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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科52巻1号

1997年01月発行

雑誌目次

特集 転移性肺癌診療の最新ストラテジー

転移性肺腫瘍の臓器別頻度とその年代的変容

著者: 山口豊 ,   光永伸一郎 ,   安川朋久 ,   清水治子

ページ範囲:P.13 - P.17

 悪性腫瘍に対する化学療法,ホルモン療法といった治療が転移性肺腫瘍の様相を変え,ひいては外科治療の適応にも変化がみられる.そこで日本病理剖検輯報により,1982年から1993年までに収録された悪性腫瘍剖検例について肺転移例を対象に原発臓器別に検索したところ,多くの腫瘍では一定の傾向を示さないか,あるいはやや増加傾向であるのに対して,大腸癌,乳癌,前立腺癌,腎癌,精巣腫瘍などでは肺転移の頻度が徐々に低下してきている.これらの腫瘍では,近年効果的なアジュバント療法による治療プロトコールの開発や,積極的な外科切除によって,肺転移が徐々にコントロール可能になってきているためと考えられる.

切除例からみた転移性肺癌の病理

著者: 北川正信 ,   松井一裕 ,   前田宜延 ,   野々村昭孝 ,   三輪淳夫

ページ範囲:P.19 - P.23

 転移性肺癌200例の原発部位の内訳(%)は結・直腸29,軟部12,肺9,骨・腎各7.5,精巣・子宮各5,乳腺4,上気道・唾液腺各3.5,口腔・咽頭・食道で4.5,甲状腺・膀胱各2,その他5.5であった.骨肉腫,精巣腫瘍で転移までの期間は1年以内,次いで軟部腫瘍が1年から1.5年の間であり,数年以上に甲状腺髄様癌,唾液腺腺様嚢胞癌,子宮腫瘍の多くと,乳癌,甲状腺乳頭癌の一部があった.制癌剤著効例は多くの精巣腫瘍と絨毛癌,一部の軟部腫瘍と乳癌にみられた.大多数の結腸・直腸癌と胃・十二指腸癌で肝転移のない肺転移のあること,肺では扁平上皮癌のみならず腺癌にも管内転移があること,腎癌で気管支壁転移がありうることが指摘された.

転移性肺癌の診断

著者: 奥村栄 ,   中川健

ページ範囲:P.25 - P.30

 転移性肺癌のうち甲状腺癌(4例),乳癌(67例),大腸癌(83例)肺転移例における術前診断の現状を検討し,また早期発見における問題点にも言及した.(1)自覚所見が先行し肺転移が発見される症例は5%(7/154例)と低率であり,胸部レントゲン検査を中心とした画像検査が早期発見には不可欠と考えられる.(2)腫瘍マーカーは,切除対象となる乳癌肺転移症例では,その陽性率(11%)からみた場合,CEAやCA15-3などは有用なマーカーとはいえなかった.大腸癌の場合は,CEAの陽性率は約40%であり,その推移は早期発見の手助けになりうると考えられる.(3)孤立性肺腫瘤の場合,画像所見だけでは転移性か原発性か鑑別困難な症例がみられ,気管支鏡検査あるいはCTガイド下による組織診・細胞診が必要となる.乳癌肺転移の場合には,組織診・細胞診(診断率35%)でも鑑別困難な症例が多いのが現状である.大腸癌肺転移の場合には,壊死を背景として高分化型腺癌が認められれば比較的診断が容易(診断率79%)であった.(4)単発肺転移を小さなうちに発見することは,まさに治療の第一歩であると思われるが,多発転移の永山の一角の可能性もあり,どういう方針でどの時期に手術を施行するかということは,発見することと同等あるいはそれ以上に重要なことと考えている.

転移性肺癌の診断

著者: 平野隆 ,   加藤治文 ,   瓜生和人

ページ範囲:P.31 - P.36

 外科医が転移性肺癌の診断をするうえでまず念頭におくべきはその手術適応であるが,外科治療についての考え方は切除症例の蓄積とともに推移してきた.しかし,一般的には早期発見された症例ほど外科治療の対象にしやすいことはいうまでもない.われわれは癌患者の術後検査として,胸部X線撮影・腫瘍マーカーを含む血液生化学検査を年に3〜4回,胸部X線CT撮影を年に2回行っている.原発巣治療後の癌患者に胸部異常陰影を発見したときは直ちに肺転移としがちであるが,癌患者では第2原発癌としての肺癌の発症や免疫力低下に基づく感染症併発の可能性は一般対象群に比較しきわめて高い.したがって,組織・細胞学的診断は大変重要である.肺野の腫瘤陰影として見ることの多い転移性肺癌は経皮的針細胞診が有効であるが,症例ごとに適切な腫瘍細胞の採取法を考慮し,正しい治療法選択に役立てるべきである.

