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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科51巻1号

1996年01月発行

雑誌目次

特集 乳房温存療法の適応と実際

乳房温存療法の適応と実際

著者: 小山博記 ,   稲治英生 ,   野口眞三郎 ,   元村和由

ページ範囲:P.13 - P.19

 1980年代の後半よりわが国でも乳房温存療法の本格的な検討が始まった.それから10年足らずが経過した現在,当初予想されたような急速な普及は見られないものの,わが国の実状に即した方法で安全性を確認しつつ着実に普及が進んでいる.最近に至り,stageⅠを主な対象とした乳房温存療法の成績がわが国でも報告されるようになった.それによると,乳房内再発の発生率は年率で約1%で,断端陽性例ではその率が高いが,術後照射でその率を著明に低下させることが分かった.また,無再発生存率は乳房切除の場合と変わりがなく,乳房温存療法の安全性はほぼ確認できたと思われる.今後は,stageⅡ以上への適応拡大と照射の適応選択が研究課題となる.

画像診断からみた乳房温存療法の適応

著者: 吉本賢隆

ページ範囲:P.21 - P.25

 乳癌は乳腺内における乳管内進展,間質浸潤,多発癌の頻度が高く,乳房温存療法後の乳房内再発の原因となる.したがって,乳房内再発率を低く押さえるためには癌の乳腺内進展に対する画像診断が重要となる.現在,マンモグラフィーと超音波が広く利用されているがその検出能は必ずしも十分ではなく,病変の拡がりを過小評価しがちである.そこで,新しい診断法であるMRIの有用性について検討した.造影剤を利用したサブトラクションMRIは浸潤癌だけでなく乳管内進展巣の描出とその拡がりの診断が可能であり,乳房温存療法の適応と切除範囲の決定に利用しうるものであった.しかし,画像診断で検出された病変の良悪性の鑑別は難しく,画像誘導下の穿刺術などを行って組織診,細胞診による確定診断を行い,適応を狭めることのないようにしなければならない.

局所再発後の治療について

著者: 池田正 ,   榎本耕治 ,   坂田道夫 ,   竹島薫 ,   和田徳昭 ,   北島政樹

ページ範囲:P.27 - P.31

 乳房温存療法後に局所再発を来たした2例を紹介し,局所再発の実態,局所再発に対する手術,予後などにつき考察した.局所再発は乳房温存療法を施行した場合,約10〜20%におこるとされる.今回経験した症例1は炎症性乳癌に類似した再発形式をとったが,このような再発は約2%におこるとされている稀なものである.このような場合は手術適応から外れるが,通常約85〜90%の症例にはsalvage operationが可能である.ただし,術後遠隔成績は5年健存率で50〜60%と決してよくない.予後因子としては,腫瘍径,再発形式,腋窩リンパ節転移個数,組織型,histological gradeなどが挙げられている.今後日本においても局所再発が多くなることが予想され,術式,補助療法の有無などを含めて治療方法を議論する必要がある.

Tisに対する乳房温存療法の適応

著者: 大内憲明 ,   石田孝宣

ページ範囲:P.33 - P.37

 非侵潤癌(Tis)に対する乳房温存療法の適応について,1)血性乳頭分泌を伴うTis,2)微細石灰化を伴うTisに分けて述べた.Tisはmastectomyによりほぼ100%の生存率が得られるため,乳房内再発の危険がある温存療法には躊躇がある.しかし,Tisは浸潤癌に先行する早期の病変であり,mastectomyがTisに対する治療としてoversurgeryとなっていることは否めない.治療にあたっては患者のQOLを十分に考慮した上で,温存療法の可能性を追求しながら,慎重に対応すべきである.

乳房温存手術の適応と手技

著者: 福富隆志

ページ範囲:P.39 - P.45

 乳房温存療法はstage Ⅰ-Ⅱ乳癌に対して統計学的生存率に関して乳房切除術と同等であることは明らかである.現在5〜10%にみられる局所再発を減少させるために適応・治療両面から検討が続けられている.すなわち①術前の面像診断による乳管内進展範囲の把握,②乳管内進展巣の特性(悪性度,増殖能,薬剤感受性)の検討と照射後の癌細胞の変化の研究などである.さらに新しい分野として③術前化学療法の導入による腫瘤径の大きな症例(T≧3〜4cm)に対する適応の拡大,④非照射温存療法の可能性が積極的に検討されている.本稿では現在のわが国の乳房温存療法の適応,治療の実際,成績の現状と問題点を中心に当院の現状を含めて述べる.

