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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科5巻6号

1950年06月発行

雑誌目次

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大脳皮質の構成と機能に就いて

著者:

ページ範囲:P.279 - P.288

 大脳皮質(cerebral eortex)は終脳側壁の飜轉拡充に由つて形成される,初期の飜轉によつて先ず作られるものは嗅球であるが,その嗅球の基部には複雑な二次性嗅野があり,その内部に種々なる非嗅性組織が侵入拡大し,次いでこの協関性組織が飜轉拡大して大脳半球が形成される.半球を掩ら灰白質をCortex又はPalliumと云う.そのうち,元来の嗅球所属の部分(archipa'lium,allo-cortex)は,後に側方に押しやられ,Neopallium(新Pallium)の膨大な拡張のかげに姿を沒する.Neopalliumはその発生のある時期に,典型的な6層講造をとるので,その全体をIsocortexと云う.協関組織たるこの薄暦は,いわゆる知的行動と唱えられる不安定な行動型に極めて適應していると同時に,限りなく拡大してゆく傾向を持つらしい(Herrick,1921).
 身体の他の部分とは比較にならない程の,大脳皮質のおどろくべき膨脹は,それが人類の働きにとつて基本的な重大性を持つことを物語るものであつて,その構造は夙に生物学者達の興昧を惹いたものである.と云らのは,如何なる器官においても,それが活用するエネルギーを介して,構造が機能の樣式を決定するからである.而して神経組織は通報と連絡の器官なるが故に,大脳皮質については,明らかに2つの研究さるべき側面があつた.1つはその固有な内部構造,他は外部との連絡である.

アイソトープと外科

著者: 山下久雄 ,   宮坂知治 ,   大內廣子

ページ範囲:P.289 - P.297

 アイソトープと外科とは一見無関係の樣に思われるが,アイソトープは外科的疾患の診断に應用せらるゝ場合が多く,又手術の経過を見る爲にも役立つ. 更に治療学的に利用して,外科的療法の補助手段として重要な場合も少くない. アイソトープが広く医学的に應用されてから最う10年余になるのが,今更事新しく述ぶることでもないが,從来Cyclotron等で造ると非常に微量しか得られず又高價であつたのが,原子爐が出来てから多量が産出され,然かも著しく安價となつた. 例えば,炭素のC141mc得るのに大型のサイクロトン5台が1ケ年無休で運轉せねばならず,その費用100万弗を要するのが,原子爐では数年間に50mc以上が既に各方面に配分され,使用され,然かも1mc当り50弗となつた. 此の炭素1mcがあれば,之で半封度の砂糖が合成されるので,相当沢山の実驗が出来る訳で,アイソトープは全く実用的且普偏的となつた. 今度之が吾國へも輸入されることゝなり,7月頃第一便が来る筈である. 比較的簡單に使用出来ることゝなるので,此の際認識を新たにすることも有意義であろう.

ベルベリンの創面治癒に関する研究

著者: 橫田浩吉 ,   富井眞英 ,   谷川博

ページ範囲:P.298 - P.307

緒言
 今更言うまでも無い事であるが,感染創の療法には無菌的処置Aseptikと殺菌的処置Antiseptikとの二大綱があつて,前者は自然の治癒に待つ事多く,大体確実であるが経過は迂遠である. 後者は最近に至つて化学的抗菌藥剤が次々と創製せられて目醒ましい進歩を遂げ,経過も迅速である.
 然し臨床上の経驗より言えば強度の殺菌剤は必ずしも化膿を軽減せず,有力なる抗菌剤も必ずしも治療効果を齎らさない事は何人も気のつく処である.

乳腺結核の6例

著者: 渡邊千春

ページ範囲:P.308 - P.310

1. 緒言
 乳腺の結核性炎症は極めて稀な疾患で,文献によれば,Astley Cooper(1829)がScrofulous Swelling of the Busomと題して報告したのが,その最初であると云われる.其の後逐次報告例は増加し,最近迄に約500例に及ばんとしている.本邦に於ては,明治25年三宅教授1)が其の第1例を報告して以来,諸家の報告を合しても未だ100例に満たない.
 私は都築福田両外科教室を通じて6例の乳腺結核入院患者を得たので簡單に報告したいと思う.

