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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科49巻3号

1994年03月発行

雑誌目次

特集 肝癌治療の最新ストラテジー

肝予備能の評価と治療法の選択

著者: 佐藤泰彦 ,   浅沼義博 ,   小山研二

ページ範囲:P.269 - P.274

 肝細胞癌の治療方針は,腫瘍の局在のみならず,肝細胞の機能的予備力によって決定される.一般に肝予備能は,腹水,黄疸の有無,一般肝機能検査,凝固能検査,ICG負荷試験,ブドウ糖負荷試験などから総合的に評価される.しかし未だ普遍性のある共通の基準は確立されておらず,各施設において独自の検査を組み合わせて一定の基準を設け,術式決定の指標としている.しかし,これらの指標は手術前の安定した状態から判定するものであり,必ずしも手術後の侵襲を受けた後の予備力を表すものではない.したがって,より普遍性の高い肝予備能の評価法を設定する努力が必要である.

肝切除療法の実際と治療成績

1)肝灌流・バイパスチューブおよびバイオポンプを用いたHepatic Vascular Exclusion下の拡大肝切除術

著者: 島津元秀 ,   都築俊治 ,   若林剛 ,   河地茂行 ,   青木春夫 ,   杉岡篤 ,   江崎哲史

ページ範囲:P.275 - P.280

 臣大な肝腫瘍あるいは下大静脈,肝静脈近傍の肝腫瘍に対する広範囲肝切除においては,肝血行完全遮断(HVE)が出血の制御に有効である.しかし,HVEが長時間に及ぶと,循環動態の乱れや肝の虚血・再灌流障害が問題となる.著者らは,HVE時の門脈・下大静脈血バイパスおよび肝灌流を同時に,かつ簡便に行うことのできるチューブを開発し,6例の肝切除に応用した.また,下大静脈を狭窄する巨大肝癌2例に対して,バイオポンプを用いて門脈・大腿静脈から右房にバイパスし,HVE下に拡大肝葉切除を施行した.いずれもHVEに起因する偶発症,合併症はなく,安全かつ“ゆとり”のある拡大肝切除が可能であった.

2)系統的区域,亜区域切除術

著者: 林賢 ,   幕内雅敏 ,   川崎誠治 ,   宮川真一 ,   嘉数徹 ,   橋倉泰彦 ,   河西秀 ,   三輪史郎

ページ範囲:P.281 - P.287

 慢性肝炎や肝硬変に伴う小型の肝癌症例は増加傾向にあるが,超音波装置における術中プローブの開発は障害肝症例の系統的肝切除を容易ならしめた.肝機能面からは,腹水なく,血清総ビリルビン値が正常範囲でICG 15分値が19%以下では区域切除,29%以下では亜区切除が可能である.系統的肝切除の施行により術中の出血量は減少し,無輸血手術症例は増加し,hospital mortalityはきわめて低率となった.また腫瘍径5cm以下の肝癌では,部分切除に比較し亜区域切除症例のほうが良好な遠隔成績を示した.本稿では区域切除では右葉前区域,亜区域切除では前上亜区域を中心に術中超音波装置を用いた系統的肝切除の手術術式の実際と治療成績につき概説する.

3)グリソン鞘—括処理による肝切除術

著者: 山中若樹 ,   岡本英三

ページ範囲:P.289 - P.294

 肝臓外科入門としての一括テーピング手技の習得
 1)右主枝と後区域枝をテーピングすればおのおのを遮断することにより,前区域,後区域,内側区域の境界は容易に同定でき,区域診断に絶大な威力を発揮する.
 2)亜区域切除でも区域枝を遮断して行えば出血量は減る.
 3)肝葉切除においても主枝を一括テーピングして行えば短時間に手術を終えることができる.以上のように,区域診断,出血点,手術時間の3点で非常に有用な手技である.

