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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科51巻3号

1996年03月発行

雑誌目次

特集 肝炎・肝硬変患者の消化器外科手術

[エディトリアル]肝炎・肝硬変患者の消化器外科手術

著者: 田島知郎 ,   田中豊 ,   三富利夫

ページ範囲:P.277 - P.281

はじめに
 肝硬変患者の胆嚢摘出術がしばしば致命的な結果になるという警告がはっきりと発せられたのは,もう20年も前のことになるが1),この警告が十分に生かされてこなかったのではないか,という懸念がある.この特集では,肝炎・肝硬変合併症例の消化器・消化管手術に経験が多く,この方面に造詣の深い先生方に,手術成績をざっくばらんに披露していただき,周術期管理のポイントも併せてご教授いただくわけであるが,本稿では肝硬変患者が今も代表的な手術ハイリスク患者であることをまず確認し,不良な手術成績の可能性としての総論的要因にふれ,最近のSIRS〜MODSの概念とも関連させながら考えを進め,後半では肝炎感染防止における外科医の役割にもふれ,併せて提案をしてみたい.

食道癌手術

著者: 米川甫 ,   島伸吾 ,   吉住豊 ,   杉浦芳章

ページ範囲:P.283 - P.288

 食道癌患者のうち肝炎・肝硬変を併存する頻度は約8%であった.肝炎ではGOT,GPTが100単位以下となるのを待って標準的な手術を施行する.肝硬変ではChild Cの症例,根治度C0になると予測される症例は手術適応でない.肝硬変患者の手術では縦隔の結合織を細かく結紮することが後出血と多量の胸水漏出の予防に重要である.胸管は可能であれば温存するほうがよい.肝予備力の低い症例で胸管を結紮した場合は再建術を2期的に行うのが安全である.術後は胸腔ドレーンから多量の排液が続くので,循環系のモニターのもとアルブミンなどを指標に新鮮凍結血漿の投与が必須となる.術前後の栄養は経管が望ましいが電解質,血糖の管理がきわめて重要である.

胃癌手術

著者: 沢井清司 ,   高橋俊雄 ,   谷口弘毅 ,   大原都桂 ,   矢田祐一

ページ範囲:P.291 - P.295

 ①慢性肝炎・肝硬変患者に対して胃癌根治術を行う場合,栄養状態の改善,腹水のコントロールなど,Child Aに近づけてから手術をすべきであり,Child Cから脱却できない例は,胃癌根治手術の適応から除外すべきである.②術前検査としては,肝細胞癌合併の有無,胃癌の正確な病期診断を行うことが重要である.③肝細胞癌を合併しない場合,慢性肝炎患者ではD2郭清可能だが,肝硬変患者はD1郭清を原則とすべきである.④肝細胞癌を合併する場合,慢性肝炎患者では肝癌の1区域切除+胃癌のD2郭清,肝硬変患者では肝癌の亜区域または部分切除+胃癌のD1郭清にて重複癌の同時切除が可能である.⑤手術では,細かい血管やリンパ管を丁寧に結紮することが重要である.

胆石症手術

著者: 萩原優 ,   小森山広幸 ,   田中一郎 ,   生沢啓芳 ,   金杉和男 ,   山口晋 ,   長岡至朗 ,   山村卓也

ページ範囲:P.297 - P.301

 肝硬変を主とした肝疾患に胆石合併例を検討した.自験例では肝疾患1,278例中胆石保有者で73人(5.7%)であった.肝硬変は8.5%で他の報告20〜30%に比べ低かった.肝硬変合併胆石で胆嚢炎を併発する頻度も低かった.そのために胆石を目的とした手術は肝硬変では1/3以下で付加手術として行われることが多かった.結石の種類は黒色石が42%と頻度が高く,ビリルビン系結石は75%を占めた.胆嚢結石では手術死亡例はなかったが,総胆管結石例では3例の在院死亡があった.総胆管結石には3例の非観血的治療を行い,2例はEST,1例はPTCDで合併症はなかった.
 肝硬変の合併した胆石の治療方針は積極派と慎重派があるが,炎症を起こす率が低いのでChild A,Bで胆嚢壁の肥厚などと臨床症状のある例で胆摘の適応があると考える.また,総胆管結石合併例では一度発作が起こると致命的となるので,EST,PTCDなどにより切石する必要がある.今後,腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応も検討されなければならない.

