icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科49巻13号

1994年12月発行

雑誌目次

特集 外科手術と輸血—最近の動向

[エディトリアル]輸血療法の基本的な考え方—輸血療法への意識改革

著者: 湯浅晋治

ページ範囲:P.1527 - P.1530

はじめに
 輸血療法は全血輸血から成分輸血へ,成分採血による高単位の成分輸血へ,その成分製剤も白血球除去,放射線照射などを行うことにより質的に向上し,さらに同種血輸血から自己血輸血へと大きな発展を遂げてきた.最近では,サイトカインの応用によりエリスロポエチン,G-CSF,トロンボポエチンなどが血球成分の代替を果たすようになり,血漿分画製剤も第Ⅷ因子やアルブミンが遺伝子組み換え技術により生産されるようになってきた.一方,人工血液や酸素運搬体などの研究も大きな成果を上げ,輸血療法は新しい時代に向けて大きな転換期を迎えようとしている.このような医療技術の進歩や社会の変革のなかで,われわれも輸血療法に対する意識改革を行わなければならない.
 もとより,輸血療法で最も重要なことは,血液は人由来であることから,その安全性確保と有効・適正な使用である.このなかで基本的な考え方は,輸血は救命的に使用すること,輸血のリスクと効果とのバランスを考慮して使用すること,そして輸血療法に際してはインフォームド・コンセントを得て行うことである.医療も1つのサービスとして位置づけられ,患者は医療消費者なのである.ひと昔前の売り手一方の市場も,消費者の意識の高まりのなかで消費者のニーズを知り,充実した良質のサービスを提供する時代となってきている.開かれた,そして成熟した医療社会に向けて,医療にも意識変革が求められている.

手術時の輸血準備—Type & Screen, MSBOS

著者: 吉田久博 ,   伊藤和彦

ページ範囲:P.1531 - P.1536

 Type & Screen(T&S),MSBOSは,医療費の削減,手術用血液製剤の有効利用ならびに輸血検査業務の省力化・合理化を目的として考案された輸血システムである.T&Sは術中輸血の可能性が低く出血量の少ない待機的手術に適応されるシステムで,術前に血液型判定と不規則抗体検査を行い,輸血が必要になった時点で血液を用意する.MSBOSは輸血頻度の高い術式に適応されるシステムで,術前に必要最小の予備量を見込んだ血液量を確保し,十分な検査を行ったのち手術を実施する.両システムは相補的な関係にある.

大量輸血と緊急輸血

著者: 加来信雄

ページ範囲:P.1537 - P.1542

 大量出血に対する緊急輸血は出血性ショックの唯一の治療法である.その目的は循環血液量の維持と組織への酸素運搬であるが,その際にヘモグロビンの酸素結合と解離も救命救急医療の進歩のなかで改めて考慮する必要性が生じてきた.また,輸血後肝炎にはじまる汚染血輸血の問題もHBV, HCV, HIVの抗体チェックが可能となり,輸血の安全性が増した反面,GVHD反応もクローズアップし社会問題化している.したがって,輸血は救命のための単純な金科玉条的手段として行うのでなく,個々の病態に適した輸血療法が救命救急医療の現場にも求められている.

手術と凝固因子補充療法

著者: 上野滋 ,   横山清七 ,   平川均 ,   田島知郎 ,   三富利夫

ページ範囲:P.1545 - P.1549

 先天性出血凝固異常症患者における外科手術では,凝固因子補充療法が行われる.現在,凝固因子製剤として,ヒト血漿に混在する各種ウイルスの感染を防止するために,ウイルスを不活化したうえでモノクローナル抗体を用いて精製された製剤やヒト血漿を用いない遺伝子組み換え製剤が開発され,利用できる状況である.血友病患者の手術に際しては,凝固因子の生体内回収率と半減期,出血の程度を勘案しながら第Ⅷあるいは第Ⅸ因子製剤を補充する.凝固因子に対するインヒビターを有する血友病患者では,通常の補充療法に不応の場合,プロトロンビン複合体製剤によるバイパス療法が適応となる.von Willebrand病では,von Willebrand因子を含む第Ⅷ因子製剤による補充療法を行う.

