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文献詳細

雑誌文献

臨床外科5巻12号

1950年12月発行

文献概要

今月の小外科・9

老人に多い骨折

著者: 渡邊正毅1

所属機関: 1東京遞信病院整形外科

ページ範囲:P.605 - P.606

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 骨折は骨の性状と作用外力の2因子を有し,年齢は骨の性状と最も密接な関係がある. 40歳頃より所謂老年期に入るが,この時期の特徴は造骨細胞機能低下による老年性骨粗鬆である. 骨髄腔は拡大し,骨緻密質は厚さを減じ,粗鬆となり,硬度及び彈性が低下する. 主として海綿質より成る骨端部及び骨幹端部に於ても彈性の低下が著明である. 骨粗鬆の原因をAlbrichtは老年期及は更年期に於ける性腺及び副腎皮質のステロイドホルモンの排出停止に帰している. したがつて,脳下垂体前葉・甲状腺及び上皮小体等の影響も軽視出来ない.
 老年性骨粗鬆ある骨は外力に対して折れ易いので,特種の骨折型すなわち彈性の大なる小兒の骨に特有な骨幹部骨膜下骨折・不全骨折及び骨端線離開などを除けば,一般に骨折は老人に起り易いと言えよう. ただ老人は比較的穩和な生活をしているので強大な外力に遭遇する機会は少く,日常生活に於ける偶然の外力,たとえば轉倒などによる骨折が多いとされている. Brunsの統計によれば,青壯年男子は強外力に遭遇する機会最も多く,骨の抵抗力は老年に進むに随つて低下し,共に骨折の頻度を高めている. すなわち老人には各種の骨折が起るものであるが,前述の如き骨の性状により,その骨折型に若干の特徴がある,要約すれば,骨幹骨折に対する骨海綿質の多い部分の骨折の比率が老人に於て増加している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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