肝癌手術

著者: 島津元秀 ,   若林剛 ,   隈元雄介 ,   唐橋強 ,   都築俊治 ,   北島政樹

ページ範囲:P.303 - P.309

 高率に肝炎・肝硬変を合併する肝癌の外科治療においては,癌の進行度と同時に,併存肝病変の重症度が手術適応,術式を決めるうえで重要な因子である.従って術前の肝予備能の適切な評価と,術前後を通じて病態生理の把握・是正が必要であり,直接侵襲を受ける肝機能をはじめ,予備能の低下した諸臓器の機能を維持するためのきめ細かい管理が要求される.切除療法は腫瘍局在および肝機能の両面からの制約を受けるものの,適応があれば最も抗腫瘍効果の高い治療法である.肝癌に対する治療法の選択の幅が広がった今日,外科治療が一定の意義を有するためには,その根治性とともに低侵襲,安全性が求められている.

急性腹症,イレウス手術

著者: 田中洋輔 ,   小越章平

ページ範囲:P.311 - P.315

 肝炎,肝硬変患者は,肝Kupffer細胞の数の減少,機能低下など種々の原因により感染防御能が低下し,循環動態面では末梢動脈拡張による相対的動脈循環量の不足と末梢血管領域での動静脈シャントの存在による組織低酸素があり,また肺内動静脈シャント,closing volumeの増加,換気血流不均衡の呼吸機能異常がある.肝炎,肝硬変患者の腹部手術の予後規定因子としては腹腔内汚染・感染の有無,緊急手術かどうか,肝機能障害の重症度,術中の輸血の必要性の有無が重要で,死亡例の死因は制御不能の感染症に由来した敗血症・MOFであり,術後出血,消化管出血,腹水漏出が増悪因子である.したがってこれらの危険因子を回避するような術前管理,手術を心がけるべきである.

結腸・直腸癌手術

著者: 磯本浩晴 ,   荒木靖三 ,   赤木由人 ,   白水和雄

ページ範囲:P.317 - P.321

 肝硬変,肝炎合併の結腸・直腸癌症例の外科手術例について久留米大学第1外科教室で切除した23症例を対象に術前検査所見,手術時間,術中出血量,術後合併症について同時期に同一術式を行った結腸・直腸癌169例を対照群として比較検討を行った.その結果,Child Bにおいて術後合併症の発生率が高く,直腸癌においてはとくにその傾向が強かった.術式においては低位前方切除術での縫合不全が多く,とくに術中出血量の多寡が関連した.直腸癌の外科的手術においては,上腹部手術と同様に手術時間が4時間以上にわたる例に対しては合併症の発生率が高いことを念頭において手術適応,術式の選択を行うべきである.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・15 胃・十二指腸

腹腔鏡下胃内手術

著者: 大橋秀一

ページ範囲:P.269 - P.274

はじめに
 近年,外科領域において腹腔鏡あるいは胸腔鏡などの内視鏡を用いた手術の普及がめざましい.その最大の理由は,手術侵襲がきわめて少なく術後疼痛も軽減するため,早期回復,早期退院が可能となるためである.
 われわれは1990年春以来,本邦において内視鏡下外科手術をいち早く導入し,胆嚢摘出術のみならず種々の消化管手術にこれを応用している.本稿では,われわれが独自に開発した腹腔鏡下胃内手術1-4)(Laparoscopic Intra-gastric Surgery:LIGS)を解説すると共に,新しく考案した改良法についても述べてみたい.

