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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科52巻5号

1997年05月発行

雑誌目次

特集 サイトカインからみた周術期管理

術後SIRSとサイトカイン

著者: 小川道雄

ページ範囲:P.567 - P.572

 手術侵襲の程度に応じて,術後SIRSが発生する.SIRS状態が持続するほど,術後合併症が発生しやすい.SIRSは炎症性サイトカインの誘導による高サイトカイン血症であり、生体が手術侵襲に反応している状態である.SIRS状態において感染などを合併すると,臓器不全が発症しやすい.したがって術後SIRS状態にあっては,SIRSからの早期離脱をはかるとともに,感染などのsecond attackを避けるように努めることが,術後管理に際して何よりも大切である.最近SIRSとは正反対の,抗炎症性サイトカインの誘導によるCARSという病態が存在することが指摘された.術前の治療によっては術後にCARS状態となっている可能性も考慮する必要がある.

サイトカインと術後臓器障害

著者: 若林剛 ,   島津元秀 ,   山本聖一郎 ,   森末淳 ,   玉川英史 ,   原田裕久 ,   加藤悠太郎 ,   竹内裕也 ,   首村智久 ,   尾原秀明 ,   北島政樹

ページ範囲:P.575 - P.580

 敗血症性ショックの研究から炎症性サイトカインの過剰産生が全身性炎症反応を惹起し,これが臓器微小循環系で好中球—内皮の相互作用から微小循環障害と引き続く臓器障害の原因になることが示された.手術侵襲により炎症性サイトカインが産生され,術後にやはり全身性炎症反応が生ずることから,術後臓器障害の成因として炎症性サイトカインの重要性が注目されている.本稿では臨床例で術後に炎症性サイトカインが産生されることを示し,動物実験からこれらのサイトカインが微小循環障害から臓器障害を惹起する機序を解説し,術後臓器障害の発生における炎症性サイトカインの意義について考察する.

食道癌術後のサイトカインの変動

著者: 標葉隆三郎 ,   里見進

ページ範囲:P.583 - P.589

 食道癌手術の周術期には,高サイトカイン,高ホルモン血症の病態となっており,サイトカインの産生によって顆粒球を初めとする種々の細胞が活性化される.サイトカインは生体防御反応や組織修復に重要であるが,過剰なサイトカインの産生は,正常な細胞を傷害し,臓器傷害をまねく.術前ステロイドの投与は,臨床的にはサイトカインやホルモンの過剰な産生を抑制し,水分電解質バランスを改善し循環動態を安定させ,不整脈の発生を減らす.また,手術侵襲モデルにおいて,ステロイドの投与には至適な時期や量があり,著明にサイトカインの産生を減らすばかりでなく,肺胞や腹腔macrophargeの活性化を抑制する.サイトカインの産生を含めて手術侵襲に伴う生体反応を軽減することは周術期管理を容易にし,手術適応や術式を拡大することが可能になる.

重症急性膵炎時の多臓器不全とサイトカイン

著者: 林田博人 ,   村田厚夫 ,   樽井武彦 ,   金成弼 ,   渡辺康則 ,   加藤健志 ,   北川和則 ,   門田守人 ,   松浦成昭

ページ範囲:P.591 - P.596

 重症急性膵炎は多臓器不全を伴う全身疾患である.かつては逸脱酵素の作用により遠隔臓器に炎症が波及すると考えられたが,近年生体防御に果たすサイトカインの役割解明が進み,逸脱酵素に代わって有力視されるようになった.膵で誘導された炎症性サイトカインはSIRSをもたらすとともに白血球,血管内皮細胞の活性化を促進し,肺をはじめとする遠隔臓器に炎症細胞が集積する,しかしここから先は未だ解明されていない,集積した炎症細胞が活性化されて,二次的炎症がはじまり,ある時点で破綻して臓器障害に至ると考えられているが,その過程は推測の域を出ない,従来の一元的な好中球障害説に加え,巣球が関与する可能性をわれわれの動物実験に基づいて考察する.

