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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科52巻10号

1997年10月発行

雑誌目次

特集 食道癌診療のトピックス

食道癌におけるヒトパピローマウイルス

著者: 石川忠則 ,   小越章平 ,   高橋晃 ,   小野寛人 ,   降幡睦夫 ,   大朏祐治

ページ範囲:P.1255 - P.1259

 ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:HPV)は子宮頸癌の約9割に感染を認め,癌化との関連が強く示唆されている.食道癌では,1986年頃から,感染例の報告をみるが,検出頻度にかなり差がみられ,筆者らは1993年に3割強に感染を認め報告したが,現在までのところ,わが国では最も高い検出頻度である.再現性や信頼性のより高い方法による感染の検出やその頻度の確立が望まれる.

アルコールと発癌

著者: 横山顕 ,   大森泰 ,   村松太郎

ページ範囲:P.1261 - P.1265

 大酒家の食道ヨード染色検診では食道表在癌が高率(3.6%)に診断され,そのなかでも濃い酒(焼酎,ウイスキー)の飲酒家とブリンクマン指数1,000以上の喫煙家でオッズ比はそれぞれ3.3倍と2.9倍になる.さらに強力な危険因子は大酒家の約10%にみられるアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)のヘテロの欠損である.この因子はオッズ比を7.6〜12.1倍も高くする.ALDH2が代謝するアセトアルデヒドは動物に発癌性を有し,ヒトの食道癌でも重要な役割を担っている.大酒家に多い食道癌の多発重複発癌もALDH2欠損者に特に多い.ALDH2の欠損は少量飲酒時のフラッシング反応に関する簡単な質問で判別でき,ALDH2欠損者の常習的飲酒をハイリスクととらえることは癌予防の観点から重要である.

食道癌の内視鏡診断に関する諸問題

著者: 河野辰幸 ,   永井鑑 ,   井上晴洋 ,   矢野謙一 ,   長浜雄志 ,   出江洋介 ,   中村正徳 ,   吉野邦英 ,   竹下公矢

ページ範囲:P.1267 - P.1272

 食道内視鏡診断の進歩は著しく,ヨード染色法により微小癌の拾い上げも可能となった.同時に小ヨード不染部が多数発見されるようになり,症例によっては内視鏡切除が適用されるが,その組織診断と臨床的な取り扱いが問題となっている.また,無症状早期癌患者をいかに効率よく選択し,内視鏡検査を実施すべきかも依然問題として残されている.精密診断についても,訓練による主観的判定に頼らざるをえないための問題がある.内視鏡超音波検査などの進歩により客観画像による診断も進歩しているが,表面形態,断層形態,組織形態のみからの診断には限界がある.内視鏡下生検組織を活用しての遺伝子レベルでの診断に期待が持たれている.

食道癌の超音波内視鏡診断

著者: 村田洋子 ,   鈴木茂 ,   太田正穂 ,   井手博子

ページ範囲:P.1273 - P.1278

 近年,種々の機種の改良により,従来の問題点であった狭窄例でも腫瘍全体の観察が可能となった.また内視鏡直視下でスキャンが行える高周波の細径プローブの開発により,粘膜筋板の描出が可能となり,粘膜筋板以内か筋板を超えて浸潤する癌かの鑑別が94%診断可能であった.さらに超音波下穿刺細胞診が行えるようになり,リンパ節転移診断の正診率が向上したとの報告もみられる.他方,3次元画像表示の機種の開発に従い,立体的画像構築,体積の測定など種々の新しい分野の報告もなされている.今回,超音波を用いた食道癌進行度診断について,最近の進歩を自験例および文献的考察を含め報告する.

