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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科51巻4号

1996年04月発行

雑誌目次

特集 術後感染症—予防と治療の実際

[エディトリアル]術後感染症の現状

著者: 玉熊正悦 ,   小野聡

ページ範囲:P.413 - P.417

はじめに
 一般に,手術は出血ならびに疼痛の制御との戦いであると同様,感染との戦いでもある.19世紀後半のLister,Schimmelbushらによる外科への消毒原理の導入や,20世紀前半のDomagk,Fleming,Floreyらによる抗菌化学療法の誕生は,ともに外科の感染制御に飛躍的な貢献をし,手術成績を向上させ,手術侵襲の拡大を可能にした.その後の抗生物質の開発は目覚ましく,一部の法定伝染病を含め多くの急性化膿性疾患が征服されたが,外科医は今日でも物心両面から感染の制御に莫大な精力を費しているのが実情である.
 外科領域における最近の関心の筆頭は,現代人の恐怖の的である癌の克服と移植医療の前進であろうが,その癌患者の直接死因は,感染の合併が出血,臓器不全,悪液質などを抜いて首位を占めているし,臓器を移植された患者のその後の経過中にみられる合併症の約半数は免疫不全を背景とした感染症であると聞いている,いずれも,今日の外科臨床に占める感染対策の重要性を物語る.人類の歴史は細菌やウイルスとの戦いの歴史ともいわれるが,外科領域では今日でもなお一貫して感染との戦いが続いている.外科医としての能力や手腕には,診断学や手術技能のほかに,感染症の処置に大切な微生物学,免疫学,薬理学などの知識も不可欠なことを始めに強調したい.

予防的抗菌剤投与の実際

著者: 岩井重富

ページ範囲:P.419 - P.423

 一般外科領域での術後感染症は創感染が最も多く,次に尿路,呼吸器,腹腔内感染,菌血症,胆道感染の順位である.手術は無菌,準無菌および汚染手術に分けられ,汚染手術の予防抗菌剤投与では治療の目的も含まれる.準無菌手術に対しては,食道癌手術・胃全摘術では好気性グラム陰性桿菌および嫌気性菌を意識して選択する.胃切および上部腸管の手術では好気性菌を考慮する.下部腸管手術では,嫌気・好気グラム陰性桿菌を考慮する.胆道系ではグラム陰性桿菌に広い抗菌スペクトルを有し,移行のよいものを選択する.消化管穿孔性腹膜炎でも,胃・十二指腸潰瘍穿孔例にはペニシリン系,セフェム第一世代を選ぶ.下部腸管の穿孔では好気・嫌気性菌を考慮する.穿孔性虫垂炎ではP.aeruginosaの術後創感染に十分に注意する.

MRSAおよび真菌感染症の予防と対策

著者: 清水武昭 ,   佐藤攻

ページ範囲:P.425 - P.430

 Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)および真菌感染症は,術前より感染症の合併に対し抗菌剤が前投与されていたり,大手術のため長期間カテーテルを静脈内に留置し,経口食を中断せざるを得なかった症例に散見される.血液培養でMRSAや真菌が証明されれば,治療すべき感染症と診断は確定するが,尿や喀痰より検出された場合,抗菌剤を投与して治療すべき感染症かどうか迷うことが多く,治療の要非は慎重に検討されなければならない.術後早期離床,経口食・経管栄養を用いてのbacterial translocationの予防,最小量にして最大の効果が期待できる術後感染予防抗菌剤の選択,用法の検討などが重要である.

術後の肺炎—予防と治療の実際

著者: 高林有道 ,   薄井裕治

ページ範囲:P.431 - P.436

 近年の外科手術手技や術後管理の進歩にもかかわらず,術後肺炎は重症化しやすく致命率も高い.消化器外科領域では,無期肺や胃切除後の誤嚥性肺炎はとくに注意を要する.喀痰培養でP.aeruginosaおよびMRSAが分離されることが多く,200検体中37%で複数の細菌が分離され,医原的な要因が強いと思われるので,複合感染を考慮した適切な抗生剤治療が必要である.それとともに,体位変換や早期離床などの理学的療法や呼吸管理が要求されるが,術後肺炎のrisk factorを持つ高齢,肥満,COPDなどの症例では,術前からの呼吸訓練などの予防的処置が重要である.

