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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科51巻12号

1996年11月発行

雑誌目次

特集 外科医のためのペインクリニック

注意すべき頭痛とその対応

著者: 山本昌昭

ページ範囲:P.1385 - P.1391

 頭痛は主観的な症状であるだけに,注意深く患者の訴えを聞くことがとくに大切である.典型例では頭痛の局在,程度,経過を聞くことにより診断が可能なことが多い.ただ頭痛が主観的な訴えであるだけに,神経学的診断はもとより,必ずCTやMRIなどの画像診断を行い,何らかの頭蓋内器質的疾患の有無をスクリーニングすることが大変重要である.一般にそれまで未経験の頭痛,突発性ともいえる急性発症の頭痛,亜急性進行性頭痛はまず重大な原因疾患があると考えるべきである.常に原因疾患の検索や治療が優先され,効くからといって対症療法を漫然と続けることは避けるべきである.

緊急処置を必要とする胸痛とその対応

著者: 安田慶秀

ページ範囲:P.1393 - P.1397

 胸痛は胸部疾患に発生する共通した症状の1つで,痛覚神経圧迫または刺激により胸部に発生する疼痛である.胸部臓器疾患による痛みのほかに,腹部臓器の関連痛,放散痛も含まれる.胸部臓器による疼痛は胸壁や胸膜,肺,肋間神経,心臓,食道などの組織や臓器に関連したものがある.このうち心臓・大血管疾患の初発症状としての胸痛はとくに重要であり,迅速・的確に診断し治療を行うことが要求される.胸痛のうち緊急処置を必要とする疾患は狭心症,心筋梗塞,急性大動脈解離,大動脈瘤破裂や破裂切迫,肺塞栓症などがあり,これらは病態が重篤で発生頻度も高く,しばしば急死につながる.痛みの性質,強さ,持続時間を含めた病歴聴取,高血圧や血圧低下の有無からおおよその診断をつけ治療を開始しなければならないが,重症度と緊急度を正しく判断し,確定診断のための検査を優先すべきか,救急のための緊急処置を優先させるべきかを決定しなければならない.

注意すべき腰背部痛とその対応

著者: 小泉俊三 ,   原野清 ,   十時忠秀

ページ範囲:P.1399 - P.1404

 腰背部痛のマネージメントに当たって注意すべき点は,①原因疾患が骨筋肉系,泌尿器系,婦人科系,消化器系,時には大血管系と多岐にわたることを念頭に置いて,順序立った診断ストラテジーを組み立てる.②身体化症状としてアプローチすべき痛みから,血管系の救急疾患,予後不良な悪性疾患までを考慮に入れ,問診と診察を進める.③原因のはっきりしない腰背部痛に対しては,検査上,明らかな異常を指摘できないときでも,患者の話をゆっくり聴き,適切なフォローアップのためのプランを立てる.④ペインマネージメントのためには通常の鎮痛解熱薬の使用だけでなく,痛みの特徴と原因疾患に適合した各種薬剤・技法を組み合わせる.

—呼吸器外科分野—術後疼痛のコントロール

著者: 山崎史朗

ページ範囲:P.1407 - P.1412

 開胸手術における術後疼痛の一番大きな原因は,肋間神経への障害である.本稿では呼吸器外科領域でこの肋間神経へ配慮したいろいろな術後疼痛コントロール法を挙げ,とくに近年どの施設でも盛んに行われるようになった硬膜外麻酔について重点的に述べた.最近ますます増加している高齢者に対する手術を如何にして安全に,しかも患者にとってできるだけ苦痛を少なくして行うかは非常に重要で,術後合併症の予防という面でもなおざりにはできない.

—消化器外科分野—術後疼痛のコントロール—持続イソフルレン吸入とモルヒネ持続硬膜外注入による術後疼痛管理

著者: 八木雅夫 ,   橋本哲夫 ,   宮崎逸夫

ページ範囲:P.1413 - P.1417

 循環・呼吸系の術前合併症を伴う食道癌手術症例10例に対し,低濃度持続イソフルレン吸入と塩酸モルヒネ持続硬膜外注入による術後疼痛管理を実施した.イソフルレンの吸入濃度は0.3〜0.5%,塩酸モルヒネの投与量は20mg/3days,平均投与期間は6日間であった.長時間の臥床に対する理学療法を併用したが,他の鎮痛剤や鎮静剤は必要とせず,不穏状態や患者からの苦痛の訴えもなく,吸入中止後24時間以内に人工呼吸器からの離脱が可能であった.したがって,本法は長期の循環・呼吸管理を要する食道癌手術症例の術後の疼痛を効果的に緩和させ,精神的ならびに循環系への負荷の軽減に有用であると考えられた.