食道癌に対する内視鏡的粘膜切除術

著者: 幕内博康 ,   島田英雄 ,   千野修 ,   田仲曜 ,   西隆之 ,   木勢佳史 ,   大芝玄 ,   貞廣荘太郎 ,   近藤泰理 ,   田島知郎

ページ範囲:P.1279 - P.1284

 1987年に第1例を施行し,1990年頃から急速に普及してきた内視鏡的粘膜切除術は,外科的根治術の手術侵襲の大きさや術後のQOLを著しく損うことなどを考えると,まさに,画期的な治療法といえる.粘膜上皮(m1)や粘膜固有層(m2)にとどまると推定される病巣には第1選択の治療法であり,粘膜筋板(m3)や粘膜下層表層(sm1)に浸潤する病巣の過半数も本法の適応となると考える.安全容易で確実な内視鏡的粘膜切除術の術式も完成の域に達している.現在,本邦で1,000例に近い症例で施行されていると推定されるが,食道癌のhigh risk groupを中心に内視鏡検査の際に良く食道を観察し,ヨード染色を頻用されたい.手技と成績についても詳述した.

食道癌に対する胸腔鏡下胸部食道切除・縦隔リンパ節郭清

著者: 樋口則男 ,   金田巌 ,   赤石隆

ページ範囲:P.1285 - P.1291

はじめに
 食道癌の手術的治療において,胸腔鏡下手術は一般にminimally invasive surgeryという表現のもと縮小手術ととらえられがちで,その適応はリンパ節転移のない早期食道癌か,poor riskの症例にやむなく行われるものと考えられることが多い1,2).しかし筆者らは,術野の展開が十分に行われれば,胸腔鏡下の手術も通常の右開胸の手術と遜色のない縦隔郭清が可能と考え,積極的に進行食道癌に対しても胸腔鏡下胸部食道切除・縦隔リンパ節郭清を行ってきた.ここでは,筆者らの行ってきた食道癌に対する胸腔鏡下手術について述べる.

遺伝子異常と治療法の選択

著者: 小澤壯治 ,   安藤暢敏 ,   北川雄光 ,   上田政和 ,   北島政樹

ページ範囲:P.1293 - P.1298

 画像診断では検出できない微小のリンパ節転移や臓器転移が食道癌根治術後に増大して,再発・転移巣として明らかになることがある.遺伝子異常から食道癌を捉え,従来の診断法に遺伝子異常の情報を加味した総合診断が望ましいと考えられる.教室において長年注目してきた癌遺伝子c-erb Bとcyclin D 1の異常とその治療法選択への応用について検討した.c-erb B増幅は予後因子とリンパ節転移予測因子であり,3領域郭清やm3/sm1症例の治療法の選択に利用しうる.cyclin D 1増幅は予後因子と臓器転移予測因子であり,臓器転移危険症例に対する縮小手術・化学療法の選択に用いられる.これら遺伝子異常の情報を臨床病理学的指標と組み合わせることで,より適切な治療法が選択可能になると考えられた.

食道癌の手術補助療法—ネオアジュバント・術後補助療法

著者: 安藤暢敏 ,   飯塚紀文 ,   石田薫 ,   井手博子 ,   渡辺寛 ,   篠田雅幸 ,   多幾山渉 ,   小澤壯治

ページ範囲:P.1299 - P.1306

 食道癌に対する手術補助療法は本邦では術後に用いられることが多く,JCOG食道がんグループが行った無作為化比較試験の結果,術後放射線療法と術後化学療法(CDDP/VDS)の生存率の差は認められなかった.3領域郭清を含む開胸開腹根治手術への術後化学療法(CDDP/VDS)による生存率の上乗せ効果は認められなかった.一方,ネオアジュバント療法,とくに術前補助化学療法や化学放射線併用療法は欧米において早くから試みられてきたが,大規模な第Ⅲ相試験は未だ行われず,予後改善効果は未だ不明である.化学放射線併用療法によるdownstaging後に切除可能となった高度進行癌例を経験できるようになり,治療戦略として期待がもてる.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・34 肝・胆・膵・脾

腹腔鏡下胆嚢摘出術(気腹法)

