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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科51巻2号

1996年02月発行

雑誌目次

特集 甲状腺外科の新しい展開

超音波スクリーニング発見小腫瘤の取扱い

著者: 柄松章司

ページ範囲:P.143 - P.149

 当科では1991年3月よりUSによる甲状腺検診を行っている.1995年2月までの4年間に延べ12,481人が検診を受診し,49人の甲状腺癌を含む1,733人に腫瘤を認め,そのうち2/3以上は1cm以下であった.内訳は1cm以下の嚢胞726人,0.5 cm以下の充実性腫瘤374人,1 cm以下の癌27人がみつかった.USの普及によって小さな甲状腺腫瘤が続々とみつかるようになったが,1cm以下の腫瘤はほとんどが治療対象とならない.嚢胞,腺腫,腺腫様甲状腺腫は穿刺細胞診をすることなく,USのみで1〜2年に一度の経過観察でよい.癌であっても被膜浸潤や転移リンパ節を触知しなければ,1cmを超えるまでは半年ごとの経過観察でよいと考える.

甲状腺細胞診と術中迅速病理診断

著者: 中村靖司 ,   覚道健一

ページ範囲:P.151 - P.156

 甲状腺穿刺吸引細胞診はほぼすべての甲状腺腫瘤に対して適応があり,侵襲ならびに危険が少なく,質的診断がきわめて高い正診率でなし得るため術前診断の要となっている.しかしながら,不適切な採取や標本作製による診断の誤り,ならびに濾胞腺腫や濾胞癌のような濾胞性腫瘍における診断の限界があり,その採取ならびに判定には細心の注意が必要である.また,近年,術中迅速病理診断は増加の一途をたどっており,甲状腺においても例外ではない.しかしながら,慣れないあまり不適切な診断を招き,のちの治療に影響を与えることも少なくない.以上の事柄について,その信頼度とそれらを規定する因子について述べた.

良性腫瘍と腺腫様甲状腺腫の診療

著者: 高見博 ,   福成信博 ,   三村孝

ページ範囲:P.159 - P.164

 良性腫瘍は濾胞腺腫と腺腫様甲状腺腫とに分かれ,前者は腫瘍が単発で境界明瞭であり,後者は結節が多発性で,嚢胞などの退行性変化,結節内の出血,壊死,石灰化などがみられる.そのなかで,1個の結節が大きく,周囲がびまん性に腫大しているものを腺腫様結節という.これらの診断は触診に加え,超音波検査,穿刺吸引細胞診で大体決定される.Ⅰシンチグラムは機能性甲状腺腫以外では診断的価値は少ない.橋本病(慢性甲状腺炎),急性・亜急性甲状腺炎,バセドウ病などとの鑑別も必要である.橋本病,あるいは橋本病が合併しているときには,抗Tg抗体の高感度RIAの測定がきわめて有用である.手術は,良性であるためTSH抑制療法をまず試みて,腫瘤の大きいもの,癌が考えられるもの,周囲臓器に圧迫・浸潤しているもの,などが切除の適応となる.術式では,例え大きくても甲状腺全摘はできるだけ避けたい.

甲状腺癌手術—病理組織型別にみた切除範囲とその根拠

著者: 小原孝男 ,   山下共行 ,   神戸雅子

ページ範囲:P.167 - P.171

 甲状腺癌が一側葉に限局する場合,甲状腺切除範囲は病理組織型別に少し違った点がある.乳頭癌では,患側側葉と峡部および反対側葉の下1/3くらいを切除する亜全摘が標準的な術式である.大部分の乳頭癌は予後のよい低危険癌であり,全摘して131Ⅰ治療を加えるほどの治療を必要としないからである.濾胞癌では,広範浸潤型では全摘を行い,131Ⅰシンチグラムで遠隔転移を早期に発見し131Ⅰ治療を行う.微小浸潤型濾胞癌は葉切除で経過観察する.髄様癌のうち遺伝型は全摘が必須である.その原因遺伝子であるRET癌遺伝子の点突然変異を検索すれば,遺伝型の診断が確実につく.罹患家族員には,遺伝子診断による発症前診断・予防手術も可能な時代に入っている.