肝切除により惹起される生体反応と組織傷害について—とくにサイトカインを中心として

著者: 島田光生 ,   竹中賢治 ,   調憲 ,   藤原雄 ,   祇園智信 ,   杉町圭蔵

ページ範囲:P.599 - P.604

 肝切除により惹起される反応と肝傷害のメカニズムについて,(1)プロスタグランディン系,(2)凝固線溶系,(3)サイトカイン系から検討した.(1)プロスタグランディン系では肝切除術中に,とくにトロンボキサンA2(TXA2)の上昇が観察された.このTXA2術中増加はTXA2合成阻害剤(OKY−046)により抑制され,その結果肝傷害の軽減(術後のAST値,ALT値の低下)が認められた.(2)凝固線溶系では肝切除術中早期に凝固系のみならず,独立的に線溶系も活性化されることが判明し,この術中大量出血の原因となる線溶亢進はnafamostat mesilateにより抑制できた.その結果,肝切除における無意味な凍結血漿使用を回避できた.(3)サイトカイン系では肝切除術中にIL-1β,IL-6の上昇が観察され,術後3日目にCRPのピークが観察された.また,このサイトカイン血症は術前のステロイド投与により抑制でき,その結果,術後の血清ビリルビン値の低下とCRPの低下が認められた.また,術中の肝生検組織の接着分子染色により,肝切除術中に肝類洞に接着分子が発現することが判明した.以上の如く,肝切除術中にすでに種々の反応が惹起されていることを銘記することが重要である.また,これらの過剰な生体反応の制御により,肝傷害を含む全身諸臓器の傷害軽減が可能であることが示唆された.

肝移植術後のサイトカイン変動

著者: 原田裕久 ,   若林剛 ,   島津元秀 ,   北島政樹

ページ範囲:P.605 - P.609

 肝移植術後に出現し得る再灌流障害,拒絶,感染などの合併症にはいずれも炎症性サイトカイン,炎症抑制性サイトカンが大きく関与しており,術後のサイトカイン変動を検討することは病態を把握し,予測するために非常に意義深いことと思われる.自験例での検討では,サイトカインは免疫抑制下にもかかわらず臨床経過に対応して血中で変動し,とくにIL-1raは侵襲に,IL-8は感染に対してよく相関した.今後,拒絶の際の動態をも含めた肝移植後の血中サイトカイン動態の解析は,早期治療に直結した新しい非侵襲的診断法となり得る可能性を持ち,また臨床経過を正確に理解するうえでも非常に有意義である可能性が示唆された.

外科侵襲に対するステロイド投与

著者: 佐藤信博 ,   肥田圭介 ,   木村祐輔 ,   池田健一郎 ,   八重樫泰法 ,   石田薫 ,   斉藤和好 ,   遠藤重厚

ページ範囲:P.611 - P.615

 サイトカインレスポンスからみて大侵襲手術では侵襲—生体反応が非制御状態に陥る危険性が潜在しており,cytokine modulating therapyが模索されている.われわれは食道癌患者を対象としメチルプレドニゾロン(MP)10 mg/kg術前投与群と非投与済群(C群)との比較検討を行った.MP群で末梢血中IL-6,IL-8,IL-1ra,顆粒球エラスターゼ,sELAM-1は低値で推移し,術後呼吸機能,腎機能はMP群が良好に推移した.非特異的免疫能は2群間に差はなく,感染症,縫合不全などの合併症は発生しなかった.過大侵襲手術における術前ステロイド投与は過剰な炎症性サイトカインを抑制し,術後合併症対策の一環になるものと考えられる.

蛋白分解酵素阻害薬による手術侵襲軽減の試み

著者: 小野聡 ,   青笹季文 ,   望月英隆

ページ範囲:P.617 - P.621

 高度侵襲手術である食道癌手術の侵襲軽減を図るため術前からprotease inhibitorの投与を行い,SIRS(systemic inflammatory response syndrome)診断基準項目およびサイトカイン値(IL-6,IL-8)の推移からその効果を検討した.その結果,術前からprotease inhibitorを投与した群では脈拍数が有意に低値で推移し,呼吸数も第3病曰で有意に少なかった.また術後SIRSからの離脱が早く,術中、術後の血中IL-6値は有意に低値で推移し,第3病日のIL-8,CRP値も低値を示した.したがって術前からprotease inhibitorの投与を開始することによって,手術侵襲の軽減を図ることができる可能性が示唆された.

