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文献詳細

雑誌文献

臨床外科5巻6号

1950年06月発行

文献概要

臨床講義

扁平頭底

著者: 淸水健太郞1 木村正1

所属機関: 1東京大學醫學部清水外科

ページ範囲:P.311 - P.314

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 今日お目にかける患者はPiatybasiaと云う病気で,basilar impresion又はbasilar invaginationとも云われる病気であります. この病気は大後頭孔附近及び上部頸椎の畸形,位置異常によつて種々の脳脊随症状を起してくるものであります. 日本ではまだ報告された事のない病気でありますが欧米では古くから記載せられているもので,我々は之をかりに扁平頭底と呼んでいます.
 患者は57歳の農夫で家族歴と既往歴には特に申上げることはありません. 数年来ときどき後頭部にしびれるような異常感覚を覚えたことがありますがそのまゝにしておきました. 1948年6月頃左手第4,5指の背側にしびれ感を覚え,同時に感覚鈍麻を訴えるようになつて来ましたが運動障碍はなく仕事にさしつかえることはなかつた. この症状は夏から秋にかけてやゝ軽快したので放置しておいた. 12月始になると再び著明になり掌側にも感覚鈍麻が現われてきた. 12月末頃には左前腕尺側に拡がり橈側では第1,2,3指に進行し同時に脱力感も訴えるようになり,この感覚及び運動障碍は漸次前腕上腕と進行した. 1949年1月末ごろには左肩まで及びシャツのボタンをはめるのに困難を感ずる程度になつた.この障碍はつねに尺側に強かつた.2月には食事中茶碗を落すこともあつた.この頃まで農業に從事していたがほとんど右手のみを使つて仕事をしそれも段々困難になつた.3月始めごろより感覚並びに運動障碍は頸部胸部背部腹部と進行し,またお湯が熱く水が異常に冷く感ずるようになつてきた.左手には浮腫が現われ左肩より頸部にかけて凝りを訴えるようになり強く首を回わすと疼痛を訴え仕事ができなくなつてきた.5月上旬より右上肢にも左側と同じ順序で感覚及び運動障碍が現われ,脱力感並びに肩の凝りのためにほとんど右測臥位で床についているようになつた.5月中旬から左足背部に,5月下旬より右足背部に上肢と同樣の知覚及び運動障碍が現われ,漸次上昇し,はやく歩くことが困難になつた.また6月始頃からときどき呼吸困難を訴えることもあつた.全経過を通じて発熱,神経痛樣疼痛,膀胱直腸障碍などはない.食欲は4月よりやゝ不良であるが味覚に変化はなく頭痛,視力障碍,難聽などはないがときどき耳鳴りを訴えることがある.6月11日感覚並びに運動障碍と肩の凝りを主訴として当科に入院した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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