icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科51巻13号

1996年12月発行

雑誌目次

特集 大災害に対する外科医の備え

災害医療情報システムの構築と外科医の役割

著者: 山本光昭

ページ範囲:P.1521 - P.1524

 厚生省では,平成8年度から従来の「救急医療情報システム」を拡充し,災害時にも対応できる「広域災害・救急医療情報システム」として再編していくこととしている.これは従来の通常時の救急医療情報に加え,災害医療情報モードを設定し,全国共通の入力項目の設定,ISDNを利用した全国ネットワークの構築等を行っていくものである.「広域災害・救急医療情報システム」が機能するか否かは医療機関が「情報の発信」を行うことにかかっており,外科医をはじめとする医療関係者が「情報の共有化」を図っていくことが重要である.

救急医療体制と指揮系統の整備

著者: 山本保博

ページ範囲:P.1525 - P.1530

 わが国の救急医療体制の歴史と現状を概観し,整備のポイントについて述べた.筆者は長年にわたって世界の災害を調査し,提言を行ってきたが,昨年の阪神・淡路大震災では救急医療体制が十分に機能しなかった.従来の救急医療が災害医療に対応できなかったという反省の基に,災害医療に対する体制の構築が緊急の課題である.
 整備は全国どこでも通用するオールマイティーのものはないが,情報のコントロールと搬送手段の再検討は共通の課題である.

大規模災害時における傷病者の搬送システム

著者: 猿渡知之

ページ範囲:P.1531 - P.1538

 大規模災害時における救助・救急活動は災害医療との連続性が不可欠である.具体的には,現場拠点の設営,トリアージ,応急手当(医師および住民との連携),傷病者の搬送(①現場近くのトリアージポストと応急処置が可能な被災地域内の医療機関との間のピストン搬送,②応急処置を行う被災地域内の医療機関と本格的治療を行う後方医療機関との間のピストン搬送(ヘリ,救急自動車,バス等による)等を円滑に実施しなければならない.
 そのためには,平素において,災害現場における要救助者の検索・救助と災害医療の連携システムの確立とその訓練,応急手当等の技術を有する住民との協力体制の確立とその訓練,さらに,ヘリコプターによる救急業務の本格的実施が必要である.

トリアージの実践

著者: 青野允

ページ範囲:P.1539 - P.1543

 災害医療はsearch & rescueに引き続いて行われる3つのTの原則を守ることが重要である.特に最初のTであるトリアージは災害現場での第1回目に続いて最終的治療が終了するまで繰り返し行われるダイナミックプロセスである.
 そのコツは被災者が多ければ多いほど短時間で終了させることにあり,回復の見込みのない被災者を潔く諦め,治療の不必要な軽症患者を除外することにある.その原則は,生命は四肢に優先し,四肢は機能に優先し,機能は美容に優先する.病院におけるトリアージは看護婦,事務員とのチームで行うのが理想的である.治療は行わず,トリアージが済んだらタッグを被災者の右手あるいは右足首に付けて,後方に搬送させる.

病院建築・設備と医療機器等の耐震性

著者: 中山茂樹

ページ範囲:P.1545 - P.1549

 阪神・淡路大震災では,多くの建物に被害がおよび,病院建築も例外ではなかった.しかし,病院建築の耐震性についてはすでに諸基準が整い,それらに準拠すれば,少なくとも倒壊に至る危険はない.さらに進んだ耐震性能を持つ建築手法も開発されている.一方,病院の機能を維持し,地域が期待する災害医療を提供できるかどうかは設備や医療機器等の耐震性が決め手となる.この点については,現在のところ,病院はさまざまな課題をかかえていると言えよう.固定方法や管理方法について検討を加えなければならない事項は多々ある.外科領域においては,救急処置や緊急手術にどのように対応するか,建築学と外科学の境界領域としての議論が待たれる.