転移性肺癌の治療選択

著者: 土屋了介

ページ範囲:P.39 - P.42

 原発巣が癌である転移性肺癌に対する外科的治療はThomfordの基準が守られ,多くは単発の症例が対象とされているが,複数個の転移の切除も試みられている.甲状腺癌,乳癌,大腸癌の肺転移に対する治療は単発であれば外科的な切除が治療として適応があるといえるが,複数の肺転移に対しての切除は対症療法として以上の効果が期待できない.したがって,化学療法や放射線照射が行われるが,多くは延命効果は期待できない.大腸癌の肺転移症例の中には複数個の肺転移を手術したり,肝転移と共に肺転移を切除して長期生存している症例も経験されており,今後,どのような症例が長期生存できるのか鑑別できるような診断が求められる.したがって,複数肺転移症例の切除や化学療法ならびに放射線照射は,適応の是非について結論が導きだせる臨床試験として行われるべきである.単発の転移巣か原発性肺癌かの鑑別が困難な症例も多く,確定診断のために切除される症例も実地臨床の場では多い.

転移性肺腫瘍の治療選択

著者: 村上眞也 ,   小田誠 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.45 - P.48

 転移性肺腫瘍の治療における外科の役割について,原発臓器別(甲状腺,乳腺,大腸)に検討した.甲状腺癌の肺転移形式は粟粒散布型が多く,放射性ヨードによる内照射が有効であり,残存甲状腺全摘後,内照射を施行するのが標準となる.乳癌の肺転移は全身転移の一部として発生することが多いが、化学療法やホルモン療法が有効であるため,近年,集学的治療の一環として肺転移巣切除が行われ,比較的良好な予後が得られるようになった.大腸癌に対しては化学療法はほとんど無効であるが,肺転移巣は比較的限局性に発育することが多いため,外科治療の対象となりえた.両側開胸法としては,胸骨横切開が有効と考えられる.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・25 大腸

腹腔鏡下横行結腸切除術

著者: 宗像康博 ,   林賢

ページ範囲:P.5 - P.11

はじめに
 腹腔鏡下結腸切除術のなかで横行結腸切除術(以下本法)は手技的に最も離しいと思われる.結腸の後腹膜からの授動は層を誤らなければ容易であるが,横行結腸の場合は,大網との剥離が必要になり,手技的には非常に煩雑であった.しかし,全く新しい概念の超音波手術器具の出現で所要時間は若干かかるものの,ほとんどクリップを使用することはなく,大網の切離が可能になり,本法の手技がかなり簡略化された.さらに腹腔鏡下手術用に開発された超音波メスを使用することで,中結腸動脈の根部の露出が安全になり,本法においてもD2リンパ節郭清が確実に行えるようになった.本稿ではD2リンパ節郭清腹腔鏡下横行結腸切除術の具体的な手術手技について述べる.

病院めぐり

山形県立河北病院外科

著者: 渡部修一

ページ範囲:P.50 - P.50

 山形県の河北町をご存じの方はごく少なかろう.山形市の北西約20kmの最上川河畔にあり,紅花で知られる小さくも歴史ある町である.
 当院は昭和22年日本医療団谷地病院として誕生,39年県立河北病院と改称,56年に現在地(田んぼの中)に新築移転し,一般病床数280床(うち外科50),常勤医師数40名の総合病院となり,地域の中核病院として活躍中である.

