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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科50巻5号

1995年05月発行

雑誌目次

特集 画像診断が変わる? MRIの新しい展開

MRIの新しい展開

著者: 新津守 ,   板井悠二

ページ範囲:P.567 - P.572

 近年の技術開発力の飛躍的向上により,MRIにおいては新手法が次々に開発され,日常の臨床MRI診断の場でも徐々に実用化されつつある.高速撮像法では繰り返し時間の短縮による1秒程度のスキャン時間を可能にしたfast gradient echo法や,位相エンコード方法の改良によるfast spin echo法が挙げられ,格段の時間分解能を達成したダイナミックスキャンや,MR胆管造影,MR尿管造影などの各種の臨床応用も開発された.エコープラナー法も実用化の域に入ってきており,現在のホットなトピックスの1つであるfunctional imagingもこれらの高速スキャン法の普及によるところが多い.また,ユニークなコントラストを提供するMTC法や高分解能かつ高画質イメージを提供する新しいサーフェスコイルの開発についても概説する.

体部のMRアンギオグラフィー

著者: 周藤裕治 ,   加藤卓

ページ範囲:P.573 - P.580

 MRアンギオグラフィー(MRA)は,MRIにより,非侵襲的に血管や血流情報を検索する手段の総称であり,ここ数年の解像力,描出力の進歩は目ざましい.現在,MRAは,主に体動が少ない頭部で使用され,良好な画像が得られるため,病変のスクリーニングとして日常の検査法に応用されている.しかし,体部領域(特に腹部)は,体動による画像劣化があり,広く臨床応用に至っていなかった.しかし,この領域においても良好な画像が得られつつある.本稿では,腹部を中心に体部のMRAの方法と特徴,およびその臨床的意義について述べた.

直腸癌の深達度診断—Endorectal coilを用いたMRI

著者: 川本清 ,   寺本龍生 ,   渡邊昌彦 ,   川野幸夫 ,   西堀英樹 ,   酒井信行 ,   藤井俊哉 ,   山本聖一郎 ,   千葉洋平 ,   北島政樹 ,   今井裕

ページ範囲:P.581 - P.587

 直腸内に挿入できるサーフィスコイルを用いたMRI(Endorectal coil MRI)で,直腸癌の術前深達度診断,リンパ節転移の診断を試みた.このMR画像はT2強調画像にて,超音波内視鏡と同様に正常腸管壁の層構造を描出できる.腫瘍の病理組織像がある程度推定可能であり,癌の壁外浸潤にはT1強調画像が,壁内浸潤にはT2強調画像が有用であった.深達度診断の正診率は86%であった.また,傍直腸リンパ節転移の診断では,通常の方法と比較して小さいリンパ節の同定が可能であり,特異性70%,感度78%の成績を得た.直腸内コイルを用いたMRIは,超音波内視鏡,CTの長所を合わせ持つ優れた検査法である.

MRマンモグラフィー

著者: 吉本賢隆 ,   霞富士雄

ページ範囲:P.589 - P.594

 乳腺疾患に対するMRI診断法は,MRIのハード,ソフトの両面での技術革新によって新しい展開を迎えている.各種の高速スキャン法,脂肪抑制撮像法,3D撮像法の開発に加えて,MIP処理,サブトラクション法などの画像処理技術,造影剤(Gd-DTPA)の利用が新しいMRマンモグラフィーの発展に寄与している.MRマンモグラフィーでは,乳癌の乳管内進展や間質浸潤,多発癌などの癌進展を描出できることが明らかにされており,従来の画像診断法とは違った全く新しい診断分野が開拓されている.今後,乳房温存療法など治療の縮小化が進むことが予想されるが,MRマンモグラフィーはこのような臨床のニーズに大きく寄与しうることが期待される.