病院めぐり

甲府共立病院外科

著者: 吉田正史

ページ範囲:P.324 - P.324

 甲府共立病院は甲府盆地のやや北側に位置し,JR甲府駅より徒歩2分の交通の便に恵まれたところにあります.昭和30年に甲府診療所として開設して以来,働く者の医療機関として山梨勤労者医療協会の中心的な役割を果たしてきました.
 その山梨勤医協は山梨県内に3病院8診療所を擁する社団法人として山梨の医療の一翼を担っていますが,昭和58年に医療外事業の破綻から倒産という苦況にみまわれました.しかし,その後,病院を支えてくれた地域の人々の援助や職員の頑張りのもと,医療活動のみで経営再建を成し遂げ,現在,県内の10,000世帯を超える友の会組織に支えられて,旺盛な医療展開をはかっています.

松江生協病院外科

著者: 東儀公哲

ページ範囲:P.325 - P.325

 島根県は隣りの鳥取県と合わせて山陰と呼ばれ,東西に細長い県である.松江市はその東のほうに位置し,宍道湖に隣接した水の都だ.中に浮かぶ“嫁が島”を望む宍道湖の夕陽は絶景で,観光の目玉である.湖から大橋川が東へ流れ市を南北に二分し,それぞれ橋南,橋北と呼ばれる,その昔は1本しかなかった橋も今では4本となったが,それでも朝夕のラッシュには耐えられない.また,明治の文豪 小泉八雲ことラフカディオハーンが松江中学校の英語の教師として数年間をこの地で暮らし,文筆活動を行ったことより,地元ではヘルンさんと呼び親しまれ,彼の旧居はいまでも観光客の足が途絶えない.
 当院は,昭和25年,松江大衆診療所としてわずか4名の人員で開設された.その後,松江診療所と改称,昭和35年,松江生協病院(23床)となり,生協組合員の健康づくりはもとより,地域住民の健康を守る拠点となった.その後,増築,増床,新築・移転を重ね,昭和61年に診療科16科,病床数333床,職員総数362名(医師数34名)の総合病院に発展した.組合員参加の医療活動,救急から在宅までの命のネットワークづくり,たゆみない医療内容の充実と向上を基本姿勢としている.

臨床外科交見室

Laparoscopic Appendectomy—米国における現況

著者: 町淳二

ページ範囲:P.326 - P.326

 本誌の外科研修医実践講座⑲に掲載された『虫垂炎・肛門外科をめぐるUp-to-Date』で,「laparoscopic appendectomyは,日本では高額な材料費・保険非適用から,ラパコレのように一般化する気配はない」という指摘がありましたので,現在の米国におけるLA(laparo-scopic appendectomy)の現況について一言述べさせていただきます.
 LC(laparoscopic cholecys-tectomy)に引きつづきLAが導入された当初,虫垂炎の過半数はLAで手術されるようになるであろうとの予測もありましたが,現時点でLAはLCのように定着した術式にはなっておらず,ある意味ではまだ評価の段階にあるといえます.今のところ,appendectomyの約1〜2割程度がLAではないかと思われます.

本邦での臓器移植—特に膵移植を考える

著者: 小島靖彦

ページ範囲:P.327 - P.327

 臓器移植とは機能の廃絶した臓器,あるいは早晩廃絶するであろう臓器を,新しい臓器で置換することである.これにより臓器の機能を回腹し,患者の延命を計るとともにquality of life(QOL)の向上をも期待できるわけである.膵移植は,現行の外来性のインスリン投与のみでは生理的な血糖コントロールが不十分なために行われるものであり,これにより変動する血糖値に対応したインスリンの投与が可能となり,腎不全などの合併症の予防,改善が期待できることとなる.
 膵移植は1966年にKellyらにより行われた膵腎同時移植に始まるが,その後は手技的な困難さや拒否反応の抑制の不完全さなどにより,生着率が不良であること,さらには心移植や肝移植に比べ緊急性に乏しいこと,などから顧みられなかった感がある.しかしながら,近年に入り移植手技の向上,サイクロスポリンAなどの免疫抑制剤の登場,それに伴う生着率の向上などにより,その症例数は欧米を中心として飛躍的に増加している.国際膵移植登録機構の報告によると,1995年5月までに6,856例の膵移植が施行されており,特に手技的にほぼ安定した最近では,年間723〜966例とその症例数の増加はすさまじい.