癌性疼痛のコントロール

著者: 前野宏

ページ範囲:P.1419 - P.1426

 癌患者の約70%が癌性疼痛を訴えるといわれる.癌性疼痛コントロールに対しては,WHOの3段階除痛ラダーを用いる方法が普及している.そして,基本は薬剤によるコントロールであり,その中心はモルヒネである.モルヒネには副作用もあるが,モルヒネをいかに使いこなすかが,良い疼痛コントロールができるかどうかのポイントである.また,少数ではあるが,モルヒネに反応しずらい癌性疼痛がある.その場合には,モルヒネ以外に鎮痛補助薬(抗うつ薬,抗けいれん薬,抗不整脈薬,ステロイドなど)を積極的に用いるようにする.

麻酔科医からみたペインクリニックの実際—携帯型ディスポーザブル持続注入器を用いた硬膜外ブロックを中心として

著者: 鈴木利保 ,   滝口守

ページ範囲:P.1427 - P.1432

 開腹,開胸手術後の疼痛管理にゴムの収縮によって微量の薬液の一定量を注入できる携帯型ディスポーザブル持続注入器(以下,インヒューザーポンプ)を用いて,術中留置した硬膜外カテーテルから少量のオピオイド(塩酸モルヒネ,ブプレノルフィン)と局所麻酔薬(0.25%ブピバカイン)を投与する疼痛管理法を行い,その管理上のポイントについて述べた.この方法は簡単で,頻回注入の必要がなく,看護婦や医者の負担が少なく,鎮痛効果は約80%の症例で他の鎮痛薬を必要としなかった.また副作用も少なく,優れた術後疼痛管理法であると思われる.

鎮痛薬,鎮静薬の処方とその留意点

著者: 石埼恵二

ページ範囲:P.1433 - P.1438

 手術後の痛みがないことは患者にとって大変重要なことである.術後の痛みの対策をしている病院に多くの患者が集まるようになりつつある.鎮痛薬および鎮静薬の使用法に熟練することは医師にとって最も大切なことである.小手術では非ステロイド系抗炎症薬を適切に処方する必要がある.開腹などの手術では,オピオイド性鎮痛薬の適切な使用が重要な役割を果たす.手術前夜の催眠剤と麻酔前投薬や,不安や興奮を示す患者に対する鎮静薬の適切な使用も大切なことである.このような薬剤の処方と副作用について解説する.

整形外科的疼痛への対応

著者: 仲田和正

ページ範囲:P.1439 - P.1444

 小病院の「外科」では整形外科を兼務することが多いが,その場合,受診する患者さんの7割以上は整形外科疾患となる.したがって,外科で開業する場合,整形外科研修は必須である.整形外科で遭遇することの多い腰痛,膝の痛み,肩の痛みの実戦的なマネジメントについて述べる.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・23 胃・十二指腸

腹腔鏡下胃空腸吻合術

著者: 林賢 ,   宗像康博 ,   村上真基 ,   橋本晋一 ,   沢野紳二 ,   川崎誠治

ページ範囲:P.1375 - P.1382

はじめに
 胆嚢摘出術から始まった腹腔鏡下外科手術は低侵襲という利点を有しており,技術の進歩と器具の開発に伴い,種々の消化器疾患に対する臨床応用した手術が報告されている.胃幽門,十二指腸狭窄,閉塞症は非切除進行癌で遭遇する合併症であるが,嘔吐症状などを伴うようになると開腹下での消化管吻合術を必要としてきた1,2).我々はこのような悪性疾患に伴う幽門および十二指腸の閉塞症例に対し,低侵襲である腹腔鏡下の手術手技を応用し腹腔鏡下胃空腸吻合術を行っており,良好な成績を得ているので,術式の工夫を中心に論述する.