MR尿管撮影などの腎尿路MRIの新しい展開と発想

著者: 石田肇 ,   野垣譲二 ,   岡田清己

ページ範囲:P.595 - P.600

 腎尿路系においては,MRIは従来の画像診断の補助的手段として用いられているのが現状であろう.通常のspin echo法による腎尿路系MRIの限界と特性を示し,それらがどのように改善されつつあるか,文献的総括を試みた.高速撮像法,脂肪抑制画像,Gd-DTPA造影ダイナミックスタディなどは腎尿路系MRIにも応用が試みられている.中でも最近のendorectal coilによる骨盤内臓器の解像力の向上は,前立腺の画像診断にとって大きな期待をもって迎えられた.しかし,早その限界が指摘されつつある.強度のT2強調像の撮影が可能になってきていることから,MR胆管造影法と同様の原理を応用したMR尿管撮影が今後の新しい展開の1つとして考えられる.

MR胆道膵管造影

著者: 馬場真木子 ,   水谷良行 ,   似鳥俊明 ,   蜂屋順一 ,   跡見裕

ページ範囲:P.601 - P.605

 胆膵疾患の診断において,直接造影検査はきわめて重要な地位を占めている.しかし,これらの検査は,患者にとって何らかの苦痛を伴い,時には重篤な合併症も認められる.近年,MRIの進歩は著しく,血管系では,MRアンギオグラフィー1)として有用性が報告されるようになった.そこでわれわれは,本法を用いて非侵襲的に胆管膵管を描出し(MR cholangio-pancreatography,以下MRCP),直接胆道造影と対比することにより胆膵疾患診断における有用性を検討した.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・5

食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術—Laparosonic Nissen Fundoplication

著者: 宗像康博 ,   林賢

ページ範囲:P.559 - P.565

はじめに
 従来法では大きな開腹創が必要とされるが,腹腔鏡下に開腹術と同等な手術手技が可能な疾患には,腹腔鏡下手術は非常に有用である.食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下手術も,腹腔鏡下胆嚢摘出術と同様に,患者にとって非常に利点の多い手術方法である.食道裂孔ヘルニアは欧米では比較的多い疾患であり1),腹腔鏡下の手術手技もいくつか報告されているが,本邦では手術適応となる食道裂孔ヘルニアが少ないこともあり,腹腔鏡下手術の症例報告はまだ少ない.本稿では,われわれが若干の工夫を加えて実施した腹腔鏡下Nissen Fundoplicationの手技を紹介する.

シリーズ 早期癌を見直す・1 早期胃癌・2

早期胃癌診断の最前線—1)電子内視鏡による深達度と病変範囲の診断

著者: 小黒八七郎

ページ範囲:P.609 - P.613

はじめに
 電子内視鏡は,ファイバースコープに代わって内視鏡の主力器械になってきている.従来のファイバースコープに比較して,電子内視鏡は,臨床面においても研究面においても,ファイバースコープよりは優れたいくつかの長所がある.ここでは,主題に沿って,電子内視鏡が胃癌の深達度と病変範囲の診断になぜ有意義かについて述べるが,そのために,まず,電子内視鏡の性能がファイバースコープに比較してなぜ優れているかについて述べる.

早期胃癌診断の最前線—2)超音波内視鏡

著者: 村田洋子 ,   鈴木茂 ,   喜多村陽一 ,   笹川剛 ,   光永篤 ,   小熊英俊 ,   遠藤昭彦 ,   鈴木博孝

ページ範囲:P.614 - P.618

はじめに
 消化管の表在性癌に対して内視鏡治療,縮小手術を積極的に選択するには,正確な深達度診断が不可欠である.すなわち,リンパ節転移率の少ない粘膜内に留まる癌であるか,粘膜下層へ浸潤した癌かの鑑別が重要となる.従来より,超音波内視鏡(以下EUS)を使用して癌腫の深達度診断を行ってきた.しかし潰瘍,潰瘍瘢痕合併例において,正確な深達度診断は困難であった.近年,高周波超音波プローブが開発され,これを使用することにより粘膜筋板の描出が可能となった1,2).そこで,癌腫により粘膜筋板が破壊されたか否かによりm,sm癌の鑑別を行い,深達度診断がより正確に行えるかどうかについても検討した.

