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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科50巻1号

1995年01月発行

雑誌目次

特集 早期胃癌の内視鏡的根治切除

4点固定法による内視鏡的胃粘膜切除術

著者: 稲土修嗣 ,   矢田豊 ,   宮際幹 ,   五十嵐雅秀 ,   宮元芽久美 ,   圓谷朗雄 ,   若林泰文 ,   田中三千雄

ページ範囲:P.13 - P.18

 ストリップ・バイオプシーを早期胃癌の内視鏡的根治療法として普及させるには,病変の完全切除率が必ずしも高くないことと,切除標本の口側,肛門側の決定が困難なことが,今日も未解決の問題としてある.
 これらの問題解決を目的にストリップ・バイオプシーの方法を改良し,新たに開発した4点固定法(four-point fixation method)を紹介した.胃のm癌あるいは腺腫を有した臨床例を対象に本法の有用性を検討した結果,従来のストリップ・バイオプシーの方法にくらべて完全切除率は有意に高く,かつ切除標本の口側・肛門側のより正確な判定が可能となり,優れた改良法と考えられた.

多画素電子スコープを用いた内視鏡的胃粘膜切除術(斜形透明フード法)

著者: 片山修 ,   小栗康平 ,   大久保裕雄 ,   加藤明 ,   太田和子 ,   本田宏 ,   林武利 ,   村上徹 ,   提嶋淳一郎 ,   石井保夫

ページ範囲:P.19 - P.24

 多画素電子スコープは,スコープ先端に18万,27万,41万画素といった多画素・高密度CCDを採用した電子スコープである.CCDの多画素化による高解像な画像を観察しながら内視鏡的粘膜切除術を行えば,より安全で正確な切除が可能である.斜形透明フード法による内視鏡的粘膜切除術は,食道粘膜癌の内視鏡的粘膜切除術:EEMR-tube法(幕内)の考え方を胃疾患に応用したもので,2チャンネル処置用スコープを必要とせず,多画素電子スコープを用いて鮮明な画像下に内視鏡的粘膜切除術を行うことができる方法である.手技は,高周波凝固によるマーキング,エピネフリン加生理食塩水の局注,フード装着スコープの挿入,粘膜の吸引,絞扼,切断,回収,止血(縫合)からなる.
 本法の前述した以外の特長は,把持鉗子による組織の挫滅の危険がないこと,フードを手軽に非常に安価に作製できること,胃体部などの前方視型スコープで正面視が難しい部位にも適用できること,円筒形フードに比べて大きな切除片を得ることが可能であること,フードの体積に制限されるために切除が過大になる危険が少ないこと,スネアーの掛け直しが容易なことである.
 本法の良い適応は,胃癌の場合,10mm以下の小胃癌,特に5mm以下の微小胃癌で,non-liftingsignを認める場合は切除を中止することにしている.10mm以上の病変では,分割切除となる可能性が高く,ほかの治療法も考慮すべきである.

経腹的内視鏡的胃粘膜切除術

著者: 樫山基矢 ,   平尾雅紀 ,   高梨節二 ,   鈴木龍弘 ,   石後岡正弘 ,   河島秀昭 ,   山崎左雪 ,   内沢政英 ,   宮崎有広

ページ範囲:P.25 - P.29

 早期胃癌に対する治療の1つとして,当院では高張NaClエピネフリン液の局注を併用した内視鏡的粘膜切除術(ERHSE)を施行してきたが,C領域,M領域後壁などは手技的に困難な部位であった.最近このような症例に対し,腹壁および胃壁を小切開し,経腹的に内視鏡を挿入することによってERHSEを施行している(経腹ERHSE).経腹ERHSEはERHSEの適応を拡大する有効な方法と考えられる.

