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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科50巻3号

1995年03月発行

雑誌目次

特集 Q & A 人工呼吸管理とベンチレータ

ベンチレータの種類と基本的構造

著者: 安本和正

ページ範囲:P.287 - P.293

Q1 人工呼吸器は,その用途,機能などからどのように分類されますか?
 1.用途による分類
 人工呼吸器は,自発呼吸がないか,または自発呼吸では十分なガス交換が得られない症例に対して使用する生命維持装置である.しかし,人工呼吸器は呼吸不全例だけでなく全身麻酔下の症例にも使用されており,その用途によって,①通常使用(成人用,小児用),②麻酔用,③ポータブル(患者搬送時または在宅人工呼吸用),④高頻度換気用,⑤体外式などに分類されている(表1).

人工呼吸管理の適応と患者管理のポイント

著者: 増田純一

ページ範囲:P.295 - P.300

Q1 術後人工呼吸管理を必要とする病態,疾患にはどのようなものがありますか?
 術後の呼吸不全は,さまざまな原因により惹起される.まず,麻酔薬の影響による呼吸抑制,気管内挿管後の喉頭浮腫による気道狭窄など麻酔に起因する呼吸障害がある.また,手術操作に伴う術後の呼吸筋機能の低下や,それによる無気肺などがある.術中大量出血,長時間手術,侵襲の大きな手術などでは,術中の循環管理が術後の呼吸機能に影響を及ぼす.術後は創部痛などを含めたさまざまな因子が呼吸不全を助長する.術直後は問題がみられなくても,その後の感染や肺炎,それに伴うARDSなどや,肺塞栓の発症により呼吸不全をきたす場合もある.さらに,術前より肺機能低下がある患者や,高齢者などでは,より呼吸不全の生ずる危険性が高い.
 これらの病態,疾患のなかで,重症度の高い場合には人工呼吸管理の適応となる.また,術直後より予防的に人工呼吸を行うこともある.術後人工呼吸管理の必要となる病態は,低換気,低酸素血症,および予防的人工呼吸の3つに大別される.表1に術後人工呼吸管理を必要とする病態および疾患について示した.

人工呼吸管理の実際

著者: 關野長昭 ,   磨田裕

ページ範囲:P.301 - P.305

Q1 気道確保の方法とその管理は?
 気管内挿管をしない方法としては,マスクによるCPAP,最近では,nasal BiPAPが行われることがある.しかし一般的に,急性の呼吸不全に対しては気管内挿管が行われる.経口か経鼻によりチューブを気管内に留置する.気管切開は,呼吸管理が2〜3週間以上かかる場合や,意識障害などにより誤嚥の恐れが抜管後に予想される場合には積極的に行う1)
 それぞれの長所,短所を表に示す.

ウィーニングの実際

著者: 松川周 ,   橋本保彦

ページ範囲:P.307 - P.312

Q1 ウィーニングとは?
 ウィーニング(weaning)とは,もともと“離乳あるいは離乳させること”であり,機械的人工換気を受けている患者の換気条件を変えていって最終的に自発換気に移行させる過程が,乳児の離乳の過程を連想させることから,患者が人工呼吸器から離脱していく過程を“ウィーニング”と呼びならわすようになった.しかし,ここで注意しなければならないのは,乳児の離乳が時期が来なければ開始できないように,何らかの機械的人工換気の補助を受けている患者を人工呼吸器から離脱(ウィーニング)させる場合も,それなりの条件が整わなければ不可能な点である.
 患者が機械的人工換気を必要とするのにはそれぞれに理由・原因があり,根本原因が解決されていなければ人工呼吸器からの離脱の試みは患者にとって侵襲そのものになってしまう.われわれはしばしば“人工呼吸から離脱する”あるいは“ウィーニングを図る”といった表現をしがちだが,より正確には“患者の状態が改善して機械的人工換気を必要とする度合いが少なくなるのを見定めて,換気条件をより自発換気に近づけていく”のがウィーニングであるといってもよいであろう.さらに踏み込んでいえば,患者が人工換気を必要とする要因を1つ1つ無くしていく治療過程そのものがウィーニングであるともいえる.

