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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科50巻13号

1995年12月発行

雑誌目次

特集 外科医のための緩和ケア

[エディトリアル]外科と緩和ケア

著者: 小山靖夫

ページ範囲:P.1541 - P.1543

はじめに
 「外科」は本来侵襲的な治療手段であるから,得られるメリットとのバランスにおいて功罪が評価される.疾患の治癒あるいは症状緩和や延命を目的として適応されるが,治療が行われる時点での患者の訴えは,早期がんのように症状のない場合から,痛みその他の強い症状をもつ場合まで様々である.一方,「緩和ケア」はもっぱら苦痛を取り除くことを目標としており,肉体的・精神的苦痛の訴えのある状態が対象であり,苦痛の緩和が得られなければ,その治療あるいはケアは評価されない.
 ところで,治療と緩和ケアの関係を“がん”について考えてみると,疾患の初期には症状はなく,治療の侵襲性は少ない(縮小手術,機能温存手術)ばかりでなく,治癒率も高い.ところが,疾患が進行すると症状が出現し,治療の侵襲性は大きくなり(拡大手術),長期化し(集学的治療),しかも治癒率は低いという「苦痛は多いがメリットを得るチャンスの少ない」治療がなされることになる.この状況から,治療に関連するquality of life(QOL)の評価や緩和ケアの必要性が議論されるようになってきたわけである.しかし,それでは「緩和ケアの必要度は疾患の初期の段階では少なく,終末期に近づくにつれて大きくなる」というように理解してよいであろうか.

緩和ケアにおける外科医の役割

著者: 山崎章郎

ページ範囲:P.1545 - P.1548

 緩和ケアの目的は末期の患者の肉体的・精神的苦痛をできる限り軽減し,患者の納得できる人生の完結を医師,看護スタッフ,ソーシャルワーカーなどのチームで支援していくことである.したがって,緩和ケアにおける外科医の役割とは,緩和ケアチームの一員として上記の目的達成のために,専門家としての外科医の知識や技術を駆使していくだけでなく,医師を職業とした1人の人間としての関わりが重要になってくる.そのような意識のもとに症状コントロールや誠実なインフォームド・コンセントを積み重ねていくことによって,患者に対するケアのみならず家族に対してのケアも可能な緩和ケアが成立するのである.

緩和ケアにおけるがん患者の痛みの治療

著者: 山室誠 ,   佐藤智

ページ範囲:P.1551 - P.1558

 近年,がん患者の痛みの治療の重要性が再認識され,多くの医療機関で積極的にモルヒネが用いられるようになったが,それは一重にWHOの癌疼痛治療法の功績といっても言い過ぎではない.しかし,現在でも依然として痛みに苦しんでいる多くのがん患者がいる.これを改善するには,投与方法・処方量や副作用対策などモルヒネによる癌性疼痛治療法に対する実践的な知識の向上はもちろんだが,神経ブロック療法の併用や緩和ケア体制が不可欠である.したがって,がん患者の痛みの治療は,緩和ケア体制のもとで継続的かつ総合的に行われるチーム医療と考えるべきである.

緩和ケアにおける各種身体症状のコントロール

著者: 前野宏 ,   恒藤暁

ページ範囲:P.1561 - P.1566

 もはや治癒の見込みのなくなった末期癌患者がまず第一に求めるのは,身体的な安楽である.しかし,実際には多くの末期癌患者が様々な症状によって苦しんでいるのが現状である.癌性疼痛はかなりコントロールできるようになってきたが,その他の症状については未だ不十分である.本稿では,痛み以外の症状コントロールについて全身症状,消化器症状,呼吸器・その他の症状に分けて述べた.特に緩和ケアにおいて重要なステロイド療法について解説した.

緩和ケアにおける対症療法としての外科治療

著者: 松岡寿夫

ページ範囲:P.1569 - P.1574

 癌患者に対する対症療法としての外科的治療も,ある条件が満たされれば癌性疼痛に対するモルヒネ剤と同様に苦痛を緩和し,患者のquality of life(QOL)を高めることができる.その条件とは,インフォームド・コンセント,手術の適応,時期,適切な手術法などである.まず病状について真実を知ったうえでの同意,自己決定が患者の人権を尊重するうえでも必要である.(1)消化管閉塞にはバイパス手術,人工肛門造設術,腸瘻,胃空腸吻合術,(2)黄疸に対してはPTCD,胆汁外瘻,内瘻造設術,(3)排尿障害に対しては腎瘻造設術,TUR,尿管皮膚瘻造設術,(4)出血・狭窄に対しては腫瘍摘出術,栓塞術,(5)脳圧亢進に対してはY-Pシャントなどが行われる.患者に病状を詳しく説明し,患者自身が手術を受けることを自ら決めることが大切である.手術後2週間ぐらいで退院でき,QOLの高められた3か月の生存期間があれば理想的な手術ということができる.

