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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科5巻12号

1950年12月発行

雑誌目次

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Aureomycin, Chloramphehicol, Terramycin等の外科的應用

著者: 島田信勝 ,   羽鳥俊郞

ページ範囲:P.575 - P.579

 最近我が國に於ても一般に使用されている新しい化学療法剤に表題の種の新樂がある. 此等は一寸考えると外科方面には縁遠いような感じがないでもない. 勿論内科的疾患とは密接な関係はあるが,外科領城に於ても決して無視出来るものではない. 殊にPepicillinの無効である場合,その他以下述べてあるように今後尚研究の余地が多分に残されている. 近頃我が國に此等藥剤の臨床研究協議会が出来たが,その席上Aureomycinはオーリオマイシン,ChloromycetinはChloramphenicolと今後呼ぶことに一定したので,此の機会に数種の文献より得た知識をまとめて記載することにした.

ヘパトサルファレインによる肝機能檢査

著者: 坂本馬城

ページ範囲:P.580 - P.583

 肝臟の営む機能は多方面に亘つているのでその機能檢査方法も数多く提唱されている.
 ブロムサルフアレン法は,本色素が血行中に注射されると殆ど大部分が肝細胞から胆汁中に排泄される事実に基いて,注射後一定時間に採血し,その血中濃度から肝臓機能障碍の有無,その程度を覗知しようとする方法で,操作の簡便なこと,正確な負荷量で短時間内に檢査し得る敏感な肝臟機能檢査法として推獎される. 本邦製品ヘパトサルフアレンによる檢査成績に就ては北本氏,土屋氏,高橋氏等の報告がある.

脳腫瘍46例の外科的経驗

著者: 陣內傳之助

ページ範囲:P.584 - P.588

 臨床的に脳腫瘍といえば,必ずしも病理学的に腫瘍と名づくべきものに限らず,頭蓋内に発生したあらゆる種類の新生物を含むことは周知の如くである.
 私が九大友田外科教室に於て,過去5年間に集め得た脳腫瘍患者は第1表の如く寄生虫によるものや慢性脳膿瘍等まで含めて僅か46例で,本邦脳外科の先達諸家のそれに比して甚だ例数も少ないけれども,九州地方に於ける脳腫瘍という意味からも強ち意義のないことではないと考えて,敢てこゝに報告申上げた次第である.

胃全摘後の吻合空腸運動に就て

著者: 井上権治

ページ範囲:P.589 - P.591

緒言
 胃切除術が胃癌に対する根治療法として一般に広く行われる樣になつて以来,相当の年月を経ているが,其の遠隔成績は依然として満足す可きものでない. 從つて,從来主として晩期胃癌に対する手術手技としてのみ行われた胃全摘術が,次第に其の適應範囲を拡大せられて来た. 所が消化管系の一大重要器官たる胃を全部取除くと,爾後の消化機能に大きな変化を来す事が当然予想される. 友田教授は昨年来,胃癌治療に関して積極的意味に於ける胃全摘術,即ち胃切断術を提唱され,教室に於ては,胃全摘術後の代謝問題に関して広汎な研究が行われているが,私は,胃全摘術後食道に吻合された室腸輸出脚の運動を,パロン式内圧描画法によつて観察した所,興味ある知見を得たので茲に報告する.

肺蛭—1異所寄生6例に就て—附 最近60年間に於ける統計的観察

著者: 郭宗波

ページ範囲:P.592 - P.599

I.緒言
 肺蛭の異所寄生は稀有のものにあらず.その報告例は多数にして,人体の殆んど凡ゆる場所に異所寄生する感すらあり.又人以外にても虎,豹,犬,猫,狐,狸,黄鼬,豚等に自然寄生が報告せられており,実驗的にては兎,海猽,鼡,白鼡にも感染する事が出来得る.故に1918年恩知氏は肺蛭は「蟹を捕食する野獸間の寄生虫なりと言えり.
 その地理的分布を見るに台湾省を始め中國各地,日本,朝鮮,安南,交趾,Philippine,印度,Siam Malay,北米の一部,南米北部,Africa,の一部,Newguina等世界各地に亘れり.