呼吸管理と鎮痛・鎮静薬,筋弛緩薬

著者: 武田純三

ページ範囲:P.313 - P.317

Q1 人工呼吸管理に使用される薬物にはどんなものがありますか?
 人工呼吸患者は気管内挿管や内視鏡検査,カテーテルやドレーン挿入など痛みを伴う処置を多く受けるほか,気管内チューブに対する刺激,気管内吸引,術後患者での創部痛などがあり,疼痛への対策が必要である,また,呼吸困難感,不安・恐怖,不眠,四肢の抑制,会話ができないことへのいらだち,痛みを伴う処置への嫌悪などの精神的苦痛のほか,幻覚やICU症候群など精神障害を起こす.このような疼痛,不安,不眠,精神的苦痛に対して鎮痛・鎮静薬の投与が必要である.また,中枢抑制により呼吸仕事量の軽減と人工呼吸器との同調をよくし,ファイティングをなくして,人工呼吸を容易にしガス交換機能を改善させるためにも鎮痛・鎮静薬が使用される.
 術創や痛みを伴う処置に対しては鎮痛薬を,不安,不眠,処置への嫌悪や恐怖に対しては鎮静薬を,せん妄や薬物によって生じる薬原性精神症状に対しては向精神薬を主体とする治療など,治療目的により薬効の異なる薬剤を使用するが,これらの併用により効果が増強する.

小児の人工呼吸管理

著者: 羽鳥文麿

ページ範囲:P.319 - P.324

 Q1 小児外科領域で人工呼吸管理を行う際に注意すべき点を教えて下さい.
 1.小児は各発育段階による生理的特徴がある
 小児が成人と異なる点は,年齢やサイズが小さいことはもちろん,その発育段階によって呼吸機能が異なることが挙げられる.外科手術に伴って呼吸管理を要する場合には,手術侵襲や麻酔薬の呼吸への影響ばかりでなく,対象とする年齢層の呼吸機能を理解しておくことが大切である.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・3

腹腔鏡下食道アカラシア手術

著者: 小澤壯治 ,   大上正裕 ,   安藤暢敏 ,   今津嘉宏 ,   諏訪達志 ,   北島政樹

ページ範囲:P.279 - P.284

はじめに
 食道アカラシアに対する手術の目的は,通過障害の改善と,それにより生じる胃食道逆流に対する逆流防止機構の保持である.教室では1977年以後はJekler and Lhotka法(下部食道粘膜外筋層切開術+食道胃底部固定術)1)を標準術式としてきた.
 24症例すべてにおいて,術後に下部食道昇圧帯圧(LESP)および食道静止圧(RP)の低下と下部食道昇圧帯の幅(LESL)の延長が認められ,術後の24時間pHモニタリングにより逆流防止機構が十分働いていることが確認された2).教室では1994年1月以後,低侵襲性手術の導入を目的として,開腹手術で逆流防止効果を十分あげてきたJekler and Lhotka法を腹腔鏡下に施行している.

イラストレイテッドセミナー・12

はじめての幽門側胃切除術 LESSON1

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.325 - P.332

 1.術は右に立ち,剣状突起から臍上に至る上腹部正中切開を加える.臍外側にまで切開の延長を要することはほとんどないが,あれば臍左側に切り込む.肝内索の左側で腹膜を切開し開腹する.
 2.開創鉤をかけ,肝,ダグラス窩などの腹腔内検索を行う.

外科研修医実践講座・21

大腿ヘルニア手術のポイント

著者: 柵瀨信太郎

ページ範囲:P.334 - P.339

はじめに
 大腿ヘルニアは,鼠径ヘルニアと比べると少ない疾患であるが決して稀ではない.鼠径ヘルニアより嵌頓の危険性が高く,積極的に手術すべき疾患である.「大腿ヘルニアは,単に内鼠径ヘルニアが鼠径靱帯の下を潜って大腿に出たヘルニアである」などと誤って認識されることもあるので,まずは大腿ヘルニアに関する解剖を説明し,つぎに診断,術式について述べる.

メディカル・エッセー 「残りの日々」・3

THE RED SHOES

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.340 - P.341

高校2年生の孫娘に 「外国映画をみてその感想を英文で書け」という宿題がでた.
 「とても書けそうもないから,おじいちゃん,手伝ってやってくれない」
 母親から依頼の電話がある.
 医学論文ならともかく,映画の感想の英文など手におえそうもない.いろいろやりとりのすえ,結局引き受けることになった.

