icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科49巻4号

1994年04月発行

綜説—今月の臨床

消化器外科手術の周術期における抗菌薬投与の問題点

著者: 谷村弘1 石本喜和男1

所属機関: 1和歌山県立医科大学消化器外科

ページ範囲:P.483 - P.489

文献概要

 Ⅰ.はじめに
 消化器癌に対する広汎なリンパ節郭清手術や臓器移植など手術術式が拡大化され,周術期における感染症の発症防止対策の良否が患者の予後を大きく左右する.特に準無菌手術と汚染手術が圧倒的に多い消化器外科手術の進歩は感染症との戦いの歴史でもあり,腸内細菌を代表するグラム陰性桿菌や嫌気性菌に対して強力な抗菌力を示す抗菌薬の術中・術後の投与は必須であった1).その結果,術後感染症のかつて主な起因菌であった E.ColiやK.Pneumoniaeなどのグラム陰性桿菌の検出率は著しく減少し,なお減っていないのはP.aeruginosa のみである.それと引き換えに,S.aureus やEnterococcus spp.などのグラム陽性球菌の検出率が増加してきた.Enterococcus spp.は腹腔内感染や胆道感染から高率に検出される.
 しかし,重篤な腸炎や術後肺炎を引き起こし,特にβラクタム剤に多剤耐性を示すことから,消化器外科術後感染症の起因菌として現在最も大きな問題になっているのはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphulococcusaureus,MRSA)である2,3).さらに,このMRSA感染の流行が第3世代セフェム剤の普及時期と重なったことから,その関連性が注目された.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら