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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科51巻9号

1996年09月発行

雑誌目次

特集 急性腹症—画像診断から初期治療まで

急性腹症における画像診断の選択

著者: 若林雅人 ,   野坂俊介 ,   宮崎治 ,   石川徹

ページ範囲:P.1101 - P.1107

 近年の画像診断装置の進歩に伴い,救急医療の現場においても画像診断の占める割合は確実に大きくなってきている.本稿では,単純X線写真,超音波検査,CT検査など各modality別に急性腹症を来たす各種疾患への適応,撮影技術を中心に解説した.急性腹症をはじめとする救急疾患に対する画像診断の選択,進め方は各施設の状況により大きく左右されるため画一的ではあり得ないが,できるだけ短時間に必要最小限の検査で治療に進むという目的は同一であり,このためには各画像診断の適応や各疾患における所見を十分理解したうえで,それぞれの施設における各科医師で構成されるdecision teamにより診断,治療方針の決定がされることが望ましいと考えられる.

腹痛と画像診断

著者: 万代恭嗣

ページ範囲:P.1109 - P.1113

 腹痛における画像診断は,胸部および腹部単純X線写真,超音波検査に加えCT検査が基本となる.腹痛の部位や程度,さらには腹膜刺激症状の有無を考慮に入れておおよその原因臓器や原因疾患を想定しながら画像診断を進めていくのが早道である.その際,婦人科疾患,泌尿器科疾患による疼痛や,胸部からの放散痛にも注意する.超音波検査では異常な低エコー域の検出が基本であり,なかでも消化管疾患を念頭に置いた検査が疾患の早期発見につながる.CT検査では,いくつかのスライスを順にみて,臓器のつながりを3次元的に構成しながら診断を行うのが見落としを最小限とする要点である.

消化管出血と画像診断

著者: 大谷吉秀 ,   熊井浩一郎 ,   橋本統 ,   石塚裕人 ,   林憲孝 ,   久保田哲朗 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1115 - P.1119

 緊急処置を要する消化管出血は広義の急性腹症に含まれる.吐血や下血といった出血の臨床症状が認められるまでにすでに多量の出血を伴っていることが多い.また高齢者や他の合併症疾患を伴う症例も少なくなく,全身状態の把握,ショックに対する治療,内視鏡やinterventional radiol-ogyによる的確な出血源の検索と原因疾患の診断,治療方針の決定など救命を念頭においた迅速な対応が求められる.

消化管穿孔

著者: 秦史壮 ,   平田公一 ,   小林謙二

ページ範囲:P.1121 - P.1126

 消化管穿孔の原因にもいろいろあり,消化管の穿孔部位や穿孔形態によってその後に発生する病態に大きな違いが生じる.よって,その治療法も保存的療法から開腹手術まで様々な方法に分かれる.診断の実際では,問診,全身および腹部の理学所見をとりつつ各種画像診断法を行う.CT,超音波検査などの進歩は著しく,ついついこれらの検査に頼りがちになるが,基本ともいえる胸腹部単純X線撮影をおろそかにしてはならない.これらの検査と理学的所見のみで消化管穿孔の確診を得られることが多く,早期診断が予後を決定しうることの多い本疾患では,それだけに診断姿勢を問われる.

肝膿瘍

著者: 蓮田啓 ,   才津秀樹 ,   中山和道

ページ範囲:P.1127 - P.1132

 CTとUSは肝膿瘍に対してきわめて有用な診断手段である.しかし,肝膿瘍の時期によっては診断が難しい場合があり,また単発例では胆管細胞癌,多発例では肝転移との鑑別診断が困難な症例が稀にあり注意する必要がある.また,その病因を明確に推定できた症例は約半数程度であり,最近ではその原因として医原性のものが増加している.その診断とほとんど平行して抗生物質の投与,超音波誘導下膿瘍ドレナージ,さらに全身管理などの治療を行わなければならないものの,この中でもっとも大切なのは膿瘍ドレナージである.しかし,愛護的に行わないと膿瘍内出血,門脈や肝静脈との短絡を形成して,さらに重症化することがある.

急性胆嚢炎

著者: 森俊幸 ,   羽木裕雄 ,   跡見裕

ページ範囲:P.1135 - P.1139

 急性胆嚢炎は多くの場合,ハルトマン窩に嵌頓した結石による胆嚢管閉塞が原因となっている.以降の経過は,結石嵌頓が解除したか否か,二次感染の有無やその程度,患者の年齢,糖尿病などの合併の有無により異なる.一部の症例では二次感染がおこり,時に緊急処置を要する膿瘍形成や胆嚢穿孔へと進展する.本稿では,急性胆嚢炎の病態に加え,画像診断,緊急処置を要する合併症や初期治療について概説した.