私の工夫—手術・処置・手順・19

死体腎移植における静脈吻合

著者: 田中信一郎

ページ範囲:P.328 - P.328

 腎移植手術においては,腎移植片は患者の腸骨窩に収納されるのが通常である.その際,腎静脈および吻合部の狭窄・屈曲や過度の緊張の防止が血流障害を防ぐために重要である.とくに,右腎静脈は左腎静脈に比較して解剖学的に短茎なため上記の合併症を引き起こしやすい.本稿では右腎移植における腎静脈吻合の工夫について紹介する.
 腎静脈の術後障害を予防するには,まず移植片の腎静脈を可能な限り長く切除する必要がある.われわれは腎臓摘出に際して両側の腎臓をen blocに摘出する手術方法を選択している.これにより,腎臓の潅流を行いながら腎静脈を下大静脈根部より切断することが可能となり,複数腎静脈の場合でも不注意により切断する危険もなくなる.さらに,腎摘出後に提供者の総腸骨静脈から外腸骨静脈までを切除し,これを用いて右腎静脈の延長術を行う.切除された総腸骨静脈枝の有無・結紮の確認がされて,手術テーブルの上で腎臓の潅流後に腎静脈に縫合される.吻合は端々吻合により行っているが,両側の2点支持を行い連続縫合により血管壁が外反するように注意する.また,縫合に際しては6-0,または5-0のゴアテックス糸を用いて,吻合部狭窄を避けるために緩く縫合を進め,最終結紮では約5ミリ程度のGrowth Fac-torを置くようにしている.

イラストレイテッドセミナー・24

はじめての胃全摘術 Lesson 4

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.331 - P.342

 26.左手で脾を術者手前に挙上し,先の脾結腸靱帯切離部に続けて脾後面の後腹膜をクーパー剪刀で切離する.刃先を膜面に直角に当て,カニが這うように動かしながら表層の膜のみを浅く切っていく.できるだけ脾に近いルートをとれば出血はほとんどない.

シリーズ 早期癌を見直す・2 早期大腸癌・5

早期大腸癌診断の最前線—④MRI

著者: 今井裕 ,   樋口順也 ,   湯浅祐二 ,   平松京一 ,   渡辺昌彦 ,   寺本龍生 ,   北島政樹

ページ範囲:P.343 - P.349

はじめに
 MRI検査は近年の装置の進歩により,今まであまり検査の対象ではなかった腹部領域にも次第に応用されるようになった.しかし,消化管の診断には,他の腹部臓器に比べて呼吸や蠕動などの動きの影響が大きく,さらに早期癌の診断には空間分解能のきわめて高い画像が要求される.したがって,短い撮像時間で空間分解能の高い画像を撮影するという2つの相反する要求を満たさなければならないところにMRIによる消化管診断の困難性がある.
 本稿では大腸癌に対するMRIの撮像方法,正常腸管壁の描出や癌の所見,さらに現状での成績や問題点について概説する.

手術手技

口腔再建における遊離空腸の応用

著者: 小林慎 ,   小林恒 ,   加固紀夫 ,   鈴木宗平 ,   廣田和香 ,   木村博人

ページ範囲:P.351 - P.354

はじめに
 口腔悪性腫瘍手術での口腔再建には,有茎あるいは遊離の筋皮弁がその安全性から好んで用いられてきた.しかし,この方法では口腔粘膜と皮弁との縫合不全が起こりやすく,また,筋皮弁の萎縮による舌の運動障害や口腔乾燥のため,阻嚼や嚥下機能,発語などの口腔機能に障害を残す場合がある.近年,マイクロサージャリーの進歩により遊離グラフト移植は安全な手術手技となり,移植臓器として空腸も応用されるようになってきた1-4).われわれも,口腔悪性腫瘍に対する頸部郭清,口腔底切険後の再建に顕微鏡下血管吻合を用いた遊離空腸移植を行い良好な結果を得ており,その術式ならびに術後の経過,移植臓器の組織学的変化について報告する.