周術期栄養管理によるサイトカイン産生の修飾

著者: 齋藤英昭 ,   林明燦

ページ範囲:P.623 - P.627

 侵襲前後の栄養管理が炎症局所や全身でのTNF,IL-1,IL-6,IL-8,IFN-γなどのサイトカイン産生に影響を与える.これらのサイトカインの適切な産生は生体防衛に,また過剰産生は臓器障害や多臓器不全の発症に関与する.このため侵襲時の栄養管理によってサイトカインの産生を生体に有利な方向に向かわせ,生体の防御力,とくに免疫能を増強し,予後を改善することも可能である.侵襲時のサイトカイン産生に影響を与える栄養管理法としては,栄養投与ルート,グルタミン,脂肪酸,ビタミンC,Eなどの抗酸化物質,微量金属,蛋白同化ホルモンなどがある.本稿ではこのような周術期の栄養管理によるサイトカイン産生の修飾について解説した.

高サイトカイン血症対策としての血液浄化法

著者: 平澤博之 ,   菅井桂雄 ,   織田成人 ,   志賀英敏 ,   松田兼一

ページ範囲:P.629 - P.634

 高サイトカン血症対策としての血液浄化法としては,持続的血液濾過透析(CHDF)を用いるのがよい.CHDFはクリアランスからみても,また血中濃度の変化からみても,各種のサイトカインを効率よく血中から除去していることが示された.さらにサイトカインの血中濃度が高いほどその除去効率もよいので,高サイトカイン血症対策としては好都合である.またCHDFを施行しても常にある程度のサイトカインは血中に残存するので,生体が必要とする壁のサイトカインまで除去してしまう可能性はなく,いわば安全弁つきのサイトカイン対策である.しかし現時点では術後高サイトカイン血症対策としてのCHDFは,敗血症を合併したような症例に限定すべきである.

カラーグラフ 内視鏡下外科手術の最前線・29 大腸

経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー

著者: 金平永二 ,   大村健二 ,   木下敬弘 ,   宇野雄祐 ,   吉羽秀麿 ,   渡辺洋宇

ページ範囲:P.559 - P.565

はじめに
 経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)は,Buess1,2)が開発した手術用直腸鏡を用いて,拡大・立体視のもとで外科的腫瘍切除を行う術式である(図1).TEMは高位の直腸にも容易に到達でき,大きなen bloc切除と欠損部の縫合が可能であるという長所を有する.したがって,TEMは大きな広基性腺腫や粘膜癌に対する理想的な切除法と考えられる.最近Windeら3)は直腸早期癌患者における prospective random—ized studyによりTEMと前方切除を比較し,総合的にはTEMのほうが優れていると報告した.
 本稿ではTEMにおける手技のコツや術中トラブルと対処法など,技術面を中心に解説する.

メディカルエッセー 『航跡』・9

中国の小児外科医(3)

著者: 木村健

ページ範囲:P.636 - P.637

 中国ではじめての国際小児外科学会は,さまざまな意味で成功裡に終了した.中国全土から駆せ参じた250名の中国の外科医達には,日本,アメリカそしてヨーロッパの小児外科の現況を多少とも伝えることができた.とりわけ大きな収獲は,演題を自由に多角度から討論し合うという学術会議のすすめ方であった.今も大切に保存している学会の抄録集はワラ半紙に、今日では見るのも困難となった“ガリ版刷り”された50題が収められている.頁を開くと右側が中国語,左側が英語訳になっていて,表紙の少し厚手の紙とともに緑色の絹のリボンで綴じられている.出席者の名簿を刷った小冊子がはさみ込まれていて,それぞれの性別,年齢,所属施設が一目で判るようになっている,興味をひいたのは,民族という欄があって,漢民族,満州民族などの別が霞き込まれている.学会出席者の名簿に民族の識別が何故必要なのか.その理由は今もって判らない.
 外国からの出席者にとって,この学会は当時の中国の状況を学ぶところが大きかった.天津児竜医院に案内され院内見学が許されたとき,国外参加者の興味はその極に達したのであった.入院している子供達の9割以上が男の子であった.不思議に思ってその理由を尋ねてみると,一夫婦一子政策にあるという、人口の爆発的増加を抑制するために一組の夫婦は一子のみを設けるという策がとられると,両親は男の子が産まれると大よろこび,女の子だと失意のどん底という結果を招いた.