4)尾状葉切除術

著者: 川原田嘉文 ,   田端正己

ページ範囲:P.295 - P.301

 尾状葉に原発する肝細胞癌や胆管細胞癌,あるいは尾状葉への転移性肝癌の頻度は決して高いものではないが,尾状葉切除は解剖学的位置関係や脈管構築の特異性から,手技的に難しく,特に尾状葉単独切除の場合には,尾状葉の解剖学的特性を熟知して慎重に手術を行うことが大切である.尾状葉は左尾状葉(=Spiegel葉),右尾状葉(=肝部下大静脈部)および尾状葉突起の3部から成っている.また,右尾状葉は最近,CouinaudのSegment IXとして注目されているが,頭側へは中肝静脈と右肝静脈の間を進展し,横隔膜面まで達していることも多く,必ずしもその完全切除にこだわる必要はない.

5)1区域付加肝切除術

著者: 嶌原康行 ,   山本成尚 ,   小林展章 ,   森本泰介 ,   山岡義生 ,   小澤和恵

ページ範囲:P.303 - P.307

 肝細胞癌は慢性肝障害を合併することが多く,安全性を確保する縮小手術とあくまでも根治性を求める拡大手術とは未だ議論の多いところである.縮小手術における残肝再発の頻度はきわめて高く,外科的治療の限界と思われる.細小肝癌に対しても,担癌区域に隣接する同門脈支配区域を一緒に切除する1区域付加肝切除術は,その適応の制限はあるものの,きわめて高い生存率が得られる.正確な術前肝機能の把握,手術侵襲の軽減の試み,術後管理の工夫によって,より根治性の高い切除を目指すことが肝細胞癌の外科的治療の向上につながるものと思われる.

5cm以下の肝細胞癌に対するマイクロ波凝固壊死療法(MCN)について

著者: 才津秀樹 ,   吉田正 ,   大堂雅晴 ,   西尾禎一 ,   大神延喜 ,   谷脇智 ,   奥田康司 ,   中山和道 ,   大石喜六 ,   清松和光 ,   野中道泰 ,   吉田晃治

ページ範囲:P.309 - P.315

 肝細胞癌に対するまったく新しい治療法であるマイクロ波凝固壊死療法(MCN)の経緯,さらに適応と方法,アプローチ法,その治療成績について述べた.腫瘍径5cm以下で,肝切除の適応外と判断された肝癌79例の治療成績(累積生存率)は,1年96%,3年72%,5年28%であり,肝切除より条件の悪い症例を対象にしているにしては比較的良好と考えられ,肝切除,TAE,PEITにつぐ第4の治療法として有用と考えられる.特に,3cm以下の小肝癌に対して行っている内視鏡下MCNは,QOLの面において比較にならないほど改善されており,近い将来,小肝癌に対する1つの選択肢として確立される可能性が高いものと予想される.

経皮的エタノール注入療法(PEI)

著者: 江原正明 ,   北和彦 ,   杉浦信之 ,   吉川正治 ,   大藤正雄

ページ範囲:P.317 - P.324

 経皮的エタノール注入療法(PEI)は下記の特徴がみられる.①侵襲が小さいため,重篤な肝不全例を除く大多数の小肝細胞癌例に対し適応となる.②腫瘍径3cm以下の肝細胞癌に対し,確実な腫瘍壊死効果を示し.治療部再発はほとんどみられなかった.③治療後の5生率は全体で40.7%であり,臨床病期Iの細小肝癌では81.2%と良好であった.④治療後の肝内非治療部の再発率は,初回治療時の腫瘍が単発で小さく,また高分化な例に低かった.⑤再発病変に対する繰り返し治療,進行癌に対するTAEとの併用療法として応用可能である.

肝動脈塞栓療法(TAE)

著者: 島村善行 ,   石井正則 ,   永田寿札 ,   大谷泉 ,   小林理一郎 ,   山本穣司

ページ範囲:P.325 - P.330

 肝癌は肝硬変に多く合併し,かつ多発傾向にあるため,根治療法がとりにくい.そのため,各種治療法を加味した集学的治療が必要となる.それらの中で,TAEは適応範囲が最も広く,治療の中心的存在である.しかし,多施設共同研究での各種治療法の治療成績によると,肝機能の良好例では3cm以下,3個以下の腫瘍ではTAEは治療の第1選択としては不適切である.動脈血流が豊富で,十分に塞栓物質が取り込まれると.TAEの壊死率は高く,それ単独でも治療効果は十分なこともある.しかし,腫瘍径が5.0cm以上になると,1回のTAEではなかなか100%壊死にすることは困難である.このような巨大腫瘍に対しては,腫瘍を摘除し,腫瘍量を少なくしたあとにTAEを加えるという減量手術も有効となってくる.
 以上,TAEは肝癌治療のストラテジーを立てる上で最も重要な位置にあり,肝癌を治療する者はこれに習熟すべきである.

