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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科50巻9号

1995年09月発行

雑誌目次

特集 出血させない消化器癌手術

出血させない食道癌手術(1)—胸部食道癌手術

著者: 安藤暢敏 ,   小澤壮治 ,   横田昌明 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1115 - P.1118

 食道癌手術では縦隔操作中は小量の出血でも狭い縦隔に溜り手術操作を阻むことになるので,“出血させない手術”をぜひ心掛けなければならない.出血に留意すべき部位は,胸部上部傍食道リンパ節No.105郭清時の下甲状腺動脈,右気管支動脈,気管気管支角および気管分岐部郭清時の気管支動脈の分枝,食道固有動脈などである.食道切除術では深部の縦隔組織を牽引挙上しながら操作するために,切離⇒結紮の場合には結紮前に鉗子から血管断端が逸脱し,思わぬ出血を来す危険性があるので,結紮⇒切離が望ましい.

出血させない食道癌手術(2)

著者: 今村正之 ,   嶋田裕 ,   宮原勅治 ,   神田雄史

ページ範囲:P.1121 - P.1125

 食道癌切除術は,通常出血の少ない予術である.しかし,主病巣やリンパ節転移が血管に浸潤していたり,肺と胸膜の高度な癒着がある時には,局所解剖に精通していなければ思わぬ出血をきたす.本稿では,食道切除術につき特に,筋肉切離を最小限に少なくした開胸法と頸胸境界部の甲状頸動脈と下甲状腺動脈に注目した郭清法を記述した.

出血させない食道癌手術(3)

著者: 内田雄三 ,   村上信一 ,   野口剛 ,   松本克彦 ,   橋本剛 ,   挾間田伸介

ページ範囲:P.1127 - P.1131

 食道癌に対する食道切除・再建術においては,その郭清は頸,胸,腹の多領域に及び,必然的にそれなりの出血を伴う.手術時の出血にはその目的を達成するためには避けることのできない最小限の出血と,適応の誤り,解剖学的知識の不足,未熟な手術手技などによる不必要な出血とがあり,後者に対しては出血量を少なくするためのあらゆる工夫がなされねばならない.出血部位はほぼ決まっており,胸壁,食道裂孔,食道固有動脈,気管支動脈,気管分岐部,頸胸境界部などである.これらの解剖学的特徴を十分に理解し,正しい手術手技を駆使することにより無駄な出血を防止することが可能である.このことが患者のQOLの向上と医療費の節減に寄与する.

出血させない胃癌手術(1)

著者: 丸山圭一 ,   笹子三津留 ,   佐野武 ,   片井均 ,   木下平 ,   野田徳子

ページ範囲:P.1133 - P.1138

 手術で出血を最小限に留めるのには,出血しない部位を切ることと,出血点を予測して予め結紮してから切離することであろう.これを実現するには,詳細な局所解剖学の知識,とくに発生学,解剖学,組織学の知識が不可欠である.また,ミクロのレベルの視覚と鋭敏な触覚がなければ,意図した手術は実現できない.これらがとくに重要な役割をもつ,total bursectomyにおける横行結腸間膜前葉の剥離,膵頭の授動,膵脾の授動,動脈や膵からのリンパ節郭清の手術操作をとりあげ,私どもの手技を解説した1)

出血させない胃癌手術(2)

著者: 愛甲孝 ,   帆北修一 ,   夏越祥次

ページ範囲:P.1141 - P.1145

 出血させないような胃癌の手術をするためには,手術手技の修練と胃の周辺脈管の走行や周囲臓器との位置関係,合流・分岐様式などの局所解剖を常に念頭におき,的確に操作を進めることにつきる.「人体は膜構造からなる」ことを理解し,各臓器間の層の剥離を正確に行えばまず出血することはない.胃癌に対する根治手術の原則は,重要血管のみを温存して,リンパ管や周囲のその他の組織を一括en blocに切除郭清することにある.そのためには血管を露出しつつ分枝を切離していかなければならないが,その郭清・切離操作にあたっては,膜構造を剥がすように進め,結果的に血管が露出されていくといった感じで行うことが出血させない最大のコツといえる.また,術中の偶発出血の多くは解剖学的変異に気づかずに引き起こす場合が多いので,どの部位で,どのような場合にどのような出血が起こりやすいかを理解することも重要である.