術後の創感染症—予防と治療の実際

著者: 山内英生 ,   山田康雄 ,   柿崎健二

ページ範囲:P.437 - P.439

 創感染の発生状況とその予防と治療に関して自験例を中心に検討した.1993年と1994年の2年間における消化器外科主体の全身麻酔手術例892例のなかから,消化器癌待機手術例100例(直腸癌50例,胃癌50例),胆嚢結石症に対する胆摘例(腹腔鏡下および開腹下)50例,計150例を無作為に抽出した.直腸癌,胃癌,胆石症における術後創感染の頻度は,それぞれ6例(12%),4例(8%)および3例(6%)であった.創感染を併発しなかった群と比較して,各種の背景因子はいずれも有意差はなかった.しかし,直腸癌症例においては,創感染例で手術時間が長い印象を受けた.予防的抗生剤投与は全例に第一,第二世代セフェム系抗生剤を中心に施行している.

術後の腸炎—予防と治療の実際

著者: 伊藤英明 ,   平田敬治

ページ範囲:P.441 - P.445

 術後の感染性腸炎は,抗生物質投与による腸内細菌叢の変化によって起こるものが大部分である.なかでもMRSAによる腸炎が頻度,重症度,治療の困難性などにより重要である.MRSA腸炎は,軽症ではバンコマイシンの経口投与をすれば短期間に軽快するが,重症例やイレウス合併例では死亡率も高くなり,早期治療や予防が大切である.そのほか,偽膜性腸炎や回腸嚢炎などの術後感染性腸炎の予防と治療などを述べ,さらにこれらと鑑別が必要な術後の下痢や腸炎についても述べる.

術後の尿路感染症—予防と治療の実際

著者: 大藪久則 ,   中内美穂 ,   松田昌三

ページ範囲:P.447 - P.449

 最近10年間の外科手術症例中,術後尿路感染が問題となった46症例について検討した.主たる起炎菌はP.aeruginosaおよびE.coliと弱毒菌の混合感染であった.原疾患は直腸・肛門疾患が39.1%と最も多かった.術前併存疾患として婦人科手術が4例,脳梗塞が3例,糖尿病が3例にみられた.年齢別では術後尿路感染は60歳未満では少ないが,80歳以上では1.7%,90歳以上では4.0%と上昇していた.以上より,高齢者や骨盤内操作の加わる手術後症例,術前併存疾患のある症例の術後は,尿路感染に対しても細心の注意を払う必要があると考えられた.

術後の中心静脈カテーテル感染症—予防と治療の実際

著者: 小無田興 ,   兼松隆之

ページ範囲:P.451 - P.454

 中心静脈栄養中の発熱はしばしば経験され,ほかに感染巣がない場合はカテーテル感染を疑い,ただちにカテーテルを抜去する,抜去後数日以内に下熱をみた場合はカテーテル感染症と診断できる.カテーテル感染症の予防のためには,感染経路に応じた対策を講じるとともに,risk factorを明らかにすることが必要である.本稿では,外科医が臨床の場で最も遭遇することが多い術後の中心静脈カテーテル感染症を中心に,教室における症例を含め検討した.

術後のドレーン感染症—予防と治療の実際

著者: 永井秀雄 ,   中坪直樹 ,   金澤暁太郎

ページ範囲:P.457 - P.463

 予防的ドレナージとしてわが国の一般外科領域で最もよく用いられている開放式ドレナージは,ドレーン感染の点から好ましいものではない.細菌検出率は経日的に増加し,腹壁感染,腹腔内膿瘍,腹膜炎の原因となり得る.術後早期の多滲出期にガーゼの表面まで濡れると,滅菌バリアは壊れ逆行性感染を引き起こす.早期抜去を目指すのでなければ,多滲出期の間だけでも閉鎖式ドレナージとする.理想的なドレーンシステムがない現状では,滲出の減少とADLの拡大に伴い,ドレーンを短切してガーゼを当てるのもやむを得ない.この場合は,院内感染予防の鉄則にしたがい,厳重なドレーン管理に努めるべきである.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・16 胃・十二指腸