私の工夫—手術・処置・手順・7

総肝(胆)管十二指腸端側吻合術における経胃的胆管ドレナージ

著者: 細田洋一郎

ページ範囲:P.342 - P.342

 胆道再建術の1つである総肝管あるいは総胆管十二指腸吻合術は,良性の胆管狭窄,結石症あるいはレンメル症候群における付加手術など各種疾患で行われる術式である.これには,側々吻合および端側吻合があるが,前者(いわゆるlateral choledo-cho-duodenostomy)はsump syndromeの問題があるため,われわれは後者を行っている.この手術時,胆管十二指腸吻合部のドレナージを行うか否かは外科医の考え方にもよるが,われわれはより安全な手術ということから,縫合不全予防目的のための吻合部減圧ドレナージとして,またスプリントチューブとして胆管ドレナージを行っている.
 ドレナージチューブ挿入の経路として,PTCDが挿入されている場合はそのままの経肝的経路で留置しているが,挿入されていない場合には経胃的経路が簡便かつ安全と考えているので,以下この方法を紹介する.

病院めぐり

大津市民病院外科

著者: 山本剛史

ページ範囲:P.344 - P.344

 滋賀県の県都,大津市は,琵琶湖の南端に位置し,古くから,交通の要衝の地であった.現在も新幹線(京都下車にて10分),琵琶湖線(旧東海道本線),湖西線のJR各線,京阪電鉄および名神高速道路大津インターチェンジ,国道1号線,若狭に抜ける国道161号線と,交通の便にきわめて恵まれている.京阪神のベッドタウンとして人口の増加が著しく,現在人口27万を数え,4年後には市制100周年を迎える.
 大津市民病院の歴史は昭和12年に遡る.一市三か村組合立伝染病病院大津回生病院が創立され,この建物のなかに昭和23年,大津市立病院が開設された.昭和33年には総合病院の指定を受け,昭和39年に現在地への新築移転,増改築などを経て現在に至っている.現敷地はJR大津駅と膳所駅との間に位置し,国道1号線に面している.病院の特色としては,文字どおり「市民病院」であり,救急から成人病検診まで幅広く何でもやるというところであろうか.標傍病床数は490床であるが,伝染病結核病棟を除く一般病床440床は,常時ほぼ満床状態である.市制100周年記念に向けて,新病棟の建設計画が着々と進んでいる.

国立奈良病院外科

著者: 上田泰章

ページ範囲:P.345 - P.345

 奈良市は,修学旅行で訪れる東部の古い地域と大阪のベッドタウンである西部地域に分かれている.国立奈良病院は公園や神社仏閣に近く,東は春日原始林を背負った自然環境のよい位置にある.昭和43年に建築された病院で,基幹病院ではないため,部分補修を繰り返して一般診療を行っている.したがって,MRIは設置されておらず,最新の技術器具の導入は遅れているが,外科スタッフは医長2人,医員2人,レジデント3人で地域医療のニーズに応えるべく一生懸命に取り組んでいる.
 当院の病床数は330床(含伝染病棟30床)で,外科はそのうち60〜70床を占め,診断から最終の結果まで一貫して患者のcureとcareを目標としている.取扱う疾患は「癌」,特に乳腺,消化器が主体であり,乳癌は最近の3年間では316例と年間100例以上の手術例があり,10年前より乳房温存療法を開始し,1991〜1994年では全症例の30%を占め定乳切は5〜8%と減少し,qualityの高い手術を心掛け,平成6年の近畿外科学会では「乳房温存療法」のシンポジストとして上田(外科医長:京府医大35年卒)が参加した.20年来,奈良県北部の乳癌検診にメイン医師として参加し,病院では乳腺一次外来を月曜日午後に実施し,早期乳癌の発見への努力と一般女性に乳癌の啓蒙を行ってきた.

臨床研究

異常乳頭分泌に対する乳管区域切除症例の検討

著者: 鈴木俊二 ,   長尾和治 ,   西村令喜 ,   松田正和 ,   佐伯隆人

ページ範囲:P.347 - P.350

はじめに
 近年,乳癌罹患数の増加に伴って,その早期診断の重要性はますます高まっている.異常乳頭分泌を呈する乳癌の頻度は高くはないものの,そのほとんどが早期の乳癌であることから,早期の乳癌を診断する上で異常乳頭分泌は重要な所見である.一方,乳管区域切除術(microdochectomy)は乳癌を始めとした異常乳頭分泌を呈する乳腺疾患の診断に有用な手技として広く行われている.
 今回われわれは,異常乳頭分泌症例における乳管区域切除の診断的・治療的意義について検討した.

