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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科5巻10号

1950年10月発行

雑誌目次

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日米医学教育者連合協議会(外科学)に出席して

著者: 桂重次

ページ範囲:P.477 - P.480

 終戰5年依然たう米軍占領下に学制改革医療制度の改変等てんやわんやのうちに憂鬱に過して来た. こんどは日米医学教育者協議会があるということが今春より噂になつており,実際の所1カ月も勤務地を離れ,最盛夏を東京で暮すことはあまり有難くないし感情的にもいやであつたが,出席してみてこの会は非常に有意義のものであることを知つた家第である. 或はこの会はこれからの日本の医学教育の変化のきつかけとなるかも知れないとも思われる.
 本会では米國医学教育の現状,各分科の現状を紹介されたわけであるが,米國医学教育の特長がよくわかり,これから本邦でもとり入れた方がよい処はとり入れるべきであるし,とり入れられることゝ思う. 本会のよかつた処は更らにもう一つある. それは今迄学会や何か会合があつても医科の各科の教授多数が数週間も一緒に集つていたということはなかつたことで,こんな意味でも非常に有意義のものであつたと思う.

日米医学教育連合協議会(麻醉学)に出席して

著者: 淸水健太郞 ,   山村秀夫

ページ範囲:P.481 - P.486

 7月20日から,3週間余りに亙つて開かれた「日米医学教育者協議会」,其実は米國の知名教授らの,各々專門の講演を,日本の各大学を代表する教職にある人々が,出席簿のもとに,毎日朝9時から午後4時迄,傾聽するという会である. 平生雜務に忙しい先生方の,書き入れ時の夏期休暇中のことではあり,暑い処を遠方から出て来なければならなかつたので,始めは「御苦労樣なことです」等いう樣な挨拶がお互いに交わされていた.
 私は帰朝早々とはいえ,既に麻醉の方に登録されていたので,その方に出席,おまけに通訳の大任を負わされた. 講演者はRhode Island Hospital,の麻醉科主任,且米國專門家試驗委員として麻醉を受持つているDr. Meyer Saklad. 出席者は34名,始めの3日を東大,後の3週間を慶應の臨床講堂で行われた. 麻醉という学問,敢えてこゝにDr. Sakladに從い学問というのであるが,これは日本に新しいものであり,聞く処ことごとく有益である乍りでなく,Dr. Sakladの額に汗して話す熱心と,その名調子とに,演者聽講者35名の呼吸ピツタリと合つて,前後3週間尻あがりの成功裡に講演を終つたのは,何としても喜ばしい事であつた.

胃全摘出後食道空腸吻合部近接輸出脚の膨大拡張に就ての考察

著者: 脇坂順一

ページ範囲:P.487 - P.489

 胃全摘出後,食道空腸吻合部に接する空腸特に輸出脚に,屡々著明な膨大拡張が見られることは既にHerezel(1902),Sykow(1911),Unger(1913),Cohn(1913),Drevermann(1920),Hoffmann(1922),Heilmann(1925)Schwarz(1926),Butler(1927,Walters(1930),Birgfeld & Staemmler(1931),大沢(1933),Stahnke(1933),立野(1935),Kouracenkov(1938),Lahey(1938),瀨尾(1941),内山(1941),三宅(1942),佐藤(1946),MacDonald,Ingenfinger a. Belding(1947)等の諸家によつて認められたところであり,後胃(Nachmagen)或は代用胃(Ersarzmagen)とも呼ばれているものである.然し,以上の諸家は少数例に於て單に此の拡張の事実を報じているのみで,之の発生機轉に就ては充分考究していない.
 教室に於て私が胃全摘出術後比較的詳細に腸管のレントゲン檢査を爲し得たものは28例に及んでいるが,之を基として該問題に就て些か考察を試みたいと思う.

先天性膝関節脱臼2例

著者: 玉井達二

ページ範囲:P.490 - P.492

 先天性膝関節脱臼は1810年にMalacarne,Chausier,Chatelain, Wutzer, Kleeberg等が始めて記載し,この疾患は稀なるものとされていたが,其の後諸家の文献に散見し,1897年,Drehmannは127例を記載し,この疾患について詳述し,本邦に於ては,三木,岡,河邨等の諸氏に依つて報告され,先天性股関節脱臼と合併せるものが多いと報告されている. 最近2例を経驗したのでこゝに報告する.

外科的疾患に対するテブロン-R(Teabrom-R)〔コーワ〕の効果に就て

著者: 松下良司 ,   折茂英吉 ,   熊谷博

ページ範囲:P.493 - P.499

 TEAB(Tetraethylammonium bromide)は,自律神経遮断剤として最近とみに注目されて来たが,このTEABを主剤とし,之に抗ヒスタミン剤を配合して,両者の相乘的効果を期待したテブロン-R(コーワ)の提供をうけた.我々はこの新製剤を種々の外科的疾患に應用し,若干の成績を得たので,こゝに報告する次第である.
 TEAイオンが,ニコチン樣の神経節遮断作用を有する事は,既に1915年Hurt & Daleにより発表されているが,臨床への應用は,1945年Acheson & Moeの詳細な動物実驗の成果の発表があつてから急速に発展した.そして現在では,その作用はかなり明かになつている.要約すれば,TEAイオンは,神経節に於ける自律神経の傳導を遮断する結果として血圧低下,脈搏頻数血流増加,皮膚温度上昇,発汗停止,胃腸蠕動の停止,胃液分泌の停止,膀胱緊張減弱,瞳孔調節不全等があらわれる.