出血させない胃癌手術(3)—胃癌D2手術

著者: 米村豊 ,   藤村隆 ,   伏田幸夫 ,   津川浩一郎 ,   三輪晃一 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1147 - P.1152

 安全かつ少ない出血量でD2郭清を行うには,十分な解剖学的知識と卓越した技術を習得する必要がある.また良好な視野のもとで手術を行うことも重要である.D2郭清で最も出血しやすい部位は大網・膵頭前面・膵裏面・総肝動脈裏面などの剥離時である.この部位の剥離には細心の注意をはらう必要がある.大血管は必ずゴムテープで牽引し,損傷のないようにする.

出血させない肝胆膵癌手術(1)

著者: 加藤紘之 ,   高橋利幸 ,   奥芝俊一 ,   本原敏司 ,   道家充 ,   西部俊哉

ページ範囲:P.1155 - P.1160

 肝・胆・膵癌の手術は解剖学的に複雑な要因を含んでおり,癌に対する根治性の追求と機能温存および手術の安全性の確保などの点で問題も多い.特に出血コントロールは確実な手術を進めるうえで最も重要である.出血させない手術を成し得るコツは局所解剖の十分な把握が何より大事である.その上で剥離面を浅く広くとり,出血した場合には,最小限の出血に留め得る操作の手順を踏むことも重要である.また手術にあたっては,常に冷静,沈着にチームをまとめ,静かな流れの中で,困難な場面も的確に処理することが肝要である.

出血させない肝胆膵癌手術(2)

著者: 早川直和 ,   二村雄次 ,   神谷順一 ,   近藤哲 ,   梛野正人 ,   金井道夫 ,   宮地正彦 ,   山本英夫

ページ範囲:P.1161 - P.1168

 肝胆膵癌の手術は肝,膵という二つの実質臓器の切離操作や多くのバリエーションの豊富な脈管が走行する肝十二指腸間膜内の手術操作を行うため管腔臓器の手術に比べて出血の機会が多い.また短肝静脈,左右の肝静脈など肝部下大静脈の処理では大出血につながることもあり,慎重な操作が要求される.リンパ節郭清では脈管の走行やバリエーションを確認したうえで,電気メスを用いて,主要脈管と周囲組織の間にきちんとテンションをかけて切離層を明確に露出し,動脈,静脈壁に沿って郭清すること,肝,膵実質切離では尾状葉門脈枝,短肝静脈,肝静脈へ流入する細い静脈枝,膵実質から門脈に流入する細い静脈枝など裂け易い部位をあらかじめ心得て注意深く結紮切離すること,この場合,門脈側あるいは肝静脈側は必ず結紮してから切離することなど,出血をより少なくするための手術手技について述べる.

出血させない結腸,直腸癌手術(1)—進行直腸癌に対する無輸血手術のための手術手技

著者: 森谷冝皓

ページ範囲:P.1171 - P.1175

 進行直腸癌に対する無輸血手術に必要な手術手技の要点を述べた.手術器具は手慣れたものを使い,止血には電気メスを多用する.特に,肥満型男性患者に対しては1)良視野を得るため大きく開腹し,2)手術時間に捉われず,止血を次の操作に移る3)出血の少ない適切な剥離層を根気よく探す4)摘徐側直腸の止血を確実に行っておくなどの注意が大切である.きめ細かい手術手技,止血能の優れた電気メスの使用,原発巣の拡がりに応じた適切なリンパ節郭清術の採用などにより進行直腸癌手術においても無輸血手術を心掛けたい.

出血させない結腸,直腸癌手術(2)

著者: 澤田俊夫 ,   木村浩 ,   新木正隆 ,   洲之内広紀 ,   渡辺聡明 ,   武藤徹一郎

ページ範囲:P.1177 - P.1180

 結腸・直腸癌の手術手技上,出血させないことは的確な剥離層の同定と正確なリンパ節郭清を行う上できわめて重要といえる.過去には手術時間の短縮を目的として多少の出血には目をつぶって郭清を施行した時代もある.しかし小血管に対する電気焼灼あるいは結紮・止血を丁寧に行えば出血することはなく,術野が赤く変色して剥離層や自律神経の同定が難しくなることもない.外科手術手技の基本である結紮・切離を丹念に繰り返すことが出血させない手術手技の基本である.また外科解剖学を熟知して,個々の血管の走行を確認しつつ,不用意な出血を未然に防ぐことも肝要である.ここではS状結腸癌,直腸癌の郭清におけるコツと留意点について解説した.