竹田綜合病院外科

著者: 紙田信彦

ページ範囲:P.51 - P.51

 当院は,昭和3年竹田医院として出発し,現在は25診療科,1209床を有する綜合病院である.診療圏は,戊申の役の白虎隊の自刃で有名な旧会津藩内の2市15町11村で,かかえる人口は335,000人余である.日中の外来患者は2,500人前後,夜間救急外来には,多い時は100名を越え,夜の緊急手術もよく行われている.
 外科は,東大塩田外科教室出身の塩川五郎によって,昭和10年に開設され,現在の体制になったのは,山口善友部長の時である.スタッフは,科長3名を含めて16名である.関連大学医局は,東大第2外科,山梨医大第1外科など6医局である.出身校間の垣根はなく,退職後も,友達としての交流が続くなど,いい雰囲気である.扱う疾患は,消化器・甲状腺・乳腺・肛門疾患が主である.当外科では,治療レベルの目標を,本邦のトップレベルの80%に置き,手術は安全に,かつ逃げのできる手術を基本としている.80%の到達目標であれば,専門家でなくても達成可能と信じ,偏る事なく患者を担当させている.研修医には,早いうちからできるだけ多くの手術を経験させ,手術の怖さを含めて,手術の基礎を体で覚えさせる様にしている.麻酔の基礎研修,診断技術の研修,病理標本の見方なども関連科の協力を得て施行させている.

メディカルエッセー 『航跡』・5

韓国の小児外科医

著者: 木村健

ページ範囲:P.52 - P.53

 ソウル大学の金宇基教授(Kim Wooki)とはじめて出合ったのは,1979年5月アメリカ小児外科学会が開かれたロスアンゼルスのセンチュリープラザホテルのエレベーターの中であった.のちにレーガン大統領によってSurgeon Generalに任命され,閣僚となったクープ教授の同門パーティに行く途中であった.クープ教授のスウィートルームで,同教授の門下生であるKim教授と親しく言葉を交したのが,ニッポンと韓国の小児外科医のはじめの接触であった.話ははずんで,ソウル大学の客員教授として招いてもらうことになった.
 1979年9月,Kimpo国際空港に降り立つといきなりキムチの匂いが鼻を衝いたのが印象的であった.Kim教授のお宅に泊めてもらい,美しい奥様の手造りの韓国風ギョウザや,温いうどんで暖いおもてなしを受けたのが鮮明に思い出される.

私の工夫—手術・処置・手順・27

外科領域における大網充填法

著者: 佐藤友信

ページ範囲:P.54 - P.54

 大網は単に脂肪組織ではなく,感染に対して防御作用を有する事を述べた論文は少ないが1),われわれは積極的に大網を利用し,腹部や胸部の手術時に感染創や死腔を充填するのに利用している.大網応用の利点は,①死腔を減らす,②感染に対して防御作用を有する,③死腔にたまってくる滲出液を吸収するといったことから創傷感染を防ぎ,創傷治癒を促進するという点である.
 具体例として,はじめに直腸切断後の骨盤底に充填する方法について述べる.そのまま大網を骨盤底まで降ろす事はまず不可能で,横行結腸からの遊離を必要とする.肝彎曲部から少し正中寄りの横行結腸付着部から遊離をはじめ,左側の脾彎曲部の方へ遊離していく.大網の栄養血管は胃大網動静脈から直角に近い角度で数本でているが,出来れば最低2本は残す.とくに骨盤底に充填する際は出来る限り脾彎曲部近くまで遊離しておくのがよい.遊離した大網を,人工肛門としたS状結腸の内側に沿ってゆったりと骨盤底に充填する.無理に一番底位まで大網を降ろさなくても,膀胱の辺りで良い.大網を拡げて腹膜の切離縁と大網とを数か所縫合固定し,骨盤底へ小腸が入り込まないようにする.固定の際,栄養血管を損傷しないように十分注意する.この大網充填によって直腸切除により生じた腹膜欠損部はほぼ覆う事が可能となる.

外科医のための局所解剖学序説・6

胸部の構造 1

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.55 - P.64

 胸部の解剖をまとめるために手術に関する文献を調べてみると,胸部外科医は胸腔に筋肉,消化管,血管などいろいろなものを躊躇せずに引き込むことに気づいた.私が主に学んだ腹部小児外科では,横隔膜を破り,胸部の構造を腹腔に引き込むなどということは,横隔膜ヘルニアで胸腔に入った腸管を戻す以外は稀であるから,この事実は新鮮で実に興味深かった.また胸腔のキャパシティについて改めて考えさせられた.
 ここでは胸部の体表解剖を胸骨を中心にまとめておく.