乳房温存療法—美しい乳房を残すための手術手技

著者: 児玉宏

ページ範囲:P.47 - P.53

 乳癌に対して,乳房の大部分を温存する手術(乳房温存手術)を行うかぎり,温存した乳房には術後照射をする必要がある.術後に照射をすることを前提とすれば,腫瘤上の皮膚は切除する必要はなく,皮弁は思い切って厚くすることができ,皮切線もほとんど目立たないようにすることができる.乳腺部分切除によって生じた欠損部は,皮弁を広範囲に作成したあと,温存乳腺を2分割するように切り込むことにより,乳房に変形を来たさないように縫縮することができる.
 これらの手術手技上の工夫をすることによって,術後の乳房の形は,対側乳房とほとんど変らないような美しいものとなる.

乳房温存療法における放射線治療の役割と問題点

著者: 平岡真寛

ページ範囲:P.55 - P.60

 1990年米国で開催された「乳癌治療に関するコンセンサスカンファレンス」では,多くのⅠ,Ⅱ期乳癌に対して乳房温存療法が乳癌の標準治療の1つであるとの国際的な合意が得られた.また,乳房温存療法が乳房温存手術と,放射線治療からなる治療法であることが明確に定義された.放射線治療の役割の主たるものは,温存乳房内に遺存する微小病巣を根絶させ局所再発を最小限にとどめることである.また,領域リンパ節への予防照射についてもその臨床治験は数多く集積している.放射線治療に関する新しい試みとして,N0症例に対して腋窩郭清術を行わず放射線治療のみで対応する試み,乳房温存療法の適応拡大手段としてのNeo-adjuvant放射線治療の試みがあり,今後の臨床評価が待たれる.一方,放射線治療の問題点として,治療の副作用,美容面への影響,乳房温存療法の非適応症例への関わりが挙げられる.

乳房温存手術標本の取扱い方法

著者: 秋山太 ,   坂元吾偉

ページ範囲:P.63 - P.67

 乳房温存治療の評価を正しく行うためには,断端の病理組織学的所見が重要である.断端癌陰性と一言で言っても,乳房温存手術標本の取扱い方法の違いにより,その内容には相当の違いがあることは想像に難くない.断端の診断には,断端の同定,乳管内病変の良悪性の鑑別診断,断端と癌巣との立体的位置関係の把握という作業が必要であるが,どの段階で間違えても断端の誤診につながる.われわれは,断端癌陰性であれば照射を併用しないという立場で乳房温存治療に取り組んでいるので,精度の高い断端診断が必要であり,全割による病理組織学的検索を行って,真実に近づこうとしている.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・13 胃・十二指腸

幽門輪近傍の病変に対する腹腔鏡下胃部分切除術

著者: 渡辺透 ,   金平永二 ,   佐々木正寿

ページ範囲:P.5 - P.10

はじめに
 近年,腹腔鏡下手術の対象臓器,対象疾患は拡大する傾向にあり,胃においても早期胃癌や良性腫瘍症例に腹腔鏡下胃部分切除が試みられている.胃の前壁病変に対してはlesion lifting法1),後壁に対しては腹腔鏡下胃内切除手術2)などが行われている.上記のlesion lifting法には専用に開発された自動縫合器が用いられているが,病変の部位によってはその使用が躊躇される.とくに幽門輪近傍の病変に対して自動縫合器を用いると切離部が多くなり術後狭窄が懸念される.そこでわれわれは幽門輪近傍の病変に対しては自動吻合器を使用せずに電気メスによる切除,手縫い縫合で対処している3).本術式の手術手技について解説する.

