icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科50巻6号

1995年06月発行

雑誌目次

特集 外科臨床医のための基本手技

消毒法

著者: 洲﨑兵一

ページ範囲:P.701 - P.704

 この数年来の外科手術手技の進歩は著しく,腹腔鏡下手術をはじめとして,従来の常識をくつがえす革命的変化を遂げつつある.消毒法においてもそれは例外ではない.優秀な消毒剤の開発はもとより,皮膚消毒,手指消毒も,今までの習慣的,経験的方法から大きく変化しようとしている.手指消毒時間の短縮,手洗い用ブラシの見直し,術前剃毛の見直しなどがその例である.一方,感染症にしても,日和見感染,B型肝炎,C型肝炎,AIDS,MRSAなどの登場が大きな社会的問題となっている.これらのことを踏まえて,手術スタッフからの感染予防,患者自身からの汚染防止,手術室などの環境清浄化について,その概要を述べる.

小外科手術のための縫合・結紮法

著者: 納賀克彦

ページ範囲:P.705 - P.707

 縫合と結紮は手術手技の基本であり,すべての手術はこれらの手技の積み重ねである.小外科手術における縫合,結紮に際しても,上記のことを考慮に入れて施行すべきである.

局所麻酔法

著者: 石埼恵二

ページ範囲:P.709 - P.712

 局所麻酔法は日常診療で非常によく用いられる,意識のある状態での麻酔法である.意識があるのでコミュニケーションがとれ,全身に及ぼす影響が少なく安全性が高い.しかし,麻酔効果が不確実なことや,まれにアレルギーや痙攣などの合併症が起こるので,救急処置の行える場所で施行する必要がある.局所麻酔法は,浸潤麻酔(表面麻酔を含む)と神経ブロック(腰椎麻酔,硬膜外麻酔を含む)に分類される.1回投与量はキシロカインで200mg,エピネフリン添加で500 mgとされている.追加投与は1時間後に半分量以内にとどめ,血中濃度が高くならないように注意する.神経ブロックをうまく利用すると,少量の局所麻酔薬で最大の効果を期待できる.脊椎麻酔では,低血圧,呼吸抑制に注意する.

急性創の治療

著者: 岸清志

ページ範囲:P.713 - P.716

 創傷は一般外科医が救急の場でしばしば遭遇する外傷であり,止血,創の無菌法,損傷の修復など,創傷治療の基本的原則に基づいた局所治療を行わなければならないが,同時に症状の軽重により,局所の治療のみでよいのか,呼吸,循環など全身管理を要するのかを判断して治療にあたることが肝要である.また,顔面など醜形を残してはいけない部位,機能温存が求められる部位の治療にあたっては形成外科的処置が要求される.咬傷については,創のdébridementと開放創が原則であり,熱傷は小範囲なら外来通院治療が可能であるが,広範囲熱傷は輸液,感染対策など全身管理が要求され,専門施設への搬送が必要である.

動・静脈穿刺法

著者: 椎川彰

ページ範囲:P.719 - P.726

 静脈穿刺法は,静脈血採血や翼状針やカニューレ留置による輸液,輸血,薬剤投与などに用いられる.また,内頸静脈などの中心静脈カニューレ挿入により中心静脈圧も測定可能である.一方,動脈穿刺法は,動脈血採血やカニューレ留置による持続的動脈圧測定などに用いられる手技である.動・静脈穿刺法は,患者を治療するうえで最も基本的な手技の1つであり,どのような状況下でも速やかに,かつ的確に行えるようにしておかなければならない.

体腔のドレナージ

著者: 坂本昌義

ページ範囲:P.727 - P.731

 胸腔のドレナージ方法や心嚢のドレナージ方法の基本的な概念は,胸部外科医以外の外科医ほどよく知っておくべきである.なぜなら,彼らがこのような診断を正しく下したときには,すでに応急処置が必要な状態であることが多いからである.また,術後の腹腔内膿瘍の手術は危険で気が滅入るものであったが,いまや経皮的なドレナージでその多くに対処できるようになってきているのが現状である.