骨長経成長促進法に就いて

著者: 森田浩

ページ範囲:P.600 - P.604

 脳下垂体性侏儒に該臟器の前葉移植を試みその成長促効果を期待した脳下垂体移植術は多数の追試者を得た. 然るにその後この手術を希望して来る患者層をみるに,脳下垂体の機能低下による所謂侏儒と思われる人々でなく,邦人平均身長よりみればむしろ正常者と思われる者が多数を占めている. 該手術は脳下垂体機能障碍者に於て最も成長促効果を認めている如くである. 然りとすれば正常邦人男女子の整容上の成長効果を期待して脳下垂体移植術を試みるは必ずしも当を得たるものとは思われない. 然るに日常吾々のクリニツクを訪れる骨髄炎患者を観察するに,屡々罹患骨の著明に延長した者を認める. そこで私は化膿性骨髄炎時に於ける生体の反應を骨長径成長促進に應用せんとして先づ次の如き実驗を試みた.

米國外科

ページ範囲:P.613 - P.614

 ANNALS OF SURGERY.
 Vol. 131,No. 5. May 1950.
1) Presidental Address: Ploblems in the Trai- ning of the Surgeon. Alfred Blalock. ・・p.609
2) Acute Arterioaeous Aneurysm of Right Common Carotid Artery and Internal In- gular Vein. Mims Gage. …………………P.617

集会

ページ範囲:P.615 - P.617

第44回北陸外科集談会昭和25.9.25
(於小松市)
 1.皮膚脾脱疽の一例         態埜御堂外科 木 誠 晴 夫 昭和21年7月 富山縣下に発生せる左前捕皮膚脱疽の一例.患者,22歳農夫.左前搏屈側に多個の一銭銅貨大の脾脱疽潰瘍あり,リバノール濕布及びペニシリンに由り比較的良好なる経過を取り約1カ月にて治癒す.感染源は数日前,同村にて死亡せる牛脾脱疽にして患獸の感染源は不明,本症は極めて初期に之が診断を確定し得たため同地方に於ける脾蛻疽の感槊を最小限に止め得書た.
 2.乳幼見急性腸重積症の三治驗例           久留外科 山 城 德 一 乳兒腸重積症の造影剤高圧注腸法による三治驗例を報告し,乳兒に於ける腸重積に対する非観血的療法の重要性,特に邉影剤使用の診断的,治療的價値,並に本症の治療成績の向上は一にその迅速な診断をまつ小兒科医の協力家庭主婦の常識の発逹が必要.

今月の小外科・9

老人に多い骨折

著者: 渡邊正毅

ページ範囲:P.605 - P.606

 骨折は骨の性状と作用外力の2因子を有し,年齢は骨の性状と最も密接な関係がある. 40歳頃より所謂老年期に入るが,この時期の特徴は造骨細胞機能低下による老年性骨粗鬆である. 骨髄腔は拡大し,骨緻密質は厚さを減じ,粗鬆となり,硬度及び彈性が低下する. 主として海綿質より成る骨端部及び骨幹端部に於ても彈性の低下が著明である. 骨粗鬆の原因をAlbrichtは老年期及は更年期に於ける性腺及び副腎皮質のステロイドホルモンの排出停止に帰している. したがつて,脳下垂体前葉・甲状腺及び上皮小体等の影響も軽視出来ない.
 老年性骨粗鬆ある骨は外力に対して折れ易いので,特種の骨折型すなわち彈性の大なる小兒の骨に特有な骨幹部骨膜下骨折・不全骨折及び骨端線離開などを除けば,一般に骨折は老人に起り易いと言えよう. ただ老人は比較的穩和な生活をしているので強大な外力に遭遇する機会は少く,日常生活に於ける偶然の外力,たとえば轉倒などによる骨折が多いとされている. Brunsの統計によれば,青壯年男子は強外力に遭遇する機会最も多く,骨の抵抗力は老年に進むに随つて低下し,共に骨折の頻度を高めている. すなわち老人には各種の骨折が起るものであるが,前述の如き骨の性状により,その骨折型に若干の特徴がある,要約すれば,骨幹骨折に対する骨海綿質の多い部分の骨折の比率が老人に於て増加している.

