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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科50巻4号

1995年04月発行

雑誌目次

特集 新しい膵手術のテクニック

十二指腸温存膵(頭)亜全摘術—膵頭部の局所解剖に基づいた術式

著者: 木村理 ,   永井秀雄 ,   武藤徹一郎 ,   金澤曉太郎

ページ範囲:P.427 - P.432

 機能温存を目的とした十二指腸温存膵頭切除を施行する際には,局所の解剖を熟知しておく必要があることはいうまでもない.われわれは,膵頭部領域の動静脈,胆管,十二指腸の詳細な解剖学的検討を行い,これを基にしたアーケード動脈を温存した膵(頭)亜全摘術の方法を紹介した.膵頭部の局所解剖に基づいた十二指腸温存膵(頭)亜全摘術は安全で信頼できる術式と考えられ,膵頭部の良性疾患だけでなく,粘液産生膵腫瘍のようなlow-grade malignancyにも試みられる術式の1つであろう.

膵区域切除術

著者: 高田忠敬

ページ範囲:P.435 - P.441

 膵臓の発生学的分類に加え,膵管像や臨床的切除の経験からの新しい膵区域分類を提案してきた.いわゆる膵頭部は十二指腸内側から膵頸部の右縁,すなわち前上膵十二指腸動脈の左縁までの間の部分までとする.この膵頭部を背側膵のproximal partと腹側膵のposterior partに分ける.proximal partを除く背側膵を中央区medial partと尾側区distal partに区分する.中央区と尾側区の境は上腸間膜動脈左縁とする.この新しい区域分けは,それぞれ個別に切除が可能であることが特徴で,ここではそれぞれの区域切除術のテクニックと注意点について述べた.

十二指腸温存膵頭切除術

著者: 加藤紘之 ,   本原敏司 ,   高橋利幸 ,   奥芝俊一 ,   道家充 ,   大久保哲之 ,   西部俊哉

ページ範囲:P.443 - P.450

 十二指腸温存膵頭切除術は主に慢性膵炎に対し行われ,優れた除痛効果を発揮する.本術式の特徴は,Kocher授動術を十分に行って膵臓を栄養する動脈アーケードをすべて確認しつつ操作を進めることにあり,これによって十二指腸および胆道の温存が可能となる.したがって,術後の機能温存が計られ,社会復帰率も高い.一方,低悪性度の膵頭部腫瘍にも本術式の応用が可能であり,機能温存下に目的を達することができる.本術式施行後の合併症として,下部胆道の狭窄が問題となるので,血行保持に注意し不必要な胆道の露出は避けるべきである.

幽門温存膵頭十二指腸切除術

著者: 渡部洋三

ページ範囲:P.451 - P.459

 膵頭十二指腸切除術後の再建術として1978年,Traversoらによって発表された幽門温存術式は,本邦でも鈴木らによって導人されて以来急速に普及してきている.この術式の要点は,セクレチンやGIPホルモンなどの酸分泌抑制ホルモンが豊富に存在する十二指腸球部を3cm以上温存し,術後の酸分泌亢進を抑えて吻合部潰瘍の発生を予防すること,十二指腸球部の機能を保持するため上十二指腸動脈と右胃動脈を温存すること,術後早期の胃内容停滞を防ぐために迷走神経幽門枝を可及的に温存し残胃には胃瘻を造設すること,などである.この術式の最大の利点は,栄養の回復がWhipple術に比べてよいことである.

慢性膵炎に対するFrey手術

著者: 中村隆司 ,   松野正紀 ,   荒井浩介 ,   武田和憲 ,   Frey,C.F.

ページ範囲:P.461 - P.466

 Freyにより考案された慢性膵炎に対する膵頭部芯抜き(coring-out)を伴う膵管空腸側側吻合術は.疼痛寛解率が高く,しかも侵襲が大きくないこと,術後合伴症の少ないことから,優れた術式と思われる.この術式の主な適応は,頑固な疼痛や合併症を有する膵管拡張例で,膵頭部の腫大,同部での膵管狭窄,膵石充満,小仮性嚢胞のあるもの,などである.本術式の要点は,①膵頭部の十分な授動,膵前面の露出,②上腸間膜静脈,門脈の確認とトンネリング,③主膵管の確認と切開,結石除去,④膵頭部のcoring-outと結石除去,⑤膵管空腸側側吻合術,である.