臨床外科交見室

腸管吻合にまつわる冠名を再検証する

著者: 佐藤裕

ページ範囲:P.1447 - P.1447

 冠名(Eponym)とは,解剖学上の新知見や生理学的な法則,新しい手術法や手技などを,その報告者ないし普及させた者の名を付して呼ぶことである.消化器外科の分野に目を向けると,腸管吻合に関して“Albert—Lembert(アルベルト‐ランベール)縫合”がよく知られている.日本においては,腸管吻合に際して「全層縫合後に漿膜筋層縫合を追加し,腸管を二層性に縫合する」ことが一般的に行われ,慣習的に“Albert-Lem-bert縫合”と呼ばれているが,「厳密に言うとこの吻合法を“アルベルト‐ランベール法”というのは間違いである」というのが本編の主旨である.
 まずアルベルト縫合であるが,これは故堺利彦新潟大学教授の考証によると,1922年に発刊された“Chirurgische Oper-ationslehre(Bier-Braun—Kümmell)の中の”Nahttech-nik"の項の記述に始まるものである.

病院めぐり

市立函館病院外科

著者: 小澤正則

ページ範囲:P.1448 - P.1448

 市立函館病院は万延元年(1860年)箱館医学所として開設された北海道で最初の病院で,130有余年という国内でも有数の歴史と伝統をもつ.このため建物は函館市の歴史的建造物の数多く残る観光スポットの真中にあって,最上階からの湾と市街を見下ろす眺望はすばらしい.しかしこの反面,老朽の誹は禁ずべくもなく,加えて最近の高度医療の実践に当たって,市景観条例の制約と土地の狭隘から増築もままならない状況にある.そこで西暦2000年,ちょうど当院開院140周年の記念すべき年を目度に移転新築の計画が進行中である.現在の市立函館病院は診療科数が19あり,病床数は精神神経科の分院を含め913である.
 また北海道南西部の半島部分は道南地方と称され,当院はこの住民55万4000余人を対象とする地方センター病院として3次救命救急センターとしての役割も担っている.道南地方における圏域内受診率は入院で88.0%,外来94.6%と高く,当圏内での医療の完結性が求められていることより,当院には採算性にとらわれない高度な医療を提供するための専門的な技術や施設を整えることが求められている.

盛岡赤十字病院外科

著者: 斉藤純一

ページ範囲:P.1449 - P.1449

 盛岡赤十字病院は大正天皇即位記念行事として,大正9年4月に日本赤十字社岩手支部病院として石川啄木の学び舎としても有名な盛岡中学校の校地および校舎などの交付を受け,98床で開院しました.その後数度の新築,増築の後,建物の狭隘,老朽化などのため前川村隆夫院長の英断で昭和62年12月に「緑に囲まれた,心温まる病院」を模索しながら盛岡市郊外の現在地に移転新築しました.
 診療圏は盛岡市周辺で人口約48万人を擁し,一般病床数492床,一日外来患者数が約1,100名の病院です.外科病床数は53床で,当外科は日本外科学会・日本消化器外科学会・日本大腸肛門病学会の認定修練施設に指定されています.常勤医3名,非常勤医2名,嘱託医3名からなり,非常勤医は岩手医科大学第1外科と第3外科から3か月あるいは6か月のローテーションで大学からの新しい風を持ち込んでもらい常勤医の老化(?)を防いでいます.手術日は火曜日から金曜日とし,木曜日の午後5時からは放射線科,消化器内科などの関連する科の医師が集まり,症例検討を行っています.

メディカルエッセー 『航跡』・3

アジア小児外科学会(1)

著者: 木村健

ページ範囲:P.1450 - P.1451

 アジアは,東はニッポン,北はモンゴル,中国,韓国,南はインドネシア,そして西はアフリカとスエズ運河で境されたイスラエルバルカン半島と黒海の出口のボスポラス,ダーダネルス両海峡で境されたトルコの広大な範囲に入る国々によって構成されている.この広大な地域には,人種,宗教,歴史,文化,言語はもちろん,文明の度合いの大きく違う国々が国境を接してひしめき合っている.そうした国を代表する小児外科医が集合してできた学会がアジア小児外科学会である.産みの親,育ての親をつとめて来られた駿河敬次郎,葛西森夫,植田隆先生方のまとめ役としての御苦労は大変なものであったと伺っている.たとえば,会員の定義ひとつをとってみても,当初は個人会員と各国の小児外科学会を併せて会員とするという,無茶苦茶な案が某国グループのゴリ押しによって採択された.そもそも会というものは,責任ある個人の集まりによって成立するものである.個人と団体が入り混って会員をなすのは水と油を混ぜるようなものである.それでも,会が離散せずに存続して来たのは,まさにアジア的であるが,その背後にはアジアの小児外科の発展のためにという貴い信念をもって,勝手気ままな各国のリーダー達をなだめすかし,舵とりをして来られた先達の方々の努力があったからであろう.

