文献詳細
特集 外科手術と輸血—最近の動向
文献概要
心臓血管外科術後の感染症,免疫反応を防止するため,1974年より自己血の冷凍保存を開始した.(1)冷凍赤血球使用173例は,Ⅰ群:冷凍自己血のみ84例,Ⅱ群:冷凍自己血と冷凍同種血12例,Ⅲ群:冷凍自己血と冷凍同種血+非冷凍同種血52例,Ⅳ群:冷凍同種血と非冷凍同種血25例に分類し,体外循環時間・輸血量を比較,同時期に施行した非冷凍同種血使用357例を含め肝炎発生頻度も比較した.その結果,体外循環時間・輸血量はともに1群からⅣ群にいくにしたがい順次延長・増量し,Ⅰ群,Ⅱ群間では有意差を認めず,Ⅰ・Ⅱ群に比べⅢ・Ⅳ群では有意に延長・増量した.輸血後肝炎はⅠ群,Ⅱ群で認めず,Ⅲ群,Ⅳ群で認め,非冷凍同種血群でも認めた.(2)冷凍自己血小板使用13例は,血小板数を調べ,非冷凍同種血使用21例とで出血量,出血時間を比較,粘着能・凝集能を調べた.その結果,血小板数は有意に増量せず,出血量・出血時間も非冷凍同種血群と比べ有意の短縮を認めないが,粘着能・拡張能・凝集能が認められた.冷凍自己血の保有は重要であり,これと血液節減のための種々の方法の組み合わせではじめて自己血のみの心臓血管系手術が可能となるものと考える.
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