孤立性腸骨動脈瘤10例の臨床経験

著者: 小長井直樹 ,   張益商 ,   川口聡 ,   池田克介 ,   矢野浩巳 ,   石丸新

ページ範囲:P.351 - P.353

はじめに
 腹部大動脈瘤に合併した腸骨動脈瘤はしばしば経験されるが,腹部大動脈瘤を伴わない孤立性腸骨動脈瘤は比較的まれな疾患であり,自覚症状に乏しく破裂の危険性が高いといわれている.われわれは最近5年間に10例の孤立性腸骨動脈瘤を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

手術手技

食道癌術後転移性膵頭部癌に対して胃管温存膵頭十二指腸切除術を施行した1例

著者: 渡辺修 ,   土屋嘉昭 ,   筒井光廣 ,   梨本篤 ,   佐々木壽英

ページ範囲:P.355 - P.359

はじめに
 膵頭部領域癌に対する膵頭十二指腸切除術(PD)は標準術式であり,その安全性も向上してきている1).しかし,食道癌のため食道切除・胃管による再建が行われた症例の膵頭部領域癌に対しては,胃管の血行を考えると安易に行うことはできない.今回われわれは,食道癌術後の転移性膵頭部癌に対して胃管を温存してPDを施行しえた症例を経験したので報告する.

境界領域

胸壁全層欠損に対する有茎肋骨付き広背筋皮弁を用いた再建

著者: 澤泉雅之 ,   丸山優 ,   大西清 ,   林明照 ,   吉武道朗 ,   山崎史朗

ページ範囲:P.361 - P.365

はじめに
 胸部悪性腫瘍の外科的切除後や放射線療法後の胸壁壊死・遅発潰瘍などによる胸壁の深達性欠損では,呼吸循環器系機能の保持の問題を含め,その再建には苦慮する点が多い.また,全身状態の低下,年齢などの要素を加味した際には,さらに治療に抵抗することも知られている1,2)
 今回われわれは,広背筋皮弁に下位肋骨を付着させた有茎肋骨付き広背筋皮弁3,4)を用い,胸壁全層欠損症例の再建に応用した.本法の術式を紹介するとともに,胸壁欠損の再建について要諦を述べる.

臨床報告・1

肋骨原発骨肉腫の1例

著者: 白子隆志 ,   横尾直樹 ,   二村学 ,   棚橋忍 ,   岡本清尚 ,   田中卓二

ページ範囲:P.367 - P.370

緒言
 肋骨に発生する腫瘍は比較的まれであり,全国骨腫瘍患者登録によれば,全骨腫瘍中肋骨の腫瘍は約2%にすぎず,悪性腫瘍はその約4分の1とさらに少ない疾患である1).特に骨肉腫は長管骨に原発することが多く,肋骨に原発する骨肉腫は非常にまれである.最近われわれは,全経過ならびに病理解剖所見を観察できた肋骨原発性骨肉腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

長期経過観察され,肺転移をおこした浸潤型胸腺腫の1切除例

著者: 米山克也 ,   今田敏夫 ,   加瀬昌弘 ,   中山治彦 ,   松川博史 ,   鈴木弘治 ,   松本昭彦

ページ範囲:P.371 - P.374

はじめに
 胸腺腫は緩徐に発育し,その浸潤形態は胸膜,心膜,肺,大血管への直接浸潤および胸膜,心膜播種を特徴としている1)
 今回われわれは,19年間良性の縦隔腫瘍と診断し,経過観察中に肺に腫瘤を認め,原発性肺癌を疑った浸潤型胸腺腫肺転移の1切除例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

鰓性癌の1例

著者: 端裕之 ,   土佐紀夫 ,   内田茂樹 ,   孝橋慶一 ,   浮草実 ,   福地浩三 ,   西嶋義信 ,   島田全康

ページ範囲:P.375 - P.378

はじめに
 鯉性癌は胎生期の遺残組織である鯛原性組織より発生すると考えられるまれな疾患で,現在まで本邦では86例しか報告されていない.われわれは,頸部腫瘤を摘出後,病理学的検索により鯉性癌と判明した症例を経験したので報告する.