急性膵炎に対するnecrosectomy

著者: 林実夫 ,   川原田嘉文

ページ範囲:P.467 - P.474

 急性膵炎における外科的治療に関して,現在主流となっているnecrosectomyについて,手術適応,手術時期およびその手技とともに,術中・術後の合併症について述べた.急性膵炎の発症早期は,全身集中管理により可能なかぎり保存的治療で対処し,壊死巣感染が明らかとなった時点,あるいは病態の改善が得られないseptic状態の場合に外科的治療が適応となる.necrosectomyでは壊死組織の完全除去が重要であるが,実際には不完全になりやすく,術後local lavageあるいはopen drainageを施行することが必要である.しかし,local lavageあるいはopen drainageのどちらを選択するかに関しては,現在のところ一定した見解は得られておらず今後の課題である.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・4

胸腔鏡下食道アカラシア手術

著者: 川原英之 ,   桜井孝志 ,   捨田利外茂夫 ,   井上聡 ,   藤田博正 ,   宮崎洋史

ページ範囲:P.419 - P.423

はじめに
 食道アカラシアは「下部食道噴門部の弛緩不全による食物の通過障害や,食道の異常拡張などがみられる機能的疾患」1)と定義される.本症に対する外科的治療法は歴史的にさまざまな術式が報告されてきたが,その基本的な考え方は,まず第一に下部食道胃接合部における通過障害を確実に改善し,かつこの部の逆流防止機能を可能なかぎり温存または再建することである.この基本理念は,内視鏡下手術においても同様である.
 ここでは,われわれが行っている胸腔鏡下粘膜外筋層切開術(Heller変法)について述べる2)

イラストレイテッドセミナー・13

はじめての幽門側胃切除術 LESSON2

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.477 - P.489

 10.膵頭部前面の組織を,胃幽門部に向かってクーパー剪刀でゆっくりと削ぎ上げていく.このとき,前立ちは手で胃幽門部を挙上してやる.やがて右胃大網静脈が現われる.血管の周囲を,刃先を少し開いたクーパー剪刀で丁寧に剥離する.静脈は非常に脆く,すぐ裂けてしまうので,あまりムキになって剥離せず,ある程度露出できたら榊原直角鉗子を通す.

外科研修医実践講座・22

甲状腺疾患診療のポイント

著者: 門田俊夫 ,   笹壁弘嗣 ,   若山昌彦

ページ範囲:P.491 - P.495

はじめに
 筆者が研修医時代,“ワクワク”しながら最初の甲状腺手術を指導してもらったのは1975年,ちょうど20年前である.つい昨日のことのような気がする.それから今日まで,この分野での進歩を見守ってきた.診断上の進歩で最も特筆すべきは,超音波検査である.筆者は外来診察室に超音波装置を常備し,甲状腺疾患を診るに当たって,聴診器のような感覚で用いている.かつて全盛のシンチグラムは,Plammer病のような特殊な例を除き必要なくなった.甲状腺機能も血中ホルモンが直接計測できるようになり,甲状腺機能亢進症などの治療が大変細かくできるようになった.穿刺吸引細胞診が特殊な医療機関のみで行う検査ではなく,一般的な検査となってきたのも最近のことである.しかし,甲状腺の手術自体は,この20年間ほとんど進歩はみられていない.

メディカル・エッセー 「残りの日々」・4

横浜と私

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.496 - P.497

 医者になって約15年間東大病院で外科を学んだのち,横浜市大病院で13年,再び母校で8年,外科を教える立場にあった.
 退職後はちょうど10年間,神奈川県の医療センターの管理職になっていたから,医師としての勤務年限は東京における15+8=23年と横浜における13+10=23年がちょうど等しい.