腹腔鏡補助下幽門側胃切除Billroth-Ⅰ法再建術式

著者: 永井祐吾 ,   谷村弘 ,   瀧藤克也 ,   柏木秀夫

ページ範囲:P.31 - P.36

 内視鏡的治療の適応から外れた幽門側の粘膜内癌7例に対し,腹腔鏡補助下に1群リンパ節を含めた胃切除を行い,再建を行う術式を施行した.
 摘出リンパ節は,初期の5例ではNo.3,4,5,6,7で,最近の2例においてはD1+No.1,7の郭清が施行できた.37℃以上の有熱期間は平均1.7日と短く,術翌日より立位可能であった.吻合部狭窄を2例に認めたが,内視鏡的拡張術で改善した.
 本術式は,内視鏡的治療や腹腔鏡下部分切除とは異なり,領域リンパ節の大部分が摘出でき,しかも4cmの小切開創で再建可能である.今後,前庭部あるいは体下部の粘膜内癌の縮小手術の一法として期待できる.

腹腔鏡下胃内手術

著者: 大橋秀一 ,   余田洋右 ,   神野浩樹 ,   明石章則 ,   鄭一秀 ,   笹岡英明 ,   西野雅行 ,   桂敏明

ページ範囲:P.37 - P.41

 早期胃癌に対する腹腔鏡下手術の1つとして,まったく新しい概念に基づく「腹腔鏡下胃内手術」を開発した.本法においては,すべてのトロカールを直接胃内に刺入留置し,腹腔鏡ならびに手術器具を胃内に挿入して胃粘膜切除術を行う.本法の適応としては,胃内視鏡で切除困難な早期胃癌や胃粘膜下腫瘍が挙げられる.この手術法においては,胃前壁を除くほとんどすべての胃内病変の切除が可能である.これまで約2年間に早期胃癌10例を含む12例に本法を施行したが,これまでのところ重篤な合併症や再発例はみられていない.本法は,胃内視鏡的治療が困難な症例や高齢者における早期胃癌などに対しては,きわめて優れた内視鏡的手術法であると考えられる.

腹腔鏡誘導下胃部分切除術と経胃瘻的内視鏡下胃内手術

著者: 山下裕一 ,   酒井憲見 ,   前川隆文 ,   秀島輝 ,   城戸和明 ,   衣笠哲史 ,   平城守 ,   白日高歩

ページ範囲:P.43 - P.47

 早期胃癌に対する内視鏡下粘膜切除術(EMR)の普及に伴い,EMRでは一括切除が不可能な早期胃癌に対して,低侵襲性の腹腔鏡を用いた内視鏡下外科手術が試みられている.本稿では,小開腹法を用いた2種類の術式を紹介し,その適応について述べる.
 腹腔鏡誘導下胃部分切除術は,腹腔鏡により病変部を同定し,その直上の腹壁を小切開し,体外で病変部の胃を部分切除する方法である.
 経胃瘻的内視鏡下胃内手術は,小開腹にて一時的な胃瘻を作製し,径40mmのBuess型手術用スコープセットを胃内に挿入して病変部粘膜を切除する方法である.
 これらの手術方法は操作が容易であり,内視鏡を用いた手術手技の1つとして有用であると考えられる.

lesion lifting法を用いた腹腔鏡下胃局所切除術—Laparosonic Coagulating Shears(LCS)応用による適応の拡大

著者: 大上正裕 ,   大谷吉秀 ,   栗原直人 ,   小川信二 ,   熊井浩一郎 ,   久保田哲朗 ,   北島政樹

ページ範囲:P.49 - P.55

 教室では,胃癌のうち,①術前深達度診断m,②Ⅱa病変の場合25mm以下,③Ⅱc病変の場合15mm以下でUl(−)を満たしたものは,リンパ節転移の危険はほとんどなく,確実な局所切除で根治が得られると考え,1992年3月よりlesion lifting法による腹腔鏡下胃局所切除術を施行し良好な成績を得ている.当初は胃前壁病変のみを適応としていたが,Laparosonic Coagulat-ing Shears (LCS)の使用により,小彎,大彎の血管の処理が安全,容易に行えるようになったため,小彎や大彎の病変に対しても適応が拡大され,手術時間も短縮された.これまでに胃粘膜癌10例に対して本法を施行し,径50〜110mmの全層の切除標本が得られ,切離縁から病変部までの距離も6mm以上確保できた.低侵襲性と根治性を兼ね備えた本手術法は,LCSの使用により,さらに安全な手技になったと考える.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・1