著者: 黒川良望 ,   安藤健二郎 ,   赤石隆 ,   中川昭彦 ,   里見進

ページ範囲:P.1247 - P.1254

はじめに
 内視鏡下外科手術研究会のアンケート調査結果1)によると,1990年4月にわが国に導入された腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下,ラパ胆)は,同年末までに16施設で151症例に施行され,翌1991年には,さらに149施設が加わり4,438症例に実施された.1992年4月には内視鏡手術としていち早く,また唯一保険収載され,社会的にも認知された術式として広く普及し,1994年10月までに40,850例の集計がなされている.これらの施設では,ラパ胆導入後同時期の開腹胆嚢摘出術は11,728例であることから,全胆嚢摘出術の実に78%がラパ胆であったことになる.
 筆者らは1990年10月に導入し,術後の観察を通じて,患者にとって利点の多い手術であることを実感し,また応用範囲も広いことから,多くの一般外科医が修得すべき手技であると判断して,東北大学医学部第2外科関連病院への普及を積極的に進めた.一方,従来の手術手技と異なる全く新しい操作・感覚を必要とするため,その修得には熟練の外科医であっても適切なトレーニングが必要と考え,独立した術者となるための基準(表1)を設けて,手技の普及・習熟に努めた.その結果1991年に13施設91例,1992年に31施設473例,1994年には全関連病院45施設で1,248例,全胆嚢摘出術の55%,1996年には1,624例68%となった.

臨床外科交見室

外科医とQOL

著者: 木村秀幸

ページ範囲:P.1307 - P.1307

 私が医師になった25年前は,医学,中でも外科学はquantity of lifeを追求していた.それゆえ手術は拡大郭清へと突き進み,その結果,直腸癌手術では,性機能障害や排尿機能障害が問題となった.その後神経温存手術が始まったが,当初は,郭清度を控えて神経を残すか,神経を切除しても郭清度を上げるかという選択だった.この頃に外科臨床の場にQOL(quality of life—生命の質,生活の質)という言葉が持ち込まれ始めた.
 病院のベッドに寝たきりで,点滴注射にたよって命を長らえるような延命医療に対する反省からQOLは注目されたが,私たち外科医は,手術方法などによる差異を問うということに重点をおき,その結果,身体的QOLを追求することに偏りがちだった.しかし,QOLには心理的,社会的,宗教的側面のあることも忘れてはならない.また,その評価はあくまでも,本人の主観によらなければならない.

病院めぐり

沖縄県立那覇病院外科

著者: 砂川亨

ページ範囲:P.1308 - P.1308

 沖縄県立那覇病院は,昭和34年8月琉球政府立那覇病院として病床214床で開院しました,しかし,昭和47年沖縄県の本土復帰に伴い琉球大学付属病院へ吸収,閉鎖状態となりました.その後,那覇市および南部地区の救急医療体制が不十分ということで,昭和49年9月,広域救急医療センターとして再開院(病床80床)され沖縄県南部地区の救急医療を担って来ました.引き続き年ごとに各診療科を充実させ,昭和59年総合病院(268床)となり,さらに昭和62年現在地(旧琉球大学付属病院跡)に移転,翌昭和63年434床に増床し現在に至っています.本院は現在23診療科,医師数46名にて高次の救急医療はもとより,8か所の付属離島診療所を抱えての僻地医療の支援体制,悪性疾患,慢性疾患,さらには未熟児医療,不妊治療など幅広い医療活動を行っている病院です.
 当院外科は,一般外科4名(仲本副院長,砂川部長,金城部長,砂川医員),心臓血管外科2名(知花部長,久貝医員),小児外科1名(仲間部長)と大阪大学救急医学教室より1名,琉球大学第1外科および第2外科よりそれぞれ1名ずつのローテーターがおり合計10名で構成されています.