経胃瘻的内視鏡下胃内手術—Buess式直腸鏡を用いた胃内手術

著者: 山下裕一 ,   前川隆文 ,   酒井憲見 ,   白日高歩

ページ範囲:P.405 - P.410

はじめに
 胃疾患に対する内視鏡的胃粘膜切除術(EMR)や内視鏡下手術は,従来行われてきた開腹下の外科手術により切除された膨大な数の標本とその予後調査結果に基づき,局所切除が可能と判断された胃粘膜癌や粘膜下腫瘍の一部に施行されている.EMRと内視鏡下胃内手術の比率はEMRのほうが多く,内視鏡下胃内手術はEMRを補うものといえる.しかし,現在頻用されている腹腔鏡誘導下胃部分切除術1,2)やlesion lifting法による腹腔鏡下胃部分切除術3)では,対処できない胃後壁などの病変が存在している.一方,経皮経胃的に腹腔鏡下外科手術器具を胃内に挿入し,病変部粘膜を切除する腹腔鏡下胃内手術が考案され,前述の切除困難な部位・大きさに対処できるようになった4).しかし,この手術法では胃内に常に送気を必要とするため,胃壁の全層切除が困難であるという問題点を有していた.
 この問題を解決する一法としてわれわれは,Buess式の経肛門的直腸内手術スコープセット5)を胃内手術に使用し,良好な成績を得ているので以下に詳述する.

イラストレイテッドセミナー・25

はじめての胃全摘術 Lesson 5

著者: 篠原尚

ページ範囲:P.465 - P.474

 38.No.16リンパ節の郭清:膵脾合併切除を終了したあと,左副腎の内側下方の脂肪組織をクーパー剪刀で掘っていくと,左腎静脈前面が露出する.左副腎静脈の合流部を越えてさらに追うと腹部大動脈壁が現われ,左腎静脈はその前面を横断する.No.16リンパ節(傍腹大動脈リンパ節)は,この左腎静脈下縁を境界として頭側が16a,尾側が16bと分類される.その郭清は,クーパー剪刀で大動脈周囲の脂肪組織を削ぎ落とすことにより行う.

「胃全摘術」に対するコメント

著者: 武藤輝一

ページ範囲:P.475 - P.477

はじめに
 胃癌に対する胃全摘術も現在では普遍的手術となり,施設によって著しく異なるということはない.私の行ってきた手術手技も篠原 尚氏のそれと大要において異なることはないが,細かい点では異なるところもあるので,異なる点のみを中心に記述したい.

病院めぐり

新潟県立中央病院外科

著者: 高木健太郎

ページ範囲:P.478 - P.478

 上越市は新潟県の西部に位置し,高田は上杉謙信ゆかりの地です.この高田の中心に新潟県立中央病院があります.
 当院は,明治8年に高田病院として設立され,その後,何回かの経営組織の変更があり,昭和25年に新潟県立中央病院となり現在に至っています.現在のベッド数は432床(一般402床,伝染30床)で,診療科は内科,神経内科,小児科,外科,整形外科,皮膚科,泌尿器科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,脳神経外科,放射線科,心臓血管・呼吸器外科,麻酔科から成り,常勤医師は55名です.

前橋赤十字病院外科

著者: 池谷俊郎

ページ範囲:P.479 - P.479

 前橋市は,関東平野の北に位置する群馬県の県庁所在地です.赤城,榛名,妙義の上毛三山を間近にひかえ,町の西部には坂東太郎の名の利根川が滔々と流れる山紫水明の地です.近年は,関越自動車道や上越新幹線の開通により首都圏への仲間入りをしました.
 前橋赤十字病院は,大正2年,日本赤十字社群馬支部病院として現在の地に産声を上げました.全国で11番目の赤十字病院として,診療科は5科,病床数は80床で発足しました.現在では,診療科22科,病床数581床に成長し,一般診療,救急医療を行っています.平成6年10月には,地上9階,地下1階の新病棟建設の際に屋上にヘリポートを設置,平成7年3月の救急・ICU棟の完成により,より高度な医療を目指すことになりました.