外科医の工夫

自家製吊り上げ鉤を用いた腹壁全層吊り上げ法によるD2,D3腹腔鏡補助下大腸手術の経験

著者: 西井宏有 ,   平井利幸 ,   小原弘嗣

ページ範囲:P.355 - P.359

はじめに
 腹腔鏡下胆嚢摘出術が爆発的に普及して以来,内視鏡下外科手術のあらゆる領域に広がり,結腸直腸手術の領域にも及んできている。腹腔鏡下に結腸直腸手術を施行した報告のほとんどは気腹法にて行っている.しかし,気腹による合併症として高炭酸ガス血症,ガス塞栓,皮下気腫などがあり,気腹による腹腔内圧上昇は,下大静脈からの血液還流を減少させ,心拍出量の低下,低血圧をもたらし,時に肺塞栓の原因となる1)
 われわれは従来より気腹を用いず,自家製吊り上げ鉤を用いた腹壁全層吊り上げ法による腹腔鏡下胆嚢摘出術や腹腔鏡補助下大腸手術を施行し,良好な結果を得ている,今回適応症例を大腸sm癌や進行癌に広げ,D2,D3腹腔鏡補助下大腸手術を8例に行い,良好な結果を得た.吊り上げ法では気腹の影響を考慮にいれないですみ,呼吸器系や循環器系に問題を有する症例や,全身状態の不良な患者,高齢者にも比較的安心して手術を行えるという利点がある.

臨床研究

肋間神経ブロックを用いた開胸手術の術後疼痛管理

著者: 栗田信浩 ,   西井博 ,   小笠原邦夫 ,   近藤肇彦 ,   青木克哲 ,   鷹村和人

ページ範囲:P.361 - P.364

はじめに
 開胸手術後の疼痛は,躯幹筋や肋間筋の切離に加え,開胸器を用いた操作などが原因となる.ときには肋骨骨折や脱臼を伴うため,他の部位の手術に比べ強い傾向がある.このため術後の肺機能に与える影響は大きく,肺合併症の予防のために,適切な柊痛管理が重要である.
 われわれは,Sabanathanら1)の方法を参考に局所麻酔剤を用いて肋間神経ブロックを行うことにより,術後の疼痛緩和のための鎮痛剤の全身投与を減少させ,良好な結果を得たので報告する.

境界領域

胸骨骨髄炎に対して鏡視下腹直筋弁充填術を施行した1例

著者: 澤泉雅之 ,   丸山優 ,   林明照 ,   吉武道朗 ,   吉原克則 ,   小山信弥

ページ範囲:P.365 - P.368

はじめに
 開胸術後の胸骨骨髄炎は比較的稀な合併症であるが,一度併発すると保存的療法に抵抗し,とくに死腔を有する場合には治療に難渋することも少なくない.このような症例に対し,豊富な血行をもつ大網や筋・筋皮弁による充填術が有用とされている1-4).最近われわれは,鏡視下に腹直筋弁を挙上した充填術を行い,有瘻性の胸骨骨髄炎を治癒せしめるとともに,美容的にも満足のいく1例を経験したので報告する.

臨床報告・1

甲状腺にサルコイドーシス病変をみた腺腫様甲状腺腫の1例

著者: 尾形雅彦 ,   荒木京二郎 ,   浜田伸一 ,   小林道也 ,   松浦喜美夫 ,   緒方卓郎

ページ範囲:P.369 - P.372

はじめに
 サルコイドーシスは,いまだ原因不明の全身の非乾酪性肉芽腫性疾患である1).剖検例ではサルコイドーシス病変が甲状腺に認められることは必ずしも稀でないが,生前に甲状腺サルコイドーシスが組織学的に証明されることは非常に稀である.今回われわれは,眼サルコイドーシスで治療中の患者に甲状腺腫瘤と頸部リンパ節腫大を認め,手術の結果,腺腫様甲状腺腫および甲状腺と頸部リンパ節に組織学的にサルコイドーシスを認めた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