新宮市立市民病院外科

著者: 嶋廣一

ページ範囲:P.1309 - P.1309

 紀伊半島南部に位置する新宮地方は,古来より聖地とされ,平安時代,浄土信仰が人々の間に広まるにつれ,「蟻の熊野詣」と呼ばれるほど,当地方への参詣が盛んであった所です.
 本宮大社,那智大社と共に熊野三山の一つとして数えられる熊野速玉大社は新宮市にあり,かつては門前町として栄えました.また,江戸時代には水野重仲3万5千石の城下町として,さらに昭和の時代までは,木材の集散地として知られた町でしたが,近年は様々な要因により以前ほどの活力は見られなくなってしまいました,しかし新宮市の輩出した文豪,佐藤春夫が「望郷五月歌」で「空青し,山青し,海青し,日はかがやかに南国の五月晴こそゆたかなれ」と歌ったごとく,手つかずの自然が今もなお広大に存在しており,昨今の太古への回帰,自然への回帰願望をかなえる「癒しの郷」としての当地を再び甦らすべく努力がなされております.

メディカルエッセー 『航跡』・14

カナダ横断30日間講演旅行(1)—バンクーバーからカルガリーへ

著者: 木村健

ページ範囲:P.1310 - P.1311

 成田発のカナディアンパシフィック航空でバンクーバーに着くとグラハム・フレージャー博士夫妻が出迎えてくれた.1983年の9月初旬のバンクーバーは,まるでニッポンの11月のような気候であった.ここカナダの西の端から東のハリファックスまで5,000km,1か月に及ぶカナダ横断講演旅行の始まりである.丘の上からバンクーバーのダウンタウンを見下すホテルのペントハウスが予約してあった.最上階にあるペントハウスは,特別なキーをエレベーターの鍵穴に差し込まない限り到達できない仕組みになっている.降りたところがペントハウスのフロントになっていて,どこかから監視しているのであろう,その前に立つと金髪の美女が「ドクターキムラ,ようこそいらっしゃいませ」と名前を呼んで迎えてくれた.案内された部屋は特別見晴しの良いスイート.スタンダードの部屋の三倍くらいのスペースである.さぞやルームチャージも高かろうと思ったが,フレッド・マクロード講演に招かれた講師のカナダ訪問にかかる費用は,すべてマクロード家の家計で賄われると聞かされ安心した.バンクーバーの小児外科医たちのお世話になっては申し訳ないと思ったからである.
 バンクーバーでホスト役をしてくれたグラハムは,当時ブリティッシュコロンビア(BC)小児病院の外科部長であった.そのグラハムの案内で小児病院を見せてもらった.北米およびヨーロッパでは多くの小児病院の建設運営は地域住民の浄財に頼っている.

番外編—木村 健氏インタビュー

著者: 木村健 ,   本誌編集室

ページ範囲:P.1312 - P.1316

 本誌に『航跡』を連載中の木村 健先生(アイオワ大学小児外科教授)が,シンポジウム『21世紀における臨床試験のあり方』(1997年8月9,10日;国立京都国際会館)に招かれ,来日されました.この機会に,今までの連載を振り返りながら,直接日米比較を語っていただきました.