医薬品の備蓄・供給システム—「大規模災害時の医薬品等供給システム検討会報告」より

著者: 渡辺徹

ページ範囲:P.1551 - P.1555

 1995年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災の経験を踏まえて,厚生省は,昨年,「大規模災害時の医薬品等供給システム検討会」を設け,大震災時における医薬品の確保,供給システムについて,検討を行った.
 同報告では,大震災に備えた事前対策,災害発生直後における初動対応,救援活動が長期化した場合の対応に分けて,それぞれ医薬品の確保,供給対策をまとめている.特に,行政(国および都道府県),製薬・卸業,医師会・薬剤師会,等それぞれの関係者の役割の明確化と連携が重要とし,事前からのネットワークづくりの必要性を指摘している.

病院における内部備蓄の具体案

著者: 河口豊

ページ範囲:P.1557 - P.1560

 地震による大災害時に初期の災害医療に対応するため,外科系医師が診断・治療する際の院内に備蓄しておくべきものについて論述した.まず阪神・淡路大震災での状況を説明し,全体的診療機能と各部門の低下の要因は,多くが水と電気や熱源であることを述べた.次に甲南病院(病床数400)と鐘紡記念病院(病床数242床)の活動を調査やそれぞれの病院誌から概略を述べ,医薬品や診療材料の補給のしかたを示した.続いて大震災時の外科系活動は応急処置に限定せざるをえず,できるだけ早く被災地外の病院に移送すべきであるとの考え方を述べた.さらに大震災時の器材供給体制も早い対応をすれば被災地外の組織からの救援を含め,病院ではかなりの補給を受けられたことを示した.最後に備蓄品とその運用について述べ,災害時初期の2〜3日の外科系活動を支えるための主な備蓄品リストを示した.さらにそれらを災害時用にのみ保管することなく,日常的に運用し,災害時には対応することが望ましいと指摘した.

大災害に対する各種マニュアル

著者: 木村佑介

ページ範囲:P.1561 - P.1565

 防災を考える時,災害に対する計画,訓練,備蓄が必要であると言われている.本稿では東京都医師会の救急担当の立場から,東京都衛生局等関係機関(都医師会を含む)で構成された,「東京都災害医療運営連絡会」で作成した各種マニュアルについて紹介し,意見を述べた.

大震災時における既入院患者への対応

著者: 冨永純男 ,   滝吉郎 ,   坂野茂

ページ範囲:P.1567 - P.1571

 大災害発生時,自病院で十分な治療をすることができないと判断した際は,速やかに重症者から十分な機能を果たす病院への転送を決断するべきである.
 その際の情報収集,搬送システムについては,広域での対応策を平時より考えておく必要がある.
 大災害時,医師は専門を離れ,プライマリケアに徹して行動すること,また場合によっては,搬送,整理等の雑用にも率先して取り組むことの大切さを強調したい.

自己完結型救護班の編成

著者: 河野正賢

ページ範囲:P.1573 - P.1575

 派遣救護班は,現場診療に必要な医療用資器材に加えて,自班員の現地生活を自弁する物品を携行しないと,生活環境が遍迫している被災者の生活や被災病院機能を更に侵害する恐れが大きい.
 自己完結に必要な留意点は,1)救護班員構成と班員能力,2)携行物品の内容と量,3)情報交換器機の携行,4)物品搬送車両整備の4点で,発災直後であるほど携行物品は多岐に亘り,搬送量も増加するが,搬送車両の緊急車両認定が裁可され難いことが問題である.
 各班員は状況に応じて柔軟に対応する平素からの能力育成が必要であり,携行物品は予め十分に準備され整理格納されていないと,「緊急出動」と「自己完結効果」が達成され難い.