臨床外科交見室

続・鼠径部の解剖

著者: 川満富裕

ページ範囲:P.70 - P.71

 この「交見室」で鼠径部の解剖に関する私の疑問と考えを述べたところ,金谷氏より貴重なご意見をいただいた.金谷氏が述べられるように,腹壁の解剖は腹筋を中心とする対称性の層状構造と考えれば理解しやすい.私も佐藤氏の論文は承知しており,精索には腹壁の層状構造が保たれていると思う1).しかし,私が内精筋膜は腹膜前筋膜に続くと考えるのに対し,金谷氏は横筋筋膜に続くと考えておられる.臆面もなく再び投稿したのは,この違いが大きな問題だからである.
 成書には,ヘルニア嚢の剥離について内精筋膜を無視した記述が多い.精巣挙筋を開いたときに現われる白い光沢のある膜をヘルニア嚢とみなしているためである.この白い膜は,ヘルニア嚢ではなく内精筋膜である.内精筋膜はヘルニア嚢,精巣動静脈,精管を包んでいる2).この内精筋膜の筒を腹腔側に向かって周囲から剥離していくと,その続きが内鼠径輪を越えて下腹壁動静脈の背側に回り込み,鼠径靱帯を越えて後腹膜腔のほうに向かうのがわかる.この事実は鼠径部の解剖を理解するうえできわめて重要であり,手術の際にぜひ確かめていただきたいと思う.

医療事故訴訟について考えること

著者: 大﨑俊英

ページ範囲:P.72 - P.72

 医療事故紛争および訴訟の激増は,新聞,雑誌の記事をみるにつけ驚くべきものがある.確かに医療そのものが高度化,先進化してきている現況では,不可抗力といえる場合もあるだろうが,大部分は医師と患者およびその家族との信頼関係の破綻により引き起こされるケースではないかと思われる.学生時代,臨床研修のときにいつも携えていた内科診断学の本に,医師患者関係(doctor-patient rela—tionship)がいかに大切であるかということがまず書かれていたような気がする.
 医療事故訴訟の新訴提起数は,昭和45年度が102件,昭和55年度が310件,昭和63年度が381件,平成6年度が504件と加速度的に増加し,1年間の訴訟係属件数は1,500件以上となっているが,これはあくまで氷山の一角であって,訴訟にならず示談で解決された事故件数はその何倍にも膨れ上がるものと推測される.

私の工夫—手術・処置・手順・17

臍上部弧状切開による幽門筋切開術

著者: 浜田吉則 ,   日置紘士郎

ページ範囲:P.73 - P.73

 小児外科領域で比較的頻度の高い肥厚性幽門狭窄症(以下本症)の標準術式は,右上腹部皮膚切開による幽門筋切開術(Ramstedt's pyloromyotomy)である.しかるに目立たない手術創を目的として,1986年Tan and Bianchiはcircumum-bilical incisionによる幽門筋切開術を報告した.最近われわれは本症に対し,さらに改変を加えた臍上部弧状切開による幽門筋切開術(以下本法)を行っているので,その手術手技について紹介する.
 〈術式〉患児を全麻下に仰臥位とし,温めたイソジン液で臍を十分に消毒する.臍上部に半周のなだらかな皮膚切開を置く(図1).この際助手に皮膚の左右に緊張をかけさせて,できるだけ臍に接して尖刃刀を用いて切開する.皮下を頭側に向かって充分剥離し,筋膜を白線に沿って臍上正中で2.5〜3cm切開する.腹膜は肝円索の右側で縦に切開する.

病院めぐり

広島市民病院外科

著者: 池田俊行

ページ範囲:P.74 - P.74

 広島市民病院は原爆による廃墟の跡がまだ残る昭和27年,厚生省が広島の復興と医療の充実,社会保険の普及,被爆者治療を目的として建設し,その運営を市に委託し,診療科目4科,病床数89床という小病院で発足しました.その後,甲斐太郎名誉院長の努力により増改築を重ね,平成7年には診療科23科,820床の総合病院となり,社会保険病院77施設中最大になり,自治体病院としても全国屈指の病院に発展しました.特に救命救急センター,未熟児新生児センター,人工腎センターなどの高度専門医療体制を整え,市民に貢献しています.
 当院外科の歴史は,頭から足の先まですべて扱う「何でも屋」から,整形外科,脳外科,心臓血管外科,呼吸器外科,小児外科が順次分離独立し,現在,一般外科は主に消化器,内分泌臓器を扱っています.外科スタッフは朝倉副院長,岡村主任部長以下常勤医10名,研修医8名の計18名で連日の外来,検査,病棟回診,手術などの診療を行っています.当科は外科学会の認定医修練病院,消化器外科学会の専門医修練施設に指定されており,診療と研修医教育,学会発表にと忙しい毎日を送っています.

