必須ではなく,より経済的である.しかし,従来のキルシュナー鋼線やU型リトラクターを使った腹壁吊り上げ法は侵襲的であり,また手技的に煩雑である3)
 最近われわれは,簡便かつ安全に平圧下で腹腔鏡下手術が行える腹壁挙上機器ラパロリフト®を導入,9症例に胆嚢摘出術を試行したので,その経験を報告する.

臨床報告

腹腔内遊離ガス像を呈した小腸腸管嚢腫様気腫の1例

著者: 五明良仁 ,   坂本秀夫 ,   川角博規 ,   万木英一 ,   阿部重郎 ,   西川睦彦

ページ範囲:P.1485 - P.1488

 はじめに
 腸管嚢腫様気腫Pneumatosis cystoides intes-tinalis(PCI)は比較的まれな良性の疾患であるが,急激な腹痛と腹腔内遊離ガス像を呈し緊急手術の対象となることもある1,2).その発生原因は不明であるが,近年,有機溶剤のトリクロロエチレン(trichloroethylene;TCE)の慢性暴露と関連した報告が散見されている3,4).また,治療法として酸素吸入療法が施行され,効果が得られている5,6)
 今回われわれは,有機溶剤の使用歴があったが,腹痛と腹腔内遊離ガス像から消化管穿孔を疑って開腹し,小腸のPCIと診断,術後酸素吸入療法を施行し軽快した1例を経験したので報告する.

プロスタグランディンE1持続動注により治癒した虚血性骨壊死

著者: 笠島史成 ,   明元克司 ,   竹村博文 ,   手取屋岳夫 ,   上山武史

ページ範囲:P.1489 - P.1493

 はじめに
 末梢循環障害による虚血性壊疽で骨病変を伴うものは,従来,切断の適応とされてきた.今回われわれは,足趾に虚血性の骨病変が存在し,かつ下肢血行再建不能である症例に対し,プロスタグランディンE1(PGE1)持続動注療法を施行して著明な改善を認め,足部切断を回避しえたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

子宮瘤膿腫穿孔による汎発性腹膜炎の1例

著者: 山下博士 ,   坂本昌士 ,   山本修 ,   岡本康 ,   向井晃太 ,   二宮基樹

ページ範囲:P.1495 - P.1499

 はじめに
 子宮瘤膿腫は悪性腫瘍や老人性頸管萎縮分娩,人工妊娠中絶,放射線照射,先天性奇形などが原因となり発症する比較的まれな疾患である.このうち穿孔に至るものはきわめてまれであり,本邦報告例は現在までに30例を認めるにすぎない.この子宮瘤膿腫の穿孔が起きる機序としては,種々の原因により子宮頸管の狭窄や閉塞が生じ,子宮内分泌物の自然排出が障害され,細菌感染により膿や壊死物質が貯留し,分泌物の増加に伴って子宮内圧が上昇し,子宮破裂をきたすことが考えられている.
 今回われわれは,腹腔内遊離ガス像により消化管穿孔と術前診断した,85歳の子宮瘤膿腫穿孔による汎発性腹膜炎の1例を経験した.高齢女性の汎発性腹膜炎の原因疾患の1つとして念頭におくべきと考え,若干の文献的考察を加えて報告する.

大網裂孔ヘルニアの1例—大網裂孔ヘルニア本邦報告72例の集計

著者: 小林達則 ,   毛利宰 ,   藤井喬夫 ,   水野将克 ,   宮原方哉 ,   岡本伸

ページ範囲:P.1501 - P.1505

 はじめに
 腹腔内ヘルニアは比較的まれな疾患で,中でも大網の異常裂孔に腸管が嵌入してイレウスをきたすことはきわめてまれである.今回われわれは,大網裂孔ヘルニアにより絞扼性イレウスをきたした1例を経験したので,本邦報告例と合わせて報告する.

胆道内発育により閉塞性黄疸を呈した末梢型胆管癌の1例

著者: 小林直哉 ,   高倉範尚 ,   山本浩史 ,   柏原瑩爾 ,   村上仁 ,   高橋健治 ,   大海研二郎 ,   池田雅彦 ,   大月均

ページ範囲:P.1507 - P.1511

 はじめに
 今回われわれは,胆道内発育により閉塞性黄疸を呈した末梢型胆管細胞癌の1例を報告し,併せて本邦報告例についても検討を加えた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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