イラストレイテッドセミナー・14

はじめての幽門側胃切除 Lesson3

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.619 - P.630

 23.No.7,8,9,12リンパ節の郭清:これらのリンパ節は網嚢後壁の構成メンバーの1つである後腹膜(ちなみに,網嚢後壁は横行結腸間膜前葉,膵前面被膜,後腹膜からなる1枚の膜である)の裏に“へばりついて”いる.したがって,その郭清は後腹膜をリンパ節ごと剥がしていくことによりなされる.原則として肝十二指腸間膜から左胃動脈根部に向かって進める.

外科研修医実践講座・23

胆石症治療のUp-to-Date

著者: 松田正道 ,   渡辺五朗 ,   鶴丸昌彦

ページ範囲:P.631 - P.635

はじめに
 体外衝撃波胆石破砕療法(ESWL)を中心とする非手術的治療法の進歩と腹腔鏡下胆嚢摘出術の登場に伴い,胆石症の治療はここ数年で大きな変革を遂げた.胆石症は基本的に良性疾患であり,また無症状例がきわめて多く,その治療の選択に際しては患者を前に頭を悩ますことも多い.
 本稿では,まず胆嚢結石症の治療に関し,腹腔鏡下胆嚢摘出術を中心とした最近の動向について述べ,ついで胆管結石症の治療を含めたわれわれの見解を述べることにする.

メディカル・エッセー 「残りの日々」・5

怖い夢

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.636 - P.637

 私は夜泣きをするこどもであった.夢をみては「怖いー,怖いー」 と泣き叫ぶ,夜驚症(nightmare)であったのだろう.泣いているときに目覚めていたかどうかは覚えていないが,たびたびのことであったので 「手をにぎってあげるから,もう怖くないよ」 というやさしい母親の言葉とともに夢の内容を,現在でもありありと思い出すことができる.
 その怖い夢は,自分の体が大きくふくれだして風船のようにパンクしそうになるものであった.

私の工夫—手術・処置・手順・9

腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術

著者: 森田信人

ページ範囲:P.638 - P.638

 成人の内外鼠径ヘルニアおよび大腿ヘルニアに対する手術法はBassini法,McVay法に代表されるが,術後の疼痛,安静や再発などの問題が議論の的となっている.
 1994年4月より保険診療が許可された本法は,メッシュを鼠径部の腹腔側に固定してヘルニアを修復するもので,従前の術式を補うものと考えられた.以下,本法における私の工夫を列記してみる.

病院めぐり

国立仙台病院外科

著者: 國井康男

ページ範囲:P.640 - P.640

 国立仙台病院の前身は仙台陸軍病院宮城野原分院であり,昭和20年12月1日,厚生省に移管され国立仙台病院として発足した.以来,国立病院の基幹病院として,東北地方における国の政策医療を中心とした高度先進的医療に重点を置き,さらに地域医療センター的役割を担える医療機関として,質の向上と機能の充実をはかるべく努力している.
 当院には24の診療科があり,88名の医師が勤務しているほか,レジデント,研修医が39名おり,そのほか東北大学をはじめ他の医療機関からの応援や研究に従事する医師を加えると,総数は130名を越えている.病床数は690床,1日平均入院患者数は632名,1日平均外来患者数は1,120名である.

小山市民病院外科

著者: 今達

ページ範囲:P.641 - P.641

 当院は,栃木県南部の小山市の駅から車で5〜6分,徒歩で約20分の市街地にある.小山市は,宇都宮市,足利市につぐ栃木県内で第三番目に大きな都市で,人口約143,000人,東北新幹線の停車駅である.東北線水戸線,両毛線などの鉄道も通っており,道路は国道4号線,新4号線,50号線が交差する交通の要所であり,人口増加の著しい活気溢れる都市である.
 小山市民病院は昭和21年,小山町国民健康保険直営の診療所として21床で開設されたのが始まりで,昭和25年,同町立国民健康保険病院と改称され38床となった.小山町は昭和29年に市制が敷かれ,昭和43年に小山市立病院として99床に増床された.人口の増加とともに病院も増築され,昭和45年に134床に,昭和55年に地区医師会病院を吸収合併,名称も小山市民病院となった.そして,その後の第二次増改築を経て,昭和63年,現在の353床の県南地区唯一の市立病院となった(人間ドック12床,結核8床,伝染病棟10床,ICU 7床を含む).