災害用の野外医療施設と移動病院

著者: 甲斐達朗

ページ範囲:P.1577 - P.1581

 災害時には,医療の需要と供給間にアンバランスを生じ現場より適正な医療施設への負傷者の流れがスムーズにいかず,未治療あるいは十分な治療が受けられない負傷者(患者)が様々な場所で放置されることがある.そのため,これらの負傷者の治療を行うため野外医療施設の設営が必要となる.災害の各時相により医療ニーズは変化するので,そのニーズに適した野外医療施設の設営が重要である.その迅速な展開を可能にする事前の訓練はもちろんのこと医療班の指揮命令系の確立,医療従事者の保険等の補償制度の確立,災害の時相に適した医療装備・医薬品のパッケージ化された備蓄等の事前の準備が最も必要である.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・24 大腸

腹腔鏡補助下右結腸切除術

著者: 小西文雄 ,   永井秀雄 ,   岡田真樹 ,   小澤昭人 ,   仙波真吾 ,   金澤曉太郎

ページ範囲:P.1513 - P.1519

 腹腔鏡補助下の結腸切除術は試みられるようになってからはまだ日が浅く,適応の問題や技術的な面で今後解決されなければならない点が残されている.欧米では低侵襲であるということにより腹腔鏡下結腸切除術が広まりつつあるが1),欧米と本邦では,大腸癌の手術においてリンパ節郭清の範囲が異なることもあり,欧米における腹腔鏡下大腸癌切除手術の術式をそのまま本邦に取り入れることには問題があるかと考えられる.また,大腸癌に対して本術式を施行した症例においてtrocar挿入部位に癌の再発をきたした症例が欧米にて少なからず報告されて問題となっている2).このような問題点もあるが,適応となる症例を適切に選択することにより,本邦においても大腸外科の領域における腹腔鏡下手術は今後発展しうるものと予測される.
 本稿では,腹腔鏡補助下右結腸切除術の手術手技および手技上の問題点などを中心に述べる.

病院めぐり

市立秋田総合病院外科

著者: 伊藤誠司

ページ範囲:P.1582 - P.1582

 市立秋田総合病院は人口30万人の秋田市の中心部,官庁街に隣接する高台に立地しています.病院の歴史は,昭和2年設立の市立秋田診療所と昭和3年開設の伝染病院市立上野病院が,戦後に合併,拡張しながら昭和33年に病床数267の市立秋田総合病院に改称したのに始まります.昭和59年の全面改築で,CT・MRI・LINAC・RIなどの診療設備を整備し,一般病床410床,結核60床,精神60床,伝染20床,の合計550床に増床して,現在は19の診療科を標榜しています.
 外科は脳外科と心臓血管外科をのぞいて胸部外科,消化器外科,乳腺・甲状腺外科などを中心に一般外科を担当しています.外科のスタッフは進藤院長をはじめ9名で,弘前大学と秋田大学の関連施設としてそれぞれの外科教室から1名ずつの研修医を受け入れています.また日本外科学会,日本消化器外科学会の修練病院に指定されています.外科の病床は53床ですが,病室の構造上の制限から実稼働は46床前後が限界です.当科では第一線病院として緊急症例や終末期症例も多く,高齢者の有合併症者の増加で入院期間の延長傾向がみられ,さらに感染症対策や入院環境の改善に向けて個室化が要求され,常に病床は不足気味で,病床の効率的運営に苦心しています.

仙台厚生病院外科

著者: 髙橋里美

ページ範囲:P.1583 - P.1583

 仙台厚生病院は,昭和18年,当時は国民病と目されていた結核を患う人々のために,社団法人生命保険厚生会によって,全国各地に開設された病院の一つです.仙台駅の西北約3km,“青葉城恋唄”の冒頭にでてくる広瀬川を挟んで青葉山が眺望できる位置にあります.
 創立以来,東北大学抗酸菌病研究所(現:東北大学加齢医学研究所)と一体となって,結核,呼吸器病,癌,心臓病など時代の求める疾患の診療・研究を行ってきました.平成8年3月に全面改築を行い,11階建ての新しい病院として再出発しました.