急性膵炎

著者: 山内淳一郎 ,   武田和憲 ,   砂村眞琴 ,   小針雅男 ,   松野正紀

ページ範囲:P.1141 - P.1145

 急性膵炎の画像診断,重症度判定,初期治療について概説した.急性膵炎の画像診断の中心は造影CTである.壊死性膵炎か浮腫性膵炎を鑑別し,炎症の膵外への進展度を正確に評価することが造影CTによる画像診断のポイントとなる.さらに,必ず骨盤腔まで画像を得ること,入院中は繰り返しCT検査を行い病態の変化を見逃さないことが肝要である.初期治療の選択にあたっては,画像診断に加えて的確な重症度判定が必要となる.重症急性膵炎においての現在の治療の主流は,膵酵素阻害剤・抗生剤持続動注療法や持続血液濾過などの血液浄化療法を中心とした積極的な保存的集中治療であるが,膵病変への感染合併症例は外科的治療の絶対的適応となる.

イレウス

著者: 酒井靖夫 ,   畠山勝義 ,   谷達夫 ,   三間智恵子 ,   瀧井康公 ,   岡本春彦 ,   須田武保

ページ範囲:P.1147 - P.1152

 イレウスは腸管内容の通過障害であり,器質的な原因がある機械的イレウスと,それ以外の機能的イレウスとに分けられる.腸管の血行障害の有無で,保存的治療,緊急および待期手術など治療方針が異なるため,画像診断ではイレウスの存在診断と質的診断の2つが必要である.さらに,血行障害を伴う場合には急速に全身状態が悪化し,予後不良となりやすいので,診断の迅速さも要求される.初期治療の原則は輸液による脱水,電解質・塩基平衡の是正などの全身管理,腸管減圧による局所の安静であり,早期手術が可能な体制のもとで厳重に経過観察しながら,臨床所見と画像検査を総合的に判断して,治療方針を決定すべきと考えられる.

急性虫垂炎

著者: 戸倉康之 ,   山藤和夫 ,   服部裕昭 ,   森川康英

ページ範囲:P.1153 - P.1156

 1993年1月より1996年3月までの間に浦和市立病院外科および小児外科において入院治療した273例の急性虫垂炎患者をretrospectiveにUS, CTなどの画像診断と病理所見を対比して検討した.US検査は小児症例の80例(72.7%)に施行され,Sensitivityは90.2%,Specificityは82.6%,Accuracyは90%であった.3.8%のFalse negativeを認めたが虫垂描出率は52.5%で,虫垂炎と診断した症例の平均最大横径は8.9mmであった.一方,CT検査はUSで描出できなかった症例や病変のひろがりを見るのに有効であった.US検査は診断価値が高いが虫垂を描出するのには日頃の訓練が必要である.

胆管炎,急性閉塞性化膿性胆管炎

著者: 安田是和 ,   柴崎淳 ,   服部照夫 ,   金澤曉太郎 ,   鈴川正之

ページ範囲:P.1159 - P.1165

 胆管炎,急性閉塞性化膿性胆管炎は胆汁欝滞に感染が生じたもので,早期に診断し緊急に治療を開始しなければ容易に重症化し,とくに急性閉塞性化膿性胆管炎は腹部救急疾患のなかでも重篤な経過をとるもののひとつである.治療はPTBD, ENBDなどの胆道減圧が必須で,他のどの治療法にも優先される.これと平行して患者の状態に応じて抗ショック療法,抗DIC療法や抗菌剤の投与などが行われる.本症は,Charcotの3徴を症状の基本としており,一旦本症を疑えば画像診断の発達した現在,診断に苦慮することは少ない.救命率の改善のためには,多くの臨床医が本症を認識し,早期診断と治療を可及的速やかに開始することが重要である.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・21 胃・十二指腸

腹腔鏡下胃内手術のピットフォールと限界

著者: 金平永二 ,   大村健二 ,   森明弘 ,   川西勝 ,   宮永太門 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.1093 - P.1099

はじめに
 1993年に大橋ら1)により開発された腹腔鏡下胃内手術(以下,LIGS)は,腹壁と胃前壁をトラカールにより貫通し,胃内腔で外科的な切除を行うen-doluminal surgeryである(図1).われわれ2,3)は,1993年9月より現在までに14例のLIGSを施行したが,必ずしも期待した通りの手術ができたわけではなく,開腹移行例や困難例も経験した.本稿では,これから学んだピットフォール(PF)を中心に,LIGSを施行するにあたっての注意点を述べる.