肝細胞癌の切除後再発と治療

著者: 池田健次 ,   斉藤聡 ,   熊田博光

ページ範囲:P.331 - P.337

 肝細胞癌は肝硬変を有していることが多く,また早期に肝内転移をきたすことから再発しやすいことが知られており,「根治切除」ができても1年37%,2年57%と高率に再発する.再発率に寄与する独立要因を統計学的にみると,①腫瘍多発性,②組織分化度,③HCV抗体陰性,の3要因が挙げられた.再発後の生存期間に最も寄与する要因は再発時の腫瘍個数で,再発時に選択された治療法(再切除,エタノール局注療法)ではなかった.切除後再発肝癌に対して集学的治療を行うと,3年69%,5年65%の良好な生存率が得られ,術後の再発監視と再発後の適切な治療が重要である.

カラーグラフ シリーズ・新しい内視鏡治療・19

巨大食道憩室に対する胸腔鏡下手術—手術手技とわれわれの工夫

著者: 大上正裕 ,   安藤暢敏 ,   若林剛 ,   小澤壮治 ,   北島政樹

ページ範囲:P.261 - P.266

 はじめに
 腹腔鏡下胆嚢摘出術に端を発した近年の内視鏡下外科手術の発達は,まさに外科領域における革命的な進歩ともいえ,胸腔鏡下手術においても,自然気胸に対する手術から始まって最近では様々な疾患への適応が試みられている1-4).われわれは,嚥下障害を伴う巨大食道憩室の患者に対して胸腔鏡下に憩室切除術を施行し,良好な成績を得たので報告する.

綜説—今月の臨床

膵頭(十二指腸)切除術—最近の変遷

著者: 田中雅夫

ページ範囲:P.339 - P.343

 Ⅰ.はじめに
 膵頭部癌,乳頭部癌、十二指腸癌,中・下部胆管癌などの膵頭十二指腸領域の悪性疾患,あるいは良性疾患であっても膵頭部の切除を必要とする場合には,一般に膵頭十二指腸切除術(Pan-creatoduodenectomy, PD)が行われる.
 PDが初めて施行されたとき,胃および幽門輪は温存されていた1).その後,PDに胃切除術が併施されるようになり,30数年にわたり標準術式として広く行われてきた.ところが,最近再び,消化管機能温存の立場から全胃幽門輪温存のPD(Pylorus-preserving pancreatoduodenectomy,PPPD)が注目され,盛んに施行されるようになった.現在の形の本術式を最初に行ったWatson2)は乳頭部癌を対象としたが,最近では十二指腸癌,下部胆管癌,膵頭部の腫瘤形成性慢性膵炎,嚢胞性病変などや乳頭部領域の良性疾患も適応とされ,さらに膵頭部癌にさえも行われるようになってきている.

病院めぐり

国立水戸病院外科/県立宮崎病院外科

著者: 村上穆

ページ範囲:P.344 - P.345

 国立水戸病院の前身は,明治43年につくられた水戸陸軍衛戌病院(のちに水戸陸軍病院と改称)です.昭和20年12月に厚生省に移管され,国立水戸病院として発足,昭和25年1月には日本医療団茨城県厚生病院を合併,昭和40年11月より現在地に新築,移転して診療を開始しました.現在の病院の規模は,病床数500床,外来1日平均775名,標榜診療科は22科で,うち外科は2個病棟100床が割り当てられています.また,16学会の専門医制度研修施設に認定されています.
 附属の診療施設としては,茨城県立核医学研究センター(昭和47年10月21日),救命救急センター(昭和56年4月2日),茨城県原子力医療センター(昭和57年4月1日)小児循環器センター(昭和61年8月30日).母子医療センター(平成4年7月11日)が併設されています.昭和61年1月に発表された国立病院の機能付与計画のなかでは,総合診療施設,母性・小児基幹施設に認定され,機能付与の一環として,母子医療センターが設立されました.