外科より観た栄養失調症—第4報 栄養低下者に於ける鯨肉給與試驗

著者: 大村泰男 ,   西山信雄 ,   上野良太 ,   塩川優一

ページ範囲:P.500 - P.505

 低蛋白症と栄養失調症を同意語に用うるようになつたのは,今度の戰時戰後日本内地で観た栄養失調症から潜在性栄養失調症に至る一連の栄養低下状態から引き出された結論と体驗によるものであつた. 外科領域でも同状態から手術前後,或は手術中に色々の障碍を認めて来た. それにつき私共は度々報告している. さてその対策としては云うまでもなく蛋白質を経口的に,或は非経口的に與えることであるが,こゝに私共は経口的投與の実驗を行つた. その蛋白質を何に求めるか. 私共は多人数に,多量を,長い期間に亘つて與えたかったので,材料め得易いこと,機会に惠まれたことから生の鯨肉を購入し,各種の料理に加工して給與試驗を行つた. 本実驗を発表するに当つて,蛋白食調査会の各位,殊に理事長石川知福博士,委員岡本彰祐博士,日本水産研究所長藤永元作博士の御好意に満腔の感謝を捧げるものである.

アメリカ便り・1

著者: 卜部美代志

ページ範囲:P.505 - P.505

9月5日 ニユーヨークにて
 (前略)私の今いる所は「ニューヨク」といつても中心街からは地下鉄やはしけやバスにのつて二時間半もかゝる所です. 世界の各國人が集つてそれぞれの分科にわかれて仕事を励んでいます. 恰も國際研究所(病院)の観があります. (話される言葉は勿論英語であります. )日本人は今のところ私一人です. 私達が日本で雜誌の上で名を知つているアメリカ一流の人々が週に日をきめて指導にやつてきます細いことには勿論いろいろの異るところがありますが,研究の方向や考え方は日本で私達の向いていたことゝ同じようですね.
 仕事や研究の内容については日が浅いので観察に誤りがあるといけませんから今回の批評を避けますが,病院でつかわれる物質の豊さでは最初におどろいたことですね.(私達が東京の大学で使ふ1カ月分位の資材を1日位で費してしま5程度です.こ製に暫く(数ヵ月)留学予定になつています.(後略)

マムシ咬創の重曹液動脈注射による13治驗例

著者: 斎藤三郞

ページ範囲:P.506 - P.507

 現今の状況に於て,毒蛇咬創患者に対する治療にあたつては,血清の入手も大体不可能であり,又單なる咬創附近の乱切開に依る毒素排泄のみでは,治癒日数は長期に亘り不帰の轉機をとる者もないではない.
 之により私どもは,大庭忠夫氏の「重曹加血液輸血」,及び特発性脱疽に10%重曹水20cc毎日靜脈内に注入することにより,肢端の疼痛が著しく軽快すると云うことから,之を毒蛇咬創に,動脈内に重曹水を注入すれば,良い結果を得られるのではないかと思い,昭和22年7月以降昭和23年9月迄に,愛知縣西加茂郡挙母町加茂病院に於て,13例を経驗,之に咬創附近の乱切開による毒素,及び之に依る分解産物の排泄を計ると共に,2%重曹水及び20%葡萄糖液の動脈内注射を行い,之により著で全治した. 又治療を早く受けた患者にありては,経過しく疼痛が減退し,腫脹の消退の速かなることを知り,治癒期間を著しく短縮し得た.

淋疾性関節炎のペニシリン療法

著者: 赤林惇三

ページ範囲:P.508 - P.510

緒言
 1879年Neisser氏が淋菌を発見し,其後淋疾性尿道炎と淋疾性関節炎の因果的関係が漸次究明され,1890年頃,König氏等に依り,関節炎は主に尿道淋疾の淋菌轉移症である事が認められるに至つた. 而して淋疾性関節炎に対する治療法も,漸次進歩を示し,古くより行われた発熱療法,温熱療法,ワクチン療法,自家血液又は関節液注射療法,或いはレントゲン療法等は既に歴史的な療法となり. スルファミン剤の出現により,其の治癒率は急速に上昇を示し,且つ以前迄は必ず機能障碍を残すと考えられていた此の疾患も,治療開始の時期,治療法の改善により,殆んど不快な後遺症を残さなくなつた. 即ちスルファミン剤の関節腔内注入,盈気療法,一定期間の固定後に於る後療法としての運動練習等に依り,其の予後に関しても一大進歩を遂げたのである. 然るにペニシリン療法の発見されるに及び,更に飛躍的な治療効果を上げ得るに至り,且つ機能障碍を残す事も殆んど無くなつたと云われている.
 而して,「ペ」療法に於る使用の技術,量,適應の時期等に就ては未だ確然たる結論に達して居ない樣であるが,私は最近,急性及び慢性淋疾性関節炎各1例を経驗し,之に関節腔内「ペ」注入を行い,其の急性の例に於ては良好な結果を得,慢性の例に於ても或程度の効果を得たが,機能恢復に関しては余り期待出来なかつたので,各症例を報告し,「ペ」療法の適應及び機能恢復性等に就て若干の考察を加えたい.