私の工夫—手術・処置・手順・36

—胃噴門粘膜癌に対する経口的内視鏡—観察下胃内手術

著者: 小畑満 ,   永合正浩 ,   石田孝雄

ページ範囲:P.1317 - P.1317

 胃噴門粘膜癌に対しては大橋らの考案した腹腔鏡下胃内手術が施行されているが,トロカールは最低3本必要であり,病変の食道側の切除線の確認は,腹腔鏡のみの観察では不十分で,胃内視鏡を併用せざるをえない.そこでわれわれはモニターを工夫し,胃内の観察は経口的に挿入した胃内視鏡で行い,胃内に挿入すべきトロカールは2本のみで胃粘膜切除術を施行したのでその方法を紹介する.
 手術は,全麻下に経口的に胃内視鏡を挿入し,胃内に送気した後,2本のトロカール(バルーン付,5mmと10mm)を前庭部前壁より挿入する(図1).この際,直視下で胃壁を切開しトロカールを挿入すると容易である.2本のトロカールは,胃内で鉗子同士が交錯しないように2cm以上距離を離して挿入する.次に経口的に挿入した胃内視鏡で病変を観察する.病変が噴門部にあるため,内視鏡を胃内で反転させて観察することになり,実際の鉗子の出てくる方向の天地や左右が画面上で逆転し操作上馴れを必要とする.そのため,モニター1台は上下を反転させたり,モニターの対側に鏡をおき画面の鏡面像を作って順方向となるように工夫した.その後はトロカールから挿入した把持鉗子で病変を牽引し,エンドシザースを用い辺縁の正常粘膜を約1cm付けてゆっくり切除して行く.図2は,固有筋層の見える層で病変部を切除しているところであるが,経口的胃内視鏡が術野の邪魔にならないように,反転する.

外科医のための局所解剖学序説・15

腹部の構造 2

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.1319 - P.1327

 胃を学ぶ者に医聖として称えられているBil-lroth Tも,幼少時の取柄は音楽だけだった.プロの音楽家を夢見たが,母から強く説得され医学を学ぶことになったのである.
 彼の最初の胃切除は1881年1月29日,ウィーンで行われた.それを皮切りに消化器外科は迅速に花開いた.最初の胃切除はPean Jが1879年に行っており,2度目は次の年Rydiger Lが手掛けている.しかしいずれも短い時間で患者は死亡しており,成功したとは言いがたいものであった.

膜の解剖からみた消化器一般外科手術・8

直腸癌根治術・骨盤内の解剖

著者: 金谷誠一郎

ページ範囲:P.1329 - P.1340

はじめに
 結腸癌に続けて,今回からは直腸癌に対する手術の解説を行う.直腸は骨盤内に存在し,血流支配や隣接臓器との関係など,結腸とは異なる部分が多い.そのためか,多くの解剖書・手術書では,局所解剖に重点が置かれ,他とのつながりあるいは系統だった見方に欠けるきらいがある.しかし,骨盤内においても,腹膜下筋膜を中心とする膜の構造は保たれている.したがって,腹膜下筋膜を中心とする膜の構造と,その内部での血管系・リンパ系・神経系の走行を理解すれば,直腸癌に対する手術も,その基本はこれまでに学んだ結腸癌に対する手術と何ら変わるところはない.

遺伝子治療の最前線・4

ハンマーヘッド型リボザイムを用いた遺伝子治療

著者: 金澤禎行 ,   大川和良 ,   林紀夫

ページ範囲:P.1341 - P.1346

はじめに
 1980年代初めに,Cechら1)あるいはAltmanら2)は,テトラヒメナのグループIイントロンやRNase PのRNA成分が,蛋白質のない状態でRNAに対する切断活性を有するということを発見した.その後,このような触媒活性を持つものは,RNA酵素という概念からリボザイムと名付けられ,次々と新たなものが見出された.例えば,植物ウイルスのサテライトRNAやウイロイドのような植物に感染性のあるRNAの中にも,同様の活性を示す小型のドメインが認められており,これらは,その活性ドメインの形態からハンマーヘッド型リボザイムと呼ばれている(図1).
 HaseloffとGerlachは,このハンマーヘッド型リボザイムが,配列特異的にターゲットRNAを切断するのに必要とされる共通の構造を明らかにした3).このことにより,任意のターゲットに対して,特異的に切断活性を有する人工的に改変したリボザイムを作製することが可能となり,遺伝子発現を抑制する方法として注目を集め,多くの研究がなされるようになった.例えば,抗ウイルス剤としてRNAウイルスであるhuman immuno-deficiency virus(HIV)の増殖抑制に応用しようとする試み,あるいは癌遺伝子の発現を特異的に抑制しようとする試みなどに関して多くの報告がなされている4)