虫垂炎にて発症した同性愛者赤痢アメーバ症の1例

著者: 松田圭二 ,   斎藤英昭 ,   金沢孝満 ,   佐々木慎 ,   鈴木公孝 ,   武藤徹一郎

ページ範囲:P.379 - P.383

はじめに
 アメーバ赤痢は法定伝染病であり,1970年代には年間発生例は10例前後であったが,1980年より増加傾向を認め,1986年には140例を数えるようになった.しかし,虫垂炎で発症したアメーバー赤痢はまれである.また男性同性愛者と特定できたアメーバー赤痢患者では,HBウイルス抗原抗体陽性率は36%,梅毒反応陽性率は40%,HIV陽性率は5%と,男性同性愛者の性行為感染症として注目を浴びている.今回われわれは,虫垂炎で発症した男性同性愛の既往をもつ赤痢アメーバ症の1例を経験したので報告する.

横行結腸軸捻転症の1例

著者: 藤井正彦 ,   大塩猛人 ,   桐野有成 ,   松村長生 ,   石橋広樹 ,   江川善康

ページ範囲:P.385 - P.388

はじめに
 大腸における軸捻転症はS状結腸と盲腸がその大部分を占め1-4),横行結腸軸捻転症はきわめてまれである.今回われわれは,術前に本症と診断して手術を行った1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

主膵管断裂を伴った小児外傷性膵損傷の3例

著者: 末浩司 ,   上野孝毅

ページ範囲:P.389 - P.392

はじめに
 小児膵外傷は比較的まれで,その大半は鈍的損傷である.軽症例では保存的治療で治癒することが多いが,主膵管断裂を伴っているような重症例では保存的治療か観血的治療かに迷うことが多い.今回,過去6年間に超音波検査,CT検査上,主膵管断裂をみた自験例3例をもとに,小児主膵管断裂例の治療について検討したので報告する.

回腸原発平滑筋芽細胞腫の1例

著者: 正木裕児 ,   山本達人 ,   長谷川博康 ,   宮下洋 ,   舘林欣一郎 ,   山下吉美

ページ範囲:P.393 - P.395

はじめに
 消化管診断学の発達した今日においても,小腸腫瘍の術前診断は,その発生頻度が低いことや特徴的な臨床症状がないことなどから,未だ困難であるといわざるを得ない.今回われわれは,卵巣腫瘍の術前診断のもとで開腹し,術中に回腸腫瘍と判明,病理組織学的に平滑筋芽細胞腫と診断された1例を経験したのが報告する.

気管支閉鎖症の1切除例—本邦報告例72例の集計

著者: 畑真 ,   鈴木光子 ,   益田貞彦 ,   長谷祐治 ,   中川浩之 ,   城所仂

ページ範囲:P.397 - P.401

 気管支閉鎖症(bronchial atresia)は1953年,Ramsay1)が区域気管支の先天性閉塞による気管支粘液瘤(bronchial mucocele)の症例を初めて報告して以来,近年までまれな疾患とされてきた.本邦では1973年,Tsujiら2)の報告以来,われわれが調べえた限りでは72例の報告があるにすぎない.今回,気管支閉鎖症の1切除例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

MRIが受傷肢温存判定に有効であった重症電撃傷の1治験例

著者: 林達彦 ,   岡村直孝 ,   若桑隆二 ,   広田雅行 ,   田島健三 ,   和田寛治

ページ範囲:P.403 - P.407

はじめに
 電撃傷は生体に電流が流れることで発生したジュール熱による損傷で,特にミオグロビンなどの組織崩壊物に起因する急性腎不全の合併は致命的で,本邦での救命報告例は少数例のみ1-3)である(表2参照).
 われわれは,15万4,000ボルトの電撃を受け,急性腎不全,急性呼吸不全を合併した症例を経験したが,積極的な血液透析を行い,受傷肢の切断を行わずに救命しえた.この受傷肢温存の診断決定にはMRI検査が有効であった.本例に考察を加えて報告する.

横行結腸浸潤による下血で緊急手術を要した胃外発育型胃癌の1例

著者: 小村幹夫 ,   笠普一朗 ,   清沢雷太 ,   井下俊一

ページ範囲:P.409 - P.411

はじめに
 胃癌の発育伸展形式は胃壁内と胃内腔へ発育するタイプがほとんどであり,胃壁外へ発育する胃外発育型胃癌はまれである.われわれは,横行結腸浸潤による下血で緊急手術を要した胃外発育型胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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