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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科49巻4号

1994年04月発行

雑誌目次

特集 内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)

内視鏡的食道静脈瘤結紮術の手技と成績

著者: 北野正剛 ,   吉田隆典 ,   板東登志雄 ,   首藤浩一郎 ,   御手洗義信 ,   小林迪夫 ,   磯恭典 ,   森山正明

ページ範囲:P.405 - P.410

 食道静脈瘤は,基礎疾患として肝硬変を合併することが多く,その治療法としてはできるだけ低侵襲のものを選択するのが望ましい.低侵襲の観点からは,米国のStiegmann GVらにより考案,開発された内視鏡的静脈瘤結紮療法(endoscopic variceal ligation:以下,EVL)が優れていると考えられる.これは,ゴムバンドを用い食道静脈瘤を拘縮することにより壊死,脱落させ,さらにその上流,下流の食道静脈瘤を血栓性閉塞および平低化させるものであり,胸痛や発熱などの副作用も少なく,安全な手技である.ただ,食道内腔からのアプローチによる局所療法であり,内視鏡的硬化療法(以下,EIS)よりもさらに治療範囲が限られているため,EVLのみでは静脈瘤の完全消失が難しい.長期治療成績の改善のためにはEISを追加し,静脈瘤の完全消失をはかるのが望ましい.本稿では,その実際の手技につき紹介し,適応と限界,さらには利点と問題点についても言及したい.

内視鏡的静脈瘤結紮術の手技と成績

著者: 山本学 ,   鈴木博昭

ページ範囲:P.411 - P.417

 内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)は,Stiegmannらによって開発された手技で,筆者が本邦に導入して以来,全身的な偶発症がない,手技が簡便などの理由から急速に普及した.本稿では,われわれの手技と成績を紹介する.食道静脈瘤の待機,予防例に対しては,EVLとエトキシスクレロールを用いた硬化療法との併用治療(EVL・AS併用療法)を行い,少ない硬化剤で硬化療法と同等の成績を挙げることができた.緊急例では,出血点が明らかな場合は直接結紮し,不明な場合でも食道の下部から順次結紮を行うことによって止血が得られる.胃静脈瘤に対しては未だ十分とはいえないが,手技の工夫を行うことにより良好な成績が得られるものと考えている.

緊急出血例に対する内視鏡的静脈瘤結紮術

著者: 大谷泰雄 ,   幕内博康 ,   町村貴郎 ,   島田英雄 ,   水谷郷一 ,   田中豊 ,   田島知郎 ,   三富利夫

ページ範囲:P.419 - P.425

 食道・胃静脈瘤よりの出血は,日常診療でよく遭遇する緊急処置を有する病態である.食道静脈瘤破裂による出血例に対する止血法として,Sengustaken-Blakemore tubeや内視鏡的硬化療法(以下,EIS)がfirst choiceの治療となってきている.しかし,EISでは硬化剤により,局所のみならず全身合併症が少なからずみられることなどの問題点が認められている.近年,内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)が考案され,緊急出血例に対して,その安全性と簡便性よりEISに対抗する食道静脈瘤止血法として注目されている.EVLにて一時止血したときは,肝機能などの全身状態が良好な症例ではEISを追加し,不良な症例ではさらにEVLを追加することが勧められる.

難治例に対する内視鏡的静脈瘤結紮術

著者: 中井謙之 ,   岡本英三 ,   竹内雅春 ,   中村清昭 ,   桑原幹雄 ,   植木孝浩 ,   朱明義

ページ範囲:P.427 - P.435

 食道静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)がわが国に導入されてまだ2〜3年であるが,安全かつ簡単に施行できるため最近急速に普及してきた.教室では,1992年6月より1993年12月までの間に,59例にEVLを施行した.6か月以上経過例でのRCの再発率は,EVL単独15例で66.7%と高率であるのに対し,内視鏡的静脈瘤硬化療法(以下,EIS)との併用療法15例では20.0%と著明に減少した.EIS難治例とされている巨木型食道静脈瘤,肝癌による門脈本幹腫瘍栓症例,高度の肝機能不良例,門脈—肺静脈吻合を有する食道静脈瘤に対しEVLを試み良好な結果を得られたが,胃腎シャントを有する孤立性胃穹窿部静脈瘤に対してはEVLは無効であった.