私の工夫—手術・処置・手順・8

陥没乳頭合併乳輪下膿瘍の手術

著者: 神雅彦

ページ範囲:P.498 - P.498

乳輪下膿瘍は小外科疾患として軽視されがちだが,切開排膿のみでは再燃することが多く,20年余の病歴を有する例すらある.特に重度の陥没乳頭を合併している例では難治性であり,手術に際しては,根治はもとより美容的にも配慮した術式が要求される.われわれは,これら重症な17症例19部位に対し,拘縮,破壊した乳頭基部乳管の完全摘出と,乳頭形成により良好な結果を得ているので,その手技につき述べる
 原則として全麻下で行う.切開線は放射状とし,できるだけ乳輪有色部におさまるようにする.乳輸弧状切開は、乳輪が不整形なうえ,妊娠などで乳房が肥大すると意外に目立つので行っていない.膿瘍または瘻孔の直上乳輪縁から乳頭中央部までの皮膚切開をおいたあと(図1—a),陥没の最深部に牽引糸をかけ前方に引き出すようにする.メッツェンバウム剪刀を用い,罹患乳管開口部から深部の軟らかい乳腺組織が露出するまで,瘢痕短縮化した部を円筒状または円錐状に剥離,摘出する.操作中,吸引,電気凝固止血をていねいに行い,健常と思われる乳管の犠牲を最小限にするよう努める.この際,皮下の膿瘍腔や瘻孔の合併切除も望ましいが,必ずしも必須ではないと考えている.

シリーズ 早期癌を見直す・1【新連載】 早期胃癌・1

早期胃癌の病理学的問題点—癌深達度と癌組織型

著者: 中村恭一 ,   三上哲夫 ,   迫間隆昭

ページ範囲:P.499 - P.504

はじめに
 現在,早期胃癌は日常の診療において多く発見され治療され,その治療後の予後も極めて良好であり,早期胃癌は不治の病ではなく完全治癒の確率の高い癌であることは人口に膾炙されている.
 この早期胃癌がどのようにして定義されたかというと,それは粘膜内癌そして粘膜下組織浸潤癌の発見が少なかった時代に,術後の予後良好な癌ということを前提としてなされた.すなわち,早期胃癌は「リンパ節転移の有無とは無関係に,癌深達度が粘膜下組織までの癌」と定義された.その早期癌の術後5年生存率は約85〜95%であり,現在においても早期癌の定義についてはあまり問題はないものと思われる.

病院めぐり

香川県立中央病院外科

著者: 塩田邦彦

ページ範囲:P.506 - P.506

 香川県立中央病院は,平成6年夏の渇水で一躍有名になった四国の玄関,高松市の閑静な文教住宅地にあります.当院は戦後間もない昭和20年10月25日に設置された日本医療団高松病院を前身とします.日本医療団が解散された昭和22年8月1日付で香川県へ移管され,香川県立中央病院として発足しました.当初は30床で開院した本院も,新築と増築を繰り返し,3階建の外来棟,12階建の北病棟,10階建の南病棟を有し,病床数631床の大規模病院に発展しました.現在は,香川医大の教育関連病院でもあります.
 病院発足とともに開設された外科は,昭和20年代は基礎を築き,昭和30年代には結核を中心とした胸部外科が始まりました.昭和42年に石合副院長が着任し,心臓外科が始まり,中川胸部外科主任部長,故津田主任部長が続いて着任するにいたり,心臓血管外科,胸部外科,消化器外科の3本柱が確立されました.現在,外科は石合(副院長),中川(胸部外科主任部長),西原(一般外科主任部長)以下,常勤10名,岡山大関連研修医4名,香川医大関連研修医1名の合計15名の大所帯です.

市立旭川病院外科

著者: 安保義恭

ページ範囲:P.507 - P.507

 旭川市は北海道のほぼ中央に位置し,人口36万人の北海道第二の都市である.街は石狩川や大雪山系など,緑豊かで四季変化の多彩な自然にめぐまれ,北海道観光の拠点となっている.
 当院は昭和5年,旭川市立診療所として開設され,昭和12年に市立旭川病院と改称,昭和20年に金星町に移転し今日に至っている.現在は病床数627床(一般病床482床,精神病床100床,伝染病床45床),診療科18科,医師43名の地域基幹総合病院である.病棟は数回にわたり増改築を繰り返してきたが,施設の老朽化が進んだため,平成7年の完成の予定で新病棟建築中である.移転後はよりよい環境で質の高い医療が可能になると期待している.