即時性/遅発性輸血副作用

著者: 高橋恒夫 ,   関口定美

ページ範囲:P.1551 - P.1557

 輸血は重要な治療手段の1つであるが,副作用と合併症を伴う危険性もある治療法である.輸血副作用を大別すると,輸血途中あるいは輸血終了1〜2時間後より出現する即時性のものと,輸血終了数日,数週間から数か月後に出現する遅発性のものがある.副作用は血液中の赤血球のみでなく,白血球,血小板,血漿蛋白が原因で生じる.発熱,蕁麻疹のような重篤ではないが日常よく経験されるものから,輸血後移植片対宿主反応やアナフィラキシー反応のような稀ではあるが重篤な副作用もある.輸血を実施するにあたっては,これらの副作用に関しての知識をもち,その予防に注意を払い,副作用が現われた時点で適切な処置を施す必要がある.

輸血後移植片対宿主病(輸血後GVHD)—予防,診断,治療

著者: 上平憲 ,   朝長万左男

ページ範囲:P.1559 - P.1564

 輸血後GVHDとは,輸血血液製剤に混入するT細胞が患者に生着し,宿主(host)の組織適合抗原を認識して,この抗原の分布する臓器を攻撃する免疫反応の結果生じる病態である.したがって,確定診断には患者体内におけるT細胞のキメラ状態とGVH反応の病理学的存在を皮膚・肝臓などで確認する.治療はステロイド剤,その他の免疫抑制剤や調整剤が試みられているが絶望的で,ほとんどの症例は1か月以内に死亡する.予防は,輸血の際の一般的な心構えを遵守のうえ,製剤中に混入するT細胞を1,500〜2,500cGyの放射線照射で失活させることが唯一最良の方法である.

輸血感染症の対策

著者: 清川博之

ページ範囲:P.1565 - P.1569

 わが国の輸血による感染症は各種のスクリーニング検査が導入されて著減しつつある.特にHCVのための特異的で感度のよい検査法が開発されたことにより,輸血後肝炎対策は大きく前進した.輸血感染症を根絶させるために問診(自己申告)およびスクリーニング検査により,感染血液を排除する方法からさらに一歩進めて,輸血に使用される赤血球製剤,血小板製剤,血漿製剤それぞれに化学処理を行って直接的にウイルスを不活化する方法,白血球除去やフィルターによりウイルス除去を行う方法などが試みられている.

術中自己血回収法の実際

著者: 山口明満 ,   北村信夫

ページ範囲:P.1571 - P.1576

 開心術における術中自己血回収法として,当科で用いている限外濾過法とCellSaverにつき,その手技の実際,成績について紹介した.限外濾過法のみを用いた場合は,術中の術野の出血が回収できないため,体外循環終了後から手術終了までの出血量が失血となるため,輸血を必要とする場合が多くなる.そのため,術中の工夫により術野のほとんどの出血が回収できるCell Saverを使用し,症例に応じて適宜限外濾過をも体外循環に組み合わせることにより,より多くの開心術症例で無輸血症例が増加するものと思われた.

心臓外科における無輸血開心術の努力—エリスロポエチンを用いた術前貯血式自己血輸血の実際

著者: 許俊鋭 ,   平田勇 ,   尾本良三

ページ範囲:P.1577 - P.1582

 同種血輸血の回避や節減を目的に希釈体外循環や体外循環回路内充填量の削減,循環装置内の残血やドレーン血の回収などに最大限の努力が払われてきたが,必ずしも十分でなかった,術前の自己血貯血は同種血輸血回避の方法として非常に有効であり,特に遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)は自己血採血後の貧血改善や造血促進に効果的と考えられた.心臓血管外科領域における臨床試験では,コントロール症例の無輸血開心術施行率25%に対し,rHuEPO静注投与症例(自己血非貯血)の無輸血率は50%,同様のrHuEPO静注投与と自己血貯血を併用した症例での無輸血率は80%であり,さらにrHuEPO皮下注投与を併用した自己血貯血症例での無輸血率は88%であった.これらの臨床試験により術前3週間(週3回)6,000IUのrHuEPO静注投与,あるいは術前3週間(週1回)24,000 IUのrHuEPO皮下注投与により,貧血をきたさずに1,200 ml(週1回400m1・術前3回)の術前自己血貯血が心臓外科手術患者にとっても安全に行えることが明らかとなった.