導尿法

著者: 村上信乃 ,   五十嵐辰男

ページ範囲:P.733 - P.736

 外尿道口からカテーテルを膀胱内に挿入して採尿する導尿,あるいは経皮的に膀胱を穿刺して採尿する経皮的恥骨上穿刺は,いずれも尿を直接膀胱から採取する方法である.検査目的,あるいは自排尿不能な状態での一時的ないしは持続的な処置として広く行われている.特別な道具もいらず,比較的安全に行われるが,正しい手順で施行しなければ尿路損傷,腸管損傷などの合併症が生ずる危険性がある.また,持続的処置としてのカテーテル長期留置では,尿路感染症などの合併症が生じやすいので,その対策も重要である.

胃・腸管内チューブ挿入法

著者: 堀明洋 ,   山口晃弘 ,   磯谷正敏 ,   金祐鎬

ページ範囲:P.737 - P.740

 胃・腸管内チューブ(チューブ)挿入の基本的方法と管理,注意事項について概説した.チューブは治療,検査の目的で日常臨床で頻繁に挿入されている.挿入経路の解剖を理解し,細心の注意をもって挿入する.特に患者との協調がスムーズな挿入には不可欠であり,事前に必要性・方法をよく説明しておく必要がある.特別な道具もなく行えるが,挿入・留置は患者にとって苦痛なものである.適応をしっかりと見定め,不要な挿入や留置は厳に慎むべきである.

気道確保

著者: 宮城良充

ページ範囲:P.743 - P.748

 外科医にとって気道を確保することは,心肺蘇生時の気道確保,麻酔時の気道確保,術後の患者管理のための気道確保と重要な基本手技である.また,近年,プレホスピタルケアの充実が叫ばれており,院外でいままで使用されていなかった様々な気道確保用のエアウェイが挿入された患者をわれわれが引き継ぐ機会が増えており,これらの器具にも正しい知識を持っておく必要がある.ここに述べる種々の方法のうち,気管内挿管は迅速に行え最も確実であるので,外科医ならずとも医師として修得しておくべき技術である.

心肺蘇生法

著者: 伊藤靖 ,   奈良理 ,   森和久 ,   金子正光

ページ範囲:P.749 - P.755

 呼吸器系や循環器系の機能が種々の原因で著しく低下したり,停止した場合,その機能を体外から何らかの手段で補ってやらなければ生命を維持することはできない.この手段のことを,心肺蘇生法(cardiopulmonary resuscitation)という.しかし,その目標臓器は心臓や肺臓ではなく脳であり,心肺機能を何らかの手段で維持することで脳機能を保護することが目的である.そのため,心肺脳蘇生法(cardiopulmonary cerebral resuscitation)ともいわれる1).本稿では,心肺蘇生法の基本手技である人工呼吸法,心マッサージ,除細動の手技手順について述べる.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・6

胸腔鏡下食道憩室切除術

著者: 杉村好彦 ,   斎藤純一 ,   加藤典博 ,   川村隆夫 ,   石田薰 ,   佐々木章

ページ範囲:P.693 - P.698

はじめに
 Scope Surgeryは,器具の開発と手技の進歩,そして術者のアイデアで,その応用範囲がかなり広まってきた.最近では,悪性疾患も鏡視下あるいは鏡視下補助手術でなされるようになってきた.われわれは,1993年に中部食道憩室症例に対し胸腔鏡下に切除術を施行し,良好な結果を得たので1),その手術手技を中心に述べる.

シリーズ 早期癌を見直す・1 早期胃癌・3

早期胃癌の内視鏡的治療—現況と将来—1)内視鏡的粘膜切除(EMR)

著者: 竹下公矢 ,   谷雅夫 ,   井上晴洋 ,   神戸文雄 ,   斎藤直也 ,   遠藤光夫

ページ範囲:P.757 - P.762

はじめに
 膨大な外科手術成績の集積から,早期胃癌は良好な予後が期待されるのが現状である1).そして,リンパ節転移の可能性が少ない,より早期の胃癌に対しては,QOLの向上を目指してさらに侵襲の少ない治療法が選択されるようになってきている.その1つの方法として,外科・内科領域でも内視鏡治療が導入され,胃癌研究会,日本消化器内視鏡学会2)において,正式にその治療効果が判定されようとしている.今回は,教室における内視鏡的粘膜切除術(以下EMR)の現状と成績について述べることにする.

