文献詳細
特集 Cancer・1
文献概要
吾國では凡ゆる方面で排除困難な根本原因を現わすのに癌なる常用語を用い,之が極端に乱用されるので,却つて本来の病気の癌までが今日尚全く治療不能の絶望的疾患であるように大衆に堅い信念を釀成して了つている. 惹いては臨床医家も癌の疑いの場合は勿論,癌の確診が下されても患者には兎も角家人に話すことさえ躊躇し,徒らに日時を空費して了う実例は決して少くない. 今日では癌は最早根治不能の疾患ではない. 早期に発見し,適当の治療を施すならば相当高率で治癒せしめ得るのであつて,此の患者の恐怖心と医者の遠慮の爲になされる時間の空費は治療成績を著しく低下せしめていて,眞に憂慮にたえぬことである.
癌の本体が現在尚本当に明瞭でないので,今後の研究に待たねばならない問題も沢山あるが,一應癌治療の現況とその経路とを簡單に括めて明かにして置くことも意味があると思う.
癌の本体が現在尚本当に明瞭でないので,今後の研究に待たねばならない問題も沢山あるが,一應癌治療の現況とその経路とを簡單に括めて明かにして置くことも意味があると思う.
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