出血させない結腸,直腸癌手術(3)

著者: 丸田守人 ,   黒水丈次 ,   前田耕太郎 ,   内海俊明

ページ範囲:P.1181 - P.1185

 結腸癌,直腸癌における出血させない手術の工夫として,著者らは鑷子型電気メスを止血専用に用いて腸剪刀による徹底的リンパ節郭清を基本に行っている.あらかじめ見える血管は電気メスで凝固し,その部を切離し鈍的に剥離し,剥離面に現われた血管は鑷子型電気メスで止血する.電気メスの多用により血管結紮は下腸間膜動・静脈、中間動脈、辺縁動脈を結紮するのみである.直腸癌手術では解剖学的剥離層に基づく,3操作の郭清が出血をさせないことになり,血管周囲の丁寧な慎重な操作が重要である.具体的に本文で述べる.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・9 胃・十二指腸

腹腔鏡下選択的近位迷走神経切離術

著者: 桜町俊二 ,   木村泰三 ,   吉田雅行 ,   小林利彦 ,   高林直記 ,   鈴木憲次 ,   鈴木浩一 ,   竹内豊

ページ範囲:P.1107 - P.1113

はじめに
 現在,消化性潰瘍に対する治療は,酸分泌抑制剤を中心とする内科治療が第1選択であることは言うまでもない.しかし,投薬治療は長期効果がなく,治療後の高い再発率が大きな問題として残されている.腹腔鏡下選択的近位迷走神経切離術(以下本手術)は,外科手術の持つ長期効果と,腹腔鏡下手術の持つ低侵襲性を兼ね備え,内科治療に対抗すべく現れた.もちろん,その背景には,腹腔鏡下手術の爆発的とも言える普及があることは,周知の通りである.
 本手術は,1991年Baileyら1)により始められ,その後いくつかの術式が報告されている2-5).ここでは,われわれの手術手技を中心に,写真を提示しながら解説する.

外科研修医実践購座・26

インフォームド・コンセントをめぐる諸問題

著者: 門田俊夫

ページ範囲:P.1187 - P.1193

はじめに
 「外科研修医実践講座」の連載も最終回となりました.今回はインフォームド・コンセント(以下,I.C.)を取り上げます.I.C.という言葉は1957年,米国で法律用語として生まれたものとされ,その後日本にも導入,今日では一般にも広く知られるようになった.しかし,そもそもI.C.とは何だろうか.研修医諸君のなかには,I.C.を単に「手術の承諾書」と考えている人も多いのではないだろうか.
 無論,I.C.とはそれだけを意味するものではない.I.C.とは,(1)医師はこれから行おうとする医療内容を患者に示す,(2)医師はこれから行おうとする医療行為に対し患者から同意を得る,この2つの原則からなる.筆者はI.C.を「医師と患者が相談しながら双方の納得にもとづいて進める医療」と考えている.これは,手術だけでなく検査や投薬などすべての医療行為を行う際の原則といえる.

メディカル・エッセー 「残りの日々」・9

看護婦さんが好きです

著者: 和田達雄

ページ範囲:P.1196 - P.1197

 3人の姉に囲まれ,女ばかりの中で育った一人息子の私は,男の子と付き合うのが苦手でした.小学校に入っても家に帰ると,近所の女の子とお医者さんごっこなどをして遊んでいました.
 そのころ,伯父が東京の大学病院から郷里に戻って,外科・産婦人科を開業しました.会社員の父は,弟ですから何かというと手伝いに借り出されます.私もいっしょにその病院に出入りして,看護婦さんたちに可愛がられました.

私の工夫—手術・処置・手順・13

血管吻合を付加した食道再建術

著者: 遠藤将光 ,   中川正昭

ページ範囲:P.1198 - P.1198

 食道再建後の縫合不全の原因の1つに,血流障害からの虚血が考えられている.われわれは遊離空腸や血管柄付き皮弁ではもちろんであるが,胃管や空腸,結腸で再建した場合でも,血流障害が危惧される症例には積極的に血管吻合を付加している.
 対象は過去6年間に血管吻合を付加した食道再建例13例で,食道癌7例(Ce,Im各3例,Iu1例),下咽頭癌4例,甲状腺癌の食道浸潤,胃管再建後吻合部壊死各1例であった.下咽頭癌の1例では皮膚の合併切除を要し,同部を血管柄付き前腕皮弁で二期的に再建したため,計14回27か所の血管吻合を行った.再建には遊離空腸を6例,結腸3例,胃管,空腸を各2例,皮弁を1例に使用した.結腸および空腸での再建5例中4例は胃切除術後例であった.