私の工夫—手術・処置・手順・26

結腸吻合における線状吻合器を用いた機能的端々吻合法

著者: 水谷伸 ,   角村純一 ,   三木康彰

ページ範囲:P.1452 - P.1452

 消化器外科領域においては,消化管吻合,とくに結腸吻合における自動吻合器の普及は目覚ましく,その安全性は次第に高まりつつあるが,いまなお吻合法の安全性や確実性の追求が課題である.われわれは,結腸結腸吻合あるいは結腸小腸吻合をより安全確実かつ迅速に行う目的で,自動線状吻合器を用いた機能的端々吻合法を施行してきたのでその手術手技と有用性について紹介する.
 吻合に使う機械は,Ethicon社のPLC75とUS Surgical社のGIA90である.吻合法の実際は,まず腸管を切離予定線で切断後,吻合する近位側,遠位側の腸管を,腸間膜の反対側が合うように持ち上げ,それぞれの切断面から線状吻合器(Eth-icon社のPLC75)のフォークを挿入する.次に腸間膜反対側の結腸紐上にて自動吻合器をファイヤーし,これにより腸管どうしの側々吻合が完成する(図1).その後吻合器を挿入した断端から腸管内腔を観察する.側々吻合の完成,吻合口の大きさ,および吻合線からの出血のないことを直視下に観察後,吻合器を挿入した断端を,再度線状吻合器(US Surgical社のGIA90)にてファイヤーして閉鎖し吻合は完了する(図2).

外科医のための局所解剖学序説・4

頸部の構造 4

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.1455 - P.1464

 甲状腺摘出の歴史は古く,痛ましい.J-L.ReverdinとE.T.Kocherが甲状腺の一部を残して取り除く手術方法にたどりつくまで,約2000年の間,屠殺行為と非難され続けた.その歴史的経過をたどると,甲状腺の解剖学的特徴や性質が浮かび上がってくる.
 最初に人類が遭遇したのは,甲状腺摘出の際に生じるおびただしい出血であった.甲状腺の血管分布は外頸動脈と鎖骨下動脈の二重支配を受け,下甲状腺動脈は奥から上がってきて裏面に分布する.さらに,被膜直下で枝は細かく分かれ表層を這う.静脈の分布も豊富であり,いずれも内頸静脈,腕頭静脈に直接注ぎ込み,扱いにくいものである.J.Thorwaldは,出血を回避するための特殊な止血鉗子の開発と200回以上の結紮が必要だったと述べている.

詳説 皮膚割線の局所解剖・2

女性解剖体における顕出例の示説—骨盤部から下肢にかけて

著者: 伊藤由美子 ,   佐藤達夫

ページ範囲:P.1467 - P.1475

はじめに
 第1回の「体幹から肩・腋窩にかけて」に引き続き,第2回は骨盤部を含む下肢の割線について示説する.下肢のなかでも特に,(1)体幹から下肢への移行部の割線の変化,(2)下肢の前後のみならず,外側と内側を加えて4方向からとらえること,(3)下腿から足への移行部の割線の変化および(4)足背・足底の割線の精査,などに留意して詳細図(図10),展開図(図11),総合図(図13)を活用して皮膚割線を示説する.

臨床研究

消化器外科領域の中心静脈栄養患者におけるCAND-TECの有用性

著者: 寅田信博 ,   中村賢二郎 ,   黒木祥司 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.1477 - P.1481

はじめに
 近年頻用される中心静脈栄養管理(以下,IVH)は,消化器外科領域の術前術後に寄与しているが,IVH下の原因不明の発熱にIVHルートを感染源とした深在性真菌感染症の関与が示唆されている1).深在性真菌感染症はその診断が困難であることに加え,ひとたび真菌性髄膜炎や真菌性眼内炎を惹起すると,意識障害や失明などの重篤な合併症を引き起こすことがあり2),その発生予防および早期診断・早期治療が望まれている.CAND—TECTM(RAMCO Labs, Inc.以下,C-T)は,抗Candida抗体を用いたLatex凝集反応で,簡便に深在性Candida感染症を診断できるといわれている3).しかし,その臨床的有用性はいまだ明らかでなく,検査の適応と結果の評価に関して一定の見解は得られていない4)
 今回,われわれはIVH患者におけるC-T陽性率と陽性強度を追跡し,C-Tの有用性と限界について検索した.さらに,定期的なC-Tの施行によりIVH中の発熱や深在性Candida感染発症を事前に予測できるかを検討した.