臨床外科交見室

“虫垂仙痛”or“虫垂症”?

著者: 熊谷輝雄

ページ範囲:P.1167 - P.1167

 外科医にとって最も身近な虫垂疾患の病名に若干の不都合を感じるため,思うところを述べてみたい.
 このところ,典型的な急性虫垂炎像を示す症例が激減したように感じる.強力な抗生剤の適切な使用で,多数の虫垂炎が治癒するためであろう.ところが虫垂に起因すると思われる右下腹部痛が主訴の患者は依然として存在する.

病院めぐり

県立奈良病院外科

著者: 渡部高昌

ページ範囲:P.1168 - P.1168

 当院は,昭和39年4月に,前身である奈良県立医大附属奈良病院として,奈良市を中心とした奈良県北部の中核的病院として,10科200床として開院されました.その後,診療中心の県立病院として名称を県立奈良病院と改称するとともに,昭和52年10月には病院の移転新築(奈良市平松町)がなされ,13科400床と整備され,昭和53年には厚生省より臨床研修病院に指定されました.昭和57年には三次救急医療施設として,救命救急センター(30床)が併設され現在に至っています.
 当院外科は,昭和39年の開設当時は奈良医大第1外科講座に含まれており,消化器外科を中心に診療いたしておりましたが,初代外科医長であられた増井先生が院長となられてから,病院は飛躍的に充実発展し,診療面でそれを補佐されたのは,現在の副院長であられる外科の本郷医師を初めとする我々外科一同であると思っています.ちなみに,消化器病の診断と治療に必要な内視鏡や超音波診断装置の整備のために新設された中央内視鏡,超音波診断室も,当外科を中心として開設されたため(初代部長,渡部高昌医師),現在もその主力をわれわれが担っております.

松阪市民病院外科

著者: 小坂篤

ページ範囲:P.1169 - P.1169

 松阪市民病院は昭和21年9月健康保険松阪市民病院として創設され,診療科4科の小病院で発足しました.昭和26年,松阪市に経営が委託された後,増改築を重ね,昭和50年には診療科12科,病床数300床(一般病棟262床,結核8床,伝染病棟30床)の総合病院となりました.平成6年4月には横山實前院長(元三重大学眼科学教授)から水本龍二院長(前三重大学第1外科学教授)へバトンタッチされ,同年10月には全館が改築され,新築されました.現在では診療科15科,病床数338床(一般病棟を300床に増床),病理室には専任の医師がおり,外科の剖検率は50%を越えています.
 当院は松阪市の中心部にある蒲生氏郷公が築城した松阪城(現在は城址のみ)の隣に位置し,近鉄松阪駅や伊勢自動車道の松阪インターからも近く,交通は至便です.

メディカルエッセー 『航跡』・1

ダイヤモンド型吻合術

著者: 木村健

ページ範囲:P.1170 - P.1171

 もしもあのとき,あの場所にあの人が居なかったら(あるいは居たら),事態は全く違っただろうということは,稀ではあるが日常に起こりうる.
 1972年から翌年にかけてボストンフローティング小児病院の小児外科チーフレジデントをしていたときのことである.小児外科チームは主任のフィッシャー教授,チーフレジデントの私の他に,外科の2年目のレジデントが2人,1年目が2人の合計6人という編成であった.このチームで年間800例の手術をしたのであるから当然多忙な毎日であった.手元の記録では1年間に700回手洗いをしている.そうしたある日,食道閉鎖症と十二指腸閉鎖症を合併した新生児が送られてきた.その日のうちに,気管食道瘻を切断し食道再建術を行ったが,患児の状態が良くないので十二指腸閉鎖の手術は翌日ということになった.しかし翌日の手術の時間帯,フィッシャー教授は地元テレビ局の口蓋裂治療のキャンペーン番組に出演する先約があり,教授は一般外科の同僚に十二指腸閉鎖症例のスタッフ外科医としての権限を委任して,テレビ局に出向いてしまった.当時は今と違って,チーフレジデントはキャンパス内にスタッフが居るという条件付きではあったが,単独で手術することが許されていたのである.出発前,十二指腸—十二指腸吻合をして胃瘻を造るようにと一応の方針だけは言い残してくれた.「わかりました」とは言ったものの,十二指腸—十二指腸吻合というのは見たこともなかった.