国立霞ケ浦病院外科

著者: 田村洋一郎

ページ範囲:P.75 - P.75

 当院は霞ケ浦海軍病院として創設され,昭和20年,国立霞ケ浦病院と改称,診療科18科,定床522床の総合病院として現在に至っております.高速道路インターが近く,路線バスが病院内まで通り,交通至便で,その診療圏は人口103万の茨城県南部全域に及んでいます.
 土浦市中心部の高台に位置することから,5階の外科病棟からの展望は特に美しく,眼下に土浦市街や霞ケ浦を一望におさめ,北に筑波山を,気象条件によっては南西に富士山まで眺めることができます.敷地面積が10.7万m2と広大で,ヒマラヤ杉が病院敷地の境界を,桜とイチョウの大木が病棟周囲を取り囲み,病棟内まで聞こえてくる鳥のさえずりや花壇に咲く草花などが私たちに季節を感じさせてくれます.

イラストレイテッドセミナー・22

はじめての胃全摘術 Lesson 2

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.77 - P.82

 14.肝を挙上し“まんなかの”鉤をかける.小網の右上に小切開を加え,そこから大ケリー鉗子を入れてガイドしつつ,肝外側区域付着部に沿って小網を電気メスで切開する.食道に達したらその前面を横断し,さらに脾上極を少し廻り込むくらいまで後腹膜を切開しておく.食道を越えるとほとんど垂直に降りていくような感じになる.食道までは2枚,それ以降は1枚の膜である.食道前面では横隔膜漿膜移行部の手前0.5〜1.0cmのところを横断する.あとで吻合部の覆いとしてこの漿膜を利用するためである.前立ちは右手に腸ベラを持ち食道前面に被さる肝外側区域を圧排,左手で脾(腸が挙上していることもある)を下方に圧排して視野をつくる.

シリーズ 早期癌を見直す・2 早期大腸癌・3

早期大腸癌診断の最前線—②内視鏡・超音波内視鏡—深達度診断を中心として

著者: 清水誠治 ,   多田正大 ,   川井啓市

ページ範囲:P.83 - P.88

1 存在診断
 早期大腸癌の診断には注腸X線検査と内視鏡検査が主に用いられているが,病変の存在診断においては内視鏡検査の方に軍配があがる.とくに最近注目されている表面型大腸癌を発見するうえでは色調を捉えることのできる内視鏡が決定的に有利である.内視鏡検査では盲点のない観察に努めれば隆起型の病変の存在診断は容易である.これに対し,表面型病変の存在診断には淡い発赤や褪色のような色調変化,弧のわずかな変形,血管透見像の消失,白斑,自然出血といったより詳細な観察が要求される.つぎに少しでも病変の存在が疑われれば労を惜しまず色素散布を行うことが重要である.

手術手技

Tension-free hernioplasty 70症例の検討

著者: 五十嵐幸夫 ,   千葉昌和 ,   渡部修一 ,   稲葉行男 ,   林健一 ,   飯沼俊信

ページ範囲:P.91 - P.96

はじめに
 近年,鼠径,大腿ヘルニアに対し補強材を用いたtension-free hernioplasty法の有用性が報告されてきている1-3).今回,われわれは鼠径,大腿ヘルニア症例70症例にpolypropylene mesh(Marlex mesh®)を用いたtension-free hernioplasty法を施行し良好な結果を得たので若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床研究

肛門管を指標にした痔瘻に対する瘻孔造影

著者: 前田耕太郎 ,   丸田守人 ,   洪淳一 ,   山本修美 ,   橋本光正 ,   細田洋一郎

ページ範囲:P.97 - P.100

はじめに
 痔瘻,とくに複雑痔瘻や再発痔瘻に対する診断は,これまで視診,触診によるところが多く,術前に病変の拡がりを確実に診断し把握することはしばしば困難であった.これらの複雑な病態には,これまで2次口よりの瘻孔造影も行われてきたが,この方法では肛門管や直腸と複雑な瘻管の走行や原発口との関係を立体的に把握できないため,読影にしばしば困難を要していた.筆者らは,痔瘻の簡便な補助診断法として,これまで行われていた2次口よりの瘻孔造影に加え,肛門管,下部直腸を同時に造影することにより,瘻管の走行や原発口と肛門管,下部直腸との位置関係をより立体的に把握できる瘻孔造影を試みたので報告する.