胃静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤結紮術—“O”リングから留置スネアヘ

著者: 吉田智治 ,   原田稔也 ,   林延彦 ,   宮崎誠司 ,   寺井崇二 ,   野口隆義 ,   多田正弘 ,   沖田極

ページ範囲:P.437 - P.443

 巨大な胃静脈瘤を“O”リング単独で結紮し,治療するには限界がある.そこで,新しい治療法として留置スネアを用いた内視鏡的胃静脈瘤結紮術(以下,EVLs)を開発し,1992年6月より13例に施行した.本法では,胃静脈瘤を基部から結紮することが可能で,安全で簡便かつ有用な治療法であり,十分な胃静脈瘤荒廃効果が得られた.また,本法は活動性出血例の止血法として特に有用で,全例で100%の止血効果が得られた.EVLsは,胃静脈瘤治療法の1つとして発展していくと考えられた.

内視鏡的静脈瘤結紮術後の食道壁の病理学的検討—内視鏡的硬化療法との相違について

著者: 荒川正博 ,   秋吉信男 ,   久原克彦 ,   古川浩

ページ範囲:P.445 - P.449

 内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)治療後の3剖検例の食道壁の組織学的変化を呈示し,内視鏡的硬化療法(以下,EIS)治療後のそれと比較し検討を行った.EVL例では,2〜3週間以内では静脈瘤が結紮により壊死に陥り潰瘍形成がみられるが,この深さは粘膜下層にとどまっており,固有筋層にまで及ぶ例はみられなかった.この結紮部に静脈瘤が残存しているものもあり,赤色血栓がみられた.治療1か月を過ぎた場合では,静脈瘤が消失した例では粘膜筋板消失部に線維化が強くみられ,消失していない例では静脈瘤に器質化血栓がみられた.しかし,血栓の範囲は結紮部の上下に明らかでなく,治療していない静脈瘤には変化なく,これらの変化はEISの治療目標である静脈瘤の完全消失には遠く,再発しやすいことが推察された.

門脈血行動態からみた内視鏡的静脈瘤結紮術

著者: 水本英明 ,   松谷正一 ,   福澤健 ,   大藤正雄 ,   石井浩 ,   鈴木泰俊 ,   三木亮

ページ範囲:P.451 - P.456

 内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)の治療効果および治療前後での左胃静脈血行動態の変化について述べ,門脈血行動態からみたEVLの食道静脈瘤治療における意義について論じた.EVLは,簡便性,安全性に優れ,静脈瘤の改善効果も良好であるが,静脈瘤の完全消失を得るためには,内視鏡的硬化療法の併用が必要である.超音波ドプラ法による検討では,静脈瘤の主要な供血路である左胃静脈血流は,治療後も治療前と同様に遠肝性で残存しており,EVLにより供血路の遮断は困難と考えられた.しかし,経皮経肝門脈造影(PTP)による検討では,残存した左胃静脈の血行動態は症例により異なっており,長期予後と関連があるものと考えている.

Vp3肝細胞癌症例の静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤結紮術

著者: 國分茂博 ,   村上匡人 ,   山崎いずみ ,   高尾正彦 ,   石垣徳江 ,   松田摩也 ,   久保田敏彦 ,   高田雅博 ,   佐藤正樹 ,   松本偉男 ,   杉本政直 ,   渋谷明隆 ,   柴田久雄 ,   西元寺克禮 ,   加藤康行 ,   比企能樹

ページ範囲:P.457 - P.463

 Vp3肝細胞癌を伴う食道・胃静脈瘤12例を経験し,内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)について検討した.結紮部位は食道8例,食道・胃4例,“O”リング数は平均で食道6.8個,胃静脈瘤(F2以下)6.5個であった.治療後,静脈瘤形態は全例改善し,当初の目的である出血死の回避は可能であったが,R-C signの完全消失は硬化療法を併用した2例にとどまった.予防・待機例(5例)は,緊急例(7例)に比し生存日数は有意に長かった.Vp3における血行動態の特徴は,腫瘍塞栓の静脈瘤供血路への浸潤とA-P shunt新生による門脈圧亢進の増幅にあると考えられた.侵襲性の低いEVLにおいても,Vp3では治療前後のalbumin補給を怠らず,黄疸の急上昇前の予防的治療が好ましい.