自己血成分の冷凍保存と臨床応用

著者: 海老根東雄

ページ範囲:P.1583 - P.1589

 心臓血管外科術後の感染症,免疫反応を防止するため,1974年より自己血の冷凍保存を開始した.(1)冷凍赤血球使用173例は,Ⅰ群:冷凍自己血のみ84例,Ⅱ群:冷凍自己血と冷凍同種血12例,Ⅲ群:冷凍自己血と冷凍同種血+非冷凍同種血52例,Ⅳ群:冷凍同種血と非冷凍同種血25例に分類し,体外循環時間・輸血量を比較,同時期に施行した非冷凍同種血使用357例を含め肝炎発生頻度も比較した.その結果,体外循環時間・輸血量はともに1群からⅣ群にいくにしたがい順次延長・増量し,Ⅰ群,Ⅱ群間では有意差を認めず,Ⅰ・Ⅱ群に比べⅢ・Ⅳ群では有意に延長・増量した.輸血後肝炎はⅠ群,Ⅱ群で認めず,Ⅲ群,Ⅳ群で認め,非冷凍同種血群でも認めた.(2)冷凍自己血小板使用13例は,血小板数を調べ,非冷凍同種血使用21例とで出血量,出血時間を比較,粘着能・凝集能を調べた.その結果,血小板数は有意に増量せず,出血量・出血時間も非冷凍同種血群と比べ有意の短縮を認めないが,粘着能・拡張能・凝集能が認められた.冷凍自己血の保有は重要であり,これと血液節減のための種々の方法の組み合わせではじめて自己血のみの心臓血管系手術が可能となるものと考える.

カラーグラフ シリーズ・新しい内視鏡治療・28

腹腔鏡下附属器手術

著者: 関賢一 ,   岩田嘉行

ページ範囲:P.1519 - P.1524

はじめに
 産婦人科領域における腹腔鏡の歴史は,1937年のAndersonの試みにまでさかのぼることができる.当初は診断目的に用いることが主な利用方法であったが,最近は麻酔技術の発達,気腹法の改良,光源や周辺機器の改善などと相侯って,minimally invasive surgeryという観点からも手術的腹腔鏡への移行がみられる.

病院めぐり

大村市立病院外科/岐阜市民病院外科

著者: 吉田彰

ページ範囲:P.1592 - P.1593

 大村市立病院は,昭和20年,元第21海軍航空厰医務部大村海軍共済病院の施設を移管し,日本医療団大村病院として発足しました.昭和23年,大村市国民健康保険組合共済病院と改称し,昭和26年,大村市立病院として新発足し,昭和32年,昭和54年の2回の移築により現在地の病院となりました.診療科は現在,内科,外科,小児科,産婦人科,皮膚科,泌尿器科,眼科,耳鼻咽喉科,歯科,整形外科,脳神経外科,放射線科,麻酔科,理学診療科,心臓血管外科,精神科,神経科の17科からなり,病床数は287床で,このうち外科は60床を占めています.
 現在の外科のスタッフは,副院長を含め3名で,この人数で一般消化器外科,呼吸器外科,内分泌外科を中心に手術を行っています.1993年の手術症例は,胃癌28例,大腸癌24例,乳癌7例,肺癌3例などで,全麻,脊麻のみで249例となっており,1992年に腹腔鏡下胆嚢摘出術を導入してからは胆石症例も増え,1993年の胆石および胆嚢ポリープの手術症例は56例となっています.また,適応を選び腹腔鏡下に虫垂切除も行っており,今後は胸腔鏡下の手術も行っていく予定です.

外科研修医実践講座・18

術中偶発損傷—予防と処置

著者: 鶴丸昌彦 ,   澤田寿仁

ページ範囲:P.1595 - P.1599

はじめに
 どんなに経験を積んだ外科医であろうとも,手術中に思わぬトラブルで足がすくむようなことがある.経験を積むうちにdangerous zoneというものがわかり,また他人の経験を見聞し,耳学問することによりトラブルを起こす確率も減るし,それに対する対策で武装し逞しい外科医になっていくものである.常に術中トラブルとは背中合わせであり,起こりうるトラブルに対してその予測と対策について準備しておく必要があるのは当然である.
 本稿では,おそらく1回は経験するような比較的よく遭遇する術中トラブルについて,その予防と処置について述べる.紙面の都合で胃手術,食道手術,直腸手術を例にとり述べたい.

鴨川便り・12(最終回)