メディカルエッセー 『航跡』・4

アジア小児外科学会(2)

著者: 木村健

ページ範囲:P.1584 - P.1585

「木村君,アジア小児外科学会のリフォームに大分難渋しとるようやが,進展しとるか.ひとつ言っておきたいことは,それぞれの国のリーダーをひとりだけ選んで,その人だけとコンタクトすることやな.複数の人を相手にするとそれぞれ言うことがバラバラで,わけがわからなくなる.これというリーダーを選んだら,その人柄をしっかりつかんで,交渉ごとでは,その人をたてるようにせなあかん」
 植田先生は当時まだお元気で,このような御鞭撻を毎日のようにいただいた.お蔭をもって,リフォームは着々と進み,個人会員と学会を併せてメンバーとするとした旧規約を過去のものとし,個人会員のみで構成された学会に変身させることができた.

外科医のための局所解剖学序説・5

頸部の構造 5

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.1587 - P.1595

 解剖学実習で椎骨動脈の走行を始めから終わりまでたどることは少ない.起始は胸郭上口の奥であるが,その場所は狭く実際剖出しにくい.その後第6頸椎の横突孔に入り,つぎつぎと孔をくぐり抜けていくが,あえて横突孔を開けて観察することはしない.後頭下三角で第1頸椎の後弓にわずかに乗る椎体動脈を確認し実習は終わる.時間をずらして脳実習で脳底動脈に続く椎骨動脈の断端を見ることになる.このように椎骨動脈の知識は断片的であり不連続である.一見なじんでいるようで,実際はなじみの薄い血管である.
 椎骨動脈はもともと肋間動脈と同じように背側動脈から規則正しく出たものが,頸椎の肋骨に相当する場所と横突起に相当する部位の間,すなわち横突孔の中で第1番目から第6番目が縦に吻合し,背側動脈との横のつながりを失ったものである.第7番目の背側動脈とのつながりはそのまま残り鎖骨下動脈からの起始になる.大後頭孔に入った動脈はちょうど前脊髄動脈のように1本になり脳底を走る.

膜の解剖からみた消化器一般外科手術・5

結腸癌根治術・解剖学的事項

著者: 金谷誠一郎

ページ範囲:P.1597 - P.1608

はじめに
 今回から癌に対する手術の解説を行う.まずはじめに,消化器癌の手術としては比較的わかりやすく,基本的ともいえる結腸癌を取り上げ,解剖学的事項の解説から行うこととする.
 癌に対する根治術とは,原発病変の摘除以外に,周囲リンパ節の摘除・郭清がなされなければならない.本連載第1回(本誌1996年5月号)でも触れたとおり,リンパの流れはその領域の支配動脈に沿って中枢側(大動脈周囲)に向かっており,しかもそれらリンパ組織はすべて腹膜下筋膜の2葉に包まれた層に存在している.実際の手術では,原発病変とともに,これらのリンパ組織をできる限り膜(腹膜下筋膜)に包まれたまま,つまりその領域のリンパ組織を残存させることなく摘除する必要がある.したがって,癌の手術に際して知っておくべき重要な解剖学的事項は,腹膜下筋膜を中心とする膜の構造と,その内部での血管系・リンパ系の走行ということになる.

臨床研究

大腸癌肝転移巣における被膜形成および炎症性細胞浸潤の予後への影響

著者: 青山博 ,   原田武尚 ,   小縣正明 ,   今井史郎 ,   石川稔晃 ,   内田博也

ページ範囲:P.1610 - P.1616

はじめに
 大腸癌肝転移に対する肝切除術の意義はほぼ確立されたかにみえる.諸家の報告によると,大腸癌肝転移切除症例の5年生存率はおよそ25〜52%1,2)であるが,しかし如何なる症例が長期に生存し得るのかは明らかではない.肝切除後の予後を規定する因子として,現在までに,転移巣の大きさ3),数2,4),同時性・異時性5),DNA ploidypattern4),肝切除術式2,6),輸血1),被膜形成7)などの報告があるが未だ不明な点が多く,意見の一致をみていない.
 最近,われわれは臨床的予後因子だけでなく,病理組織学的因子についても検討した結果,担癌宿主側の反応である細胞浸潤が,予後因子としての被膜形成に深くかかわっていると考えられる成績を得たので報告する.