腹腔鏡下胸部食道抜去術

著者: 八幡浩 ,   杉野圭三 ,   滝口透 ,   吉岡伸吉郎 ,   内田一徳 ,   土肥雪彦

ページ範囲:P.5 - P.11

はじめに
 腹腔鏡下外科手術の手技の特徴は,ビデオモニターを介する間接視と腹壁外からの非接触遠隔操作である.この手技を胸部食道抜去術に応用すると,食道裂孔からCCDカメラを後縦隔に入れて胸部食道をビデオモニター下に観察でき,腹腔鏡下手術用の鉗子で食道裂孔より手術操作が可能となる.
 私どもは,この腹腔鏡下手術の特徴を生かして,今までは禁忌と考えられてきた進行胸部食道癌に対する経食道裂孔的食道抜去術を行っているので報告する.

綜説・今月の臨床

実地臨床に役立つ食道癌悪性度のパラメーター—転移・再発の予知因子

著者: 渡辺寛 ,   加藤抱一 ,   日月裕司 ,   山口肇 ,   落合淳志

ページ範囲:P.57 - P.62

Ⅰ.はじめに
 現状では食道癌を治癒しうる治療法は手術治療が主体である.しかし近年,シスプラチンの臨床効果が今までにない制がん効果を示すことから,食道癌手術例に対しては,手術前に術後の転移・再発を予知することが臨床の場で要望されてきた.すなわち,術後早期に転移・再発をきたす症例にはあらかじめneoadjuvant療法を行ったあと手術を行う療法が効を奏する例に遭遇するからである.本稿では,実地臨床に役立つ転移・再発予知因子,役立つ情報などを中心に,そして新しい予知因子として手術時点の微小転移について言及する.

イラストレイテッドセミナー・10

はじめての胆嚢摘出術 LESSON 1

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.65 - P.73

 1.術者は左に立ち,剣状突起から臍上部に至る上腹部正中切開を加える.肝円索の右側で腹膜を切開し,開腹する.左側で開けると肝円索が垂れ下がって術者の視野をふさいでしまう.
 2.開創器,肋骨牽引鉤をかけて視野を展開する.

病院めぐり

兵庫県立成人病センター外科

著者: 石川羊男

ページ範囲:P.74 - P.74

 明石市は万葉の昔から歌人に親しまれ,現在は本州と淡路島を結ぶ世界一の懸け橋,明石大橋で知られる明石海峡に面する人口29万の地方都市で,兵庫県立成人病センターはその北,神戸市に接する位置にあります.当院は,昭和37年9月,財団法人兵庫県がんセンターとして神戸医科大学のキャンパス内に設立されたのを契機に,昭和46年4月には県に移管,昭和59年3月には兵庫県立成人病センターと改称し,現在地に設置されました.その後,第二期工事も終え,現在は16科,400床の県の基幹病院に成長しています.
 組織的には総長制のもと,検診センター,成人病臨床研究所を隣接,姫路市にある県立循環器病センター,県立高齢者脳機能研究センターを包括しており,本院は高齢化社会のなかで成人病に対処するため,癌を中心とした成人病の予防,専門的診断・治療,研究を目的に,兵庫県の対がん戦略拠点として活動する一方,各種学会の認定施設として研修医18名の卒後教育を独自の教育プログラムに則り行っています.

国立津病院外科

著者: 石田亘宏

ページ範囲:P.75 - P.75

 当院は,南に伊勢志摩国立公園,北は四日市市を中心とした臨海工業地帯を控え,三重県の県庁所在地である津市の南に隣接する久居市にある.昭和20年に発足以来,現在13診療科を標榜する300床の総合病院として地域医療に携わっているが,国立病院としての宿命である医師・看護婦の定員,予算の厳しさなどにより,周辺の病院の整備,水準の向上にも取り残されがちであり,三重県全域を診療圏とした高度の総合的診療を行うとともに,医療従事者の研修および養成にあたる名実ともに“National Hospital”として生まれ変わるため,平成10年に国立療養所静澄病院を統合して23診療科,500床の総合病院となる準備が進められている.
 病院の発足とともに開設された外科は,消化器外科と一般外科を主体にし,昭和56年10月,日本外科学会認定医修練施設に,また現在では日本消化器外科学会専門医修練施設,日本消化器病学会認定施設として認められている.日高直昭外科医長以下,三田正明,石田亘宏,金児博司医員の計4名で,入院40床,外来患者1日平均50名の診療に加え,学会発表や論文発表にも精力的に取り組んでいる.