臨床外科交見室

女性外科医

著者: 武田博士

ページ範囲:P.638 - P.638

 この2月27日,ついにウイーンフィルも時代の流れには逆らえず女性楽団員(演奏家)の参加を認めることになったそうである.アメリカをはじめ多くの国で従来は絶対に男だけの世界と思われてきた軍隊でさえ年々女性兵士が増加してきている昨今,また女性のボクサーや力士が世に認められている時代にあって,今日まで男だけであった事自体非現実的であったとも言えよう.
 ただし,現行のスポーツのように男女が別々に競技する場合とオーケストラのように男女が肩を並べて一緒に演奏活動をする場合とでは男女の存り方,性差が全く異なった意味をもつことも確かである.先日の論説1)によると,アメリカの軍隊で最も解決困難な問題として身体的な違いが挙げられている.日常生活では先端技術によってカバーされる為,大きなトラックでも非力な若い女性が運転することも可能である.しかしながら,平均身長では約13cm低く,上半身の筋力は約半分,筋肉量は37%少ない女性隊員にとって,極限状態である戦場ではそれは越え難い肉体的ハンディキャップとなってgender integrationを困難にしている.日常生活からは想像することさえ難しいが,長い行軍では立ったままでの排尿が必要となり“Freshette Complete System”なる専用器具を開発中とある.最近では新兵の20%を女性が占めるアメリカではこうした工夫も避けられないようである.

病院めぐり

松波総合病院外科

著者: 宮本康二

ページ範囲:P.639 - P.639

 松波総合病院は,松波英一院長(岐阜大学第1外科出身)の先代が昭和8年に外科医院を開設して以来60余年の歴史を持つが,現在の病院は昭和63年2月に新築され,今年で10年目になる.病院は岐阜県と愛知県の境となる木曾川河畔にあるが,岐阜市の中心部から車で15分と交通の便も良い.岐阜市南部より愛知県境に至る地域が診療圏であるが,愛知県からの受診者も約12〜15%と少なくない.
 新病院(437床)開設以来,診療内容の充実に努め,平成6年4月,厚生省の研修指定病院の認可を受けた.医員は総数50余名で岐阜大学出身が80%を占め,他に福井医科大学,名古屋市立大学出身者よりなる.

私の工夫—手術・処置・手順・31

頸部食道胃管吻合術時の大網充填および胃管作成上の工夫

著者: 清水鉄也 ,   児嶋哲文

ページ範囲:P.640 - P.640

 食道癌における頸部食道胃管吻合部の縫合不全は,全身状態の悪化や術後吻合部狭窄による嚥下困難,肺炎などの合併症を引き起こし難渋することがある.われわれの,左側大網を利用した再建術および胃管作成上の工夫を紹介する.
 われわれは原則として胸壁前にて再建しているが,腹部郭清操作終了後大彎側胃管を作成する.この際,図1に示すように左側大網を温存し胃管大彎側に付着させておく.次に皮下トンネルを作成するが,大網を胃管とともに頸部に引き上げるため,皮下剥離は全長に渡り可及的に広く行うことが必要である(約10cm幅).また,従来食道胃管吻合は胃管穹窿部前壁を切開したり1),胃管小彎側GIA切断端を開放して自動吻合器を挿入することが多いが2),われわれは図2に示すように,胃管作成時小彎側口側を余分に残し,後の自動吻合器使用の際にこの部分より吻合器を挿入している.これにより胃管に新たな切開創をつくらず胃管の損傷を防ぐことができるとともに,この手技により胸骨後再建の場合でも容易に器械吻合が可能となる.

外科医のための局所解剖学序説・10

胸部の構造 5

著者: 佐々木克典

ページ範囲:P.641 - P.651

 Henry Sessions Souttarが左心耳から第2指を入れ,僧帽弁狭窄に用指交連切開術を最初に行った年,1925年はまだ抗生剤や輸血に頼れる時代ではなく,麻酔も心臓手術のために十分に体系づけられていなかった.
 手術を受けたのは舞踏病と僧帽弁狭窄を患っている15歳の少女で,弁は狭窄とともに逆流も伴い,心機能はすでに代償できる状態ではなかった,手術は1925年5月6日に行われた.Souttarは次のように記載している.

膜の解剖からみた消化器一般外科手術・7

結腸癌根治術・右半結腸切除術

著者: 金谷誠一郎

ページ範囲:P.655 - P.666

はじめに
 前回までに解説した結腸の解剖とリンパ節郭清の考え方を踏まえて,結腸癌根治術の実際を解説する.今回はその代表として,右半結腸切除術を取り上げる.
 癌に対する手術においては,腹膜下筋膜に包まれた層を1つの区画と考え,腫瘍がどの区画に存在するかを見極めたうえで,リンパの流れ(主流副流,亜流)を考えなければならない.実際の手術では,リンパ節転移の状況を肉眼的に判断し,転移リンパ節+αをen blocに郭清する必要があり,そのためには原発病変や転移リンパ節は可能な限り腹膜下筋膜に包まれたままで摘出されなければならない(1997年2月号「本連載第6回」参照).