外科と病理

膵臟膿瘍穿孔に因る腹膜炎の1例

著者: 猪狩定典 ,   吉田利一

ページ範囲:P.607 - P.608

 由来蛔虫は惡戯者で,之に因る疾患は極めて多く,生命の危險を来す事も少くない. 第2次世界大戰後家庭菜園其他の影響及び,駆虫剤の欠乏の爲に,蛔虫の蔓延は甚しく,私共の昭和23年秋慶應中野病院での小学兒童約6000名の虫卵檢査成績では,75-76%に蛔虫卵陽性成績を得ており,恐らく此の成績は全國的に当てはめ得ると思う.
 私共は昨年恐らく蛔虫に起因すると思われる膵膿瘍穿孔に因る腹膜炎の1例を剖檢する機会を得たので報告する次第である.

外科醫のノート

精神外科

著者: 林暲

ページ範囲:P.609 - P.610

 昨年,湯川秀樹博士と共にポルトガルのEgas Monizがノーベル医学賞を授けられた. いう迄もなくこれは,ロボトミーに於ける彼の創意を賞せられたものである. Monizが始めて発表した1935年以後,彼自身より寧ろアメリカのFreeman,Watt等を中心として経驗が重ねられ,最近に至つて漸く世界的に普及し,ロボトミーを中心として精紳外科Psychosurgeryなる概念も生れるに至つた. 精神外科の目的とする所は,一般外科手術の場合の如く生命の危險を救おうとするものでもなければ,叉麻痺,拘攣,痙攣発作というような目に見える身体的の障碍を除こうというのでもない. 全く心理的の現象である精紳症状を軽減し,それによつて人間らしい杜会的の適應性をとりもどそうというのである. 大体脳髄のような精巧な器官に刀を加えて,プラスの功果のみを得ようというのは無理な話で,実際の所,普通の智能検査の上などには目立つた変化は出てこないにせよ,我々が一口に人格変化といつているような,ある形の精神的の欠陷は残るのである.いわば,高い旗竿の周囲に四方から沢山の綱が張つてある.その一方の何本かの張りが強すぎて竿が傾いている時.その何本かを切り離して多少とも眞直くにしてやろうというようなもので,その後は少し竿の固定度がわるくなるよう所も出ることになる.それだけに適應症の選択や切り方に問題もあ軌愼重な態度が必要になるわけである.ロボトミーを一科の刺戟療法のように考えて,切截の位置より広さを問題とし,効果がなければ段々に切截面を大きくした手術を反覆すをという考えや人格変化を来さずして効果が上げられるというような意見もあるけれども,我々が松沢病院で広瀬君を術者として,長期間観察を重ねた結果から見ると全く賛成出来ない.術後の一過性に現れる刺戟性の症状を充分に除外して観察するならば,或程度の人格獻変化なくしては効果なく,寧ろこの人格変化が,ロボトミーの効果の核心であり,この効果は前頭葉下部の眼複脳の切截のみで充分あげられるとい5のが大体の結論である.此の点現在ロボトミーの大御所であるFreemanの考えより,Reitman,Hofstetter,Kalinowsky等の老えの方が正鵠に近い.
 ロボトミーの対象になつている症例は分裂病が一番多いけれども,これはこの病気の数が多く,シヨック療法の如きも,常には確実にその効果を期待出来ず,結局欠陷状態に至るものも少くないから,割合無雜作にロボトミーを施行して大過ないからであつて,適應症としては,分裂病以外の或る種の精神病質や,生来性の性格的要素の大きい頑固な憩経症,抑鬱症のある場合.纈癇の欠階状熊としての性格異常等に,寧ろ重点があると思う.此等の場合は,更に症例の選択や,術後の精神療法的指導に愼重な態度を必要とするし,分裂病といえども,シヨック療法の如く初期から無雜離作にやるべき方法では決してない.

最近の外国外科

人類脳前頭葉機能変化及びその研究の方法としての選択的脳皮質下切離法—America,他

著者:

ページ範囲:P.611 - P.612

 スコビール氏によれば同氏の脳皮質下切離法は次の目的を以て考案されたとしている.
 即ち前頭葉皮質の一定の領域に吸引管とスパーテルとを用いて,灰白質と白質の比較的血管の乏しい連結部で切離線を作ることが出来るから,それによつて,その部分の脳皮質の長い連合纖維を切断するのである.又隣接脳回轉えの短いU字連合纖維を切断するには隔離すべき領域の周辺部で灰白質の方に浅く引きかけるようにして切断すると矢張これが出来るのである.かくしてこの皮質下切離法は脳の隣接部の血行を妨げることなく個々の皮質損傷を生ぜしめ得る方法をなすものであるとしている.

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「臨床外科」第5卷 總目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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