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文献詳細

雑誌文献

臨床外科5巻2号

1950年02月発行

文献概要

今月の小外科・1

凍瘡(しもやけ)について

著者: 高橋吉定1

所属機関: 1東京大学皮膚科

ページ範囲:P.99 - P.100

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 凍瘡すなわちしもやけは症状の上からもまた治療の上からもこれを凍傷と分けて考えなければならない. もちろんこの両者にはいく多の類似点が見られるのであるが,從来わが國の多くの教科書においてはその類似に重きがおかれ,差別の点が明瞭に述べられていないので,不得要領のまゝ卒業してしまう学生も少なくないようである. 凍傷は火傷と比較されるもので,その症状も通常度に分けられている. 0度以下の温度に,ある限度の時間を越えて身体をさらせば,どんな人にも凍傷は起るのであつて,熱湯に手を入れゝばだれでも火傷を受けるのと同樣である. しかるに凍瘡にかゝる場合には0度以下の温度を必要とせず,しかもたれでもかゝるわけではなくて,ある特定の人に限られる. したがつて凍瘡の発生の要因として素因の重要であることがわかるのである. この素囚は学童期および青春期においてもつとも顯著であつて,30歳を過ぎると稀にしか見られない. 女子は男子に比してこれが著しい. また体質上異常の徴候を具えるものは凍瘡にかゝりやすく,迷走神経緊張,形成不全性体質,毛髪発生不全,女子の男性型,肩胛骨の狭長,舌底濾胞の肥大,扁桃腺肥大,大動脈および血管系の狭小,反射亢進等が挙げられ,またそのよらなひとにはしばしば座瘡,脂漏性濕疹が見られ,皮膚標記症が現われる.後天的には栄養低下,アルコール,ニゴチン,腸疾患が素因をつくるとせられ,また一定の職業によつてもそれが発坐し,たとえば洗濯,料理等水使いのひんばんなものがそれである.
 凍瘡の素因をさらに具体的に考えると,それは血管の機能不全である.正常のひとは寒冷にたいして皮膚血管の收縮をもつて反應するが,凍瘡ゝりやすいひとにおいではその血管は容易に不全麻痺に陷いる.この麻痺は軽微な塞冷が何回か加わつたのち徐々に発現するので,したがつて凍瘡は慢性症である.これにたいして凍傷は1回の強い寒冷との接触によつて発生するので急性症とすべきものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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