緩和ケアにおけるチームアプローチ

著者: 高宮有介

ページ範囲:P.1577 - P.1584

 緩和ケアにおいてチーム医療は重要な要素である.チームとは医師と看護婦のみならずコメディカルスタッフも含む.コメディカルスタッフとは,薬剤師,理学療法士,作業療法士,栄養士,医療ソーシャルワーカー,カウンセラー,音楽療法士,ボランティア,宗教家などである.チームは患者・家族を中心に,医師,看護婦,コメディカルスタッフの誰が上というわけではなく,同じ土俵で支え合えればよいと考える.また,他科の医師との連携も必要である.緩和ケアの医師の役割として,苦痛の評価や治療,病名・病状・予後の患者と家族への説明,予後判定,DNRの取り決め,遺族のケアなどがある.また,カンファレンスの必要性と,スタッフ自身のストレス,緩和ケアチームの活動についても言及した.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・12

胃・十二指腸

胃後壁側病変に対する腹腔鏡下胃全層楔状切除術

著者: 松井淳一 ,   尾形佳郎 ,   稲田高男 ,   菱沼正一 ,   神徳純一

ページ範囲:P.1533 - P.1539

はじめに
 われわれは,1992年8月以来,腹腔鏡下に胃全層を楔状に切除し,全操作を腹腔内で終了する腹腔鏡下胃全層楔状切除術(laparoscopic wedge—gastrectomy:LWG)を施行している.前壁側だけでなく,後壁側の病変に対してもLWGを行っている.ここでは,後壁側の病変に対するLWGについて紹介する.

イラストレイテッドセミナー・21

はじめての胃全摘術 Lesson 1

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.1587 - P.1598

 1.術者は右に立ち,剣状突起から臍左外側に至る上腹部正中切開を加える.肝円索の左側で腹膜を切開し開腹する.開創鉤をかけ,肝,ダグラス窩などの腹腔内検索を行う.
 2.十二指腸下行部左縁の漿膜を電気メスで切開する.この漿膜は胃結腸間膜前葉に移行する.ついでにKocher授動術を行い,膵頭後面No.13リンパ節の輪郭をつけておくとよい.

病院めぐり

関西労災病院外科

著者: 山崎恵司

ページ範囲:P.1600 - P.1600

 関西労災病院は,労働福祉事業団により1953年1月に開院されました.現在では18科670床となり,全国39の労災病院のなかで2番目に大きく,また尼崎市内では最大の規模であり,このうち95床が外科病床となっています.場所は尼崎市の西側に位置し,他の県立病院とともに市の基幹病院としての役割を果たしています.本年1月17日の阪神大震災で少なからず被害を受けましたが,幸い1月26日から手術を再開することができました.また,地震が原因ではありませんが,10年計画にて新病院を建築中です.
 外科医師数は高塚部長以下6名のスタッフと2名の研修医(大阪大学第2外科より)の8名にて構成されており,大島副院長,さらに外科研修を目的とする3名の集中治療部所属の医員を加えた計12名で診療に当たっています.特徴としては,通常の外科診療や手術以外に一般診断部門の検査(UGI,上部および下部消化管内視鏡検査,腹部血管造影検査,PTC)に携わっていることで,研修医の先生方には好評を得ています.

