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文献詳細

雑誌文献

臨床外科51巻10号

1996年10月発行

外科医のための局所解剖学序説・3

頸部の構造 3

著者: 佐々木克典1

所属機関: 1山形大学医学部解剖学第一講座

ページ範囲:P.1311 - P.1321

文献概要

 総頸動脈の結紮が頸部の止血の治療に行われる場合がある.歴史的には1803年,David Flemingがのどを掻き切られた(あるいは掻き切った)患者の出血を止めるために行ったのが最初だと記載されている.Astley Cooperは1808年に頸動脈分岐部の広範囲な動脈瘤に対し総頸動脈を結紮している.遅れて1849年,Augustus Evesが総頸動脈の結紮の症例をLancetに報告したが,その内容は今まで学んできた解剖を考えるうえで非常に興味深い.かい摘んで書きとどめておく.
 「患者は自殺するために,ゆるく彎曲した刈り込みナイフを左下顎角の場所から反対側の同じ部位に達するまで突き刺し,そして横に引いた.Evesが診察したときは意識はなく,頸部は凝血のため膨らみ,傷口から出血が続いていた.傷は深く,切れた血管を見い出すことはできなかった.手首の脈は途絶えた.彼は総頸動脈を肩甲舌骨筋の下で結紮することが残された一縷の望みだと判断した.胸鎖乳突筋の内側縁をガイドに総頸動脈まで一気に開いた.動脈はすでに脈はなく,弱々しくみえた.動脈瘤穿刺針をその下に入れゆっくりと持ち上げ,迷走神経が動脈側にないことを確認し結紮した.その後,傷口のところで3つの口を持つ動脈を2本結紮した.出血は止まり,縫合後2〜3時間後には回復の兆しがみえ,つぎの日には元気になった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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