臨床研究

下肢閉塞性動脈硬化症における術後精神障害の発生とその対策

著者: 清水剛 ,   石丸新

ページ範囲:P.643 - P.647

はじめに
 術後精神障害は,一過性とはいえ,発症すると術後管理の妨げとなり,回避したい術後合併症の1つである.術後精神障害の発生要因に関しては様々な因子が挙げられているが,特に高齢者においては痴呆をはじめとする知的精神機能の低下が術後精神障害の一因と考えられる場合も少なくない.下肢閉塞性動脈硬化症をはじめとする動脈硬化性血管疾患の手術症例には高齢者も多く,著者らは,手術症例に対する知的精神機能の評価および知的精神機能と術後精神障害の発生との関連性を重視してきた.
 今回,下肢閉塞性動脈硬化症の術後精神障害について検討し,その対策として術前に脳代謝改善薬である塩酸ビフェメランを投与し,術後精神障害の予防効果について検討を行った.

閉経前乳癌に対する腹腔鏡下卵巣摘除術の有用性—医療および経済性の検討

著者: 權雅憲 ,   山田修 ,   上辻章二 ,   井上知久 ,   駒田尚直 ,   上山泰男

ページ範囲:P.649 - P.651

はじめに
 閉経前の乳癌症例に対しての両側卵巣摘除術(卵摘)は,乳癌組織におけるホルモンレセプターの測定とタモキシフェン(TAM)を初めとするホルモン製剤の開発,化学療法との関連などから,その適応に関しては議論の多いところである.1992年に,Early Breast Cancer Trialists' Col-laborative Group(EBCTCG)1)は,75,000例の各種術後補助療法の臨床試験結果を大規模に収集および解析し,閉経前患者における卵摘の有効性を示した.
 このEBCTCGの調査結果から,閉経前乳癌の術後補助療法の中心である化学療法に代えて,卵摘を再考すべきという意見がある2).今回われわれは,閉経前進行乳癌症例に対して腹腔鏡下に卵摘術を施行し,その非侵襲性と簡便性,さらには経済性を検討した.

臨床報告・1

肝転移巣の同時切除を施行した進行乳癌の1例

著者: 尾浦正二 ,   櫻井武雄 ,   吉村吾郎 ,   玉置剛司 ,   梅村定司 ,   粉川庸三

ページ範囲:P.653 - P.656

はじめに
 大腸癌肝転移の治療には,現在積極的に切除が行われる傾向にある.しかしながら乳癌の肝転移に関しては,その予後が不良であることから,手術が治療法として選択されることはきわめて稀である.
 今回われわれは,肝転移を有する進行乳癌症例に対し,原発巣と転移巣の一期的切除を施行し良好な結果を得ている1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

低体温脳分離体外循環下に摘出した下大静脈-右心房内後腹膜腫瘍塞栓の1例

著者: 中野昌彦 ,   亀井隆史 ,   益田宗孝 ,   川内義人 ,   許斐康煕 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.657 - P.660

はじめに
 今回われわれは,下大静脈から右心房にまで腫瘍塞栓を形成するという,きわめてまれな進展を示した後腹膜平滑筋肉腫の患者に対し,低体温脳分離体外循環下に腫瘍塞栓を摘出し,良好な結果を得たので報告する.

S状結腸間膜窩ヘルニアの1治験例

著者: 斎藤節 ,   佐々木栄一 ,   斎藤肇 ,   渡辺晃

ページ範囲:P.661 - P.664

はじめに
 開腹歴のないイレウス症例に際して,まず考慮すべき疾患として内ヘルニアがある.今回著者らは,内ヘルニアのなかでも極めてまれとされるS状結腸間膜窩ヘルニアを経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

腹膜・肝転移巣で成熟化(retroconversion)をきたしたと思われる卵巣奇形腫の1例

著者: 増子洋 ,   新井英樹 ,   坂本隆 ,   藤巻雅夫 ,   伏木弘 ,   泉陸一

ページ範囲:P.665 - P.670

はじめに
 イレウスは外科医にとって日頃よく遭遇する疾患の1つであるが,その原因が成熟化(retrocon-version)をきたした卵巣奇形腫(ovarian tera-toma)の腹膜播種であることは,きわめてまれである.また,経過中に卵巣奇形腫の肝転移をきたし,その後7年間に及び変化なく経過し,おそらく肝転移巣でもretroconversionをきたしたと考えられる症例を経験したので報告する.