国立岩国病院外科

著者: 竹内仁司

ページ範囲:P.1601 - P.1601

 国立岩国病院の歴史は,海軍軍人傷病者の収容施設として昭和17年に創設された岩国海軍病院から始まる.終戦とともに厚生省に移管され名称を国立岩国病院と改め,現在580床の総合病院になっている.外科の歴史を振り返ると,昭和20年代は肺結核が猛威を振るい肺切除を中心にした外科であった.しかし,増加しつつある癌に対応するため,昭和31年にはいち早く癌診療センターが設置され,胃癌中心に癌の早期発見・早期治療に取り組むようになった.また,昭和30年代後半になってモータリゼーションの発達とともに交通事故による外傷が増加したため,整形外科,脳外科が外科より分離・創設された.さらに,昭和54年には心臓血管外科が創設され,昭和55年の救急救命センター設置へと発展した.また,昭和57年には地域医療研修センターが設置され,病診連携のなかで地域医師の生涯教育の一端を担っている.
 現在,外科は小長副院長をチーフとし,一般消化器外科5人,心臓血管外科3人,呼吸器外科2人,小児外科1人,研修医6人の計17人で構成されている.同一科内で広い診療分野を担当しているため,血管外科を応用した拡大手術などは日常的に行っている.また,消化管出血・食道静脈瘤・早期癌に対する内視鏡治療,気胸・胆石に対する胸腹腔鏡治療などの縮小手術を早くより取り入れ,学会で発表するとともに地域医療の発展・啓蒙にも一役買ってきた.

臨床外科交見室

「鼠径部の解剖」を理解するための理論

著者: 金谷誠一郎 ,   加藤大典 ,   齋藤信雄

ページ範囲:P.1602 - P.1603

 鼠径部は胎生期にguberna-culamの短縮,精巣の下降がみられる場所であり,他の腹壁の部位と比べ解剖を“複雑な”ものにしている.柵瀬氏が指摘した「腹膜前筋膜」(臨外50:219,1995),川満氏の疑問や知見「内精筋膜に続く筋膜が腹膜前筋膜」(臨外50:916,1995)などは鼠径部の解剖を“特殊な”ものとして捉えているので,腹膜前筋膜が鼠径部を離れるとどの膜に連続するのか,腹膜前脂肪組織はどの脂肪組織につながるのか,などのさらなる疑問が生じると思われる.
 それらの疑問に答え,鼠径部の解剖を他の腹壁の解剖と“同様に”に理解するには,発生学を基にした佐藤氏の理論1)を応用するのがよいと考える.佐藤理論(表1)を図示すると図1のようになる.(2)と(3)との間がneurovascular corridorと称されている2)(下腹壁動静脈もこの層の中を走行する).後腹膜にある精巣が鼠径部において腹壁の構造を保ったまま斜めに下降してくるため3)(文献3,p377),精巣動静脈,精管,精巣は腎筋膜前葉と腎筋膜後葉との間の層に存在した状態のままである.

多変量解析の不思議

著者: 佐藤錬一郎

ページ範囲:P.1604 - P.1604

 60歳近くなってからパソコンに手を染め,図表,生存率曲線,Kaplan-Meier,有意差検定と進んでいくうちに,雑誌のmultivariate analysisを用いた論文が目につくようになった.そこで私もHARUBAU−4のソフトを購入し,何とか使いこなせるようになったところで,当院の外科における1984〜1988年の5年間の進行胃癌治癒切除例62例の予後に関するデータを入力してみた.
 変数として採用したのはそのうちまず11項目(年齢,性別,腫瘤占居部位,腫瘤サイズ,肉眼型,組織型,深達度,転移リンパ節数,リンパ節転移レベル,胃切除範囲,リンパ節郭清レベル)で,すべて離散変数とし,転移リンパ節数では3個までと4個以上とに分けた.比例ハザードモデルを用いて算出した結果では,上記11項目のうち予後に関係ありと出たのは性別(95%信頼区間0.055〜0.667,99%信頼区間0.037〜0.987)と転移リンパ節数(95%信頼区間1.590〜24.163,99%信頼区間1.037〜37.056)であった.

メディカル・エッセー 「残りの日々」・12

献体

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.1606 - P.1607

 曽野綾子に「戒老録」という著書がある.
 40歳のときに,—自らの救いのために—と副題を付して上梓されたが,作家50歳の昭和57年に増補新版が発行されすでに60刷を重ねている.私の家内は彼女とちょうどおない年で,この本を愛読している.

私の工夫—手術・処置・手順・16

膵頭十二指腸切除再建時の有茎大網弁による膵腸吻合部と剥離血管系との分離

著者: 山藤和夫 ,   戸倉康之

ページ範囲:P.1608 - P.1608

 膵頭十二指腸切除後の膵腸吻合部の縫合不全は未だ完全には防止しえず,われわれの施設でも軽度の膵液漏も含めると約20%の発生率である.膵頭十二指腸切除後の膵腸吻合部は,総肝動脈などの剥離露出された血管系のすぐ近傍腹側に位置するため,縫合不全が起こるとこれらの血管系は漏出した膵液に曝される危険が大きい.
 そこでわれわれは,膵頭十二指腸切除再建時に有茎大網弁を用いて膵腸吻合部と剥離露出された血管系とを分離する方法を行っているので紹介する.