私の工夫—手術・処置・手順・24

膵頭十二指腸切除後の膵胃吻合

著者: 増田亨 ,   坂倉究

ページ範囲:P.1172 - P.1172

1.はじめに
 1986年よりわれわれの施設では,膵頭十二指腸切除後の再建に膵胃吻合を行ってきた.膵胃吻合の特徴は手技が初心者にも容易で,縫合不全や出血などの合併症が少ないことである.膵胃吻合を行ったのは14例である.

外科医のための局所解剖学序説・2

頸部の構造 2

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.1173 - P.1182

 現在,Guy's hospitalで臨床解剖学を教えているHarold Ellis(Charing Cross and WestminsterMedical schoolの外科学の名誉教授)は,体表解剖の重要性をつぎのように述べている.「経験豊かな臨床医は体表の構造を深部の構造と関係づけることに多くの時間を費やすものだ」と.頸部の体表解剖をここでまとめておく.
 Ⅰ.舌骨はC3のレベルにある.この位置で外頸動脈が枝分かれし,急に複雑になる.

詳説 皮膚割線の局所解剖・1【新連載】

女性解剖体における顕出例の示説—体幹から肩・腋窩にかけて

著者: 伊藤由美子 ,   佐藤達夫

ページ範囲:P.1185 - P.1191

はじめに
 皮膚にまるい小孔を穿つと,楕円形の孔ができる.その長軸の配列方向は皮膚の緊張と一致するので,LangerやKocherにより「皮膚割線」として手術時の皮切の方向として推奨されてきたが,近年,皺線に沿った皮切のほうが瘢痕形成が少ないことも主張されるようになった1).しかし,幼若青年層では皺線の設定が困難で,その活用には難があり,皮膚割線の再検討も必要と思われる.しかしながら,皮膚割線図は報告者により結果に差がみられ2),それが人種差にもとづくのか個体差によるのかも明確でない.ただ,従来の報告例の写真と挿図を通覧すると,割線を発現させるために穿った孔の密度がかならずしも高いとはいえないように思われる.
 筆者らは,衣服製作に重要な皮膚の局所解剖学的研究を行ってきたが,特に体幹と四肢の移行部のように,移動性ならびに形の変化の著しい部位について,皮膚割線と皺線ならびに浅層筋の筋束方向の関連を調査している.その第一段階として,女性解剖実習体1体の頭部を除く左側半について,従来よりも緻密に皮膚割線を出現させた.もちろん,最少例数という難はあるが,現在,最も詳しい調査例と思われるので,示説して外科医の参考に供したい.なお,図が多数となる関係から,(1)体幹から肩・腋窩にかけて,(2)骨盤部から下肢にかけて,(3)腋窩から上肢にかけて,の3回に分割して示説することにする.

臨床研究

内視鏡下鼠径ヘルニア修復術の経験—TEPPとTAPP

著者: 金丸洋 ,   多田真和 ,   堀江良彰 ,   高田伸 ,   金丸智子

ページ範囲:P.1193 - P.1198

はじめに
 近年の内視鏡下手術の発達により内視鏡下鼠径ヘルニア修復術(以下,本術式)が可能となっている.腹壁外アプローチによる術式(以下,従来法)に較べ術後の疼痛や鼠径部の緊張感が少なく,術後第1病日からの歩行や経口摂取,早期の退院および社会復帰が可能などの長所がある.本術式はポリプロピレンメッシュ(以下,メッシュ)を腹膜前層に展開し,内・外鼠径,大腿ヘルニアの内ヘルニア門を同時に被覆閉鎖する方法で,下腹壁内側の内ヘルニア門周囲の解剖学的位置関係が明瞭に観察できる事から,正確な診断・手術が可能である.手術方法は経腹腔的に行うtransabdominal preperitoneal approach(以下,TAPP)と腹膜外腔を剥離して行うtotal extraperitonealpreperitoneal approach(以下,TEPP)がある.この2つの術式の術野は画像的に全く異なっている.われわれは1993年3月から1995年8月の期間にTAPP−25例(27病変),TEPP−25例(28病変)を経験したので両術式の解剖および術野の相違を中心に報告する.