十二指腸潰瘍穿孔の保存的治療—限界と手術のタイミング

著者: 笠倉雄一 ,   河野悟 ,   中田泰彦 ,   横山武史 ,   大亀浩久 ,   大澤崇

ページ範囲:P.1617 - P.1623

はじめに
 H2レセプター拮抗剤(以下,H2RA),プロトンポンプ・インヒビター(以下,PPI)の登場は従来絶対的手術適応とされてきた十二指腸潰瘍穿孔の治療に対し,多大な影響を及ぼすに至り,保存的治療が積極的に選択されるようになってきている1).しかし保存的治療にも限界があり,手術を行わざるをえない場合がある.その際に手術適応と時期の決定さらに術式に関しては諸家によって異なる.筆者らは十二指腸潰瘍穿孔例に対し,保存的治療を第一選択として行ってきたが,手術を行わざるをえなかった症例を経験したので,保存的治療の限界と手術のタイミングについて自験例をもとに文献的考察を加え検討を行った.

臨床報告・1

CarboplatinとOK−432の心嚢内投与による致死的収縮性心膜炎の1例

著者: 三井敬盛 ,   佐々木信義 ,   丹羽篤朗 ,   柴田和男 ,   大和俊信

ページ範囲:P.1625 - P.1628

はじめに
 最近我々は,胃癌転移による癌性心膜炎のため心タンポナーデをきたした症例を経験した.心嚢水のコントロールを目的に,心嚢持続ドレナージ下にcarboplatinとOK−432の心嚢内投与を行ったが,収縮性心膜炎の状態となり患者は投与後早期に死亡した.収縮性心膜炎が心嚢内への薬剤投与に起因すると考えられたため,若干の考察を加え報告する.

イレウス術後に腸重積を発症した1症例

著者: 村野武志 ,   稲田髙男 ,   長谷川誠司 ,   松隈治久 ,   奥村拓也 ,   尾形佳郎

ページ範囲:P.1629 - P.1632

はじめに
 成人腸重積症は,比較的稀な疾患であり,乳幼児の腸重積症に比べ,そのほとんどが,何らかの器質的疾患を有しているのが特徴である.
 今回我々は癒着性イレウス術後に,癒着した小腸が先進部となり,腸重積症を発症した1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

イレウスをきたした回腸導管造設術後傍ストーマヘルニアの1例

著者: 宮本康二 ,   玉木雅人 ,   山本哲也 ,   清水幸雄 ,   由良二郎 ,   岩田英樹 ,   長谷川義和 ,   山本直樹

ページ範囲:P.1633 - P.1635

はじめに
 傍ストーマヘルニアは人工肛門造設後にしばしばみられる合併症であるが,イレウスをきたすことは稀である1)
 今回われわれは,膀胱癌にて膀胱全摘術後に造設された回腸導管皮膚瘻部に生じた傍ストーマヘルニアにより,イレウスをきたした症例を経験したので報告する.

3腫瘤の肛門脱出をきたした直腸villous tumorの1例

著者: 青木信一郎 ,   石川亨 ,   河合雅彦 ,   十字幸子 ,   甲賀新 ,   佐治重豊

ページ範囲:P.1637 - P.1640

はじめに
 大腸腺腫のなかでも絨毛性腫瘍(villoustumor)は,その肉眼的および組織学的特徴に加えて,粘液分泌および高頻度の癌化などの特徴を有している1).臨床症状としては下血,粘液便,下痢,便秘,肛門脱出などを認めるが,近年,人間ドックや大腸癌検診での無症状での発見例も増加している2,3)
 今回筆者らは,同時に3個の腫瘤が肛門外に脱出した癌化を伴った直腸villous tumorの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

--------------------

「臨床外科」第51巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?