一般外科医のための医療材料カタログ・12

医療用不織布

著者: 尾崎正彦

ページ範囲:P.346 - P.347

 はじめに
 リネン(linen)とは本来,亜麻布という意味であるが,医療材料におけるリネンは,手術衣,オイフ,マスクなどの綿織物,布類の総称として使用されている.リネンに要求される条件としては,①滅菌処理が可能である,②適当な吸湿性,保温性を有する,③撥水性を有する,④適度な弾力性,柔軟性がある,などの点であるが,それらすべてを十分に満足させる織物はない.
 最近では,従来の織物にかわり,種々の材料や化学合成繊維を加工した不織布による製品が利用されるようになってきた.われわれの病院では,平成4年6月開院以来,手術室で使われるすべてのリネン材料から一般処置用のオイフに至るまで,原則として,不織布製品を使用してきた.連載最終回の今回は,種々の不織布について,われわれの使用経験・印象を中心に述べてみたい.

外科研修医実践講座・9

穿刺と治療的ドレナージの実際

著者: 堀孝吏 ,   坂本昌義

ページ範囲:P.349 - P.353

 穿刺とドレナージ手技は,診断と治療に不可欠な基本手技の1つである.当院では,病棟での処置は原則として受け持ちレジデントが行っている.しかし,穿刺や治療的ドレナージは重篤な合併症を起こす危険があるため,原則として専門レジデントの指導下に行っている.
 心嚢ドレナージ,胸腔ドレナージ,腹水ドレナージに関しては2年目以降のレジデントが,腹腔内膿瘍,肝・胆道系ドレナージは4年目以降のレジデントまたは専門レジデントが術者となることが多い.また,CTガイド下で行う手技は,放射線科医師が術者となることが多い.

鴨川便り・3

クリニカル・インディケーター

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.354 - P.355

 アメリカのJCAHOによる,医療の質の「維持」を「改善」に一歩進めるための活動は数年前に始まったばかりで,「質の保証」という項目が「質の評価と改善」という名に改められたのは,つい1992年のことである.従来の監査によって質の評価を行う方法は,いわば見張られて質を維持するという受け身の姿勢を作らせた.これを,水準の維持というより,より高い水準を目指して更に努力するという能動的な姿勢に転換できないかという考えである.より良い質とは不断の改善の積み重ねの上に生まれるという発想が,彼等が日本の企業から学びとったものであるということは,日本の医学,医療の世界にその認識が全く無いのと対比して.かなり奇異なものに感じられる.
 さて,その方法として考案されたのがクリニカル・インディケーターである,前述した診療を構成する構造,結果,プロセスについて自由に多くの指標を作るのだが,その指標は数字で計量できるものを選ぶ.年次比較や他の施設との比較を可能にするためである.これらを病院の各部門共通の一般的指標と専門部門に関連した指標に分ける.しかし,これも前に述べたように,医療の中核である診療の最も直接的な評価方法は診断,治療のプロセスを調べることであり,従来アメリカでは評価の重点をここに置いてきた.クリニカル・インディケーターは従来の指標に比べてさらに具体的に,臨床の診断,治療の領域に踏み込んだものである.

手術手技

直腸穿孔例における大腸内バイパスチューブの使用経験—一期的前方切除の補助手段として

著者: 青木孝文 ,   植木稠雄 ,   金子巌 ,   武鑓豊文 ,   佐藤誠二 ,   吉川明 ,   上杉毅彦

ページ範囲:P.357 - P.361

 はじめに
 大腸穿孔例での一期的吻合は縫合不全をきたす危険性が高く,人工肛門を一時的に造設して危険を回避することが多い.われわれは,上部直腸の腸間膜内に自然穿孔した症例に対して,直腸前方切除を行い,Coloshield®(以下コロシールド)を用いて一期的に大腸内バイパス吻合1)を施行したので報告する.