非麻藥鎭痛剤「チンツゲン」の外科的應用に就いて

著者: 吉田誠三 ,   藏田辰男

ページ範囲:P.315 - P.315

 我々外科臨床にたづさわる者にとつて,疼痛,特に手術後の疼痛は切実な問題であつて優秀なる鎭痛剤が切望せられている.
 從来は此の目的に麻藥類が多く用いられたが,習慣性,中毒性等不快なる副作用あり,且繁雜なる使用手続等の爲,之が投與は安易に行い得ない. 之に対し非麻藥性鎭痛剤が種々創製せられたが,何れも満足す可き鎭痛効果と期待する事が出来なかつた.

米國外科

ページ範囲:P.318 - P.319

ANNALS OF SURGERY
 Vol. 131. No. 2. February,1950.
Systemic Baeitraein in the Treatment of Progres sive Bacterial Synergistic Gangrene. Frank L. Meleney, M. D., Philip Shambaugh, M. D. Robert S. Millen, M. D.……………………… 129

第50回日本外科学会の感想

著者: 福田保 ,   武藤完雄 ,   田中憲二 ,   勝屋弘辰 ,   島田信勝

ページ範囲:P.324 - P.326

 ◇本年の日本外科学会についての感想を申上げるのは,私は会長として例年とは全く異つた立場からして少しばかり言わしていただくこととする.
 兎に角日本でも最も大きな分科会の一つとして,例年盛大を極めて来た外科学会のことであるから,三日間の会期を司会せんとする立場にある者の悩みは,歴代の会長が嘗め来つたことと思う. 細部に亘つては種々の事もあるが,二三触れてみたいと思う.

集会

ページ範囲:P.327 - P.327

東京外科集談会 25.3.18
1. 脾腫を主訴としたホジキン氏病の1例       東大清水外科 清 水 慎 一・他 20歳男子 表在性淋巴腺の腫脹なく,発熱発作を主訴としバンチ氏病として別脾(1,800g)を実施せるものが組織学的にけ定型的ホジキソ氏病であつた.術後腹壁に若干の淋巴腺腫脹を認めたに過ぎない.
 2.遅発性硬脳膜下血腫の治験例       東京医大外科岩 田 豊助・他 24歳男子頭部打撲後3ヵ月にして偏頭痛,嘔吐を訴5,罐血乳頭,異常脳室像があつたものに対し,蹉頭血腫除去を行い治癒.

臨床講義

扁平頭底

著者: 淸水健太郞 ,   木村正

ページ範囲:P.311 - P.314

 今日お目にかける患者はPiatybasiaと云う病気で,basilar impresion又はbasilar invaginationとも云われる病気であります. この病気は大後頭孔附近及び上部頸椎の畸形,位置異常によつて種々の脳脊随症状を起してくるものであります. 日本ではまだ報告された事のない病気でありますが欧米では古くから記載せられているもので,我々は之をかりに扁平頭底と呼んでいます.
 患者は57歳の農夫で家族歴と既往歴には特に申上げることはありません. 数年来ときどき後頭部にしびれるような異常感覚を覚えたことがありますがそのまゝにしておきました. 1948年6月頃左手第4,5指の背側にしびれ感を覚え,同時に感覚鈍麻を訴えるようになつて来ましたが運動障碍はなく仕事にさしつかえることはなかつた. この症状は夏から秋にかけてやゝ軽快したので放置しておいた. 12月始になると再び著明になり掌側にも感覚鈍麻が現われてきた. 12月末頃には左前腕尺側に拡がり橈側では第1,2,3指に進行し同時に脱力感も訴えるようになり,この感覚及び運動障碍は漸次前腕上腕と進行した. 1949年1月末ごろには左肩まで及びシャツのボタンをはめるのに困難を感ずる程度になつた.この障碍はつねに尺側に強かつた.2月には食事中茶碗を落すこともあつた.この頃まで農業に從事していたがほとんど右手のみを使つて仕事をしそれも段々困難になつた.3月始めごろより感覚並びに運動障碍は頸部胸部背部腹部と進行し,またお湯が熱く水が異常に冷く感ずるようになつてきた.左手には浮腫が現われ左肩より頸部にかけて凝りを訴えるようになり強く首を回わすと疼痛を訴え仕事ができなくなつてきた.5月上旬より右上肢にも左側と同じ順序で感覚及び運動障碍が現われ,脱力感並びに肩の凝りのためにほとんど右測臥位で床についているようになつた.5月中旬から左足背部に,5月下旬より右足背部に上肢と同樣の知覚及び運動障碍が現われ,漸次上昇し,はやく歩くことが困難になつた.また6月始頃からときどき呼吸困難を訴えることもあつた.全経過を通じて発熱,神経痛樣疼痛,膀胱直腸障碍などはない.食欲は4月よりやゝ不良であるが味覚に変化はなく頭痛,視力障碍,難聽などはないがときどき耳鳴りを訴えることがある.6月11日感覚並びに運動障碍と肩の凝りを主訴として当科に入院した.

