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文献詳細

雑誌文献

臨床外科52巻2号

1997年02月発行

文献概要

特集 消化器の“前癌病変”と“ハイリスク病変”

前癌病変とは

著者: 中村恭一1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部病理学

ページ範囲:P.143 - P.149

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はじめに
 前癌病変precancerous lesionとは,その病変を放置しておけばある高い率をもって癌が発生する病変のことである.また,前癌病変と同義語的に用いられている用語として,癌類似病変,良性悪性境界病変,癌のハイリスク病変などがあり,「癌化するかも知れないから治療する』あるいは「癌であることの可能性があるから治療する』とかのように,日常の診療では便利な言葉としてよく用いられている.しかし,個々の病変についてそれが前癌病変であるということができるかどうかを考える時,病変の癌化率が何%以上の場合をもってそれを前癌病変と見做すか?という前癌病変の定義が不明確であることに気が付く.このように,前癌病変の定義は癌発生母地となっている,あるいは母地となりうる病変のことであり,それら病変の癌化率は問われていない.
 ある病変に対して,それを前癌病変であるとする場合には,その癌化率を明確に定義しておく必要がある.もし,そのように定義付けておかないと,癌発生率の高い臓器はある年代に達すると前癌状態であることになり,その極限は生あること自体が前癌状態であることなってしまうからである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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