甲状腺癌手術—甲状腺分化癌のリンパ節郭清

著者: 片桐誠

ページ範囲:P.173 - P.177

 甲状腺分化癌は,臨床医が遭遇する甲状腺癌のうち最も頻度の高い疾患である.甲状腺分化癌の手術に際して最も問題となるのが甲状腺の切除範囲とリンパ節郭清の範囲で,どちらの問題も未だにコンセンサスは得られていない.リンパ節郭清に関しては,甲状腺分化癌の予後を考慮すると,不必要なリンパ節郭清を避け,心要最小限度の郭清にとどめることが,術後の機能的および美容的障害を招かず,患者のquality of lifeを高めることになる.そのために,甲状腺分化癌の進行度を総括的に捉えて,必要・十分の郭清を行い,中途半端な手術操作は避けるべきである.

甲状腺進行癌における隣接臓器合併切除

著者: 中尾量保 ,   黒住和史 ,   仲原正明 ,   萩野信夫

ページ範囲:P.179 - P.184

 甲状腺進行癌,とくに分化癌の局所進展においては,浸潤臓器の合併切除を要することが稀ではない.しかし,一般に分化癌の予後は良好であるので,他臓器浸潤といえども合併切除を施行する際には,局所根治性を得ると同時にQOL(quality of life)を良好に保つ配慮が重要である.甲状腺癌において合併切除を要する重要臓器は,気管,食道,血管(総頸動脈,内頸静脈)などである.これらの臓器を合併切除するにあたっての基本的な考え方,方法などについて述べた.また,QOLの面からみて可及的に温存すべき臓器は上皮小体,反回神経,喉頭などであり,今後はこれら臓器を温存できない場合の移植や再建についても考慮する必要があると思われた.

悪性リンパ腫と未分化癌の臨床

著者: 三村孝 ,   杉野公則 ,   伊藤國彦

ページ範囲:P.187 - P.192

 経過が長く,予後良好な悪性甲状腺腫瘍のなかにあって,発育が早く,予後の悪いのが悪性リンパ腫と未分化癌である.1980年代のはじめまで,未分化癌は小細胞癌と巨細胞癌とに分けられていたが,その後,小細胞癌のほとんどは悪性リンパ腫であることが明らかとなった.未分化癌は上皮性の腫瘍であり,悪性リンパ腫は非上皮性の腫瘍である.臨床像も異なる.ここでは,悪性リンパ腫と未分化癌の診断と治療について別々に記述する.甲状腺に原発する悪性リンパ腫は,他の節外性(extra nodal)のものに比べると比較的予後良好である.化学療法,放射線治療によく反応する.これに対し未分化癌は,いかなる治療にも抵抗性で,生命予後がきわめて悪い.両者の甲状腺悪性腫瘍のなかに占める比率を表1に示す.

バセドウ病における外科治療の役割

著者: 菅谷昭 ,   春日好雄 ,   小林信や ,   加藤亮二

ページ範囲:P.195 - P.201

 バセドウ病の病因を自己免疫異常による疾患と考えている現時点では,特異的免疫学的寛解療法が開発されない限り,保存的ならびに外科的治療はいずれも対症療法にすぎない.外科療法はホルモン産生の場を減らし,加えて甲状腺組織内の病的免疫担当細胞を除去するとともに,抗原である甲状腺組織量を減少させることによって臨床的寛解を誘導するものと推測されている.本治療法には手術に伴う瘢痕や合併症,さらには専門の外科医を必要とするなどの欠点もあるが,他の治療法にはみられない優れた利点もあり,また現実には外科治療に頼らざるを得ない症例もあることより,その役割はなお十分に残されているものと考えられる.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・14 胃・十二指腸

腹腔鏡誘導下胃部分切除術

著者: 山下裕一 ,   前川隆文 ,   白日高歩

ページ範囲:P.135 - P.140

はじめに
 消化器内視鏡機器の進歩は目覚ましく,jumbo biopsyの開発を発端としてstrip biopsy(内視鏡的粘膜切除:EMR)が考案された1).このstrip biopsyは,胃炎の診断や異型上皮巣,胃癌の診断と治療に応用され,早期胃癌,とりわけ胃粘膜癌に対してはきわめて有用な治療手段として定着しつつある.しかし,この方法は胃の全領域を網羅するものではなく,一部に困難な領域が存在している.そして,腫瘍の大きさについても,確実に一括切除が可能な大きさは10mmあまりの大きさまでのものと考えられている2).このように,EMRだけでは対処できない症例には,従来の開腹下胃切除が行われていたのが現状であった.この時期に一致して腹腔鏡下外科手術が盛んになり,EMRと開腹下胃切除の中間に位置する種々の腹腔鏡下胃部分切除術や腹腔鏡下胃内手術が考案された3-5)
 本稿では,小開腹法を用いた腹腔鏡誘導下胃部分切除術を紹介する.