医療の流れ

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.1600 - P.1601

 初めは大変だと思ったが,あっという間に最終号になった.今となって,まだまだ書き足りぬ思いもするが,他方ではほっと安堵の気にも包まれる.最終号は,医療の流れについて,最近よく考えることについて気の向くままに書くことを許していただこう.
 先週,横浜で世界病院連盟と日本病院会共催の国際学会があり,筆者はプログラム委員長だった関係で,ここ4年間,その準備に忙殺された.特別講演に招いたイギリス王室財団のマクスウェル氏は,今後医療は配給の時代に入ることが避けられぬとし,そのために患者の治療の必要度に関する優先順位を考えねばならぬ時代が来るとした.近年ヨーロッパの病院関係の学会ではよく話題にのぼるテーマである.言うまでもなく,技術の進歩と人口の増加および高齢化による医療費の高騰に医療資源が追いつかぬ時が来るという考えに基づく.ヨーロッパ諸国は一般に医療の上でも社会保障思想が優先して組み込まれている所が多いのだが,その多くが今は保障の限界に突き当たり,その解決を,市場経済の競争の導入に頼ろうとしている.他方,アメリカは頑なに守ってきた「病気は個人の責任」とした徹底的な自由個人主義から,漸次老人医療に税金を使うようになり,そして今度の国民皆保険という社会保障への大きな転換を計るクリントン,ヒラリー案への発展,そしてその議会での敗退など,世界の医療事情の変遷はめまぐるしい.

私の工夫—手術・処置・手順・4

消化管吻合におけるスーチャーホルダーの利用

著者: 夏川周介 ,   清水義雄 ,   大井悦弥

ページ範囲:P.1602 - P.1602

 消化管の吻合に際し,縫合糸の整理と適切な牽引による良好な視野の確保は,確実な吻合のための重要なポイントである.スーチャーホルダーの使用は,これらの条件を満たすものであり,われわれは一般消化管手術において日常幅広く利用し,良好な結果を得ている.
 使用しているスーチャーホルダーは松田医科工業KK製のもので,元来,心臓外科において人工弁,中隔欠損パッチなどに使用される縫合糸の整理を目的に作製されたものである.塩化ビニール製で適度な弾力性を有し,形は円形,輪状で直径28cm(L),23 cm(M),18cm(S)の3種類があり,各々に58,48,38個の縫合糸保持のための切り込みを有する.通常はMサイズのものが使いやすい.

イラストレイテッドセミナー・9

はじめてのS状結腸切除術/「S状結腸切除術」に対するコメント

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.1603 - P.1615

 1.術者は左に立ち、臍上5cmから恥骨上部に至る腹部正中切開を加える.上方は切り上げすぎると小腸が脱出して操作のじゃまになり,臍までだと下腸間膜動脈根部の処理がやりにくいので,根部レベルまでの切開がよい.下方は腹膜切開時に膀胱を損傷しないように気をつける.ただし,病巣部位や郭清に応じて切開を縮小してもよい.
 2.腹腔内を精査したのち開創器をかける.恥骨上まで切開した場合は、創下部で腹膜と皮膚とを2か所マットレス縫合で固定する.正中寄りに糸をかけないと効果がない.

臨床外科トピックス 消化器外科領域におけるサイトカインとその周辺・9

敗血症性ショックに対する抗サイトカイン療法の可能性

著者: 相浦浩一 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1617 - P.1624

はじめに
 細菌あるいはその菌体成分によって引き起こされる敗血症は,しばしば患者を重篤なショックに陥れ,多臓器障害へと進展することも決して珍しくない.強力な抗生剤や全身管理の進歩によっても,このような悪循環に陥った患者を救うことは非常に難しい.敗血症性ショックでは,1つには,組織の微小循環障害から生じる酸素代謝の破綻が組織障害の大きな原因であるが,それと同時に生体内で産生される過剰な種々の化学伝達物質(chemical mediator)がショックを助長させ進行させていく.炎症の場は血管内皮細胞であり,血液凝固系,キニン系,補体系などが複雑に関与し合い,肥満細胞からのヒスタミンも加わって,血管拡張,血管透過性の亢進を引き起こす.
 最近では、インターロイキン1(IL−1)やTNFなどの炎症性サイトカインが,ショックの進展にきわめて重要であることがわかってきた.亢進した炎症性サイトカインは,サイトカイン相互を誘導し,プロスタグランディン,一酸化窒素(nitricoxide),血小板活性化因子(PAF)などを生じさせ,発熱,低血圧,白血球の活性化をきたし,組織障害へと進展させる.これらの反応経路は,侵襲の原因が感染であろうと,外傷,熱傷であろうと共通のものであり,炎症性サイトカインの過剰産生はショックの進行に本質的な役割を担っていると考えられる.