イラストレイテッドセミナー・18

はじめての腹会陰式直腸切断術 Lesson 3

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.1199 - P.1208

 17.側方郭清に移る.右側方郭清を示す.右手にクーパー剪刀,左手に鑷子を持つ.まず,右総腸骨動脈外側の柔らかい結合織を削ぎ落とし,下大動脈と大腰筋を露出する.

臨床外科交見室

高度先進医療と保険診療の狭間で

著者: 朔元則

ページ範囲:P.1210 - P.1210

 国立基幹病院の役割は「高度先進医療を推進し,国民の健康と福祉に貢献する」ということにある.われわれはその目的のために日夜努力を怠っていないつもりであるが,高度先進医療を推進するに当たっての大きな壁が「わが国の健康保険制度の枠内で…」という制約である.日本外科学会をはじめ多くの関連学会におけるディスカッションに参加しても,そこで討議検討され,臨床応用を急くべきであるという結論を得た先進技術の多くが,健康保険で未承認のため明日からの医療には応用できないというのが実情である.
 ひとつの例として,消化器外科領域での身近な例を挙げてみよう.消化管の器械吻合がわが国に本格的に導入され始めたのはEEAが発売された1979年頃からであるが,器械の使用が健康保険で認められたのは,直腸癌に対する低位前方切除術施行時の使用が1984年,食道噴門部癌に対する胃全摘術時の使用が1985年である.この5年間のタイム・ラグの間にも直腸癌や噴門部癌の患者は病院を訪れるわけであるから,高度先進医療を目指す多くの施設は,患者の個人負担あるいは病院の負担の下に器械を購入し,器械吻合で初めて可能となった超低位前方切除術で多くの患者さんを人工肛門造設から救い,また非開胸下の縦隔内食道空腸吻合術などを行ってきた.

外科医に求められる資質について

著者: 松崎孝世

ページ範囲:P.1211 - P.1211

 日本外科学会の認定医制度もようやく軌道に乗り,21世紀の日本の外科を担う指導医,専門医,認定医が続々誕生していることはご同慶の至りである.しかし,若い医師たちの外科医としての資質,適性,倫理といったものを,指導者は修練の過程でどのように教えておられるのだろうか.教授や先輩たちの薫陶に負うところが大きいことに異論はないが,教室や病院には,外科医のprinciples of conductを持っておられるところもあると聞く.
 私はその昔,留学先で読んだ米国外科学会の泰斗Dr.Wel-chiの書いた一文が強く印象に残っている(Claude E.Welchi:The credo of a surgeon.Ann Surg 158(5):740-746,1963).ご記憶の方もあるかと思うが,含蓄に富む教えと考えるので,ここにその要約を紹介してみたい.

病院めぐり

倉敷中央病院外科

著者: 小笠原敬三

ページ範囲:P.1212 - P.1212

 当院は岡山県西部を流れる高梁川に沿う人口43万人の倉敷市のほぼ中央に位置し,江戸時代の倉屋敷が保存され,多くの観光客が訪れる美観地区や大原美術館が近くにあります.大正12年,大原孫三郎氏により倉紡中央病院として創立され,昭和9年に現在のように財団法人倉敷中央病院に改組・改称されました.当院はオーダリングシステムや予約診療制が導入されており,現在,病床数1,180床,医師175名となっています.
 開院時より「患者に平等で治療本位の医療を行うこと」を院是としており,地域の中核病院として使命に徹し,地域の人々からも信頼を得ています.診療圏は広島県東部の一部を含め岡山県西部を中心としていますが,瀬戸大橋が開通して以来,対岸の香川県からも救急医療の要請を受けています.