気管腕頭動脈瘻4例の手術経験

著者: 奥村伸二 ,   藤岡宗宏 ,   大田豊隆 ,   中筋徹也 ,   緒方洋

ページ範囲:P.671 - P.675

はじめに
 気管腕頭動脈瘻は気管切開の重篤な合併症である.その発生頻度は,諸家の報告によれば,気管切開の0.2〜4.0%1-3)に起こるとされ,決してまれではなく,しかも致死的な病態である.救命のためには外科的処置が必要であるが,術後の縦隔炎,再出血,脳循環の維持などの解決すべき問題がある.
 われわれは4例の気管腕頭動脈瘻を経験し,その成績を検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

横行結腸間膜に発生した原発性平滑筋肉腫の1例

著者: 西律 ,   鶴海博 ,   水谷均 ,   宇山理雄

ページ範囲:P.677 - P.681

はじめに
 腸間膜原発の悪性腫瘍はまれにみられるが,横行結腸間膜原発の平滑筋肉腫の1例を経験したので報告するとともに,腸間膜原発平滑筋肉腫の本邦報告例に考察を加えた.

臨床報告・2

急性虫垂炎様の症状を呈した大網放線菌症の1例

著者: 橋本良造 ,   鈴木勝一 ,   中山隆 ,   渡辺治 ,   原川伊寿 ,   松浦聖睦

ページ範囲:P.682 - P.683

はじめに
 急性虫垂炎の診断のもとに手術を施行したところ,大網に化膿性腫瘤を認め,同部より放線菌塊(Druse)を組織学的に証明しえた大網放線菌症の1例を経験したので報告する.

臨床外科交見室

医師の需給問題

著者: 町田清朗

ページ範囲:P.684 - P.684

 読者の大半は若い外科勤務医と推定され,これから述べることにはあまり関心がないかも知れない.しかし,医師需給問題は,10年先,20年先の自分自身に関係してくることであり,欧米諸国においては,すでに1970年代から医師の過剰が問題になっているという.
 では,わが国の現況はどうであろうか.昨年末,厚生省の示した『医師需給の見直し等に関する検討委員会意見』と『平成5年医療施設調査・病院報告』をもとにこの問題を考えてみたい.まず,全国届け出医師数は平成2年211,797人,平成4年219,704人で7,907人(3.8%)の増加である.全国の医大,医学部の入学定員は現在7,715人であるから,その約2分の1に相当する数の医師が毎年増えていることになる.しかも,全医師数の6割以上は勤務医であり,年々増加の傾向にある.一方,病院数は減少し,平成4年で1万台を切り,平成5年にはさらに199施設減り,9,844施設となった.診療所も数こそ1%の微増を示したものの,有床は3%の減,無床は2.5%の増となっている.つまり,医師数は勤務医を中心にドンドン増えているが,病院数は減少し,開業も目に見えては増えていないということである.

兵庫県南部地震の救護活動に参加して

著者: 中島晃

ページ範囲:P.685 - P.685

 1995年1月17日未明の兵庫県南部地震発生から約9時間後に被災地へ入った.道路の陥没・亀裂,倒壊した家屋,倒れかかったビルなど,その状況は想像を絶するほどであり,まさに廃墟状態であった.今回,兵庫県南部地震の救護活動に参加して感じた,災害時の救護活動における問題点を以下に挙げてみたい.
 災害の種類,場所,時間によって違いはあるだろうが,大都市直下型地震における災害では,まず緊急車両の移動の問題が挙げられる.これには,道路の破損状況も影響するが,主に停滞している一般車両が問題となる.姫路から神戸までは車で1時間余りで到着するのが普通だが,高速道路が不通のため,迂回路へ車が集中し,サイレンを鳴らして走っても3時間半ほどの時間を要した.現地でも同様で,患者搬送に相当の時間を費やした.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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