シリーズ 早期癌を見直す・2 早期大腸癌・4

早期大腸癌診断の最前線—③拡大大腸内視鏡

著者: 今城眞人 ,   岩間毅夫

ページ範囲:P.203 - P.211

はじめに
 電子内視鏡機器の改良に伴い,大腸腫瘍に対する診断能は飛躍的に向上し,5mm前後あるいはそれ以下の小さな早期大腸癌が診断されるようになった.また,平坦陥凹型の早期大腸癌のなかには,5mm前後の大きさですでにsm浸潤を示すものがあると報告1)され,大腸癌の発育進展の過程より注目されている.早期大腸癌に対する内視鏡的切除か,外科的切除かの治療方針の決定に際し,内視鏡医の診断能力が重要な位置を占めており,実際の臨床の場では,その判断により内視鏡的切除の適応が決定されている.
 早期大腸癌の診断は,ファイバースコープの時代には,病変の大きさ,形態や色調などの内視鏡所見により行われ,内視鏡医の臨床経験に基づいてこれらの所見を総合した主観的な内視鏡診断が行われてきた.また,sm癌とm癌,m癌と高度異型腺腫の内視鏡による鑑別診断は,とくに後者においては病理学的診断基準の一致をみていないことも加わって困難であった.

イラストレイテッドセミナー・23

はじめての胃全摘術 Lesson 3

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.213 - P.218

 20.リンパ節郭清の要領は幽門側胃切除に準じる.同様に左胃動脈を切離結紮する.ただし,左胃動脈根部の癌浸潤が強いときは処理を後回しにして,膵を後復膜から起こしたのち,左後方から脾動脈,左胃動脈の順で切離結紮することもある.

私の工夫—手術・処置・手順・18

成人鼠径ヘルニアに対する外来手術

著者: 平井淳一 ,   白髭健朗

ページ範囲:P.219 - P.219

 米政府は高騰する医療費の削減を目的として,DRG(診断による疾患群)に対して一定の支払い方法を打ち出した.そのため,成人鼠径ヘルニア手術は今日では外来手術で行われるようになった.出来高払い制度下の日本では,経済的理由により医療提供者は入院期間を短縮させる努力はしても,外来治療にはあまり積極的ではない.しかし時代の変化に伴って,さまざまの理由で外来手術を希望する症例も増加している.このような症例に対してわれわれは,成人鼠径ヘルニア手術を外来で行っているので,その概略について述べる.

病院めぐり

秋田赤十字病院外科・胃腸科外科

著者: 高野征雄

ページ範囲:P.220 - P.220

 秋田赤十字病院は大正3年に創立され,東北・北海道では初めての赤十字病院です.昭和43年に現在地に移転・新築(360床)し,昭和49年に秋田県交通災害センター(現秋田県救命救急センター:50床)と秋田県神経病センター(30床)が併設されました.秋田駅から徒歩7分の中心街にある現病院は,駐車場もなく手狭なため,3年後にオープンする予定で,現在,市の郊外の約3万坪の広大な土地に新病院が建築されています.
 当院の外科は,昭和43年,現病院が新築されたときから新潟大学第1外科教室より医師が派遣されています.昭和56年に高野征雄第1外科部長(現在に至る)が着任してから,それまで行われなかった食道癌,食道静脈瘤,肺癌などの開胸手術や,原発性肝癌,転移性肝癌(胃癌肝転移術後最長10年9か月生存)などの肝切除,PDを含む胆道・膵疾患などの手術が行われるようになりました.昭和61年,新潟大学第2外科から心臓血管外科,呼吸器外科の外科医が派遣されるようになって胸部外科が独立しました.また,昭和60年,工藤進英第2外科部長が着任してから,院内すべての大腸疾患の診断に大腸内視鏡(CF)が施行されるようになり,当院の大腸疾患の診断学は飛躍的に発展しました.