甲状腺結節の診断における超音波誘導下穿刺吸引細胞診に関する一考察

著者: 小松誠 ,   小松俊雄 ,   井上憲昭

ページ範囲:P.101 - P.104

はじめに
 近年甲状腺結節に対する各種診断法の役割分担が明確になり,現在では甲状腺結節の質的診断のためには,超音波検査(US)および穿刺吸引細胞診(fine-needle aspiration biopsy cytology)による組み合わせが最も適切であることは異論のないところである1-3).さらに,従来より施行されていた触診穿刺吸引細胞診(Palpation FNABC)の精度を高めるために考案された,超音波誘導下穿刺吸引細胞診(US-guided FNABC)が,最近一般的になりつつある3-5).当院では,1994年4月よりUS-guided FNABCが導入され,現在まで1年が経過した.今回われわれは US-guidedFNABC導入前と導入後について甲状腺結節に対するUS,FNABCの診断能について比較検討した.

臨床報告・1

巨大転移性脾腫瘍の1切除例

著者: 小林利彦 ,   木村泰三 ,   吉田雅行 ,   櫻町俊二 ,   石原行雄

ページ範囲:P.105 - P.108

はじめに
 転移性脾腫瘍は一般に悪性疾患の末期あるいは剖検例で発見されることが多く,外科手術の対象となることはきわめて少ない1-3)
 今回,頸部皮膚癌の全身転移の一部分症として発症し,短期間で著明な増大を認めたため破裂の危険性を考え脾臓摘出術を行った1症例について報告する.

骨格筋転移をきたした進行胃癌の1例

著者: 中坪直樹 ,   木元文彦 ,   若狭林一郎 ,   清崎克美 ,   菅原洋一郎 ,   松井一裕

ページ範囲:P.109 - P.113

はじめに
 胃癌が筋肉転移をきたすことは稀な現象とされている.今回われわれは,右前脛骨筋に転移をきたした進行胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

同時性肺肝重複癌の1切除例

著者: 斉藤裕 ,   田畑敏 ,   平野誠 ,   橘川弘勝 ,   北川清秀 ,   増田信二

ページ範囲:P.115 - P.117

はじめに
 寿命の延長や診断技術の進歩とあいまって重複癌の頻度は近年増加している.その中で,肺肝重複癌はその頻度が少ない1,2)ばかりか,互いに転移病巣となりうる臓器であるため診断治療上,一考を要する疾患である.われわれは,このたび同時性肺肝重複癌の一期的切除例を経験したので報告する.

乳房顆粒細胞腫の1例

著者: 加藤俊彦 ,   宋博 ,   岩佐隆太郎 ,   西山典利 ,   木下博明 ,   山本隆嗣

ページ範囲:P.119 - P.122

はじめに
 顆粒細胞腫は皮膚・口腔に次いで乳腺に好発するといわれている3).しかし,実際に乳腺あるいは乳房に発生した顆粒細胞腫の報告例は少なく稀な疾患と考えられる.乳房に発生した顆粒細胞腫は,その臨床像が乳癌と酷似していることが多い.今回われわれは,乳癌との鑑別が困難であった顆粒細胞腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

肝切除を施行したアメーバ性肝膿瘍腹腔内破裂の1例

著者: 丸尾啓敏 ,   川合重夫 ,   富永秀次 ,   久米進一郎 ,   松本正廣 ,   飯原久仁子

ページ範囲:P.123 - P.127

はじめに
 アメーバ性肝膿瘍の報告例は最近再び増加傾向にある.抗アメーバ剤,膿瘍ドレナージによる治療で経過は一般に良好であるが,膿瘍破裂による合併症を起こした場合の予後は不良のことが多い.今回われわれは,腹腔内破裂により汎発性腹膜炎をきたしたアメーバ性肝膿瘍に対し,肝切除を施行した症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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