外科研修医実践講座・19

虫垂炎・肛門外科をめぐるUp-to-Date

著者: 高重義 ,   鈴木篤 ,   大倉哲朗 ,   露木靜夫

ページ範囲:P.77 - P.81

 腹部急性疾患の代表である虫垂炎,外科外来のcommon diseaseである痔疾患の診断・治療の基本と最近の動きについて述べる.

メディカル・エッセー 「残りの日々」・1【新連載】

覧鏡喜老

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.82 - P.83

 私はいわゆる戦中派である.
 学徒出陣によって前線に赴いた友人たちがつぎつぎに戦死していた時代に,大空襲下の東京で正門前に下宿して医学部に通っていた.当時,都心で暮らすことはたいへんに危険だった.同級生は焼夷弾に直撃されて死ぬし,付属病院では火傷を負った被災者がつぎつぎに運びこまれては死んでいた.食べるものもなかった.

私の工夫—手術・処置・手順・5

膵腸吻合法

著者: 佐々木崇

ページ範囲:P.84 - P.84

 われわれの施設では,膵頭十二指腸切除後の再建は原則として今永法により行っている.必要に応じChild法を用いるが,双方とも再建に当たり最も注意を払うのが膵腸吻合である.いずれも端側吻合によっているが,この吻合におけるわれわれの考えを述べる.

臨床外科トピックス 消化器外科領域におけるサイトカインとその周辺・10

ケモカインによる癌治療の試み—IL-8遺伝子導入による抗腫瘍作用

著者: 広瀬国孝 ,   松島綱治

ページ範囲:P.85 - P.90

はじめに
 1989年,TepperらによるIL-4の癌細胞への遺伝子導入実験に端を発して,これまでに表1に示すサイトカインの抗腫瘍作用が遺伝子導入法により明らかにされた1).サイトカイン遺伝子導入癌細胞の増殖抑制は,産生されたサイトカインにより直接あるいは間接的に活性化されたTリンパ球(CD4,CD8)やマクロファージの癌組織への浸潤,殺細胞作用によると思われる.本稿では,筆者らが実施した好中球に対するケモカイン(走化性サイトカイン)の1つであるヒトIL−8の遺伝子導入実験を中心に,好中球の抗腫瘍作用に関して記述する.

臨床研究

早期胃癌2,000例—前半後半にわけての検討

著者: 細川治 ,   山崎信 ,   津田昇志 ,   渡辺国重 ,   山道昇 ,   海崎泰治

ページ範囲:P.91 - P.95

はじめに
 診断技術の進歩と検診ドックの普及に伴い,胃癌が早期に発見される機会が増加している.しかし早期胃癌治療数が1,000例をこえた施設はいまだ多くなく,高木1)の調査によれば1991年で13施設を数えるに過ぎない.当施設でも1985年に早期胃癌が1,000例を突破しており,その後の蓄積により1993年に2,000例の早期胃癌を治療することができた.この機会に早期胃癌を前半1,000例と後半1,000例に分けて,その推移を検討した.

臨床報告・1

大網悪性線維性組織球腫の1例

著者: 稲葉行男 ,   千葉昌和 ,   五十嵐幸夫 ,   林健一 ,   工藤邦夫 ,   渡部修一

ページ範囲:P.97 - P.100

はじめに
 大網を原発とする腫瘍はまれであり,平滑筋由来のものが多い.今回われわれは,大網原発の悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histio-cytoma,以下MFH)の1例を経験したので報告する.

血液型の変化を示した大腸癌穿孔性腹膜炎の1例

著者: 曽我良平 ,   長谷川潔 ,   小森義之 ,   蓮見昭武 ,   青木春夫 ,   長谷川岩三

ページ範囲:P.101 - P.104

はじめに
 最近われわれは,横行結腸癌に伴う大腸穿孔による汎発性腹膜炎,エンドトキシン・ショックの1例を経験したが,本例のABO式血液型は従来A型といわれていたが,腹膜炎手術時には血球はAB型を,血清はA型を示し,獲得Bと呼ばれる変化を呈していた.そこで,この血液型の変化と大腸穿孔性腹膜炎との関連,ならびに獲得Bに対する輸血時の対応法について,若干の考察を加えて報告する.