綜説—今月の臨床

消化器領域のマイクロサージャリーによる再建外科

著者: 野崎幹弘 ,   佐々木健司 ,   井手博子 ,   中村光司 ,   寺岡慧 ,   羽生富士夫

ページ範囲:P.1625 - P.1633

 Ⅰ.はじめに
 悪性腫瘍に対する集学的治療が進むなかで,消化器外科においても,症例によって積極的に拡大手術を行い再建する傾向がみられる.一方,高齢化社会のなかで,既往疾患に消化管手術があるにもかかわらず,新たなる病疾で消化管の切除再建を求める症例も増加している.このような背景のなかで,近年,消化器外科領域においてマイクロサージャリーを利用しての再建手術が導入されつつある1-5)
 消化器領域でマイクロサージャリーが応用されたのは、咽喉食摘後の頸部食道再建が始まりであり,今や遊離腸管移植による食道再建は多くの普及をみている1-3,6,7).この他に,有茎移植腸管が乏血性壊死に陥るのを防止する目的で挙上腸管遠位側の微小血管吻合を行う方法8)(super-charge法),さらには肝門部血行再建9,10)や肝移植などにも,その利用が拡がりつつある.本稿では,これらの消化器外科領域でのマイクロサージャリーの適応と実際について,自験例をまじえ現状を述べたい.

手術手技

プラグ法によるヘルニア修復術

著者: 平井淳一 ,   白髭健朗

ページ範囲:P.1635 - P.1637

はじめに
 鼠径ヘルニア治療の術式選択にあたっては,再発を起こさず,しかも早期の社会復帰が可能であることが望まれる.最近われわれは,再発の最重要因子と考えられている縫合部の緊張(以下,ten-sionとする)を,人工の補強材(以下,prosthesisとする)を使用することにより,tension-freeの状態で修復するプラグ法を経験したので報告する.

臨床報告

ワーファリン内服中に発症した左鎖骨下動脈仮性動脈瘤の1例

著者: 堀場公寿 ,   伴覚 ,   滝浪實 ,   石神直之 ,   原田幸雄

ページ範囲:P.1639 - P.1642

はじめに
 鎖骨下動脈仮性動脈瘤はまれな疾患ではあるが,医原性の報告例が多く重大な問題である.今回われわれは,ワーファリンによる抗凝固療法中に発症した左鎖骨下動脈仮性動脈瘤の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

機能性上皮小体嚢腫の1例

著者: 村上三郎 ,   小林彰 ,   隈寛二 ,   大久保雄彦 ,   里見昭 ,   石田清

ページ範囲:P.1643 - P.1645

はじめに
 上皮小体嚢腫は,先天的な発生機転によると考えられている非機能性の嚢腫と,腺腫や過形成の二次性変化によると一般に考えられている機能性の嚢腫の2つに分けられている1).最近われわれは,二次性変化を伴わず,嚢胞内面に上皮細胞を認めた機能性上皮小体嚢腫の1例を経験したので,その発生機転などを中心に報告する.

小児遊走脾茎捻転の1例

著者: 菰方輝夫 ,   宮崎俊明 ,   小柳宏之 ,   前田守孝 ,   松元友絵 ,   平明

ページ範囲:P.1647 - P.1649

はじめに
 遊走脾はまれな疾患で,本邦で外科治療がなされた症例は自験例を含め56例を数えるにすぎない.最近経験した小児の遊走脾茎捻転の1例を若干の文献的考察を加え報告する.

同一家系に発症した肺動静脈瘻の3例

著者: 安田博之 ,   梅本琢也 ,   細井靖夫 ,   高木寿人

ページ範囲:P.1651 - P.1654

はじめに
 肺動静脈瘻は先天性の肺内動静脈間短絡であり,近年本邦でもその報告が増加している.また,本症は遺伝性出血性毛細血管拡張症(Rendu—Osler-Weber病)と合併することも知られている.今回われわれは,Rendu-Osler-Weber病を合併せず同一家系に発症した3例の肺動静脈瘻を経験したので報告する.

骨盤部CTにて術前診断しえた閉鎖孔ヘルニアの1例

著者: 小林直哉 ,   柏原瑩爾 ,   高倉範尚 ,   山本浩史 ,   高橋健治 ,   池田雅彦

ページ範囲:P.1655 - P.1658

はじめに
 閉鎖孔ヘルニアは比較的稀な疾患で,術前に診断されることは少なく,原因不明の腸閉塞として開腹されることが多い.今回われわれは,CT検査にて術前に診断しえた閉鎖孔ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

高ガストリン血症を伴う多発胃カルチノイドの1例

著者: 光石和夫 ,   森寿治 ,   吉原その ,   梅野寿実 ,   池田靖洋

ページ範囲:P.1659 - P.1662

はじめに
 胃カルチノイドは比較的稀な疾患であるが,近年その報告例は増加しており,本邦においても虫垂についで多いとされている.今回われわれは,内視鏡生検にて確定診断し,胃全摘術を施行した高ガストリン血症を伴った多発胃カルチノイドを経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?