超音波内視鏡による内視鏡的静脈瘤結紮術の適応

著者: 土橋康之 ,   中村宏 ,   五関謹秀 ,   遠藤光夫

ページ範囲:P.465 - P.471

 食道静脈瘤およびその側副血行路を超音波内視鏡(以下,EUS)を用い詳細に検討し,EUS所見と内視鏡的静脈瘤結索術(以下,EVL)の原理より起こり得るあらゆる危険性を想定し,EVLの適応を検討した.食道静脈瘤からの緊急出血例に対しては肝機能は不明,あるいは不良なことが多く,硬化剤を必要としないEVLは侵襲が少なく止血が確実な点より.1次止血手技にはきわめて有効で,適応と思われた.また,待機例,予防例には,EUSにより門脈圧亢進症側副血行路を十分に検討し,①巨大なF3の結節状静脈や胃静脈瘤を伴うもの,②太い交通血管を認めるもの,③食道壁肥厚硬化を認めるもの,は積極的に行うべきでなく,EVLとEISあるいは直達手術など,ほかの療法を併用することがよいと思われる.

アンケート調査からみた食道・胃静脈瘤に対するEVL,硬化療法の選択

著者: 萩原優 ,   中野末広 ,   長岡至朗 ,   岡野亨 ,   岡田孝昭 ,   森久保雅道 ,   赤石治 ,   林淳他 ,   大塚恒博 ,   中山義昭 ,   長谷川晃一郎 ,   木村正之 ,   山口晋 ,   柳川忠二

ページ範囲:P.473 - P.478

 第17回食道静脈瘤硬化療法研究会開催(1994年1月18日)に際して,非観血的治療のなかでも特に注目されている内視鏡的静脈瘤結紮術(以下,EVL)の現況を把握するために,食道静脈瘤硬化療法研究会施設会員にアンケート調査した.その結果,67%の施設ですでにEVLを施行しており,安全性,簡便性,合併症が少ない,などが評価されていることがわかった.特に,初回治療例で肝機能が悪い症例にも適応があるとの回答を得た.しかし,EVL単独では90%以上の施設が無理とし,硬化療法との併用療法を考えている.胃静脈瘤に対するEVLは,現在では22%の施設で施行しているにすぎず,手技の改良により今後増加してくるだろう.EVLの普及により,食道静脈瘤に対する非観血的治療領域はますます広がりつつある.

カラーグラフ シリーズ・新しい内視鏡治療・20

胸腔鏡による胸壁腫瘍摘出術

著者: 金子公一 ,   尾本良三

ページ範囲:P.397 - P.402

 はじめに
 胸腔鏡は,1910年,Jacobaeus1)が膀胱鏡で胸腔内を観察したのに始まり,胸腔内の観察や診断の手段として用いられてきた2,3).また,自然気胸に対する治療法としても使用されてきており4),胸腔鏡の利用は新しいものではない.しかし,近年,装置や器具の改善によって胸腔鏡による治療は胸腔鏡手術として急速に普及しており,自然気胸や肺部分切除など,本邦における胸腔鏡下手術は6,000例を越えている5).さらに,最近では技術の向上や器具の改善も進み,呼吸器外科領域においても手術は拡大される傾向にあって,従来,開胸手術で行われていた操作の多くが胸腔鏡下で施行できるようになっており,胸腔鏡手術の手技や適応の確立が望まれる.
 本稿では,胸腔側に突出する形態の胸壁腫瘍に対して胸腔鏡を用いて経胸腔的に切除した症例について術中写真を用いて解説し,その利点や問題点について述べる.

病院めぐり

国立熊本病院外科/岩手県立大船渡病院第1外科

著者: 並川和男

ページ範囲:P.480 - P.481

 熊本市は人口64万人の中都市で,古くから森の都として知られているが,国立熊本病院はその中心地,熊本城内の一画に位置し,風光明媚で,静かな,環境に恵まれた場所にある.
 沿革をたどれば,創立は明治4年12月,鎮西鎮台病院として設置されたのにはじまり,明治8年4月,現在地に移り,以来,神風連の変,西南の役,太平洋戦争時,熊本第一陸軍病院として多くの傷病兵の診療に当ってきた.終戦と同時に厚生省に移管され,国立熊本病院と改称し今日に至っている.