シリーズ早期癌を見直す・2 早期大腸癌・2

早期大腸癌診断の最前線—①X線診断

著者: 平川雅彦 ,   渕上忠彦

ページ範囲:P.1609 - P.1613

はじめに
 近年,本邦における大腸癌の増加は著しい.これは食生活の欧米化とともに大腸検査法の診断能の向上によるところが大きい.とくに大腸内視鏡検査は前処置法の改善,1人法による挿入技術の向上,電子内視鏡や拡大内視鏡の導入などにより診断能が向上した.一方,注腸X線検査は1971年の狩谷ら1)の報告以来,前処置法や撮影装置などに改善はなく,最近注目されている表面型大腸腫瘍の拾い上げ診断に関しても内視鏡検査に遅れをとっているのが現状である2).一方,筆者らは診断能の高い写真撮影を心掛ければ表面型腫瘍のX線描出も可能であり3,4),さらに病変の広がり,大きさ,肉眼形態の客観的な把握や深達度診断には,むしろ注腸X線検査のほうが有用である5,6)と報告してきた.
 本稿では,早期大腸癌の拾い上げ診断および深達度診断におけるX線検査の有用性と問題点について,われわれの成績を交え述べる.

臨床報告・1

乳管内視鏡で観察し得た右乳腺carcinoma with endocrine featuresの1例

著者: 下村洋 ,   劉星漢 ,   斎藤秀雄

ページ範囲:P.1615 - P.1618

はじめに
 非腫瘤性病変や血性乳頭分泌物の症例に対して,最近,乳管内視鏡が施行され有効性が報告されている.われわれは,血性乳頭分泌を主訴とする腫瘤非触知の30歳の女性に乳管内視鏡を施行し,病変部を明らかにしたのちquadrantectomyを施行した右乳腺のnoninvasive ductal car-cinomaを1例経験した.病理組織学的検査によりcarcinoma with endocrine featuresと診断されたので報告する.

腸閉塞で発症した肺癌肉腫多発性小腸転移の1例

著者: 小島靖彦 ,   松本尚 ,   竹川茂 ,   桐山正人 ,   津田宏信 ,   小林昭彦 ,   渡辺騏七郎

ページ範囲:P.1619 - P.1622

はじめに
 小腸の多発性悪性腫瘍は,比較的稀な疾患である1-4).われわれは,最近,右肺上葉の癌肉腫が原発巣で,その肉腫成分のみが小腸に多発性に転移をきたし,腸閉塞を発症した稀な症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

CTにて診断した成人腸重積症の2例

著者: 堀内淳 ,   平田賢一 ,   上田重春 ,   山本尚幸

ページ範囲:P.1623 - P.1626

はじめに
 成人腸重積症は小児と比較して急激なイレウス症状で発症することが少なく,慢性の経過をとることが多い1,2).また腫瘤などの器質的疾患が起因していることが多く3),とくに大腸の腫瘤の場合は悪性疾患の頻度が高い4,5).われわれは長期間にわたり間歇的腹痛を訴えた患者にCTを施行し,腸重積症と診断した2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

肝のinflammatory pseudotumorの1例

著者: 山本達人 ,   新庄泰孝 ,   瀬山厚司 ,   長谷川博康 ,   宮下洋 ,   舘林欣一郎

ページ範囲:P.1627 - P.1630

はじめに
 肝のinflammatory pseudotumor(以下,IPT)は,画像診断の進歩により報告例は増加しているが,われわれが検索し得た限りでは50数例を数えるにすぎないきわめて稀な炎症性腫瘍である.今回,術後の病理組織学的検索によってはじめて確定診断がついたIPTを経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

食道憩室に併存し著明な石灰化を認めた食道平滑筋腫の1例

著者: 中野芳明 ,   川崎勝弘 ,   川端雄一 ,   西敏夫 ,   相沢青志 ,   森武貞

ページ範囲:P.1633 - P.1636

はじめに
 食道に発生する良性腫瘍のなかで最も多いのは平滑筋腫であるが,食道憩室を伴った石灰化のある食道平滑筋腫の報告はごく稀である.今回われわれは,食道憩室に併存し著明な石灰化を認めた食道平滑筋腫の1例を経験したので報告する.