臨床外科交見室

「腹腔鏡下手術」の大流行に思う

著者: 丸田宥吉

ページ範囲:P.508 - P.508

 世を挙げて腹腔鏡下手術が大流行である.外科に関連する学会には必ずといってよいほど腹腔鏡下手術が主題に取り上げられているし,雑誌でも頻繁に特集が組まれている.いつの時代でも「はやりすたり」があるもので,手術に関しても,一時大流行した手術がいつの間にか忘れ去られてしまうことがあり,なかには痔核に対するホワイトヘッド手術のように,有害な悪い手術とのレッテルを張られることさえある.一方,長い年月の間,標準術式として生き残るものもある.腹腔鏡下手術は果たしてどの道を辿るのであろうか,興味深いものがある.
 日本で最初に腹腔鏡下手術の対象になったのは胆嚢摘除術だと思うが,当院でも平成4年3月30日に第1例を施行してから170例を超えた.最初は3時間近い時間を要したが,今では40分から1時間以内で済むようになった.これといった合併症もなく,教科書的には認識している「遺残胆嚢管症候群」も35年間の臨床経験で一度もお目にかかっていないので,あまり問題にならないだろう.これより以前には皮切5cm以下のミニラパロトミーで施行していたが,所要時間もほとんど同じで,今では腹腔鏡下手術にとって代わった.手術点数は開腹手術で10,800点,腹腔鏡下手術で16,300点と差があるが,開腹手術のほうが3〜4日退院が遅れるので,患者の負担はほぼ同額となる.

外科卒後研修と救急医療

著者: 前田正之

ページ範囲:P.509 - P.509

 外科医を目指す医師の卒後研修はどうあるべきか.これは昭和40年代の医学部紛争以来,医局制度の改革も含めて議論されてきているが,それぞれの大学医局や研修病院が独自に行っており,統一されたものがないのが実情であろう.
 昭和40年代後半の私の在籍した大学医局では,入局1年目は大学病院で外科の初期研修を受け(麻酔科6か月を含む),その後は医局の関連病院で2〜3年過ごし,5年目くらいで大学病院の病棟主治医となり,あとは何らかの研究グループに属して研究生活に入るか,大学医局を出て一般市中病院などに勤務するのが一般的であった.私の場合は病棟主治医を終えて直ちに現在の病院に勤務することになったが,上司や同僚の厚意で週2回の研究日をもらい,大学の研究室で動物実験を主とした研究を続けることができた.

綜説・今月の臨床

手術侵襲の評価

著者: 小川道雄

ページ範囲:P.511 - P.518

Ⅰ.はじめに
 手術は生体に損傷を与える.この損傷には出血挫滅,阻血,機能障害など多くの病態が含まれる.ミクロのレベルでみれば,損傷は生体組織,細胞の破壊である.手術をはじめとして,外傷,熱傷ショックなどは生体に損傷を与えるが,これを広く侵襲,ないし生体への侵襲とよんでいる.一方生体は,侵襲に対して内部環境を回復して生き抜くための反応を起こす.その結果,呼吸,循環,代謝,内分泌,免疫など種々の機能に大きな変化が起こる.この生体の恒常性を保つための反応が生体反応である.
 生体反応が生体に負担を強いることを考えるとき,手術侵襲はできるだけ小さいことが望ましい.異なる術式があるとき,われわれは結果が同じなら,侵襲の小さいほうの術式を選択する.そこで,手術侵襲を客観的に定量することが求められる.本稿では,手術侵襲の評価について,その現状を展望してみたい.

新しい手術器具

腹腔鏡手術における着脱容易一点式吊り上げ鉤の開発

著者: 大谷泰一 ,   澤田俊夫 ,   河村裕 ,   武藤徹一郎 ,   加地利雄 ,   永井秀雄

ページ範囲:P.521 - P.524

はじめに
 腹腔鏡下胆嚢摘出術は,一般に二酸化炭素ガスを用いた気腹法で行われることが多いが,横隔膜損傷による気胸1)や,中肝静脈損傷2)などの合併症を併発した場合,直に開腹して対応するというのが一般的である.しかし,気腹法から吊り上げ法に簡単に移行できれば,開腹しなくても対応できるのではないかと考えた.現在,日本での腹壁吊り上げ法は,皮下を2か所で吊り上げる方式が主流であるが,器具の取り付け,取り外しが面倒であり,吊り上げに使用する器具が鉗子操作の邪魔になるなどの欠点がある.
 われわれは,簡単に取り付け,取り外しのできる一点式吊り上げ鉤を開発したので紹介する.