痔瘻癌の1例

著者: 森嶋友一 ,   高沢博 ,   西沢直 ,   鈴木一郎 ,   青木靖雄 ,   田沢洋一 ,   白松一安 ,   小林純

ページ範囲:P.373 - P.376

はじめに
 日常診療において,痔瘻は比較的頻度の高い疾患であるが,難治性の痔瘻に発生する痔瘻癌はきわめて稀なものである1).今回,われわれは約20年の病悩期間の後発症した痔瘻癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

隆起型が1か月の経過で陥凹型に変化した早期胃癌の1例

著者: 松田哲朗 ,   山岸久一 ,   明石郁 ,   園山輝久 ,   岡隆宏

ページ範囲:P.377 - P.379

はじめに
 一般的に,未分化型腺癌は陥凹型の形態をとることが多く,隆起型を呈することは稀である.最近われわれは,隆起型を呈した未分化腺癌が,約1か月間に,無治療のまま陥凹型へと形態変化した早期胃癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

外傷性腰ヘルニアの2例

著者: 脇山英丘 ,   沢村敏郎 ,   服部哲也 ,   安福正男 ,   北野育郎

ページ範囲:P.381 - P.384

はじめに
 本邦における腰ヘルニアの報告は30例で比較的稀な疾患であるが,なかでも外傷性と診断されたものは3例ときわめて少ない.今回,外傷が発症機転と考えられる下部腰ヘルニアの2例を経験したので報告する.

後腹膜より発生した悪性線維性組織球腫の1例

著者: 林和弘 ,   小尾芳郎 ,   浜口洋平 ,   藤井義郎 ,   鬼頭文彦 ,   福島恒男

ページ範囲:P.385 - P.388

はじめに
 今回われわれは,比較的稀な左後腹膜より発生した巨大悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma,以下MFH)の1例を経験したので報告する.

内胆汁瘻を合併した胆嚢腺扁平上皮癌の2例

著者: 中村順哉 ,   炭山嘉伸 ,   武田明芳 ,   桜井貞夫 ,   柁原宏久 ,   碓井貞仁

ページ範囲:P.389 - P.392

はじめに
 胆嚢癌は画像診断技術の進歩により術前診断が比較的早期になされるようになってきたが,発見時すでに他臓器浸潤や遠隔転移などで切除不能なことが多く,いまだ予後不良な疾患である.とくに胆嚢の腺扁平上皮癌は診断時すでに進行癌であることが多く,拡大手術を余儀なくされることが多い.当教室における1985年1月から1994年12月までの過去10年間の胆嚢癌手術症例は44例であり,そのうち腺扁平上皮癌は2例,胆嚢癌全体の4.5%であった.今回われわれは内胆汁瘻を合併した胆嚢腺扁平上皮癌を2例経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

消化管手術後,経口摂取開始早期に発症したWernioke脳症の2症例

著者: 志方えりさ ,   塩澤友規 ,   田村正人 ,   亀井聡 ,   水谷智彦 ,   高須俊明

ページ範囲:P.393 - P.398

はじめに
 Wernicke脳症はビタミンB1の欠乏によって起こる病態であり,慢性アルコール中毒患者にて起こりやすいと言われている.しかし,アルコール中毒患者以外に起こるWernicke脳症も報告されており,本症は急性発症の意識障害・眼球運動障害を起こす主要な疾患の一つである.過去2年間に,われわれは5症例のWernicke脳症を経験し,1例は慢性アルコール中毒患者,4例は非アルコール性患者であった.後者のうち,2例が消化管手術後,経口摂取を開始後というWer-nicke脳症の起こりにくいと思われる時期に発症した点が特徴であった.この2症例1,2)は,消化管手術の術後などの栄養状態が低下した時期における栄養管理の重要性を再認識させる症例であると思われ,考察を加え報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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