今月の小外科・5

化膿性筋炎

著者: 中谷隼男

ページ範囲:P.316 - P.317

 所変われば病気も変るものであつて,吾々外科医が欧米を巡つて一番気に付くことは何といつても甲状腺腫の手術が多いことである. アルプスとかロッキーの如き地域が関係がある訳である. 胆石症も若干多い樣な気がする. 何の変哲も無さそうなヴイシー温泉の水が壜詰になつて賣られている点でも想像が付く. これはバター其の他の脂肪類を多くとる食物上の習慣も関係があろう. 他方ヘルニアの再発に対する再手術も多い. これは吾々には一寸奇異に感ぜられるが人種的に東洋人とは少し違つて皮膚其の他の組織のたるみ方が著明なことに関係がある. 痛風に至つては吾國では殆どみられない. 殊に手術後の肺動脈血栓症に至つては全く外國独特のものであろう. 例えばヘルニアの如き格別何でもないと思われる手術後一寸用便に行つた瞬間急死するという樣な訳で実に怖わがられる. 自分が暫く世話になつていたKirschner教授(Tübingen, Heidelberg)は本症に対して所謂Trendelenburg氏手術即ち肺動脈中の血栓を摘出する手術を行つて始めて成功した人であるが,其の教室には常時その手術のために血管手術の器具一式を準備して待機していた. パラフィンを塗つた糸を針にとおして消毒してあつた. 然し実際には仲々間に合わなかつた.
 それに対して吾國に多い疾患に特発性脱疸がある.尤もソビエットにもある樣である.それからこゝに述べる化膿性筋炎も特殊なものである.本には載つてはいるが実際には外國には殆どない疾患のようである.殊に多発性筋炎となると極めて珍らしいものとされ得る.

最近の外国外科

—America—麻醉中心臟障碍に対する塩酸プロカイン液靜脈内注射療法,他

著者:

ページ範囲:P.320 - P.321

 バースチィーン氏は塩酸プロカイン100ミリグラム(0.1Gm)を1%溶液として4名の患者,即ち2名は27歳及び40歳の男子,他の2名は43歳及び69歳の女子で,何れも心嚢膜切除術,甲状腺切除術及び鼡蹊ヘルニア根治手術のため全身麻醉を施しておる最中に心臟障碍を起し,それを処置するために注射したのである.
 元来プロカインは局所麻醉藥であるが,中枢神経系統には興奮剤となるもので,全身麻醉藥で惹起される心臟の過剰興奮性を減退せしめる傾向を持つている.この報告のされた場合もプロカイン液が2名の患者では不整脈を整脈にし,又1名では心悸亢進及び高血圧を正常状態に復し,1名では心搏緩徐及び低血圧を正常に戻した.しかし,これで全く治癒するわけではない.或る一定の範囲で機能を正常にするのみである.

外科醫のノート

陰茎及び其の附近に発生した膿瘍に対する切開排膿

著者: 金子榮壽

ページ範囲:P.322 - P.323

膿瘍を切開して排膿することは,外科に携はるものの日常時の手術であつて,泌尿器科領域のものも腎周囲膿瘍尿浸潤等大切開を要するものがあり又尿道外口脣の淋菌性小膿瘍に対する如く小切開が望ましいものがある
 手術としては最も簡單なものではあるが,淋疾に関係して尿道周囲及び会陰部に生じた膿瘍には,切開に多少の注意が必要である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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