下肢静脈血栓症にて発症した特発性後腹膜線維症の1例

著者: 斉藤浩幸 ,   太田廣政 ,   飯島良明

ページ範囲:P.1637 - P.1640

はじめに
 後腹膜線維症は,後腹膜腔に原因不明の線維化が起こる比較的稀な疾患であり,線維化による尿管狭窄や閉塞による症状で発見されることが多い.今回われわれは,右下肢の血栓性静脈炎にて発症し,後腹膜腫瘍との鑑別を要した後腹膜線維症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

横行結腸に穿通した胃平滑筋肉腫の1例

著者: 八木真悟 ,   伴登宏行 ,   山田哲司 ,   北川晋 ,   中川正昭 ,   車谷宏

ページ範囲:P.1641 - P.1644

はじめに
 小腸,結腸原発の平滑筋肉腫の穿孔,穿通の報告は認めるが,胃平滑筋肉腫の穿孔,穿通の報告は少数で,なかでも横行結腸への穿通の報告例は認めず,きわめて稀と考えられる.当科では,1975年から1993年までに6例の胃平滑筋肉腫を経験したが,そのうちの1例で横行結腸への穿通を認めたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

両側大腿動脈瘤の1例

著者: 佐野功 ,   萩原博道 ,   奥井重徳 ,   伊坪喜八郎

ページ範囲:P.1645 - P.1648

はじめに
 真性大腿動脈瘤は末梢動脈瘤のなかでは最も頻度が高く,多くは動脈硬化に起因する.欧米に比べて,本邦では両側に発生した症例の報告はきわめて少ない.今回われわれは,両側大腿動脈瘤の1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

外傷性十二指腸壁内血腫を保存的に治療中,内視鏡検査が誘因になり十二指腸壁に穿孔をきたした1症例

著者: 松本俊彦 ,   大戸司 ,   嶋裕二 ,   大西一朗 ,   秋元学 ,   小山文誉

ページ範囲:P.1649 - P.1652

はじめに
 腹部鈍的外傷による十二指腸壁内血腫は比較的稀な疾患であり,最近,その治療法については保存的治療を推奨する報告が多くなっている2,5,6).最近われわれは,保存的治療の過程で十二指腸の穿孔を起こし,外科的治療で治癒し得た症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

小腸と瘻孔を形成した悪性神経鞘腫の1例

著者: 吉田正則 ,   金子巌 ,   高橋純一 ,   武鑓豊文 ,   吉川明 ,   植木稠雄

ページ範囲:P.1653 - P.1655

はじめに
 悪性神経鞘腫は神経鞘に原発する悪性腫瘍であり,頭頸部や四肢の末梢神経に原発するものはしばしば認められるが,骨盤内に原発するものは比較的稀である.また,悪性神経鞘腫を術前に診断することは困難であり,術後に病理学的に診断されることが多い1).われわれは,便潜血陽性を主訴として発見された小腸と瘻孔を形成した悪性神経鞘腫を経験したので報告する.

臨床報告・2

慢性関節リウマチを併存した脾リンパ管腫の1例

著者: 藤井正彦 ,   上山裕二 ,   大田憲一 ,   山野利尚 ,   答島章公 ,   広瀬隆則

ページ範囲:P.1656 - P.1657

はじめに
 慢性関節リウマチで加療中の74歳の女性に発生した脾リンパ管腫を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

脳挫傷5年後に発症したOgilvie症候群を疑わせる1例

著者: 阪本研一 ,   橋本高志 ,   中嶋日出雄 ,   平野高弘

ページ範囲:P.1659 - P.1661

はじめに
 脳挫傷5年後に発症したOgilvie症候群を疑わせる1例を経験した.本邦の報告28例の集計検討とともに報告する.

手術手技

臍ヘルニア手術における臍形成法の工夫

著者: 千葉庸夫 ,  

ページ範囲:P.1663 - P.1665

はじめに
 臍ヘルニアの手術は従来のように単に臍の下部で弓状に切開して,ヘルニア門を閉鎖し,創を縫合するのみでは満足なquality of life(QOL)を得られないことが多く,臍の形を考えて皮膚の形成を行う必要がある.われわれは,皮膚の切開,切除,縫合法を工夫することにより,臍ヘルニア術後の臍の外観をより自然体に近く形成する術式を施行しているので紹介する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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