上肢虚血性病変に対する胸腔鏡下胸部交感神経節切除術の成績

著者: 内野敬 ,   土田博光 ,   小長井直樹 ,   石丸新

ページ範囲:P.1199 - P.1203

はじめに
 胸部交感神経節切除術(胸交切)は,閉塞性血行障害,Raynaud病,Causalgia,多汗症などに適応されている.到達経路としては,鎖骨上窩切開法1),背部胸膜外法2),腋窩経胸膜法3)など,各種の術式がある.欧州では1980年頃から侵襲軽減の目的で,胸腔鏡下胸部交感神経節切除術(胸腔鏡下胸交切)が行われるようになってきたが,本邦での歴史は浅く,文献的にも報告は少ない.われわれは1992年6月から上肢,ことに手指の虚血性疾患に対し,胸腔鏡下胸交切の適応を開始した.未だ若干例ではあるが,文献的考察を加えて教室の成績を報告する.

臨床報告・1

腸管嚢腫様気腫の5例

著者: 竹内邦夫 ,   加藤広行 ,   倉林裕一 ,   竹之下誠一 ,   長町幸雄 ,   正田弘一

ページ範囲:P.1205 - P.1208

はじめに
 腸管嚢腫様気腫(pneumatosis cystoides intes-tinalis,以下PCIまたは本症と略す)は腸管の粘膜下や漿膜下に多発性の含気性嚢腫を形成し,種々の腹部不定愁訴をきたす比較的稀な疾患である1).われわれは過去13年間に本症を5例経験したので文献的考察を加え報告する.
 1983年1月より1995年12月までの13年間に当科で経験したPCIは5例である(表).年齢は16歳から65歳までで平均年齢48.8歳,性別は男性2例,女性3例.主訴は腹満感が2例で下血,腹痛,心窩部痛がそれぞれ1例であった.病変部位は小腸が3例,上行結腸1例,直腸・S状結腸が1例であった.また治療は3例に高圧酸素療法のみを施行し,1例は高圧酸素療法と開腹術,ほかの1例は開腹術のみであった.

非外傷性十二指腸壁内血腫の1手術例

著者: 木下敬弘 ,   佐藤博文 ,   山脇優 ,   神林清作 ,   久保井宏 ,   松下和彦

ページ範囲:P.1209 - P.1213

はじめに
 十二指腸壁内血腫は腹部外傷によるものが多く,非外傷性は少ない1).また近年,その治療法に関しては保存的治療を推奨する報告が多い2).今回われわれは保存的治療中,再出血をきたしたため,膵頭十二指腸切除術を施行した非外傷性十二指腸内血腫の1治験例を経験したので報告する.

肝切除を施行した慢性腎不全を有する肝細胞癌の2例

著者: 駒田尚直 ,   上辻章二 ,   山田斉 ,   川口雄才 ,   權雅憲 ,   上山泰男

ページ範囲:P.1215 - P.1220

はじめに
 本邦における透析技術と血管外科の進歩により,透析(HD)へ導入される慢性腎不全(CRF)患者の数は年々増加し,長期生存例が増えるにつれ,種々の外科的疾患が発生するようになり,最近の手術と麻酔の進歩はこれらの患者に対する手術を可能とした.われわれはCRF合併肝細胞癌(HCC)に対する肝切除術を2例経験したので,文献的考察を加え報告する.

乳腺原発印環細胞癌の1例

著者: 館花明彦 ,   福間英祐 ,   宇井義典 ,   山川達郎

ページ範囲:P.1221 - P.1225

はじめに
 乳腺原発印環細胞癌は予後の悪い比較的稀な疾患といわれており,本邦での文献的報告例は20例に満たない.今回われわれは,本疾患の1手術例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

多発性胃カルチノイドの1例

著者: 宇田憲司 ,   成末允勇 ,   金仁洙 ,   大崎俊英 ,   室雅彦 ,   井谷史嗣 ,   白川靖博 ,   高橋聖之

ページ範囲:P.1227 - P.1231

はじめに
 A型胃炎,幽門腺領域のガストリン細胞(G細胞)の過形成および高ガストリン血症を伴った多発性胃カルチノイドの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

臨床報告・2

前内膀胱上ヘルニアの1例

著者: 田畑孝 ,   村上穆

ページ範囲:P.1232 - P.1233

はじめに
 原発性ヘルニアのなかでもとくに稀とされる膀胱上ヘルニアのうち,イレウス症状で発症した前内膀胱上ヘルニアの1例を経験した.本邦では7例目の報告であり,先の6症例との若干の対比検討とともに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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