公立藤田総合病院外科

著者: 原田実

ページ範囲:P.1213 - P.1213

 われわれの病院は東北本線沿線,福島県最北端の国見町にあり,田園のなかの広大な敷地(敷地面積:3万平方メートル)のなかに建っている.昭和27年に80床の病院として国見町および隣接する桑折町,梁川町の3町で創立され,昭和44年,手狭になった駅前病院を改築,245床に増床し,4号国道に近い現地点に移転した.さらに,昭和57年に増築を行い,診療科15科,病室429床とし,最新の医療機器を備えた文字どおり地域の中核病院として発展し現在に至っている.
 外科スタッフはもともと東北大1外より派遣されていたが,昭和46年から福島医大1外に引き継がれた.3町の人口6万人弱にしてはこの病院は大きすぎたが,先代院長(本宿 尚),それを引き継いだ現院長(朽木渉)は,地域医療に対し深い理解があり,日夜,地域住民に医療サービスを惜しまなかった.そのためか,外来および入院患者は増加の一途をたどり,それに伴い手術例も増えてきた.例えば,昨年度の外科手術例は462例で,うち全身麻酔は219例であった.当院胃腸科は東北大3内科出身の現院長と福島医大2内科出身者なので消化器方面に造詣が深く,手術も当然,食道,胃,小腸,大腸など消化管の手術が圧倒的に多い.そのほか,胆嚢,膵,肺,縦隔洞,ペースメーカー,甲状腺,耳下腺および乳腺疾患など,心臓手術を除きすべて行っている.

綜説・今月の臨床

肝胆道系手術とコンピュータ外科

著者: 橋本大定

ページ範囲:P.1215 - P.1220

I.はじめに
 コンピュータ技術を用いた手術支援システムの研究(CAS:コンピュータ外科)は,1990年頃より,欧米で,脳外科,整形外科,形成外科の領域で進められ,医用画像からの三次元再構成やその表示方法に関する研究とともに,計測や手術治療の報告がなされている.
 これらの分野は,従来,主として明確な画像情報の得られやすい骨などが対象となっており,対象臓器も移動性がないので,治療計画が立てやすいという利点があった.

シリーズ 早期癌を見直す・1 早期胃癌・5

早期胃癌の長期予後

著者: 山口俊晴 ,   高橋俊雄

ページ範囲:P.1221 - P.1225

はじめに
 胃癌の中でも早期胃癌の占める割合は年々高くなり,それにつれて胃癌全体の予後も向上してきている.また,胃癌が助かる病気になりつつある現在,今までのように5年遠隔成績だけでは不十分で,より長期にわたった遠隔成績の評価が必要になってきた。本稿ではわれわれの教室で経験した早期胃癌の長期予後成績を調査することで,現在の早期胃癌治療の問題点を明らかにしたい.

臨床研究

当院における肝門部胆管癌切除症例の検討—根治切除と術後補助療法の有用性について

著者: 近藤敏 ,   古川正人 ,   酒井敦 ,   宮下光世 ,   三根義和 ,   佐々木誠

ページ範囲:P.1227 - P.1230

はじめに
 近年,画像診断の進歩・普及に伴って肝門部胆管癌の診断率は向上し,切除症例も年々増加している.しかし,解剖学的に重要血管に隣接していること,臨床病理学的に癌組織の悪性度が高いこと,早期診断が容易でないことなどにより,いまだ良好な治療成績は得られていない.
 切除率の改善と非根治切除症例に対する治療が治療成績の向上につながるものと考えられるが,われわれは当院で経験した肝門部胆管癌症例をretrospectiveに分析し,根治切除の重要性と抗癌剤,放射線治療など術後補助療法の有効性について検討したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・1

乳房脂肪肉腫の1例

著者: 須貝道博 ,   羽田隆吉 ,   大石晋 ,   和嶋直紀 ,   今充

ページ範囲:P.1231 - P.1235

はじめに
 脂肪肉腫は後腹膜,大腿部原発の軟部腫瘍として一般的であるが,乳房原発はきわめてまれである1,2).今回われわれは,左乳房原発の脂肪肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

十二指腸球部に嵌入したⅠ型早期胃癌の1例

著者: 小川功 ,   山部克己 ,   平野稔 ,   塚田博 ,   高橋正彦 ,   忍田謹吾

ページ範囲:P.1237 - P.1239

はじめに
 大きなⅠ型早期胃癌が幽門輪を越え十二指腸球部に嵌入し,特異な形態を呈した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

前腹壁に発生した神経鞘腫の1例

著者: 深田代造 ,   若原正幸 ,   木田恒 ,   坂田一記

ページ範囲:P.1241 - P.1243

はじめに
 神経鞘腫は神経の分布する全身のいずれの部位にも発生しうるが1),体腔内に発育するものは少ないうえに,脊椎近傍が好発部位であるため,胸壁や腹壁に発生するものはさらに少ない2)
 最近,筆者らは前腹壁の深部から腹腔内に突出するように発育した神経鞘腫の1例を経験したが,前腹壁深部に発生した神経鞘腫はきわめて稀であると思われたので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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