外科研修医実践講座・24

癌患者のターミナル・ケア

著者: 露木靜夫 ,   鈴木篤 ,   大倉哲朗 ,   高重義

ページ範囲:P.765 - P.769

 末期癌患者のホスピス・ケアなどが注目されているが,実際は大部分の癌患者が一般病院で末期を迎えている.特に術後再発癌患者は,外科医が末期まで診ている場合が多く(表),その対応に最も苦悩しているのが日本の外科医であろう.
 そこで本稿では,外科医が外科病棟で末期癌患者のケアを行うという前提にたって,その対症療法をまとめてみた.

メディカル・エッセー 「残りの日々」・6

反省猿

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.770 - P.771

 グリム童話の「じゅみょう」という話を,金田鬼一訳『完訳グリム童話集5』(岩波文庫)から抄録してみよう.
 神様が,人と驢馬と犬と猿の4種の動物の寿命を一律に30年にしようと思って,それぞれを呼んで希望をきく.驢馬は

私の工夫—手術・処置・手順・10

胃全摘出時のTA55-3.5を用いた食道切断法

著者: 山森積雄

ページ範囲:P.772 - P.772

 胃全摘出術に際して胃近位側より切除を進めると,解剖学的には順行性に剥離することになり,腹部大動脈周囲リンパ節郭清もen bloc郭清が可能になる.この胃近位側の剥離に際して,われわれはまず最初に,食道をTA55-3.5を用いて切断しているが,この方法について述べる.

イラストレイテッドセミナー・15

はじめての幽門側胃切徐術 Lesson4

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.773 - P.783

 35.ペッツ(中山式胃腸吻合器)をかけて胃を切除する.

「幽門側胃切除術」に対するコメント

著者: 武藤輝一

ページ範囲:P.784 - P.787

はじめに
 著者の篠原 尚氏は,胃癌に対する幽門側胃切除術について記載しておられる.基本的な胃切除やリンパ節郭清の方針については異なるわけではないが,細部においては私が施行しているところと異なるところも多い.また,胃癌の局在や進行度によって術式は異なる.ここでは,主病巣の局在が胃の下部(A)にあるか,あるいは一部胃の中部(M)にも及んでいる癌腫で,粘膜下層(sm)あるいはそれ以上に達しているもので,第3群リンパ節までの郭清(D3)が必要と考えた症例に対する術式について述べることとし,粘膜内癌(m)と診断している場合については,必要のあるところで述べることとする.

病院めぐり

青森市民病院外科

著者: 小舘昭示

ページ範囲:P.788 - P.788

 当院の歴史は約66年前に溯ります.昭和3年9月,本邦最初の産業組合法による組合病院「東青病院」として発足,当時としては画期的な広区域医療を目指しました.その後,戦災による焼失,市への移管による「青森市民病院」との改称,移転などを経ながら,昭和39年5月には総合病院として認可され,中核病院として円熟をみました.しかし,建物の老巧化に伴い,昭和58年8月から現在地での新病院分期工事を着工し,同62年5月に落成しました.これに端を発し,増床,診療科を整備するなどしつつ基幹病院として発展し,現在に至っています.
 診療科は,内科3科,精神科,小児科,外科,整形外科,脳神経外科,心血管外科,皮膚科,泌尿器科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,理学診療科,放射線科,麻酔科,歯科の18科からなり,ベッド数は553床で,そのうち外科は77床を有しています.常勤医師は51名ですが,それ以外に非常勤医師の応援を随時得ています.

小田原市立病院外科

著者: 福田淳

ページ範囲:P.789 - P.789

 南に相模湾,西に箱根連山,北に丹沢山塊を望む風光明媚,気候温暖な現在地に,昭和33年,9診療科,病床数110床の近代的総合病院として小田原市立病院は開設された.その後,昭和47年に増改築され病床数345床となり,神奈川県西部地区の基幹病院として地域医療に貢献してきた.しかし,患者数は年々増加の一途をたどり,施設が手狭となり,また医療の進歩に対応するためにも高度医療機器の導入が不可欠となり,3年間かけて改築工事が行われ,昭和59年,病床数417床の現病院が完成した.昭和63年,厚生省臨床研修指定病院となり,現在17診療科で診療にあたっている.
 外科の病床数は50床であるが,そのほか小児外科用に随時小児病棟内の病床を使用している.外科のスタッフは穂坂隆義院長を含め9名であるが,地域医療のニーズに応えるべく,一般・消化器外科,循環器外科,呼吸器外科とはば広く診療と研究に取り組んでいる.