抗生物質によるエンドトキシン血症・1【新連載】

エンドトキシン放出に関する研究の歴史的変遷

著者: 谷徹 ,   花澤一芳

ページ範囲:P.65 - P.69

はじめに
 近年,抗生物質使用時の副作用として,エンドトキシン放出に伴う負の効果を検討する臨床研究が報告され1,2),抗生物質使用の新しい適応条件として注目されるようになってきた.
 抗生物質使用に伴う一時的な病態の悪化については,前世紀末に駆梅療法時に起こることが知られ,Jarisch-Herxheimer反応3)と呼ばれてきた.Sulfanilamideが最初に全身投与された1930年代にも同じ懸念が表明され4),1940年代には最初の臨床経験が報告された5).今世紀後半にはエンドトキシン放出がその原因機序として説明されるに至った6).しかしその後,1980年代後半までこの現象が重視されることはなく,顕著な研究の進展はなかった.

鼠径部の解剖の再検討

内精筋膜と結合腱について

著者: 川満富裕 ,   芹澤雅夫 ,   高橋秀雄

ページ範囲:P.71 - P.78

はじめに
 一般に内精筋膜は横筋筋膜に続くと考えられているが,筆者のひとり(川満)は横筋筋膜にではなく腹膜前筋膜に続くと主張してきた1).しかし,鼠径部のように「複雑な層状構造をとり,発達度も不安定な膜状構造物の定義と同定に関する議論はとかく水掛け論に陥りやすい」2).また,「ある人がAという構造物を他の人はBだと考えていれば,議論がかみ合わないことになる」3).そこで,筆者らは日本解剖学会の関東地方会第6回懇話会で報告したが,著者らの考えは解剖学者の方々にもご理解いただけたと思う.本稿では,その報告を詳述する.

臨床研究

肝硬変症例における部分的脾動脈塞栓術(PSE)後の止血・凝固系の変動

著者: 江副英理 ,   山城一弘 ,   平田公一 ,   桂巻正 ,   向谷充宏 ,   木村弘通

ページ範囲:P.81 - P.85

はじめに
 部分的脾動脈塞栓術(Partial splenic embol-ization:以下,PSE)は肝硬変に付随する様々な病態治療に有用であり,当科ではとくに高度の止血・凝固系障害を合併する肝硬変合併肝癌症例での術前処置として積極的に施行している1).今回われわれは肝硬変合併肝癌症例9例に対してPSEを施行し,PSEの効果,とくにトロンボエラストグラム(thromboelastgram:以下,TEG)などからみたPSE後比較的早期(1か月)における止血擬固系の変動につき検討を加えたので報告する.

膵体尾部切除術における膵液漏出試験の有用性について

著者: 鈴木知信

ページ範囲:P.87 - P.89

はじめに
 胃癌あるいは膵体尾部病変における膵体尾部切除術後の膵液瘻は,ひとたび発生すると治療に難渋する合併症である1).その防止を確実にする目的で筆者らは膵体尾部切除術後の膵断端閉鎖法に膵液漏出誠験を取り入れてきた.本稿ではその手技を紹介するとともに,その手術成績についても述べる.

臨床報告・1

上腸間膜静脈血栓症の1例

著者: 西田豊 ,   櫛渕統一 ,   来見良誠 ,   柴田純祐 ,   小玉正智

ページ範囲:P.91 - P.94

はじめに
 上腸間膜静脈血栓症は腸間膜血管閉塞症の一病型で,全入院患者の0.003〜0.007%,剖検例の0.05%といった稀な疾患である1).今同われわれは上腸間膜静脈血栓症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

慢性血液透析患者に合併した虚血性大腸炎の1手術例

著者: 市川英幸 ,   丸田福門 ,   長沢正樹 ,   田村克彦 ,   川口研二 ,   鈴木義信

ページ範囲:P.95 - P.99

はじめに
 近年,慢性血液透析患者に合併した虚血性大腸炎の報告が散見される1).しかし,一般的に虚血性大腸炎と透析患者に発生する虚血性大腸炎とは多少異なる点もあり,透析患者の病態に特異的因子の関与も推測される.今回われわれは,本疾患の1手術例を経験したので,文献的考察を加えその概要を報告する.