国立長崎中央病院外科

著者: 古川正人

ページ範囲:P.221 - P.221

 国立長崎中央病院の前身は,昭和17年に設立された大村海軍病院で,昭和20年12月に厚生省に移管され国立大村病院となりました.そして,昭和50年4月に,本院が地理的に長崎県の中央にあること,および地域医療の中核的立場を保持するということから国立長崎中央病院と名称変更を行い,昭和61年には国立病院・療養所の再編成計画にて全国で11か所の「高度総合診療施設」に類型化され,さらには外科,消化器外科はもとより,救急医学,内科,脳神経外科,放射線科などの専門医教育病院として当該学会より認定を受けています.
 当院の総病床数は680床(外科は46床)で,24科の診療科があり,総数115名の医師数ですが,われわれ一般・消化器外科のスタッフは医師6名,レジデント3名,研修医3名の総勢12名です.平成6年の手術症例数は484例で,疾患別では大腸癌53例,胃癌46例,肝・胆・膵悪性疾患41例,乳癌20例など悪性腫瘍が多く,良性疾患では胆石症64例,ヘルニア57例,鎖肛根治術など小児疾患が19例であり,そのほか消化管穿孔・出血37例,腹部外傷10例,急性虫垂炎37例,新生児疾患13例など105例(21.6%)が緊急手術例でした.

臨床外科交見室

在原業平のこころ—外科医バージョン

著者: 石田孝雄

ページ範囲:P.222 - P.222

 外科学と周辺領域の科学の進歩により,術後合併症は少なくなってきてはいるが,そのなかにあっても縫合不全は,依然として外科医の恐れる合併症の最たるものであることに疑いの余地はない.いくら注意して手術に臨んでも,ある一定の確率でリークが起こることは,現実の医療のなかでは紛れもない事実である.術者として全身全霊で手術し,祈るような気持ちで患者の回復を待つわが身に容赦なく襲いかかるリーク,あの曰く言い難い落胆と焦燥の気持ちは,外科医にしかわからない悲しくてつらい経験である.しかし,たとえリークがあっても,ドレナージが十分に効いていれば恐るるに足りないことも周知の事実である.
 今は昔,研修病院で外科訓練を受け始めた頃の話である.早期胃癌でB—Ⅰ法を行った患者が,術後11日目にリークを起こしたことがあった.ドレナージがうまくいっていて,おおごとにならずに済んだのであるが,これはチームを組んでいた2年先輩と責任者の医長が学会でたまたま不在で,病棟の居残り組だった私が,ドレーンを敢えて抜去しなかったことが幸いしたようだ.まさか,11日目にリークが起こるなど予想していなかったので,ドレナージが十分に効いていることがわかると,「よくぞ抜かずにいてくれた」と先輩からさんざん褒められた.しかし,よくよく考えれば皮肉にも聞こえて,複雑な心境だった.

臨床報告・1

先天性多発性肝内胆管拡張症(Caroli病)の1例

著者: 渡邉至 ,   三井一浩 ,   山口正人 ,   実方一典 ,   佐藤明 ,   寺薗公雄 ,   渡部信之

ページ範囲:P.223 - P.228

はじめに
 Caroli病は肝内末梢胆管枝の嚢胞状の拡張が多発性に認められる先天性の胆道系疾患であり,この嚢胞と胆管系に細菌性の胆管炎を伴って重篤化する.1958年より1978年にわたるCaroliら1,2)の数回の報告以来こう呼ばれるが,以後,欧米では140余例3,4),本邦では30余例5-7)の報告がある.稀な疾患であることもあって,その定義,病態の詳細は未だ不明確な点も少なくない7)
 今回,成人例において肝内嚢胞内および総胆管に結石症を伴った本症を経験した.症例の経過と画像所見を中心に報告するとともに,Caroli病あるいはCaroli症候群の定義づけなどについて文献を参照して若干の考察を加える.