手術手技

Argon beam coagulatorを用いた腹腔鏡下多発性多房性肝嚢胞開窓術

著者: 小山善久 ,   井上典夫 ,   長井一泰 ,   古河浩 ,   佐藤尚紀 ,   阿部力哉

ページ範囲:P.1347 - P.1351

はじめに
 1990年に腹腔鏡下胆嚢摘出術が本邦に導入されて以来,侵襲度が低いこと,社会復帰が早いことから本手術は熟練を要するが,患者の要望と相まって,胆石症以外にも様々な疾患に応用されてきている.肝嚢胞に対する腹腔鏡下手術は最近報告されるようになったが,ほとんどは単発性の症例であり1),多発性,多房性の肝嚢胞に施行した報告はほとんどない2).今回,多発性多房性肝嚢胞に対し腹腔鏡下開窓術を施行し,残存嚢胞壁をBirt-cher社製のargon beam coagulator(以下,ABC)で焼灼し,術後の経過が良好であった症例について報告する.

臨床報告・1

原発性有茎性早期十二指腸癌の1例

著者: 小川朋子 ,   岡田喜克 ,   赤坂義和 ,   高木哲之介

ページ範囲:P.1353 - P.1357

はじめに
 いわゆる十二指腸乳頭部癌を含まない原発性十二指腸癌の報告は比較的稀である.しかし近年の上部消化管検査の進歩および検診率の向上により,早期十二指腸癌の報告が次第に増加している.最近,筆者らは原発性早期十二指腸癌の1例を経験したので報告する.

超音波カラードプラ法にて嵌入腸管への血流を確認しえた成人腸重積症の1例

著者: 後藤真 ,   八幡憲喜 ,   高橋日出美 ,   中田雅之 ,   斎藤昭光

ページ範囲:P.1359 - P.1361

はじめに
 成人の腸重積症(以下本症)は比較的稀ではあるが,超音波やCT検査で特徴的所見から術前診断が可能となり,これらの画像診断の有用性は広く知られるようになった1).しかし治療上のポイントともいえる腸管血流について検討した報告は少ない.筆者らはカラードプラ法により嵌入腸管への血流を確認しえた症例を経験したので,その有用性について文献的考察を加え報告する.

小児腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスの1例

著者: 大畠雅之 ,   黒崎伸子 ,   久松貴 ,   芦塚修一 ,   綾部公懿

ページ範囲:P.1363 - P.1366

はじめに
 腸間膜の異常裂孔に腸管が嵌入する腸間膜裂孔ヘルニア(以下,本症)は比較的稀な疾患である.急激に発症し,また術前診断が困難で開腹時に腸切除を余儀なくされることが多い.今回筆者らは,小腸腸間膜裂孔ヘルニアによる絞扼性イレウスで小腸大量切除を必要とした小児の1例を経験したので報告する.

放射線治療を施行した食道平滑筋肉腫の1剖検例

著者: 横川徳造 ,   白井辰夫 ,   杉山丈夫 ,   古井滋 ,   諸藤慎一郎 ,   小坂井守

ページ範囲:P.1367 - P.1370

はじめに
 食道平滑筋肉腫はきわめて稀な疾患である.今回,筆者らは放射線治療を行った1例に若干の文献的考察を加えて報告する.

胆嚢癌を合併した黄色肉芽腫性胆嚢炎の1例

著者: 西敏夫 ,   大島聡 ,   川崎勝弘 ,   金柄老 ,   相沢青志 ,   森武貞

ページ範囲:P.1371 - P.1374

はじめに
 黄色肉芽腫性胆嚢炎は胆嚢壁の黄色肉芽腫性肥厚を伴う胆嚢炎で,画像診断上胆嚢癌との鑑別が問題とされている.今回,筆者らは黄色肉芽腫性胆嚢炎に胆嚢癌を合併した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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