少量シスプラチンと5-FUが悪性胸水制御に有用であった再発乳癌の1例

著者: 尾浦正二 ,   櫻井武雄 ,   吉村吾郎 ,   玉置剛司 ,   梅村定司 ,   粉川庸三

ページ範囲:P.101 - P.104

はじめに
 近年,5-FUに種々のmodulatorを併用して,その抗癌効果を高めるbiochemical modu-lation1-3)(以下,BM)が注目を集めている.本邦でも主として消化器癌に対するBMの治療成績4)が報告されるようになってきたが,乳癌に対する報告は未だ少ない.今回われわれは,少量シスプラチンと5-FUによるBM5,6)が悪性胸水制御に有用であった再発乳癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胸腔鏡下胸腺腫摘出術後のダナゾール投与にて寛解を導入し得た赤芽球癆の1例

著者: 実方一典 ,   木村道夫 ,   森昌造 ,   鈴木厚生 ,   貝羽義浩

ページ範囲:P.105 - P.108

はじめに
 赤芽球癆は赤血球生成が選択的に障害される疾患であるが,その病態はまだ十分には解明されておらず,治療法も確立されていないため予後は不良である1).しばしば胸腺腫を合併することが知られており,その摘出も治療法の1つとされているが,これだけでは無効のことが多い1).今回われわれは,胸腔鏡下手術にて胸腺腫摘出後にダナゾールを併用することによって寛解を導入し得た赤茅球癆の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

胆嚢癌を合併した胆嚢結石によるMirizzi症候群の1例

著者: 竹内邦夫 ,   都築靖 ,   安藤哲 ,   関原正夫 ,   大下栄作 ,   長町幸雄

ページ範囲:P.109 - P.112

はじめに
 Mirizzi症候群は胆嚢結石が胆嚢頸部および胆嚢管に嵌頓し炎症を引き起こした結果,総肝管に狭窄や閉塞を来たし,胆管炎が黄疸を呈する病態である1).今回,われわれはendoscopic retrograde cholangiopancreaticography(以下,ERCP)によりMirizzi症候群と術前診断し,摘出標本で胆嚢癌を合併していた症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

十二指腸水平部に発生した早期十二指腸癌の1例

著者: 岩崎武 ,   長田裕 ,   綿引元 ,   山本英明 ,   小川博 ,   具英成

ページ範囲:P.115 - P.118

はじめに
 十二指腸潰瘍に代表される諸種の良性疾患に比べると,十二指腸の悪性疾患の頻度は低く,癌や肉腫は比較的稀な疾患と考えられるている1).しかし上部消化管造影法,内視鏡検査法の普及により十二指腸病変の診断率が著しく向上しており,良性病変のみならず十二指腸悪性疾患に遭遇する機会も徐々に増加している.その中で癌浸潤が粘膜下組織までにとどまる早期十二指腸癌の報告が近年増加している.部位別にみると比較的発見されやすい球部,下行部が大半を占め水平部に発生した早期十二指腸癌の報告はきわめて少ない2).われわれは,十二指腸水平部に発生した表面隆起陥凹型(IIa+IIc)の十二指腸粘膜内癌(m癌)の1例を経験したので報告する.

胃扁平上皮癌の1例

著者: 野澤寛 ,   平野誠 ,   村上望 ,   小泉博志 ,   橘川弘勝 ,   増田信二

ページ範囲:P.119 - P.122

はじめに
 胃原発の上皮性悪性腫瘍は多くが腺癌であり,扁平上皮癌は全胃癌の約0.1%と稀である1).その予後は不良であるとされているが,組織発生については一定の見解は得られていない.今回われわれは,噴門部に発生したBorrmann 2型胃扁平上皮癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

臨床報告・2

超音波検査にて診断した胆嚢内回虫迷入症の1例

著者: 稲葉行男 ,   渡部修一 ,   野村尚 ,   福田俊 ,   飯沼俊信 ,   林健一 ,   千葉昌和

ページ範囲:P.124 - P.125

はじめに
 胆道内回虫迷入症は,回虫症の激減に伴い現在では稀な疾患となった.今回われわれは,超音波検査(以下,US)により診断し得た胆嚢内回虫迷入症を経験したので報告する.

DSAのみで描出しえた細小肝細胞癌の1例

著者: 丸尾啓敏 ,   富永秀次 ,   久米進一郎 ,   松本正廣 ,   金井弘一 ,   飯原久仁子

ページ範囲:P.126 - P.128

はじめに
 各種画像診断法の発達により径2cm以下の細小肝細胞癌(小肝癌)が発見される機会が増えている.最近われわれは径6mmの小肝癌症例を経験した.本症例は腫瘍がdigital subtraction an-giography(DSA)によってのみ描出されたという点で興味深い例であり,ここに報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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