長期間の腸管嚢腫様気腫を伴ったS状結腸軸捻転の1例

著者: 橋本琢生 ,   老子善康 ,   山田裕治 ,   宮谷信行 ,   大村健二 ,   河原栄

ページ範囲:P.105 - P.109

はじめに
 腸管嚢腫様気腫(pneumatosis cystoides intes-tinalis,以下PCI)は,原因が確定されていない比較的まれな疾患である.最近われわれは,3年間の経過で著明に増悪し,S状結腸軸捻転を併存したため切除したPCIを経験したので報告する.

フィブリン糊瘻孔内充填が有効であった難治性瘻孔の3例

著者: 木村正美 ,   下川恭弘 ,   萩原正一郎 ,   廣瀬幸治 ,   岩井顯 ,   上村邦紀

ページ範囲:P.111 - P.114

はじめに
 消化器外科領域において,消化管の縫合不全や膵液瘻,胆汁瘻は適切なドレナージにより限局縮小するが,なかなか根治せず難治性瘻孔となることが時として経験される.一方,このような症例に対する治療法として,血液凝固ⅩⅢ因子の投与1,2)や生理的接着剤であるフィブリン糊の瘻孔内注入3-6)が既に報告されているが,後者に関しては,対象となる難治性瘻孔の頻度が少ないため多数の症例を検討した詳細な報告はなく,また,術後合併症を扱った管理マニュアルにも記述は少ない.今回著者らは,MRSAやPseudomonas感染を伴った大腸の糞瘻,十二指腸穿孔,膵液瘻の3例に対しフィブリン糊瘻孔内注入を行い,瘻孔の閉鎖に成功したので,若干の文献的考察を加え,その経験を報告する.

再々冠動脈バイパス術の1例

著者: 大原啓示 ,   山崎武則 ,   中山雅人 ,   小林淳剛 ,   山下満 ,   杉村修一郎

ページ範囲:P.115 - P.117

はじめに
 虚血性心疾患に対する外科治療として冠動脈バイパス術が行われているが,症例によっては遠隔期に再手術が必要になることがある.今回われわれは,再々手術を行い良好な経過を示した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

興味ある経過をとった甲状腺癌と副甲状腺癌の重複癌の1例

著者: 龍沢泰彦 ,   大竹由美子 ,   吉田政之 ,   山崎四郎 ,   高橋一郎 ,   瀬川安雄

ページ範囲:P.119 - P.122

はじめに
 原発性副甲状腺機能亢進症の原因のほとんどは腺腫か過形成であり,癌腫によるものはまれとされる.今回われわれは,副甲状腺癌による原発性副甲状腺機能亢進症に甲状腺乳頭癌が合併し,手術施行3年後に各々再発・転移を認めた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

閉塞性黄疸をきたした膵内胆管での限局性慢性胆管炎の1切除例

著者: 平野鉄也 ,   土谷利晴 ,   古山裕章 ,   川上義行 ,   安東勝宏 ,   門田永治

ページ範囲:P.123 - P.127

はじめに
 膵頭部領域において胆管狭窄をきたす原因としては,胆管癌,膵頭部癌,乳頭部癌,慢性膵炎などが報告されているが1,2),慢性胆管炎を原因として閉塞性黄疸をきたした症例については報告もほとんどなく,非常にまれと考えられる.今回,膵内胆管での限局性の慢性胆管炎が原因と考えられる閉塞性黄疸の1切除例を経験したので報告する.

十二指腸リンパ管腫の1例

著者: 中川国利 ,   佐藤俊 ,   臼井律郎 ,   豊島隆 ,   桃野哲 ,   佐々木陽平

ページ範囲:P.129 - P.132

はじめに
 十二指腸リンパ管腫は,十二指腸良性腫瘍のなかでも非常にまれな疾患1)であり,本邦ではいまだ18例の報告2,3)があるにすぎない.今回著者らは,十二指腸下行脚に発生したリンパ管腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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