臨床報告・1

卵巣腫瘍との鑑別が困難であった有茎性小腸平滑筋肉腫の1例

著者: 木村寛伸 ,   村岡恵一 ,   前田基一 ,   薮下和久 ,   小西孝司 ,   三輪淳夫

ページ範囲:P.1483 - P.1485

はじめに
 小腸原発平滑筋肉腫は,比較的稀な疾患であるが,最近報告例が増加している.しかし,術前診断された症例が少ないのが現状である.今回われわれは,卵巣腫瘍の術前診断のもとに開腹し,術中,有茎性の小腸原発腫瘍と判明した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

卵管留膿症破裂による汎発性腹膜炎の1例

著者: 中山隆 ,   鈴木勝一 ,   渡辺治 ,   原川伊寿 ,   小栗久典 ,   松浦聖睦

ページ範囲:P.1487 - P.1489

はじめに
 急性腹症を呈する婦人科疾患のうち,卵管留膿症破裂による汎発性腹膜炎は稀な疾患とされている1).今回われわれは,術前診断に難渋した1例を経験したので,若干の文献的報告を加えて報告する.

乳腺原発性悪性リンパ腫の1例

著者: 山本俊二 ,   浮草実 ,   有本明 ,   中島康夫 ,   花房徹兒 ,   粟根弘治

ページ範囲:P.1491 - P.1493

 乳腺原発性悪性リンパ腫は稀な疾患であり,その頻度は節外性悪性リンパ腫の2.2%で,全乳腺悪性腫瘍の0.5%である1,2).今回われわれは,乳腺原発性悪性リンパ腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術の1例

著者: 小原靖尋 ,   福田武隼 ,   高橋秀光 ,   門馬公経 ,   小暮洋暉

ページ範囲:P.1495 - P.1498

はじめに
 腹壁瘢痕ヘルニアは,外科的治療でのみ唯一根治が可能であるが,腹壁瘢痕ヘルニア根治手術後の再発率も比較的高い1).しかし,腹壁瘢痕ヘルニアに対する手術法の中で,メッシュなどのpros-thesisを用いた補綴術は比較的再発率も低いと報告されている1).また,最近では手術侵襲や疼痛の軽減などの利点から腹腔鏡下手術が急速に普及し,さまざまな外科手術が腹腔鏡下に施行されつつある.今回われわれは,開腹胆嚢摘出術後の腹壁瘢痕ヘルニアに対し,マーレックスメッシュを用いた腹腔鏡下修復術を施行し良好な成績が得られたので,手術手技を中心に報告する.

高アミラーゼ血症を契機に発見された膵転移を伴う腎細胞癌の1切除例

著者: 杉原重哲 ,   小原井朋成 ,   金子隆幸 ,   江上哲弘 ,   小田芳郎 ,   小野恭平

ページ範囲:P.1499 - P.1502

はじめに
 腎細胞癌は肺,肝,骨などへの血行性転移は比較的容易に来たすが,膵への転移は稀である1).最近われわれは,検診にて高アミラーゼ血症を指摘され,精査ののち膵転移を来たした腎細胞癌と診断され,手術を施行した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・2

ドキシサイクリン注入療法が有効であった上皮小体嚢胞の1例

著者: 武井秀史 ,   尾関豊 ,   片桐義文 ,   立山健一郎 ,   小久保光治 ,   松原長樹

ページ範囲:P.1504 - P.1505

はじめに
 上皮小体嚢胞は比較的稀な疾患であるが,頸部腫瘤を来たす疾患として鑑別を要するものである.治療方法としては,外科的に切除されているものが多いが,穿刺吸引およびドキシサイクリン注入療法によって軽快した上皮小体嚢胞の1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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