綜説—今月の臨床

消化器外科手術の周術期における抗菌薬投与の問題点

著者: 谷村弘 ,   石本喜和男

ページ範囲:P.483 - P.489

 Ⅰ.はじめに
 消化器癌に対する広汎なリンパ節郭清手術や臓器移植など手術術式が拡大化され,周術期における感染症の発症防止対策の良否が患者の予後を大きく左右する.特に準無菌手術と汚染手術が圧倒的に多い消化器外科手術の進歩は感染症との戦いの歴史でもあり,腸内細菌を代表するグラム陰性桿菌や嫌気性菌に対して強力な抗菌力を示す抗菌薬の術中・術後の投与は必須であった1).その結果,術後感染症のかつて主な起因菌であった E.ColiやK.Pneumoniaeなどのグラム陰性桿菌の検出率は著しく減少し,なお減っていないのはP.aeruginosa のみである.それと引き換えに,S.aureus やEnterococcus spp.などのグラム陽性球菌の検出率が増加してきた.Enterococcus spp.は腹腔内感染や胆道感染から高率に検出される.
 しかし,重篤な腸炎や術後肺炎を引き起こし,特にβラクタム剤に多剤耐性を示すことから,消化器外科術後感染症の起因菌として現在最も大きな問題になっているのはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphulococcusaureus,MRSA)である2,3).さらに,このMRSA感染の流行が第3世代セフェム剤の普及時期と重なったことから,その関連性が注目された.

臨床外科トピックス 消化器外科領域におけるサイトカインとその周辺・1【新連載】

連載を始めるに当たって/重症患者における各種サイトカインの意義

著者: 北島政樹 ,   稲田捷也 ,   遠藤重厚

ページ範囲:P.491 - P.500

 最近の消化器外科学は臨床および研究の面において大きく変遷してきたことは否定しえない事実である.すなわち,臨床面において特筆されるべきことはminimally invasive surgeryの導入による腹腔鏡下手術の確立であり,一方,研究面においてはmolecular biologyの進歩と相まって,疾患のbiological behaviorの究明を目的とした癌遺伝子,また各種病態の解明における一連の蛋白群の同定が可能となったことである.その中でも,近年,消化器系学会の主題や雑誌の特集に取り上げられるのがサイトカインである.それ故,逆に考えると,サイトカインは時代のneedsに合った最もup-to-dateな研究の焦点であるといっても過言ではない.
 過去数年の研究により,サイトカインは細胞内の情報伝達に関与する蛋白であることが証明され,病態の解明に避けて通ることのできない物質となった.すなわち,サイトカインはautocrine, paracrineの作用を有し,他の細胞の活性化,増殖,分化を促し,単球(Mo)やマクロファージ(MΦ)から産生されるモノカインと,リンパ球から産生されるリンフォカインに分類される.これらはサイトカイン・ネットワークを形成し,免疫応答,炎症反応あるいは造血作用を司っていて,生体のhomeostasisを保っている.


 はじめに
 サイトカインは,免疫担当細胞をはじめとして種々の細胞から産生される,きわめて微量でその効果を発揮する(糖)蛋白性の生理活性物質で,細胞の分化増殖,あるいは抑制を通じて生体の恒常性の維持に必須の物質である.例えば免疫系や造血系の活性化調節に重要な働きを示す.さらに炎症性サイトカインは炎症の経過に関与し,炎症からの回復に一役を担っている.
 サイトカインはインターロイキンやインターフェロンを代表として数多く存在し,その作用には重複するものが多い一方で,作用を発揮するためには細胞表面の特異的レセプターに結合する必要がある.内分泌(endocrine)ホルモンは,ある特定の組織でつくられ体内の様々な細胞に作用して代謝を調節するが,サイトカインは,自己分泌(autocrine)あるいは傍分泌(paracrine)という形で自己細胞あるいは近くの細胞に作用する.しかし,敗血症性ショックでの異常に高値の血中サイトカインはendocrine的に体内の広範囲で作用していることがうかがえる.

外科研修医実践講座・10

外来・ベッドサイドにおける創処置の基本

著者: 柵瀬信太郎

ページ範囲:P.501 - P.505

 はじめに
 創傷治癒については,詳細なミクロレベルの研究が進んでいる.しかし,臨床で行う創処置においては,どのような状態の創に対しても常に殺菌による創感染の予防や治療ばかりが注目され,創消毒,抗生剤投与,創の乾燥化による痂皮形成促進といった処置が長いあいだ見直されることなく続けられたきた.
 しかし,近年,新しいドレッシング,薬剤の開発に伴い,実際に扱う創の状態(創傷治癒過程の諸相)に応じた手技,薬剤,ドレッシングなどの選択が可能となってきた.以下,新しい知見を中心に,外来・ベッドサイドにおける創処置の基本について述べる.