臨床報告

体幹部に進展したガス壊疽の1症例

著者: 岡崎啓介 ,   武田和久 ,   佐古達彦 ,   福山時彦 ,   内山元昭

ページ範囲:P.363 - P.366

 はじめに
 ガス壊疽は,広義にはガス発生を伴う感染症の総称であり1),狭義にはClostridial myonecrosisを意味する2)
 clostridial gas gangreneとnon-clostridialgas gangreneでは,その病態・治療は異なるが,的確な初期治療がなされなければ予後不良であるという共通点を有し,便宜上「ガス壊疽」としてまとめて扱われる.非外傷性の症例やnon-clos-tridial gas gangrene症例の報告例の増加に伴い,現在の定義には若干の問題があるとする提言もみられる3)

イレウスをきたした小腸潰瘍の1例

著者: 綛野進 ,   中田浩二 ,   木下博明 ,   若狭研一

ページ範囲:P.367 - P.369

 はじめに
 小腸潰瘍が機械的イレウスの原因とされる症例は,われわれが調べた範囲では0.1%と非常にまれである1).われわれは最近,イレウスをきたした小腸潰瘍の1症例を経験したので,その病因について文献的考察を加えて報告する.

急性虫垂炎を併発した若年性原発性虫垂癌の1例

著者: 小玉正太 ,   城崎洋 ,   池原康人 ,   稲田繁充 ,   樋口恒夫

ページ範囲:P.371 - P.374

 はじめに
 原発性虫垂癌は比較的まれな疾患で,虫垂切除症例全体の0.01〜0.2%といわれている1,2).術前に確定診断を得ることは困難であり,大部分は虫垂炎、回盲部腫瘤、盲腸周囲膿瘍などの診断で開腹され,術後の病理組織学的検索により初めて確定診断が下されることが多い3,4)
 今回われわれは,術前に診断しえなかった,きわめてまれな若年性原発性虫垂癌を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

嚢胞状変性を伴った右腋窩部巨大神経鞘腫の1例

著者: 並川努 ,   川村明廣 ,   橋本祥恪 ,   古屋泰雄 ,   弘井誠 ,   緒方卓郎

ページ範囲:P.375 - P.378

 はじめに
 神経鞘腫(schwannoma)は,末梢神経のSch-wann細胞から発生し,四肢,躯幹,頭頸部などの軟部組織に好発する良性腫瘍で,大きさは1ないし数cm径のものが多いとされている.今回われわれは,右腋窩部に発生した神経症状を呈さない小児頭大の神経鞘腫を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

癌終末期医療における塩酸モルヒネ大量投与(5,000mg/日)の1例

著者: 山村義孝 ,   紀藤毅

ページ範囲:P.381 - P.384

 はじめに
 近年における癌患者の増大と“生活の質”(qual-ity of life, QOL)を重視する観点から,末期癌患者に対する終末期医療(ターミナルケア)の重要性が認識されるようになってきた.このターミナルケアの根幹となるのが疼痛対策であり,その中心となるのがモルヒネである.
 今回,5,000mg/日の塩酸モルヒネを持続静脈内投与することにより,直腸癌の再発による癌性疼痛を抑制し,終末期におけるQOLを良好に維持できた1例を経験したので報告する.

副腎原発と考えられる巨大悪性リンパ腫の1切除例

著者: 山本浩之 ,   小野栄治 ,   住元一夫 ,   若杉健三 ,   松坂俊光 ,   久米一弘 ,   藤永裕 ,   臺丸裕

ページ範囲:P.385 - P.390

 はじめに
 後腹膜腫瘍は比較的まれな疾患であり,特異的な臨床症状が少なく,そのために術前診断が遅れたり,確定診断が困難な場合がある.また,後腹膜腫瘍は悪性であることが多く,一般に予後不良とされている.特に副腎部に発生した悪性リンパ腫は転移によるものが多く,悪性リンパ腫の約25%に副腎転移を認めたとの報告がある1).しかし,副腎原発の悪性リンパ腫は非常にまれで,本邦では5例を認めるのみである2)
 今回われわれは,腹部腫瘤を主訴とし,左副腎に原発したと考えられる悪性リンパ腫.に対し,左腎摘,膵摘,膵体尾部合併切除により摘出しえた症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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