大腿ヘルニア内虫垂嵌頓の1手術症例

著者: 大石明彦 ,   河田憲幸 ,   松野剛 ,   大石典彦 ,   折田薫三

ページ範囲:P.229 - P.232

はじめに
 大腿ヘルニアは高齢の女性に多く,初診時に嵌頓ヘルニアである症例が32〜79%といわれている1).嵌頓内容は腸管や大網の一部が多いが,稀に虫垂が嵌頓した症例も報告されている.今回われわれは,虫垂が嵌頓した大腿ヘルニアに外鼠径ヘルニアの併存した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

異所性乳腺に乳腺症と癌を認めた1例

著者: 尾浦正二 ,   櫻井武雄 ,   吉村吾郎 ,   玉置剛司 ,   梅村定司 ,   粉川庸三

ページ範囲:P.233 - P.236

はじめに
 異所性乳腺に発生する腫瘍はきわめて稀である1-3).今回われわれは,同側腋窩の異所性乳腺に乳腺症と癌を認めた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

成人肝未分化肉腫の1手術症例

著者: 小笠原邦夫 ,   西井博 ,   近藤肇彦 ,   青木克哲 ,   栗田信浩 ,   熊谷久治郎

ページ範囲:P.237 - P.240

はじめに
 成人の肝臓に原発する悪性腫瘍の大部分は肝細胞癌および胆管細胞癌であり,悪性間葉系腫瘍は非常に少ない.肝悪性間葉系腫瘍は臨床症状に乏しく,巨大な腫瘍となって発見されることが多く,予後はきわめて悪い.治療は外科的切除が原則とされているが,発見時すでに手術が困難であったり再発例が多い.今回われわれは,そのなかでも10歳前後の小児に発生するといわれている比較的稀な肝未分化肉腫の成人例を経験し,手術的に切除できたので検討を加え報告する.

腸閉塞をきたした回腸子宮内膜症の1例

著者: 袖山治嗣 ,   門馬正志 ,   花崎和弘 ,   若林正夫 ,   大塚満洲雄 ,   安里進

ページ範囲:P.241 - P.244

はじめに
 腸閉塞はしばしば遭遇する疾患であるが,その原因が回腸子宮内膜症であることはきわめて稀である.最近われわれは,腸閉塞をきたした回腸子宮内膜症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

Extended profundaplastyにより下肢切断を免れた重症虚血肢の1例

著者: 杉山悟 ,   清水康廣 ,   太田徹哉 ,   松森秀之 ,   因来泰彦

ページ範囲:P.245 - P.248

はじめに
 重症虚血肢で足部の広範な切迫壊死を伴う場合であっても,深大腿動脈の形成(profundaplasty)により救肢できる可能性がある1).われわれは,足背から足趾にみられた広範囲壊死に対し下腿切断を決断する前にまず血行再建を行い,切断を回避し得た症例を経験したので報告する.

縦隔へ穿破し腹腔内血腫を形成した胸部下行大動脈瘤破裂の1例

著者: 大田豊隆 ,   奥村伸二 ,   藤岡宗宏

ページ範囲:P.249 - P.252

はじめに
 今回われわれは,縦隔に穿破し腹腔内血腫を形成した非常に珍しい病態の胸部下行大動脈瘤破裂例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

横隔膜弛緩症に合併した胃軸捻転症の1例

著者: 北山佳弘 ,   金昌雄 ,   大橋秀一 ,   余田洋右

ページ範囲:P.253 - P.257

はじめに
 横隔膜弛緩症は,横隔膜が弛緩して胸腔内に著しく挙上した状態を指し,しばしば胃の軸捻転を伴う1).このことは,上部消化管造影の普及で,小児例を含めると現在まで多くの報告をみるようになった2).今回われわれは,後天的に発生した横隔膜弛緩症に胃軸捻転を合併し,外科的治療を行った症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

外科医の工夫

仙骨前出血に対する止血ピンの有効性

著者: 中村俊幸 ,   二村好憲 ,   中田伸司 ,   小出直彦 ,   安達亙 ,   渡辺智文

ページ範囲:P.259 - P.262

はじめに
 骨盤内腫瘍の外科的切除においては出血のコントロールに難渋する場合がある.特に後腹膜に位置し,血管に富んだ大きな腫瘍に対しては,術前より大量出血の対策を講じておくことは有意義であると考えられる.今回われわれは,骨盤内para-gangliomaに対して,術中出血量を低下させるため術前に動脈塞栓術を行い,術中の出血に対して止血ピンを使用した1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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