鴨川便り・4

小さな世界

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.506 - P.507

 「医療の質」はちょっと食傷ぎみだから,少し話題を変えよう.
 亀田に着任して,さて,さしあたりどんな仕事をしたらいいのか思案した.病院側の要望はわかった気がするが,かなり概念的で,具体的に何をしたらよいのかというとまだはっきりしない.自分でよく考えることにする.素晴しいオフィスをもらった.目の前は遮るもののない見渡す限りの太平洋の大海原である.一面に広がるきれいな砂浜に白波が次々に勇壮に打ち寄せては音をたてて砕けている.荒れる日は大波が天空に舞い上がって怒り狂う.凪の日は水平線から浜辺まで心和むほどに優しく静かである.この景色素晴しい鎮静剤,心昂ることあればせいぜい利用させてもらおう.まあ,なにはともあれ,まず各科の部長と面接させてもらうことにする.

イラストレイテッドセミナー・1【新連載】

はじめての成人鼠径ヘルニア根治術・LESSON1

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.509 - P.515

 ●外科手術のアトラスは数多いが,手術を学び始めたばかりの研修医が見て容易に理解できるものとなると意外に少ない.筆者自身の経験でも,格調高い文章や専門のイラストレイターによる美しい挿絵は,ビギナーにとってはむしろ本棚に飾っておく百科事典のような存在で取っ付きにくい感がある.そこで今回,「臨床外科」編集委員の先生方や医学書院担当諸氏のお許しを得て,外科手術を始めて間もない筆者が『イラストレイテッドセミナー:はじめての外科手術』と題して連載をさせていただくことになった.初心者ならではの着眼点や疑問点を大切にし,自筆のイラストでわかりやすく解説しようと思っている.鼠径ヘルニア根治術,虫垂切除術,幽門側胃切除など,研修医が経験することの多い手術を取り上げるつもりである.
 ●本連載を始めるにあたり,手術をご指導くださいました牧野尚彦 兵庫県立尼崎病院副院長,ならびにご校閲いただきました山岡義生 京都大学第2外科教授に感謝申し上げます.

臨床研究

左上肢の動脈硬化性多発性動脈瘤の1治験例

著者: 及川佑一郎

ページ範囲:P.517 - P.519

 はじめに
 四肢末梢動脈瘤の多くは下肢に発生し,上肢の動脈瘤は多くない.上肢動脈瘤の大半は外傷が原因で,動脈硬化によるものは少ないとされている1,2).筆者は,これまでに8例の末梢動脈瘤手術を経験しているが,このうちの1例は左上肢の硬化性多発性動脈瘤で,まれな症例と思われるので報告する.

臨床報告

孤立性腸骨動脈瘤16例の経験

著者: 辻本優 ,   横川雅康 ,   明元克司 ,   山本雅巳 ,   上山武史 ,   山本恵一

ページ範囲:P.521 - P.524

 はじめに
 腹部大動脈瘤を伴わない,いわゆる孤立性腸骨動脈瘤は比較的まれな疾患であり,同一施設での症例を検討した報告は少ない.当科では,これまでに16例の孤立性腸骨動脈瘤を経験しており,今回これらの症例について検討したので報告する.

手術手技

乳癌治療における筋皮弁移植の応用

著者: 山下弘幸 ,   黒木祥司 ,   古川研一郎 ,   千々岩一男 ,   川上克彦

ページ範囲:P.525 - P.527

 はじめに
 近年,腫瘍をはじめ放射線皮膚潰瘍の切除後に生じた広範囲の組織欠損の再建に,筋皮弁が積極的に利用されるようになってきた.筋皮弁の血管解剖ならびに血行動態の研究が進み,術式としては確立してきたが,過去の手術による解剖学的制約のある場合には,症例ごとに若干の工夫が必要なことがある.
 今回われわれは,乳癌術後の局所再発腫瘍の切除後,筋皮弁移植を応用し組織欠損部の再建を行ったので,術式の選択と手技的な工夫を中心に報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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