臨床報告・1

半月状線ヘルニアと誤診した,欠損歯牙に起因すると考えられた腹壁膿瘍の1治験例

著者: 平野鉄也 ,   古山裕章 ,   川上義行 ,   安東勝宏 ,   土谷利晴 ,   三木康平

ページ範囲:P.525 - P.528

はじめに
 誤嚥された魚骨や歯牙などの異物は,消化されるか自然に排泄されることが多いが,稀に消化管を穿通し,腹膜炎,腹腔内膿瘍,肉芽腫の形成などをきたすことが報告されている1-3)が,腹壁に穿通し膿瘍を形成したという報告はほとんどみあたらない.今回われわれは,欠損した歯牙に起因すると考えられ,半月状線ヘルニアと誤診した腹壁膿瘍の1例を経験したので報告する.

総肝管穿孔によりbilomaを生じた総胆管結石症の1例

著者: 谷田信行 ,   杉本友則 ,   三木啓司 ,   六田暉朗 ,   喜多青三 ,   広瀬千恵子

ページ範囲:P.529 - P.532

はじめに
 胆嚢は別として,胆道系の自然穿孔(spontane-ous perforation)は稀で,特に成人例の総肝管穿孔の報告はほとんどない1).一方,胆汁性仮性嚢胞であるbilomaの報告例は増加している.われわれは,術前,胆嚢周囲膿瘍と診断し,術中,総肝管穿孔によるbilomaと判明した症例を経験したので報告する.

腰背部に皮膚瘻を形成した原発性虫垂癌の1症例

著者: 中尾篤典 ,   佐藤四三 ,   中島晃 ,   鍋山晃 ,   岡田康男 ,   阪上賢一

ページ範囲:P.533 - P.536

はじめに
 原発性虫垂癌は比較的まれな疾患で,特徴的な所見に乏しい.今回われわれは,皮膚瘻が初発症状であった虫垂癌を経験したが,われわれの調べた範囲では皮膚に瘻孔を形成した虫垂癌の報告は本邦でわずか11例にすぎず,非常にまれな症例であると思われるので,若干の文献的考察を加えて報告する.

血漿交換が有効と思われた激症型A群溶連菌感染症の1例

著者: 中山隆 ,   鈴木勝一 ,   渡辺治 ,   岡庭誠 ,   糸井達哉 ,   高木規夫

ページ範囲:P.537 - P.540

はじめに
 ショック,多臓器不全,急速に進行する軟部組織感染症を特微とする重篤なA群溶連菌感染症は,toxic shock like syndromeなどと称される1,2).われわれは,この激症型A群溶連菌感染症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

S状結腸癌膀胱浸潤に対する膀胱全摘および回腸代用膀胱による再建術—本邦初の経験

著者: 山本秀伸 ,   木村純 ,   亀田博

ページ範囲:P.541 - P.544

はじめに
 大腸癌においては,隣接臓器浸潤がある場合でも遠隔リンパ節や血行性転移が比較的少ないという報告があり1),大腸癌が他臓器まで伸展した場合では積極的な合併切除が根治性を高めるうえで不可欠である1,2).しかし,その一方,合併切除による臓器機能消失を考慮すれば,quality of life(QOL)をなるべく低下させない再建術を行うこともまた重要であると考える.
 今回筆者らは,S状結腸癌膀胱浸潤例に対し膀胱全摘後,回腸Sパウチによる膀胱置換術(排尿式代川膀胱造設術)を施行し,良好な成績を得たので報告する.

男性乳癌の4例

著者: 隅田英典 ,   丹羽篤朗 ,   柴田和男 ,   佐々木信義 ,   角岡秀彦 ,   小林俊三

ページ範囲:P.545 - P.548

はじめに
 男性乳癌は比較的稀な疾患であり,発生頻度は全乳癌の約1%といわれている1).われわれは,過去8年間の乳癌手術症例138例のうち4例の男性乳癌を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

発症後21日間を経過した特発性食道破裂に対し有茎大網片被覆を施行した1治験例

著者: 中野秀貴 ,   及能健一 ,   赤羽弘充 ,   渡辺健一 ,   澤田浩美 ,   河田聡 ,   新田昌弘

ページ範囲:P.549 - P.552

はじめに
 特発性食道破裂において,発症後の経過が長い症例では破裂部の直接縫合閉鎖の成績は不良であり,その予後は必ずしも良好ではない.われわれは,食道破裂後21日間を経過した症例に対し,破裂部の縫合閉鎖と有茎大網片被覆を行い,縫合不全もなく治癒した1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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