臨床外科交見室

イラストレイテッドセミナー「腹会陰式直腸切除術」の内容に対する異議

著者: 太田博俊 ,   高橋孝

ページ範囲:P.480 - P.481

 貴誌50巻7号の「イラストレイテッドセミナー」に記載された直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術の手術術式は,長年,日本の外科の先達が築き上げてきた手術手技に逆行する手法を紹介しています.すなわち,直腸後面の剥離において,仙骨前面を用手的に剥離することは適切な剥離層を維持できず,厳に慎まなければならない手法です(p933の図8,p934の図9).このような剥離では,固有直腸筋膜(臓側骨盤内筋膜)を十分に切除側につけることはできません.著者のいうように,「気持ち良く」手を入れている間にEW(+)にもなりかねません.
 欧米の教科書では,いまだこのような用手的剥離を推奨していますが,それに対する批判はすでに各国でみられます.日本では,1970年代から用手的剥離に代わって「直視下鋭的剥離」が一般化し,その効果としての低い局所再発率が国際的にも認められています1)

シリーズ 早期癌を見直す・2 早期大腸癌・6

早期大腸癌の内視鏡的治療

著者: 田島強 ,   加藤裕昭

ページ範囲:P.483 - P.487

1 はじめに
 筆者1)が最初に高周波電流を用いた大腸ポリープの内視鏡的切除を試みた1971年頃は,本邦では大腸ポリープや大腸癌はさほど多い疾患ではなかった.しかしながら,その後の本邦における大腸癌の増加は,驚異的と言っていい程著しい.また,便潜血反応を用いた大腸癌集団検診の普及により,内視鏡的治療が可能な早期の小さな病変が多数診断されるようになってきている2).ちなみに,最近の都立駒込病院における大腸癌の内視鏡的治療例数は,外科的手術例数の約1.5倍,年間約300例にも達しており,大腸早期癌の治療に果たす内視鏡の役割は非常に大きくなっている.
 大腸癌の内視鏡的治療法は,高周波電流を用いた腫瘍の摘除とレーザーやヒータープローブなどを用いた腫瘍の焼灼ないし挫滅の二つの方法に大別されるが,主として行われているのが前者であり,後者は少数の特殊な症例にのみ行われているに過ぎない.また,最近になって腹腔鏡を用いた大腸癌の内視鏡的治療も行われるようになり,本シリーズの別項にも記述されている.

臨床研究

特発性血小板減少性紫斑病に対する摘脾術の効果

著者: 田中恒夫 ,   真次康弘 ,   小出圭 ,   三浦義夫 ,   市場康之 ,   土肥雪彦

ページ範囲:P.489 - P.491

はじめに
 特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic throm-bocytopenic purpura:ITP)に対する摘脾術は70〜80%に効果が認められており1-8),有効な治療法の1つとして確立されている.しかし,術前にその効果を予測することは現在でも困難であり,手術適応を決める際の問題点の1つである.筆者らは,当科におけるITPに対する摘脾症例について,特にその術前における摘脾の効果の予測について検討し,スコアー化を試みたので報告する.

Buerger病の膝窩動脈分枝の閉塞に対する自家遊離大網移植術と後脛骨静脈のarteriovenous reversal術の成績に関する比較検討

著者: 陳立章

ページ範囲:P.493 - P.497

はじめに
 Buerger病は末梢血管に好発し,わが国では頻度の高い疾患であるが,その病因はなお明らかではない.特に膝窩動脈分枝の閉塞の治療は多くの困難な問題を含んでいる1,2).筆者は1982年より1987年までの期間に膝窩動脈分枝の閉塞に対して,顕微鏡下における自家遊離大網移植術を36例に施行した.1987年より1989年までの期間には,同疾患に対して顕微鏡下における後脛骨静脈のarteriovenous reversal術(後脛骨静脈の動脈化術)を32例に施行した.術後それぞれ7年以上と5年以上の追跡調査を行い,良好な成績を得た.
 本稿では,2つの術式と成績について述べる.