臨床研究

肝切除後の機能的肝再生と肝血流指標としてのアシアロシンチの有用性について

著者: 權雅憲 ,   上辻章二 ,   上山泰男 ,   河相吉

ページ範囲:P.669 - P.672

はじめに
 正常肝は70〜80%の肝切除が可能であり,残存肝は6〜12か月でほぼ術前の大きさに再生するが,肝硬変や慢性肝炎を伴う障害肝の肝切除は切除範囲が制限され,肝再生も遅延することが知られている1-3).臨床における残存肝の再生評価法は,従来はメタルクリップ2)や,血管造影4)であったが,近年はCTが多用されている5).一方,アシアロ糖蛋白受容体(asialoglycoprotein rece-ptor;以下,ASGPR)は肝実質細胞の類洞膜表面上に存在し,血清中のアシアロ糖蛋白(以下,ASGP)を特異的に認識して,これを細胞内に取り込む働きをしている.また,このASGPRは肝障害モデル6)や肝疾患症例7)においてはその活性が低下することが知られている.そこで,肝臓の実質細胞の細胞膜表面に特異的に結合する合成糖蛋白である 99mTc-DTPA-galactosyl humanserum albumin(99mTc-GSA;以下,GSA)が開発され,これを用いた肝シンチグラフィによる肝機能の評価が試みられるようになった8,9).今回,われわれはGSAのコンパートメントモデル解析により,肝血流量および肝機能再生を検討し,さらにGSAによるsingle photon emission computed tomography(以下,SPECT)肝シンチグラフィを用いて肝容積再生を検討した.

臨床報告・1

回腸原発平滑筋芽細胞腫の1例

著者: 吉田禎宏 ,   古田聡 ,   倉立真志 ,   矢田清吾 ,   藤峰正昭 ,   長谷川匡

ページ範囲:P.673 - P.676

はじめに
 平滑筋芽細胞腫はほとんどが胃原発であり,回腸原発はきわめて稀で,検索し得た限りでは10例の報告があるに過ぎない1-4).今回,病理組織学的に平滑筋芽細胞腫と診断された回腸腫瘍の1例を経験したので報告する.

骨塩量の低下より発見された原発性副甲状腺機能亢進症の1例

著者: 木原実 ,   松坂憲一 ,   宮内昭 ,   前田昌純 ,   乗松尋道 ,   森諭史 ,   加地良雄

ページ範囲:P.677 - P.679

はじめに
 最近,人口構成の高齢化に伴い骨粗鬆症に対する関心が高まってきている.今回,検診にて骨塩量低下を指摘されたことから発見された原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroid-ism;以下,PHPT)の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

胃の巨大な過形成性ポリープの1例

著者: 斉藤博昭 ,   堅野国幸 ,   辻谷俊一 ,   池口正英 ,   前田迪郎 ,   貝原信明

ページ範囲:P.681 - P.683

はじめに
 過形成性ポリープは,胃の隆起性病変のうち最も頻度の高い疾患であり,通常は長径が2cm以下のものが大部分で,診断・治療上問題になることはほとんどない.今回,われわれは胃噴門部に発生した巨大な過形成性ポリープの1例を経験し,その診断・治療過程で若干の知見を得たので報告する.

メッケル憩室と小腸間膜間の索状物による絞扼性イレウスの1例

著者: 千賀省始 ,   松田秀一 ,   片桐義文 ,   林勝知 ,   鬼束惇義 ,   広瀬一

ページ範囲:P.685 - P.688

はじめに
 メッケル憩室は卵黄腸管の遺残による小腸の憩室であり,その多くは無症状に経過するが,ときに種々の合併症を引き起こす.最近われわれは,メッケル憩室と小腸間膜間の索状物による絞扼性イレウスの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

若年者胃平滑筋肉腫の1例

著者: 植村忠廣 ,   河合央 ,   丸山修一郎 ,   大谷順 ,   曽田益弘 ,   赤木忠厚

ページ範囲:P.689 - P.692

はじめに
 胃平滑筋肉腫は胃悪性腫瘍の0.1〜0.5%を占める比較的稀な疾患であり,若年者の報告例はきわめて少ない1).今回,われわれは21歳の女性に発症した若年者胃平滑筋肉腫を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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