臨床外科交見室

地域医療におけるがん治療医の役割

著者: 辻谷俊一

ページ範囲:P.790 - P.790

 がんは,今ではあらゆる人が知る大変一般的な疾患となった.高齢化社会でがん患者が増加したことに加え,社会的にがんは隠すべき疾患でなくなってきたためだろう.これまで,がん患者を抱えた家族は患者本人にがんであることを隠し,医師もそれに協力してきたが,それでは患者に十分な説明や治療が行えなくなってきた.
 こうして,がん患者は大学病院やがん専門病院などの大型病院に溢れている.がんは治療効果の如何に関わらず長い診療期間を必要とし,またがんの告知を受けた患者はこれまで以上の精神的ケアを必要とする.したがって,がんの診断,治療,追跡,そして終末期医療のすべてを大型病院だけで行うことはとても無理な話である.1人の医師,1つの病院の能力を伸ばす努力も重要であるが,今後がん診療の質を地域的に向上させるためには,開業医の活躍が必要である.すでに,診断に関しては,多くの開業医の手でがんが発見されており,さらに患者の追跡,治療に関しても役割を担うことが可能と考えている.

確立されてきた生体部分肝移植術

著者: 新田耕作

ページ範囲:P.791 - P.791

 生体部分肝移植は,ドナーに対する負担が大きいという考えから,欧米では行われていなかったが,1991年に開かれた第5回欧州臓器移植学会で討議された結果,臨床治療として認知され,ヨーロッパ各施設で開始され始めた.本邦においても,当初は技術的な問題や社会的な問題が危惧された治療法であったが,1989年に国内第1例目が島根医大で行われてから5年が経過した現在,高度先進医療として認知され,高い成功率,症例数の増加が示すように,技術的問題はほぼ解決された.
 国内における生体部分肝移植症例はすでに210例を越え,新聞などで実施ごとに報道されることもなくなった.現在,定期的に生体部分肝移植を行っているのは,京都大,信州大,名古屋市立大,東京女子医大,東北大の5施設であるが,生体部分肝移植を行った経験をもつ施設はそのほかに5施設ある.

大腸癌治療のプロトコールについて

著者: 平井淳一 ,   白髭健朗

ページ範囲:P.792 - P.792

 本誌に連載中の和田達雄先生ご執筆のメディカル・エッセー「残りの日々」を興味深く読ませていただいているが,その第2回目の「なんじゃ・もんじゃ」は特に感銘深かった.
 このなかで先生は,無作為割付試験を行う際に,患者さんの同意を得るために説明しなければならない3点を述べておられる.すなわち,患者さんが被る精神的,身体的,経済的負担を説明し,同意を得てはじめてその試験が有効となる.欧米ではその説明を前提として契約が成立しており,形式だけではないことを述べておられる.したがって,正しく行われた欧米の無作為割付試験の結果は誠に貴重であり,その結果を重く受け止めるべきではないだろうか.

臨床研究

腹腔鏡下胆嚢摘出術におけるhelical scanning CTの有用性

著者: 来見良誠 ,   花澤一芳 ,   江口豊 ,   白石享 ,   岸田明博 ,   渡辺英二郎 ,   柴田純祐 ,   小玉正智 ,   蔦本慶裕 ,   玉川正明 ,   奈良政信

ページ範囲:P.795 - P.798

はじめに
 胆道系疾患の診断体系および治療体系を大きく変化させる画期的な治療法となった腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,LC)は,1989年にPerissat1)らによって報告され,本邦では1990年,山川2)により導入された手術術式で,現在では多くの施設において胆嚢摘出術の標準術式の1つとなっている.
 LCの術前検査として,術式導入当初は術中造影が技術的に困難であったため,あらかじめ内視鏡的逆行性胆道造影(以下,ERC)を含む詳細な術前検査を行い,術前および術中に総胆管への落石の可能性のない症例を選びLCを行っていた.しかしながら,手術手技の向上とともに術前検査は徐々に簡略化されるようになり,現在では腹部超音波検査と経静脈的胆道造影(以下,DIC)を必須検査とし,総胆管の拡張がある場合にはERCを追加するのを原則とするようになってきた.一方,helical scanning CT3-5)(以下,ヘリカルCT)は,最近開発されたCTのスキャン方式で,構造物を螺旋状にスライスし再構築する画像診断法である.基本的には,通常の高速CT検査と同程度の空間分解能と濃度分解能を有するが,ヘリカルCTは再構築により滑らかな立体画像として表示できる点が大きく異なり,脈管の分枝形態などの立体構造をみるには特に優れた能力を発揮する画像診断機器である.