臨床報告・1

切除可能であった食道癌術後肝転移の1例

著者: 中尾篤典 ,   佐藤四三 ,   中島晃 ,   鍋山晃 ,   岡田康男

ページ範囲:P.499 - P.502

はじめに
 食道癌の肝転移はほとんどが多発性で切除不能であり,その治療は化学療法が中心となることが多い1-5).今回,われわれは食道癌術後に単発性の肝転移をきたし,外科的切除後1年半を経た現在も再発の徴候がない症例を経験した.文献的にも切除可能であった食道癌肝転移はきわめて稀であり4-6),本症例は今後の食道癌術後肝転移に対する外科的切除の適応を検討するうえで非常に貴重な症例と考えられるので報告する.

胃悪性リンパ腫に衝突型発育を示した早期胃癌の1例

著者: 佐藤元一 ,   野々村修 ,   長尾成敏 ,   佐藤好永 ,   石沢正剛 ,   佐治重豊

ページ範囲:P.503 - P.506

はじめに
 胃癌と胃肉腫の同時性重複は比較的稀であり,報告例は少ない.今回われわれは,胃悪性リンパ腫に早期胃癌が併存した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

再発を繰り返した狭窄型虚血性大腸炎の1例

著者: 木下敬弘 ,   大村健二 ,   永里敦 ,   金平永二 ,   渡辺洋宇 ,   生垣茂

ページ範囲:P.507 - P.510

はじめに
 虚血性大腸炎は現在まで多くの報告がみられ,その病因,病態が徐々に明らかになっている.稀とされてきた再発例に関しての報告1),検討も散見されるようになってきた3,11).今回われわれは,短期間にいわゆる不可逆性非閉塞性虚血性大腸炎(以下,狭窄型)と可逆性非閉塞性虚血性大腸炎(以下,一過性型)を交互に繰り返した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

上行結腸黄色肉芽腫の1例

著者: 杉本健樹 ,   荒木京二郎 ,   松浦喜美夫 ,   古屋泰雄 ,   緒方卓郎 ,   園部宏

ページ範囲:P.511 - P.514

はじめに
 黄色肉芽腫は1935年,Oberling1)によって初めて報告された比較的稀な腫瘍で,後腹膜を中心に種々の臓器での発生が報告されている.しかし,消化管に発生するものはきわめて少なく,われわれが検索し得た本邦報告例は5例であった.また,その病因については炎症性偽腫瘍,組織球由来の真性腫瘍,脂質代謝異常に関連したものなどの諸説がある.
 今回われわれは,上行結腸と腸間膜の接合部に発生し,臨床病理学的に炎症性偽腫瘍と考えられた症例を経験したので報告する.

上腰ヘルニアの1治験例

著者: 柏井英助 ,   荒木京二郎 ,   計田一法 ,   小林道也 ,   中村生也 ,   緒方卓郎

ページ範囲:P.515 - P.518

はじめに
 腰背部の抵抗減弱部位として下腰三角(Petit's triangle)と,上腰三角(Grynfelt-Lesshaft space)があり,これらの部位には稀にヘルニアが発生することがある.今回われわれは,上腰三角部に生じた腰ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

十二指腸血管筋腫の1例

著者: 横山昌樹 ,   高橋秀 ,   舘岡博 ,   猪野満 ,   武内俊 ,   田中隆夫

ページ範囲:P.519 - P.521

はじめに
 十二指腸腫瘍は比較的稀な疾患とされており,消化管出血を契機に発見されることが多い.今回,吐血・下血で来院し,十二指腸腫瘍の診断で切除したところ,組織学的に非常に稀な症例を経験したので報告する.

外科医の工夫

Shouldering Rodの試作—中心静脈栄養および持続点滴時の点滴持ち運びの工夫

著者: 木村正美 ,   下川恭弘 ,   廣瀬幸治 ,   村中孝浩 ,   岩井顯 ,   上村邦紀

ページ範囲:P.523 - P.525

はじめに
 近年の消化器外科における栄養管理の成功の一因として,中心静脈栄養(TPN)の出現を挙げることができる.最近では,制癌剤の持続点滴静注の機会も増加し,さらにTPNを行う症例が増えてきている.このような症例のなかで,比較的状態のよい患者は病院内を点滴スタンドを押しながら歩行するが,施設によっては建物の構造上,点滴スタンドで移動するのに不都合な点も多い.
 このような問題点を解決するために,点滴を持ち運ぶ棒(shouldering rod)を考案したので紹介する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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