巨大肺空洞の治療—CPC.

著者: 桑原悟 ,   北本治

ページ範囲:P.511 - P.513

 桑原 このたび,あたらしい形で,CPC. をおこなうにあたりまして,ひとこと申しておきます. もともと,このこゝろみは渡米中の清水教授が就任当初からはじめられたのです. それは,主として清水教授を中心として,お話しをしてきたのですが,こんどは,方面をかえまして,内科の北本助教授にきていたゞきまして,患者をみていたゞきながら,お話しをうかゞうことにいたしました. ごく軽い気持ちで,お話しをうかゞうことにいたしましよう.
 また,今日のクランケにつきましては,まえまえから北本先生におうかゞいして治療方針をきめていたのですが,回診のときには,みなさんがごらんになつても,まとまつた充分な説明ができませんでしたが,こんにちは,この機会にご不審な点を,北本先生にどんどん,おきゝして皆さんの知識を整理しておいてください.

集会

ページ範囲:P.521 - P.521

第490回東京外科集談会 昭和25.9.15
1. 慢性骨髄炎瘻孔から生じた皮膚癌の一例         東大福田外科 正木幹雄
 39歳男.9歳の時左脛骨骨髄炎に罹患し,26歳の時より局所に痩孔を形成して今日に至つた.最近痩孔附近に潰瘍(9×4cm)を形成し扁亭上皮癌なりしため切断術を行つた.
 骨髄炎痙孔よりの皮膚癌発生の報告は本邦では佳田氏(明治40年)に始まり本例共9例.発病までの経過年数は20〜30年が多い.

第6回日本脳・神経外科研究会次第

ページ範囲:P.522 - P.523

日時 昭和25年10月7日
会場 東北大学医学部東講堂

米國外科

米國外科

ページ範囲:P.514 - P.514

THE AMERICAN JOURNAL OFSURGERY
 Vol. 79 No. 5. May. 1950.
(承 前)
4. Addison's Disease and Pregnaney. Flo- rence Brelut.………………………………645

今月の小外科・8

急性化膿性骨髄炎の治療

著者: 左奈田幸夫

ページ範囲:P.515 - P.518

 急性化膿性骨髄炎は外科,整形外科專門医のみならず一般開業医も屡々遭遇する疾患で,敗血症を伴う乳幼兒は時に死の轉帰をとり,幸に生命を救い得ても,大部分は慢性化し,長期間の保存的療法の後,腐骨摘出術を行い年余に亘つて治療せざるを得なかつた. 又手術の時期を誤ると病巣の再燃のみならず,各所に轉移して患者の苦悩のみならず,医師としても手を燒いたものである,然るに化学療法剤の発達,殊にペニシリン(以下Pcと略記)の世に出るに及んで,吾々医師をも苦しめた本疾患も適切なるPc療法を行うことによつて,大部分を治癒せしめ得る樣になつたことは,肢体不自由者を貽さなくなつた点のみからも,國民と共に同慶に耐えない.
 Pc療法によつて本疾患も大部分は軽快するが,その予後判定,予後管理を誤ると失敗することがあるので,本稿はPc療法のみならず,かゝる点をも記載してみたいと思う. 近年Pc抵抗性の化膿菌が漸次増加しつゝある傾向にあり,從つて使用量も次第に増しつゝあるが,以下述べるPc使用量は少く共標準最低量と思われる. 然るに往々社会保險制度の査定に際し所謂濃厚治療として或削除を加えられ,從つて止むを得ず使用量の減少から二次性慢性骨髄炎の増加をみ,引いては入院日数の長期に亘り,手術点数の増加,且つ肢体不自由者を世に貽すならば,小は社会保險制度の損失から,大は國民の世活力の減退となり,角をためて牛を殺すの結果となるを憂うものである.

外科と病理

穿孔した十二指腸潰瘍の一剖檢例

著者: 黑羽武 ,   古川弘平

ページ範囲:P.519 - P.520

 胃及び十二指腸潰瘍は文化病の一とされ,戰後は特に本病が増加する傾向にあるとゆう(川島). 一方に於て東北地方では最近,蛔虫症の作爲による急性症が注目を惹き,外科的に種々興味ある知見も報告される(槇,島田). 茲に記載せんとする症例は,患者自身が内科医であって,診断を考え過ごした点に多くの教訓を含んでいる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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