キチン,キトサンによる褥瘡治療の臨床的検討

著者: 広田裕 ,   谷岡真一郎 ,   谷川孝彦 ,   南三郎 ,   重政好弘 ,   森透

ページ範囲:P.799 - P.803

はじめに
 高齢者人口の増加とともに褥瘡を有する老人の数が増加しつつある.褥瘡に対しては,一般に軟膏,外用貼付剤を用いた保存的治療が行われている.しかし,抗菌性や肉芽形成促進作用を合わせ持つ決定的な物質はない.キチン,キトサンは,カニやエビの殼やイカの軟甲から精製される多糖体で,天然素材として注目を集めている.1957年,Pruddenら1)はラットを用いた実験によりキチンが創傷治癒促進効果を有するとの結果を得た.現在,獣医学領域において,外傷,膿瘍などにキチン,キトサンの著明な効果が認められている2).ヒト褥瘡では,和田ら3),上山ら4)がカニ甲羅由来のキチン材料を用い良好な成績を得ている.
 今回われわれは,キトサンおよびイカ軟甲由来のキチンを得ることができ,これを褥瘡に対して使用し,その効果を検討したので報告する.

臨床報告・1

AIDS関連症候群(ARC)に併存した進行結腸癌の1手術例

著者: 久富啓介 ,   高沢信 ,   永島伸夫 ,   伊藤英明 ,   上田伸治 ,   永田一彦

ページ範囲:P.805 - P.808

はじめに
 最近のHIV感染者やAIDS患者の急速な増加は,実際に患者を目にする機会の少ないわれわれ外科医にとっても無関心ではいられない問題となりつつある.無症候性キャリアーはともかく,何らかの免疫能低下の出現した症例に対する外科的治療の適応,特に悪性腫瘍併存例の治療方針の選択は,感染予防対策とともにさまざまな問題点を有している.
 今回われわれは,AIDS関連症候群に合併した進行結腸癌症例を経験した.治療経過とともに治療方針や病期判定の困難さなどについて,若干の文献的考察を加えて報告する.

胆嚢捻転症に胆嚢癌が併存した1例

著者: 寺部啓介 ,   津荷龍生 ,   渡辺正範 ,   三尾寿樹 ,   田中浩史

ページ範囲:P.809 - P.812

はじめに
 胆嚢捻転症は比較的まれな疾患で,術前診断も困難である.急性腹症として手術がなされ,はじめて診断が確定する場合が多い1,2).今回われわれは,急性腹症として手術を施行した胆嚢捻転症に胆嚢癌が併存した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

残胃胃石による腸閉塞の1例

著者: 倉橋隆之 ,   瀧原道東

ページ範囲:P.813 - P.816

はじめに
 胃石はそれほど珍しい疾患ではないが,残胃に発生し腸閉塞をきたすことはきわめて稀である.今回われわれは,胃切除後5年目に落下胃石による腸閉塞をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

15年間の経過観察中に3回の穿孔性腹膜炎を発症した腸型Behçet病の1例

著者: 小林建司 ,   水野勇 ,   真下啓二 ,   吉田祥子 ,   松本美富士 ,   真辺忠夫

ページ範囲:P.817 - P.820

はじめに
 Behçet病は多臓器侵襲性の原因不明の炎症性疾患で,再燃と寛解を繰り返す難治性疾患である1)が,そのなかで腸型Behçet病は特殊病型として位置づけられている2).今回われわれは,15年間の経観察中,3回の穿孔性腹膜炎を発症した腸型Behçet病を経験したので,術式などの治療法につき報告する.

全身麻酔時のスタイレット折損による気道内異物の1例

著者: 伊豫田明 ,   金本彰 ,   平田泰 ,   宮元秀昭 ,   丸山雄二 ,   浅原広澄

ページ範囲:P.821 - P.823

はじめに
 今回われわれは,全身麻酔時にスタイレットの先端が折れて気道内に落下した気道内異物を術後胸部X線写真撮影で気づき,背部叩打法にて安全かつ迅速に摘出し得た症例を経験した.全身麻酔法の反省点および救急処置の点で,示唆に富む症例と考え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?