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文献詳細

雑誌文献

臨床外科5巻7号

1950年07月発行

文献概要

外科と病理

蛔虫症は腸閉塞を介して肝変化と如何に結びつくか

著者: 所安夫1

所属機関: 1東京醫科大學病理學教室

ページ範囲:P.367 - P.369

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 蛔虫症が実質性臟器に及ぼす影響は,例えば虫卵の迷入による慢性異物性炎の型式をとつて膵臟の腫大を招来するような場合に,最も容易に吾々剖檢者の眼に映ずるのであるが,それ似外にはさして顯著な器質的障害をもたらすことなく,本邦に於ける夥しい蛔虫症の割合には実際の所,日常注意をひかれる機会にめぐまれないのが有態である. 一口に蛔虫症といつても,少数の寄生では勿論問題とはならぬし,又多数の寄生でも虫卵迷入や虫塊の腸閉塞でもない限り,常識から見ても重篤な変化を予期するのは無理なのかもしれない. 寄生虫の体力に分泌された毒性因子が一体どのようなものであるか,恐らくはたいしたものではないからなのであろう.
 最近私は蛔虫症による腸閉塞なる診断の下に生前手術を受け,術後解剖に廻つた1例に於て,予期せざりし肝の目ざましい変化を見出したので,かねて虫卵迷入による典型的な膵の炎症性肥大例の経驗を加味させて,こゝに蛔虫症と肝障害との関係にふれる目的で該例を参考に供したいと思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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